2012年9月6日木曜日

“未来への扉” ―全9場―

   

  以前に書いていた作品には“あらすじ”などを書いているもの
  もあり、この作品にも付いていたので、今回は珍しいのですが、
  “あらすじ”も合わせてお読み下さい(^^♪
  
  また、数少ない、題名の付いた作品でもあります^^;



                                 どら。




 ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪

     
     〈主な登場人物〉

    
   アレックス  ・・・  ヨットで、世界中の海を渡り歩く冒険家。

   ジョーイ  ・・・  アレックスの友人。

   エンゼル  ・・・  アレックスが孤島で知り合った娘。
               本当の名前は、フランシス。

   クリスティーン  ・・・  アレックスの恋人。

   トレイシー  ・・・  ウエイトレス。

   ヘンリー  ・・・  エンゼルの婚約者。



 ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪


     〈あらすじ〉

   アレックス・ジョンソンは、ヨットで海を渡り歩く冒険家。一つの
  冒険を達成し、戻って来ると、金回りのいい仕事を見つけ、冒険
  資金を貯め、また海へ出て行く・・・と言う暮らしに充実感を抱い
  ていた。ただ、そんなアレックスに恋人や友人は、其々理解を
  示す振りをしながら、心の何処かでは、何か不安を感じずには
  いられなかった。

   そんなある日、何時ものように冒険旅行に出ると言うアレックス
  に、恋人はもうこれ以上は待つことに耐えられないと、愛している
  が故の別れを切り出す。そんな恋人の言葉に、今まで恋人の
  理解に甘えていた自分に初めて気付き、恋人の幸せを祈りなが
  ら、傷心の旅に出る。

   そこである日アレックスは、突然の大嵐に遭い、一つの無人島
  へ流れ着く。その島で、一人の娘と知り合ったアレックスは、
  その場の様子や、娘の態度に何か解せないものを感じながらも
  、娘の明るさに心が和み、知らず知らずのうちに、今まであった
  ことや自分のことなどを話すようになる。

   一方、アレックスの話しに興味深く、熱心に聞き入っていた娘も 
  、少しずつ自分のことを話し出す。そんな風にお互いが語ってい
  るうちに、其々何か惹かれるものを感じるようになり、もっとお互
  いのことを知りたいと思うようになる。

   何時間立ったとも、何日間立ったとも感じたある時、アレックス
  はふと、その島が何か変だと思い始め、ここにいようと言う娘を
  連れて、脱出を試みようとして、初めて自分達が、島の虚栄を
  した、何か得体の知れないドームに閉じ込められているのだと
  気付くのだが・・・。



 ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪


    ――――― 第 1 場 ―――――

         大嵐の風雨が吹き荒れる音。
         混じるように、人々の叫び声。
         (幕が開く。)

  声「帆を下ろせ!!」
 
  アレックスの声「糞う!!舵が利かない!!」

  声「マストが折れたぞ!!」
  声「駄目だ!!沈むぞ!!早く此方の船へ!!」
  声「救命道具を投げろ!」

         波の激しいうねり、人々の叫び声、段々遠ざかる。
         それに代わるように、波が静かに押し寄せ引く音。
         カモメが飛び交い、風が戦ぐ。
         フェード・インする。
         と、中央、一人の男(アレックス)が倒れている。
         (バックブルー)
         静かな音楽、流れる。
         一時置いて、素足の一人の娘(エンゼル)、足音
         もなく、好奇心一杯に下手奥より現われ、アレックス
         に近寄り、覗き込むように回りをゆっくり回る。
         クスッと笑ったエンゼル、人差し指を差し出し、
         アレックスの頬にそっと触れる。

  アレックス「ん・・・冷たい・・・(ゆっくり目を開け、気付く。)」

         アレックス倒れたまま、何か訳が分からない
         ように、回りを見回し、エンゼルを認める。

  アレックス「・・・誰・・・だ・・・?」
  エンゼル「(クスクス笑って。)何故、こんな所に寝ているの?」
  アレックス「・・・分からない・・・(ゆっくり起き上がり、回りを見回し
         しながら。)・・・ここは・・・何処だ・・・?」
  エンゼル「(微笑んで。)秘密の楽園・・・。」
  アレックス「・・・秘密の・・・楽園・・・?」
  エンゼル「(頷く。)」
  アレックス「・・・そうか・・・。それは丁度いい・・・。(立ち上がり、
         服を払う。)」
  エンゼル「(不思議そうに。)丁度いい?」
  アレックス「ああ・・・」
  エンゼル「へぇ・・・。何かから逃げ出して来たのね?」
  アレックス「(エンゼルの言葉に、一瞬顔を曇らせるが、再びゆっ
         くり回りを見回す。)・・・ここは・・・島のようだが・・・」
  エンゼル「そうよ。私達以外、誰もいないわ。」
  アレックス「(一瞬驚いたように。)誰も・・・いない・・・?」
  エンゼル「(嬉しそうに。)あなたが来てくれて、嬉しいわ!」
  アレックス「だけど俺は・・・一体何故この島に・・・」
  エンゼル「いいじゃない、そんなこと。」
  アレックス「・・・確か・・・あれは・・・(記憶を辿るように。)」
  エンゼル「帰りたい?」
  アレックス「・・・(一時考えるように。)・・・いや・・・、もう帰る必要
         はなくなったから・・・。」
  エンゼル「・・・そう・・・?」
  アレックス「(不思議そうにエンゼルを見る。)・・・何だか変わっ
         た娘だな・・・。おまえ・・・名前は・・・?」
  エンゼル「(嬉しそうに微笑んで。)・・・エンゼル・・・」
  アレックス「・・・エンゼル・・・?(思わず笑う。)天使か・・・。いい
         名前だ・・・。俺は・・・」
  エンゼル「アレックス・ジョンソン・・・。(微笑む。)」
  アレックス「(驚いたように、エンゼルを見る。)何故・・・?」
  エンゼル「(アレックスを見て、ただ微笑む。)」
  アレックス「何処かで、会ったことがあるのか?」
  エンゼル「ね!それよりあなたのこと聞かせて!(興味深そうに、
         身を乗り出す。)」
  アレックス「・・・俺のこと・・・?」
  エンゼル「そう!何処に住んでたの?」
  アレックス「・・・変な奴だなぁ・・・。」
  エンゼル「ね!何処に住んでたの?」
  アレックス「(溜め息を吐いて。)・・・ニューヨークのど真ん中・・・。
         丁度最近引っ越した所だったんだ・・・。」
  エンゼル「へぇ・・・。いい所?」
  アレックス「いい所?お世辞でも、いい所とは言えないね。仕事
         先のボロアパートさ。住み込みしてたんだ・・・。」
  エンゼル「(何か意味深げにアレックスを見て。)・・・何の仕事
         ?」
  アレックス「バーテンダー・・・水商売さ。」
  エンゼル「(嬉しそうに微笑んで。)カクテル作りね?」
  アレックス「ああ・・・。そう言えば、自分で考えたカクテルで、“エ
         ンゼル”ってのもあったな・・・」
  エンゼル「(一時、アレックスを微笑ましく見詰める。)・・・ずっと、
         そのお仕事してたの・・・?」
  アレックス「違う・・・。俺は世界の海を渡り歩く、根っからの冒険
         家だ。一つのチャレンジを目指す為に、色んな仕事
         をするんだ。なるべく儲けのいい仕事をね・・・。たとえ
         それが命に関わるようなことでも、儲けさえよければ
         どんな仕事だってする・・・。夢を叶える為に・・・。それ
         でまた・・・」
  エンゼル「そう・・・チャレンジャーなのね。素敵じゃない!いいな
         ぁ、自分を試すことの出来る人は・・・。今まで、どんな
         所へ行って来たの?」
  アレックス「(呆然と、エンゼルを見詰める。)おまえ・・・本当に変
         わってるな・・・。俺の知ってる女達の中で、俺のやっ
         てきたことに敬意は表してくれても、“素敵”なんて表
         現した奴は、おまえが初めてだ・・・。(笑う。)」
  エンゼル「何故?人間、生きていくうえで、本当にやりたいことを
         やれる人って、そんなにいないと思うわ・・・。それを、
         あなたは実践してきたんでしょう?それこそ生きる夢
         とロマンよ!!・・・生きているうちには、本当にやりた
         いことをやらなくちゃ・・・。後で後悔したって、始まらな
         いのよ・・・。」
  アレックス「・・・おまえは・・・?」
  エンゼル「私の人生なんてつまらないものだったわ・・・。何時も
         家柄に縛られて・・・何一つやりたいことが出来なかっ
         た・・・。」
  アレックス「これからだってすればいいじゃないか!!」
  エンゼル「・・・アレックス・・・(見詰める。)」

         アレックス、エンゼルに訴えるように
         力強く歌う。

         “本当にやりたいと心に思うことは
         人から見ればただ無謀で
         馬鹿げたことかも知れない
         だけど自分にとって
         チャレンジせずに心に仕舞い込む方が
         後でする後悔の渦に
         屹度飲み込まれ
         身動きできなくなることが
         必ずくると自分には分かる筈
         だから飛び出してみよう!!
         たった一歩踏み出すことで
         これからの人生が変わったものに
         なるんだ屹度!!
         だから閉じ籠もるばかりでなく
         自分の手で輝かしいこれからの未来を
         掴むんだ必ず!!”

         瞳を輝かせてアレックスを見詰めるエンゼル。
         アレックス、自分の言ったことに何か躊躇うよう
         な面持ちでフェード・アウト。
         (フェード・アウトしながらアレックスの声。)

  アレックスの声「・・・エンゼルにあんな風に言ったけど・・・本当
            にそうだったんだろうか・・・。あれは確か・・・」

    ――――― 第 2 場 ―――――

         紗幕前。
         上手より、スーツ姿に身を包んだジョーイ、
         ゆっくり登場、歌う。
         (歌いながら下手方へ。)

         “決して口にしてはならないこと・・・
         心の奥深くに押し込め
         ただ平然と歩き続ける・・・
         どんなに叫び吐き出してしまいたくとも・・・
         心を殺して大きく息を吸い
         微笑む振りをする・・・
         決して口にしてはならないことを・・・
         一生自分の心とは裏腹の
         人生を平然と歩き続ける・・・
         どんなに苦しく胸を締め付けるこの思い・・・
         この心が日の目を見ることがないように
         微笑む振りをし続けよう・・・”

         ジョーイ、回りを見回し、腕時計にチラッと目を
         遣る。一時置いて、上手よりクリスティーン、走り
         ながら登場。下手方に立っていたジョーイを認め、
         息を切らしながら、走り寄る。

  クリスティーン「ご免なさい・・・!!」
  ジョーイ「(振り返って、クリスティーンを認める。)クリスティーン!
        走って来たのかい?」
  クリスティーン「だって、約束の時間に遅れそうだったから・・・。」
  ジョーイ「(微笑んで。)馬鹿だな。僕が時間に遅れて来た君を、
        待たないとでも思ったかい?」
  クリスティーン「ジョーイ・・・。そうね。(微笑む。)」
  ジョーイ「それで?(楽しそうに。)アレックスの奴、今度は何を
        やってるんだ?」
  クリスティーン「(溜め息を吐いて。)バーテンダー・・・。」
  ジョーイ「そりゃまた・・・元の仕事に戻ったって訳だ。」
  クリスティーン「でも今度は、今まで住んでた自分のアパートを
            出て、住み込みで行ったのよ・・・。」
  ジョーイ「へぇ・・・また突然・・・。でも、酒作りじゃ、命の心配を
        することはないな。」
  クリスティーン「ええ。それだけが唯一の救い・・・。全く、アレッ
           クスったら、好い加減、地に足を付けて生活して
           くれてもいいのに・・・。」
  ジョーイ「そうだな・・・。」
  クリスティーン「それに何時までも、アレックスがこんな生活続
           けていると、両親が結婚を許してくれないんです
           もの・・・。」
  ジョーイ「・・・あいつの夢を知ってる俺が、君のご両親の立場
        でも、屹度、奴に大切な娘を嫁には遣らないだろうな
        ・・・。」
  クリスティーン「・・・ジョーイ・・・」
  









     ――――― “未来への扉” 2へつづく ―――――









 ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪



   
    (どら余談^^;)

    題名が付いている、数少ない作品の中で、この“未来”が
    付いているものが、人形劇脚本も合わせて3本・・・(^_^;)
    多いですね・・・^^;
    “未来”といった言葉が好きなのか、前を向いて行く・・・と
    言ったシチュエーションが好きなのか・・・(^^)
    “過去”の多用ではなく前向きな“未来”と言うことで・・・
    内容的には全く違うと思いますので、あまり気にしないで下
    さい~・・・^^;




 

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2012年9月5日水曜日

“ダスティン” ―全4場― エンディング

         その時、下手より若い姿のままのダスティン、
         慌てているように走り登場。
         ケビンと擦れ違いざま、思わずぶつかり、手に
         持っていた書類を落とす。
         ケビン、よろめいて膝をつく。

  ダスティン「悪い!!じいさん、大丈夫か!?(ケビンに手を貸
         し、立たせる。)」
  ケビン「ああ・・・。わしの方こそ悪かったの。歳を取ると、どうも
       のんびりしてしまってな・・・。」
  ダスティン「仕方ないさ・・・。(落とした書類を、掻き集める。)」
  ケビン「・・・はて・・・どこかで会ったことがあるかの・・・?」
  ダスティン「え?」
  ケビン「以前、確かにおまえさんと知り合いだったような気がし
       たんじゃが・・・」
  ダスティン「じいさんの思い過ごしさ・・・。俺はこの町は初めて
         だからね。じゃあ、じいさん!!気をつけろよな!!」
  ケビン「ああ・・・ありがとうよ・・・。」

         ダスティン、上手へ去る。
         ケビン、振り返ってダスティンを見る。

  ケビン「だが確かに・・・どこかで・・・。歳を取ると、頭の方も鈍っ
       ていかんの・・・。(笑う。)」

         ケビン、下手へゆっくり去る。
         一時置いて、その様子を見ていたように、
         上手よりダスティン登場する。

  ダスティン「・・・人間・・・って言うのは・・・短い限られた人生を、
         ただひたすらに精一杯生きていく・・・。丸でマラソン
         ランナーのように、立ち止まることを知らず、ゴール
         を目指して我武者羅に・・・。それが幸せなのか・・・
         俺には分からない・・・。何人もの人生の一部に係わ
         ってきた・・・。だが、決して見届けることのできない
         俺には、その人間が幸せだったかどうかなんて、分
         かる筈もない・・・。どうしちまったんだろう・・・。余り
         にも長い時を生き過ぎて・・・体は若くても、考え方が
         歳を取ってきたのか・・・。(フッと笑う。)昔は自分の
         行いを悔いることなんてなかった・・・。だが今は・・・。
         教えてくれ、ケビン・・・。おまえは今幸せか・・・?人
         生と言う舞台のフィナーレは、拍手喝采で迎えられ
         そうか・・・?今気付いたよ、クリストファー・・・。あの
         時・・・おまえの言いたかったことが・・・。本当に立ち
         止まれないのは俺の方だ・・・。俺は・・・おまえが羨
         ましいよ・・・ケビン・・・。」

         ダスティン、スポットに浮かび上がり歌う。

         “たった一つの命
         たった一度きりの人生・・・
         過ぎ去った思い出が
         忘れ去られる前に
         温かな優しさに包まれたまま
         時を楽しめたなら
         幸せと言う喜びが迎えてくれる・・・
         今を生きる時間の流れに
         流されることなく
         身を任せられたなら・・・
         幸せと言う未来を
         誰もがこの手に入れる・・・”

         音楽盛り上がり、遠くを見遣るダスティン。







          ――――― 幕 ―――――













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2012年9月4日火曜日

“ダスティン” ―全4場― 4

   フランク「・・・半信半疑のまま、クリストファー様お2人に付いて
        来て・・・いつの間にか、それを信じるには十分の年月
        が立ってしまった・・・。段々と年老いていく自分の姿を
        見る度・・・私は何れこのまま死んでいくのがいいんだ
        と考えておりました・・・。一緒に行ける所まで行ければ
        、後は心置きなく残りの人生を静かに過ごせると・・・。
        だが・・・いつまで経っても、お2人は余りにも若過ぎる
        ・・・。見た目は勿論・・・考え方もあの時のまま・・・。私
        は、お2人と離れることができませんでした・・・。この
        歳になって、まさか永遠にこの世を徘徊することにな
        るなどと・・・考えもしなかったのに・・・。クリストファー
        様が持っていらっしゃった、例の薬の残りを飲まずに
        は、いられなかったのです・・・。お2人をほっては行け
        なかった・・・。今まで、何の頼みも望みも求めたこと
        はありません・・・。だが、今回だけはどうか・・・この者
        に係わるのはやめて頂きたい・・・。このまま新しい場
        所へ参りましょう・・・。この者達が目を覚まさないうち
        に・・・。年寄りの頼みです・・・。この男からは危険な
        香りがするのです・・・。」
  マーガレット「いやよ!!折角、目の前に久しぶりのご馳走が眠
          ってると言うのに・・・!!」
  フランク「マーガレット様、お願いでございます・・・。今回はこの
        まま・・・」
  クリストファー「・・・行こう、マーガレット・・・。(十字架を、テーブ
           ルの上へ放り投げる。)」
  マーガレット「お兄様!!」
  フランク「クリストファー様・・・。」

         クリストファー、今まで十字架を握っていた
         手を見詰める。

  マーガレット「お兄様・・・?火傷・・・?」
  クリストファー「・・・こんなただの人間の、どこが心配なのかよく
           分からないが・・・。フランクがそれ程言うんだ・・・
           。マーガレット・・・行こう・・・また次の場所へ・・・。」
  マーガレット「・・・だって・・・」
  クリストファー「焦らなくても・・・僕達には、時間はたっぷりあるん
           だ・・・。」
  マーガレット「お兄様・・・。・・・ええ・・・分かったわ・・・。」
  フランク「クリストファー様・・・ありがとうございます・・・。そうと決
        まれば、少しも早く・・・。」

         フランク、マーガレット、ゆっくり下手へ去る。
         クリストファー、下手へ行きかけて、立ち止まる。

  クリストファー「(振り返る。)危険な香りのする男・・・か・・・。確か
           に顔はあいつに瓜二つかも知れないが・・・。(フッ
           と笑う。)見れば見る程・・・憎らしい位にそっくりだ
           ・・・。まさか・・・ね・・・。(行きかける。)」
  ダスティン「・・・何故、ただの人間だと思い込む・・・」

         クリストファー、驚いたようにダスティンを見る。

  ダスティン「(起き上がって。)俺の演技は完璧か・・・?(ニヤリ
         と笑う。)」
  クリストファー「・・・おまえ・・・まさか・・・」
  ダスティン「ご名答・・・。久しぶりだったな・・・。少しは正体を忘
         れて生きてきたのかと思えば・・・。おまえはまだまだ
         らしいな。こんな十字架ごときで火傷するようじゃあ
         ・・・。(十字架を手に取り、自分の首へ着ける。)・・・
         俺のせめてもの良心だ・・・。おまえ達のことは秘密
         にして置いてやろう・・・。本当なら、新聞に書き立て
         てもいいんだが・・・。(笑う。)長い年月を経て、俺も
         少し丸くなったのさ。まぁ、俺がおまえ達の正体を
         態々暴かなくても、バレるのは時間の問題のようだ
         しな・・・。(ケビンを見て。)こんなトロイ人間にまで、
         疑われてるんじゃ、これから先も身を隠して生きて
         いくしかないぜ・・・。この文明社会に乗り遅れたまま
         で・・・。(笑う。)」
  クリストファー「・・・文明社会に乗り遅れる・・・?人の目を避け
           てしか生きれなくしたのはあなたじゃないか!!
           」
  ダスティン「やれやれ・・・。俺は言った筈だぜ?生きるも死ぬも
         おまえの考え次第だと・・・。それを俺のせいにされ
         ちゃ、適わないな・・・。」
  クリストファー「あなたが・・・」

         音楽流れ、クリストファー、ダスティン、スポットに
         浮かび上がり、呼応するように歌う。

    クリストファー“遠い過去を捨てて
             永遠に続く未来を見詰めたまま
             戻ることもできず
             進む行く手は閉ざされた・・・
             果てしない虚しさが
             ただ心の中を支配する・・・”

    ダスティン“遠い過去は捨てた
           永遠に広がる自由と引き替えに
           自分の選択と決定
           すべては己の決めた道・・・
           誰にも変えられない
           ただ歩き続けるだけ・・・”

  クリストファー「あなたは・・・あなたはそれで幸せだと言うのか
           ・・・!?これがあなたの求め手に入れた、本当
           の自由だと・・・!!」

    クリストファー“僕には分からない!!
             今も過去に囚われ夢見・・・
             憧れ生きた日々が・・・”

  クリストファー「こんなのが自由だと言うなら、僕は自由なんて
           いらない!!誰かに束縛された人生の方が、
           余っ程ましだ!!」
  ダスティン「じゃあ何故、あの薬を飲んだ!!おまえが今ある
         この状況を作り出したんだ!!全ては自分が選んだ
         道じゃないか!!」
  クリストファー「・・・僕には・・・守りたいものがあったんだ・・・。あ
           なたのように、一人勝手に好きなことだけを・・・
           自分の楽しみの為だけに、ただ時間を無意味に
           費やして、長い時を生きて・・・いや違う・・・生きて
           なんていない・・・。こんなのは生きてるなんて言
           わないんだ!!あなたは死んだ時間に囚われて
           いるだけなんだ!!僕とは違う!!」
  ダスティン「煩い!!何とでも好きに言えばいいんだ。そうやっ
         て一生・・・永遠に後悔に縛られてろ!!俺はおまえ
         の泣きごとなんかに興味はない!!そして、さっさと
         俺の目の前から消え失せろ!!できれば・・・二度と
         会いたくないね!!」
  クリストファー「そんな風にしか考えられないあなたは・・・本当
           の幸せを知らないまま、これからも永遠に彷徨い
           続けるんですね・・・。さよなら・・・。」

         クリストファー、下手へ去る。

  ダスティン「(クリストファーが去るのを見計らって。)長い時を経
         てもなお・・・人間の心を忘れていないおまえを見て
         いると・・・思い出したくない過去を思い出す・・・。遠い
         昔・・・永遠の自由と引き換えに・・・自分の全てを悪
         魔に売り渡した・・・ただの愚かな人間だった頃のこと
         を・・・。」

         ダスティン歌う。

         “遠い過去を捨てて
         永遠に続く未来を見詰めたまま
         戻ることもできず
         進む行く手は閉ざされた・・・
         果てしない虚しさが
         ただ心の中を支配する・・・”

         暗転。

   ――――― 第 4 場 ―――――

         音楽流れ、舞台明るくなる。
         上手より一人の少女、楽しそうに走り登場。

  少女「(上手方を見て。)おじいちゃま!!おじいちゃま!!
      ケビンおじいちゃま、こっちよ!!こっち!!早く!!」
  
  ケビンの声「待ちなさい・・・待ちなさい・・・。そんなに走ると危な
          いぞ・・・。」

         上手より一人の白髪の老人(ケビン)、杖を
         つきながら、ゆっくり登場。

  ケビン「(ケビンに走り寄り、手を引っ張る。)早く行かないと、
       マジックショーが始まってしまうわ!!」
  ケビン「慌てんでも、マジックショーは逃げたりせんよ・・・。大体
       マジックなんてものは、ただのまやかしじゃ・・・。そんな
       ものに、金を払って態々喜ばんでも、この世の中には
       もっともっと不思議で奇妙なことが、実際色々とあるも
       んじゃ・・・。」
  少女「不思議で奇妙なこと?」
  ケビン「ああ・・・。そう言えば、わしも遠い昔・・・夢か幻か分から
       ない・・・奇妙な体験をしたことがあったの・・・。」
  少女「どんな?」
  ケビン「・・・そうじゃなぁ・・・あれはわしがまだ・・・」
  少女「(下手を見て。)あっ!!みんなが走って行くわ!!もう
      始まるのね!!私、先に行くからケビンおじいちゃまは、
      後からゆっくりいらしてね!!そのお話しは帰ってから
      じっくり聞くわ!!」

         少女、下手へ走り去る。

  ケビン「あ・・・これ!!待ちなさい、これ・・・!!全く・・・子ども
       と言うのは、目の前の楽しみには我慢と言うものを知ら
       ないものじゃの・・・。折角、わしの奇妙な話しを・・・。
       まぁ、今の子には吸血鬼やフランケンシュタインの話し
       より、マジックショーの方がいいじゃろうて・・・。そうそう
       ・・・あの後、先輩と慣れ親しんでおった人は仕事を辞め
       ・・・今はどこでどうしているやら・・・生きているとも分か
       らない・・・。風の便りで聞くところによれば、その後先輩
       は、森のへき地と呼ばれるような、人里離れた場所を好
       んで、選び暮らしていたと言う・・・。あれから60年か・・・
       生きていればもう、100歳近くになる筈じゃ・・・。(首を
       振り。)恐らくはもう・・・。」







    ――――― “ダスティン”エンディングへつづく ―――――








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2012年9月3日月曜日

“バーナード” ―全16場― 2


         ――――― 第 3 場 ―――――

         カーテン前。
         上手よりゆっくりボールデン、部下ウォルター、
         少し遅れて秘書シンディ登場。
         
  ボールデン「(何やら深刻な顔付きで。)矢張りもっと早い時期
         に、手を打っとくのだったな。」
  ウォルター「しかし、もう遅すぎたと言う訳でもないのですし、バ
         ーナード君が持って来る書類に目を通してから、早
         急に対策を立てればまだ大丈夫でしょう。」
  ボールデン「ふむ・・・。それで具体的な島の買い付け金額など
         が分かれば・・・そうだな、それからでも遅くはない
         だろう。全く、前回のリゾート計画ではプリンセスコ
         ーポレーションに、まんまとしてやられ、今回のクリ
         ア島には私の首がかかっているのだ。何としても
         成功させなければ・・・。忌々しい会社だ。」
  ウォルター「全くですね・・・。しかし問題なのは、バーナード君
         の顔をプリンセスコーポレーションの社員に見られ
         たと言うことですね・・・。」
  ボールデン「その通りだ。だがそのことに関しては昨夜、バー
         ナードから連絡を受けた時に、直ぐ手は打ってあ
         る。ただ私としても、こんな手はあまり使いたくは
         ないのだが・・・仕方あるまい・・・」
  ウォルター「・・・では・・・ジャックを・・・?」
  ボールデン「(ウォルターを見る。)」
  ウォルター「・・・しかし・・・盗みはまだしも・・・ジャックを使うこ
         とは・・・」
  ボールデン「(思わずウォルターの襟元を掴む。)相変わらず
         甘い奴だ!!私がどうやって今の地位まで上って
         きたか知りもしないで、余計な口出しは止めてもら
         おう!!」
  ウォルター「・・・常務・・・申し訳ありません・・・」
  ボールデン「(掴んでいた手を放す。)・・・言った筈だ、必ず成
         功させると・・・。(振り返ってシンディを見る。)シン
         ディ、ジャックをここへ。」
  シンディ「はい。」

         シンディ、上手へ一旦去る。
         ウォルター、不安気な面持ちでシンディの
         背中を見詰める。

  ボールデン「(そんなウォルターに気付き。)なぁに・・・そんなに
         心配するな。」
  ウォルター「常務・・・」
  ボールデン「何も今直ぐにその社員を捕まえて来て殺すと言っ
         ている訳ではいのだから。時と場所は心得ている
         ・・・」

         上手より再びシンディ登場。

  シンディ「常務、呼んで参りました。」

         ボールデン、ウォルター上手を見る。
         上手よりいかにも怪し気な黒のスーツ
         に身を包んだジャック、ゆっくり登場。

  ボールデン「(ジャックに近寄りながら。)待っていたぞ。」
  ジャック「(かけていたサングラスを外しながら。)今回の獲物
       は?」
  ウォルター「(驚いたように。)・・・今回・・・?」
  ボールデン「(チラッとウォルターに目を遣る。)」
  ジャック「この間みたいな爺じゃ、殺る気が起きないぜ。(ふて
       ぶてしい態度で。)」
  ボールデン「安心しろ。今度は女だ・・・。」
  ジャック「女か・・・いいねぇ・・・。で?今直ぐか・・・?」
  ボールデン「いや、まだだ。その時が来れば連絡をする。」
  ジャック「なぁんだ、お預けか・・・。」
  ボールデン「見張りはバーナードに任せてある。おまえは、い
         つでも殺れるようにその準備を怠るな・・・。いいな
         ?」
  ジャック「女の名前は・・・?」
  ボールデン「プリンセス・コーポレーション社のシェイラ・ハミルト
         ン・・・。」
  ジャック「・・・シェイラ・・・(不気味に笑い出す。)」
  ウォルター「何が可笑しいんだ!!」
  ジャック「(笑いを止めて。)なんだかワクワクしてきたねぇ・・・」

         ジャック、サングラスをかけて去る。

  ウォルター「(溜め息を吐いて。)常務が彼と長い付き合いだと
         は知っていましたが・・・。まさか・・・本当に・・・」
  ボールデン「どうした・・・?」
  ウォルター「・・・いえ・・・なんでも・・・」
  ボールデン「あまり深く考え込むのは、おまえの為にもよくない
         ぞ・・・(意味あり気にウォルターを見る。)」
  ウォルター「はい・・・」

         暗転。

       ――――― 第 4 場 ―――――

         カーテン開く。絵紗前。(社内の廊下。)
         バーナード、ジェーン、お互いそ知らぬ顔で、
         立ち止まりながら。

  バーナード「彼女のことは分かったか?」
  ジェーン「はい。シェイラ・ハミルトン・・・プリンセス・コーポレー
       ションに入社して5年・・・以来、ずっと庶務課に勤務し
       ています。父と母、姉の4人家族・・・現在はニューヨー
       クシティのアパートに一人住まいをしています。社内で
       の勤務態度は至って真面目・・・業務内容は事務一般
       ・・・と言っても、主に他の社員の雑用係で、何故か同
       僚達からはあまり好かれていないようで、行動も単独
       であることが多いようです。」
  バーナード「・・・好かれていない・・・?(思わずジェーンの顔を
         見る。)」
  ジェーン「はい・・・。多分、彼女の見た目からだと思われますけ
       ど・・・。」
  バーナード「そりゃ可哀想だ。見た目と言っても、それは彼女の
         せいでもないだろうに。」
  ジェーン「・・・あなたはどう思われました?」
  バーナード「いや・・・あの時は、自分の顔を隠すことで、精一杯
         だったからな・・・。まぁいい、後は俺が自分で考える
         。ありがとう。」
  ジェーン「今、丁度向こうから書類の山を抱えて来るのが彼女
       です。」

         ジェーン、上手へ去る。
         擦れ違うように、シェイラ、上手より登場。
         バーナード振り返り、思わず可笑しそうに
         シェイラに近寄る。

  バーナード「やぁ・・・!」
  シェイラ「こんにちは。(そのまま行こうとする。)」
  バーナード「(慌てて。)重そうだね。半分持とうか?」
  シェイラ「ありがとうございます。でも、これは私の仕事ですから
       ・・・」
  バーナード「どこへ持って行くんだい?」
  シェイラ「第1会議室です・・・」
  バーナード「よし!(シェイラの持っている書類を、半ば強引に
         取る。)持って行ってやるよ!」
  シェイラ「(驚いて。)でも!」
  バーナード「来いよ!(先に歩き出す。)」
  シェイラ「(慌てて後を追いながら。)あの・・・でも・・・叱られます
       から・・・!」
  バーナード「俺が勝手にしたって言えばいいさ!」

         2人、上手へ去る。
         暗転。

    ――――― 第 5 場 ―――――

         舞台上は第1会議室。
         ジェイムス、会議用の机の上に、書類を
         配って置いている。と、そこへ慌てて
         ロベール、駆け込んで来る。

  ロベール「ジェイムスさん!!大変です!!」
  ジェイムス「(手を止めてロベールを認める。)どうした?慌てて
         。」
  ロベール「我々の“クリア島開発計画”の精細が書き込まれた
        重要書類が、何者かによって盗み出されました!!」
  ジェイムス「(思わず声を荒げて。)何だと!?それでどうした!
        ?」
  ロベール「はい・・・それが・・・」
  ジェイムス「何だ!!ハッキリ言え!!」
  ロベール「NYインターナショナルに流れた模様です・・・!!」
  ジェイムス「NYインターナショナルに流れたたど・・・!?それは
        本当か!!」
  ロベール「残念ですが・・・間違いありません。ある重要筋から
        極秘に入手した情報です。それに金庫の中からは
        確かに書類がなくなっているのです・・・。」

         2人、暫く深刻な顔付きで考え込む。
         その時、アルバート専務入って来る。
         ジェイムス、アルバートを認め駆け寄る。
         ロベール、続く。

  ジェイムス「専務・・・申し上げ難いのですが、大変なことになり
        ました・・・」
  アルバート「どうした?」
  ジェイムス「我々の計画が、何者かによってNYインターナショ
        ナルに流されたのです。精細書類と共に・・・」
  アルバート「(顔色が変わる。)何だと・・・!?何時だ!!」
  ロベール「はい・・・3日前の極秘会議の後から、今日までの間
        だと思われます・・・」
  アルバート「何故もっと早くに気が付かなかったのだ!!馬鹿
         者!!」
  ロベール「(項垂れながら。)申し訳ありません・・・。まさかあの
        金庫が破られるなどとは思いもしなく・・・」
  ジェイムス「・・・だが、一体誰が・・・」
  アルバート「兎に角、今日の会議は中止だ!!私の部屋で、
        対策を立て直すぞ!!」
  ジェイムス「はい。ロベール!メンバー達に今日の中止の連絡
        を頼む・・・。」
  ロベール「分かりました。」
  アルベール「考えたくはないが・・・我々の社内に、奴らのスパ
         イが紛れ込んでいる可能性があるな・・・。」

         3人、出て行く。
         一時置いて、書類を持ったバーナード
         入って来る。シェイラ続く。

  バーナード「どこに置く?」
  シェイラ「あ・・・机の上に・・・。後は私がやりますから・・・。」
  バーナード「OK!(机の上に書類を置く。)」
  シェイラ「本当にどうもありがとうございました。重かったでしょう
       ?」
  バーナード「(楽しそうに。)君はいつもこんな重い書類の山を
         運んでるんだろ?」
  シェイラ「あの・・・慣れましたから・・・」
  バーナード「男共にやらせればいいのに。」
  シェイラ「そんな!・・・あ・・・男子社員の方は、皆さんお忙しい
       から・・・。それに私、暇ですし・・・」
  バーナード「お礼してくれる?」
  シェイラ「あ・・・今、私お金は・・・(困ったように。)」
  バーナード「(微笑んで。)お金なんかいらないさ。今夜、僕とデ
         ートしてくれれば、それでいい!」
  シェイラ「(呆然と。)でも・・・私なんかと・・・」
  バーナード「何?」
  シェイラ「(下を向いて。)私なんかと・・・一緒にいると、あなた
       が恥ずかしい思いをするだけです・・・。あなた、営業
       課のバーナードさんでしょ?先月、入社した・・・」
  バーナード「どうして僕のことを知ってるんだい?」
  シェイラ「だって・・・うちの課の女子社員の間でも、あなたのこ
       とはいつも噂になってます。私はただ聞いているだけ
       ですけど・・・一目見て分かりましたわ・・・。だって、皆
       が言うようにとても素敵な方・・・(小声になる。)だから
       私なんかと・・・」
  バーナード「(微笑んで。)僕も君のこと、知ってるよ。庶務課の
         シェイラ・ハミルトン・・・入社して5年目・・・」
  シェイラ「どうして・・・?」
  バーナード「気になったから、ちょっとね・・・。黙って調べたりし
         てごめん。」
  シェイラ「・・・気になった・・・?」
  バーナード「ああ・・・。一生懸命に働く君を見てるうち・・・君の
         ことが好きになったのかも知れない・・・」
  シェイラ「嘘でしょ・・・」
  バーナード「どうして?」
  シェイラ「だって・・・私・・・(下を向く。)」
  バーナード「(シェイラの手を取り。)僕と付き合ってくれるかい
         ・・・?」
  シェイラ「(驚いたように一時バーナードを見詰める。クスッと笑
       って。)」
  バーナード「可笑しい?」
  シェイラ「ええ・・・。だって、今までそんな風に言われたこと、一
       度だってないんですもの・・・。」
  バーナード「・・・今夜、デートしてくれるかな?」
  シェイラ「・・・バーナードさん・・・」
  バーナード「バーナードでいいよ。」
  シェイラ「・・・バーナード・・・本当に・・・?」
  バーナード「ああ・・・」
  シェイラ「(黙って頷く。)」
  バーナード「よかった!じゃあ僕は行くよ!今からまた営業だ。
         終業後に下のフロントで待ってるよ!」

         バーナード、手を上げて出て行く。
         シェイラ、答えるように手を上げて、
         呆然とバーナードの背中を見詰める。

  シェイラ「(呟くように。)夢を見ているのかしら・・・」
  
          
  
       




     ――――― “バーナード”3へつづく ―――――









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“ダスティン” ―全4場― 3 


         3人、下手へ去る。
         ケビン、呆然と3人の後ろ姿を見送る。
         音楽流れ、ケビン、スポットに浮かび上がり歌う。
         下手より客席前へ。上手より舞台へ。
         (ケビン、そのまま上手後方の椅子へ腰を下ろし、
         眠りに入る。)

         “これは夢か・・・幻か・・・
         今見たことは物語のできごと
         それとも真実・・・?
         あれは過去に過ぎたこと・・・
         でも今 通り縋る本当
         夢なら夢で・・・それでいい・・・
         痛む心が拒否する・・・
         遥か彼方に
         過ぎ去る真に・・・”

   ――――― 第 3 場 ――――― 

         遠くから、ケビンの名を呼ぶダスティンの声が
         聞こえる。
         舞台明るくなる。と、クリストファーの屋敷(居間)。
         1場の風景。
         椅子の上でケビン、眠り込んでいる。
         横に、ケビンを起こすようにダスティン、立っている。

  ダスティン「おい!ケビン!!ケビン!!全く、なんでそんな
         ぐっすり眠り込んでるんだよ!!」
  ケビン「う・・・ん・・・、煩いなぁ・・・」
  ダスティン「寝るんなら自分の部屋で寝ろよ!!こんなとこで
         迷惑だろ!?」
  ケビン「・・・分かったよ・・・(目が覚め、ダスティンの顔を見、驚
       いたように大声を上げる。)わああっ!!バンパイア!
       !(思わず立ち上がる。と、膝の上の本が落ちる。)」
  ダスティン「誰がバンパイアだ・・・アホ・・・」
  ケビン「バン・・・バン・・・バンパイア・・・」
  ダスティン「馬鹿!!今の世の中に、そんなものが本当に存在
         する訳ないだろ!?中世のヨーロッパじゃ、あるまい
         し・・・。」
  ケビン「(目を擦って。)・・・先・・・輩・・・?」
  ダスティン「・・・でなきゃ、俺は誰なんだよ!」
  ケビン「(ホッとしたように。)・・・なんだ・・・よかった・・・!!」
  ダスティン「何、夢見たこと言ってんだよ!」
  ケビン「・・・夢・・・夢か・・・。そうだよね・・・夢ですよね・・・!!
       なんか、とんでもない夢、見ちゃったな・・・。(笑う。)
       でも、嫌に生生しくて・・・。」
  ダスティン「・・・へぇ・・・」
  ケビン「(本を拾いながら。)先輩が、もの凄く悪い奴で、バンパ
       イアなんですよね・・・。それで、クリストファーと、妹の
       マーガレットを仲間にしちゃうんだ・・・。(開いた本を見な
       がら。)あれ・・・?さっきは気付かなかったけど、これっ
       て日付が入ってるんだ・・・。なんか日記みたいだなぁ・・・
       。」
  ダスティン「おまえ、何読んでんだよ・・・。」
  ケビン「それが、部屋で童話の原作を見つけて、クリストファー
       が書いたにしてはえらく超大作で、面白そうだから先輩
       と読もうと思って、持って来たんだ・・・。そしたら読んで
       るうちに眠っちゃったみたいで・・・。夢の中で、すっかり
       読み切ったみたいだな。(笑う。)」
  ダスティン「(ケビンから本を取り、パラパラと捲って見る。)童話
         ・・・ねぇ・・・」
  ケビン「いや・・・日記かも知れないな・・・。でも、そうすると一体
       誰がこんな長い年月・・・」
  ダスティン「誰が書いたか知らないが・・・早いとこ書いた本人に
         見つかんないうちに、元のとこに戻してこい!嵐が
         治まるまで、ここに置いてもらわなきゃならないんだ
         。余計な詮索はしないに限る・・・。(本を差し出す。)」
  ケビン「う・・・うん・・・。(本を受け取る。)」

         ケビン、上手方へ行こうとすると、上手より
         クリストファー登場。ケビン、思わず本を自分
         の背後に隠す。

  ケビン「あ・・・」
  クリストファー「お2人共、ここにいらっしゃったんですか・・・。
           そろそろお茶にしようと思って、フランクが部屋へ
           呼びに行ったんですよ・・・。」
  ダスティン「すみません・・・。」

         ケビン、何か気不味い様子で、モゾモゾしている。

  クリストファー「(ケビンの様子に何か気付いたように。)どうか
           されましたか・・・?」
  ケビン「いや・・・別に・・・」

         ケビン、背を隠すようにゆっくり上手方へ。
         その時、上手よりマーガレット登場。

  マーガレット「お兄様!!」
  
         ケビン、その声に驚いて、後ろに隠していた本を
         落とす。

  ケビン「わっ!!」
  マーガレット「(ケビンが落とした本を拾う。)落としたわよ・・・。
          (本を見て。)これ・・・お兄様の日記・・・。」
  ケビン「え・・・?本当に日記・・・?ごめんなさい!!俺、日記
       だと思わなくて!!面白そうな童話だから、退屈凌ぎ
       に読ませてもらおうと思って・・・。」
  クリストファー「(微笑んで。)いいんですよ・・・。日記は日記で
           も、実話じゃあありませんから・・・。」
  ダスティン「・・・と、言うことは・・・?」
  クリストファー「空想日記みたいなものです・・・。」
  ケビン「なんだ・・・。」
  ダスティン「全部あなたが・・・?」
  クリストファー「ええ・・・まぁ・・・。」
  ダスティン「随分、沢山書かれてるようですね・・・。最初の日付
         は可なり昔・・・百年以上前だったようだが・・・。それ
         も、あなたの思いつき・・・?」
  クリストファー「・・・ええ・・・。何か不審に思うことでも・・・?」
  ダスティン「いや、別に・・・」
  クリストファー「(中央に置かれたソファーを勧めるように。)どう
           ぞ・・・。」

         ダスティン、ゆっくりソファーの方へ。
         クリストファー、続く。

  ケビン「君・・・マーガレット・・・。」
  マーガレット「ええ!初めまして!」
  ケビン「いや・・・初めまして・・・と言うか・・・」
  マーガレット「・・・どうかしたの?」
  クリストファー「(ダスティンとケビンに紹介するように。)妹の、
           マーガレットです。」
  マーガレット「(ケビンに。)あなた・・・血の巡りがよさそう。(クス
          ッと笑う。)」
  ケビン「えっ・・・!?」
  クリストファー「マーガレット!!」
  マーガレット「・・・ごめんなさい・・・。」
  クリストファー「・・・全く・・・言葉の知らない娘で申し訳ありませ
           ん・・・。マーガレット、そう言うのを健康そう・・・
           って言うんだよ。どうぞ。(ケビンにソファーを勧め
           る。)」

         ケビン、怪訝そうな面持ちで、2人を見ながら
         ソファーへ。ダスティンの横へ腰を下ろす。
         マーガレット、ダスティンの顔を見ると、一瞬
         強張ったように立ち止まる。

  ダスティン「・・・こんにちは・・・。」
  マーガレット「・・・いらっしゃいませ・・・。私・・・あなたのこと・・・
          知ってるわ・・・。」
  ダスティン「俺を・・・?」
  マーガレット「・・・ええ・・・。」
  クリストファー「マーガレット、そんな筈はないよ。確かに、昔に
           僕達が知った人に、似てはいるけれど・・・。」
  ケビン「昔・・・知った人って・・・バン・・・」
  クリストファー「知ったと言っても、ほんの数言、言葉を交わした
           ことがある・・・と言うだけですよ・・・。」
  ダスティン「・・・へぇ・・・」
  
         その時、上手よりティーセットを持ったフランク
         登場。

  フランク「お茶の用意ができました。」

         ケビン、フランクを見て、思わず立ち上がる。

  ダスティン「ケビン!」
  ケビン「・・・あ・・・何でもありません・・・。」
  
         フランク、テーブルでお茶の用意を始める。

  フランク「外は、まだまだ激しい雨風が吹き荒れております・・・。
       この分だと、今日はここでお泊まり頂くしかありませんな
       ・・・。(お茶を其々の前へ差し出して。)どうぞ・・・。」
  マーガレット「フランクの入れるお茶は、とっても美味しいの!」
  ダスティン「いただきます・・・。(一口、口に含む。)」
  マーガレット「(ダスティンが飲むのを、嬉しそうに見ていて。)
          ね?美味しいでしょ?」
  ダスティン「・・・ええ・・・確かに・・・。」

         その言葉を聞いて、ケビン一口飲む。

  マーガレット「甘い血の味がするわ!」
  ケビン「(驚いて、思わずカップを覗き込む。)血!?」
  クリストファー「冗談はよしなさい!すみません。」
  ケビン「冗談・・・?冗・・・談・・・ね・・・(その時、カップで指を切っ
       たように。)いっ・・・!」
  ダスティン「どうした?」
  ケビン「(作り笑いして。)は・・・はは・・・指、切っちゃったみたい
       ・・・。」
  ダスティン「馬鹿だな。舐めときゃ治るよ!」
  クリストファー「カップが欠けていたのですね。申し訳ありません。
           フランク、お客様の傷の手当てを・・・。」
  フランク「はい。」
  ケビン「大丈夫です・・・。」
  マーガレット「私に見せて!!(ケビンの手を取り、指を見詰め
          思わず口に含む。)」
  ケビン「あ・・・」
  マーガレット「美味しい・・・」
  クリストファー「マーガレット!!」
  マーガレット「(手を離して。)・・・ごめんなさい・・・」
  ケビン「(恐々、自分の指とマーガレットの顔を、交互に見比べ
       る。)」
  フランク「(傷テープを取り出して。)どうぞ、お手を・・・。」
  ケビン「あ・・・大丈夫・・・本当に大丈夫です!!こんな切り傷
       ・・・!!唾付けときゃ、直ぐ治りますから・・・!!はは
       は・・・」
  クリストファー「(ケビンを見て。)・・・こちらの方は、お加減がお
           悪いのでしょうか?何か震えていらっしゃるよう
           ですが・・・。」
  ケビン「(下を向いたまま。)お・・・可笑しいよ・・・こ・・・この人達
       ・・・。可笑しいよ、先輩!!(思わず立ち上がる。)丸で
      バンパイア・・・」
  ダスティン「(ケビンの言葉を遮るように。)馬鹿ケビン!!何、
         血迷ったこと言ってんだよ!!」
  ケビン「あ・・・」
  ダスティン「さっきから言ってるだろ?この現代社会、物語の中
         のドラキュラ伯爵や、フランケンシュタインが本当に
         存在する訳がないんだ。ビクビクしてるから、何でも
         かんでも可笑しいと思えるんだよ!」
  ケビン「でも・・・」
  ダスティン「ほら、その証拠に・・・(自分の首に掛けていた、十字
         架の首飾りを外し、クリストファーの方へ差し出す。)
         今夜のお礼にこれを・・・」
  マーガレット「・・・十字架・・・」
  
         クリストファー、マーガレット、フランク、その
         十字架に一瞬、顔を強張らせる。

  クリストファー「そんな・・・お礼なんて・・・。僕達は何も・・・」
  ダスティン「生憎、俺達は他に金目のものを持ち合わせていな
         いのです。遠慮せずに受け取って下さい。亡くなった
         母から貰った、純金の首飾りです。売れば可なりの
         値が付く筈ですよ。」          
  クリストファー「そんな大切なものなら尚更、僕達が頂く訳には
           ・・・。」
  ダスティン「そんなに堅苦しく考えなくても、俺が持ってても、金
         に代わるのがほんの少し早いか遅いか・・・ってだけ
         ですよ・・・。(笑う。)それとも・・・他に、何か受け取
         れない理由でも・・・?」
  マーガレット「お兄様・・・。」
  クリストファー「(微笑んで。)・・・いえ・・・。それではお言葉に甘
           えて・・・。(手を差し出す。)」
  フランク「クリストファー様・・・!」

         ダスティン、ゆっくりクリストファーの手に、
         十字架を乗せる。

  クリストファー「・・・ありがとうございます・・・。」
  ケビン「(ホッとしたように微笑んで。)・・・受け取った・・・。」
  フランク「・・・クリストファー様・・・。さ・・・さぁ、もっとお茶を召し上
        がって下さい!」
  ダスティン「・・・ええ・・・」
  ケビン「(欠伸をして。)何か・・・安心したら、急に眠くなってき
       ちゃったな・・・」
  ダスティン「ああ・・・」
  ケビン「どうしたんだろ・・・駄目だ・・・目が勝手に・・・ちょっと・・・
       失礼・・・」

         突然、ダスティン、ケビン、ソファーに沈み込む
         ように眠る。

  マーガレット「どうしちゃったのかしら・・・。(ダスティン、ケビンに
          近寄り覗き込む。)急に眠っちゃったわ・・・。でも・・・
          ほら、今のうちよ!!」
  クリストファー「マーガレット!(フランクを見る。)」
  フランク「(その視線に気付いて。)お2人のお茶に、睡眠薬を入
        れたのは・・・私です・・・。」
  マーガレット「睡眠薬・・・?」
  フランク「・・・この者達を見ていると・・・何故か、いやな予感がす
        るのです・・・。」
  クリストファー「いやな予感・・・?」
  フランク「はい・・・。何か・・・我々のことを見透かしたような、この
        人間の目を見ていると・・・。」
  マーガレット「どうしちゃったの?フランクが、そんな風に怯えた
          顔をするなんて。(笑う。)」
  
       







     ――――― “ダスティン” 4へつづく ―――――  








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2012年9月2日日曜日

“ダスティン” ―全4場― 2

  マーガレット「どうして?とんでもないことって?可笑しなこと言
          うのね。(笑う。)」
  ダスティン「俺が誰か知らないから、そんな呑気に笑っていられ
         るんだ・・・。」
  マーガレット「ただの旅の方ではないの?・・・何かとっても有名
          な人?ね?何をする人なの?どうしてこの村に、
          立ち寄ったの?」
  ダスティン「そんなことを聞いて、おまえは命が惜しくないのか
         ・・・。」
  マーガレット「何故?(クスッと笑って。)まさか悪魔とか・・・?」
  ダスティン「・・・悪魔・・・か・・・。そうだな・・・悪魔よりもっと質が
         悪いかもな・・・。おまえのような小娘・・・俺にかかれ
         ば一捻り・・・」
  
         音楽流れ、ダスティン歌う。

         “気をつけろ・・・
         命が惜しくば触らぬように
         自分が可愛きゃ見て見ぬ振り
         脅しじゃないぜ 忠告だ・・・
         この俺が親切で言ってやる
         さっさと俺の前から消え失せろ!!”

  マーガレット「よく分からないわ、あなたの言うこと・・・。私には
          あなたが、悪魔にも死神にも見えないもの。」
  ダスティン「・・・じゃあ、いいものをやろう・・・。(ポケットから、
         何かを取り出し、マーガレットの方へ差し出す。)」
  マーガレット「何?(受け取る。)キャンディ?綺麗な赤い色・・・。
          いちご味かしら?」
  ダスティン「俺のことを、いい人間だと思うなら、それを食べる
         がいい・・・。」
  マーガレット「ありがとう!(手に持っていたものを口へ放り込む
          。)いちご・・・じゃないみたい・・・何の味かしら・・・」
  ダスティン「教えてやろうか・・・」
  マーガレット「ええ!」
  ダスティン「その赤は、人間の血の色さ!!(笑う。)」
  マーガレット「・・・そんな冗談・・・」

         マーガレット、突然倒れ込む。

  ダスティン「それは俺の食事用だ・・・。美味いだろう?普通の
         人間が食べると、死んでしまうがな・・・」

         ダスティン、マーガレットを見詰める。
         その時、ケビン下手より登場。

  ケビン「(回りを見回して。)・・・ここ・・・どこだろ・・・。俺・・・確か
       あの屋敷の居間で、童話を読んでて・・・(倒れている
       マーガレットを認め、驚いて駆け寄る。)どうしたの!?
       君!!確りして!!君!!」
  ダスティン「・・・馬鹿な奴だ・・・。(フッと笑う。)だからあれ程言っ
         たのに・・・。俺に近寄ると、碌なことがないと・・・。」
  ケビン「一体どうし・・・(ダスティンの顔を見て、驚いたように。)
       ・・・せ・・・先輩・・・?先輩じゃないですか!?先輩、どう
       してこんなとこに・・・(ダスティンの格好を見て。)いやに
       古臭い服・・・。まぁ、いいや。それよりここはどこなんです
       ?この子、どうして!?」
  ダスティン「(ケビンのことは見えていないように、冷たい視線で
         倒れているマーガレットを見詰めてる。)ふん・・・。」
  ケビン「先輩!!先輩ったら!!・・・俺のこと・・・見えないの・・・
       ?(自分で自分のその様子に、驚いたように、自分の体
       を見回したり、そこにいる者達の様子を見たりする。)
       どうして・・・?」

         その時、上手よりクリストファー登場。

  クリストファー「マーガレット?どこにいるんだい、マーガレット?
           もう直ぐ、夕食の・・・(マーガレットを認め、その驚
           きに体を強張らせる。)マーガレット・・・?どうした
           の!?マーガレット・・・(マーガレットに駆け寄り、
           抱き起こす。)マーガレット!!」
  ケビン「・・・クリストファー・・・(呆然と、その様子を見詰めながら
       。)」

         ダスティン、声を上げて笑う。

  クリストファー「何が可笑しいんだ!!マーガレット!!マーガ
           レット、確りして!!」
  ダスティン「・・・そいつは死の実を食べたんだ・・・。」
  クリストファー「・・・え・・・?」
  ダスティン「後、数分もしないうちに、その実の毒が体中に回っ
         て、そいつの息も止まる・・・。」
  クリストファー「・・・死の実・・・?死の実って一体・・・!?」
  ダスティン「おまえにもやろうか・・・?」
  クリストファー「・・・じゃあ・・・おまえが妹をこんな目に・・・!?
           」
  ダスティン「ああ・・・。そいつが煩く俺の回りを、ウロチョロして
         余計な詮索をするから、ちょっとばかり静かにして
         おいてもらおうと思ってな・・・。」
  クリストファー「どうしてそんな酷いこと!!マーガレット!!
           マーガレット!!」
  ケビン「先輩・・・酷いよ・・・。」
  クリストファー「助ける方法は・・・?(マーガレットを下に下ろし、
           立ち上がる。)あるんでしょ・・・?知ってるんで
           しょ!?僕に教えろよ!!」
  ダスティン「・・・そうだなぁ・・・。解毒剤が・・・あるにはあるが・・・
         。」
  クリストファー「それを僕に頂戴!!」
  ダスティン「・・・やってもいいが・・・ただと言う訳には・・・」
  クリストファー「もとはと言えば、おまえがマーガレットをこんな目
           に遭わせたんじゃないか!!」
  ダスティン「違う!!そいつが煩くするからだ!!」
  クリストファー「・・・頼むよ・・・。マーガレットは、僕にとって掛け
           替えのない妹なんだ・・・。マーガレットがいなくな
           れば僕も生きていけない・・・」
  ダスティン「へぇ・・・」
  クリストファー「あなたにも兄弟がいるなら分かるだろ!?」
  ダスティン「・・・そんなことは忘れたな・・・。」
  クリストファー「お願いだ・・・。」
  ダスティン「生きていけないのなら、一緒に死ねばいいのさ!!
         (笑う。)」
  クリストファー「・・・なんて奴なんだ・・・!!」
  ダスティン「(ポケットから、小さな袋を取り出し、クリストファーの
         足元へ投げる。)その中に入っている液体・・・」
  クリストファー「解毒剤!?(思わず袋を拾い、中から小さな小
           瓶を取り出す。)」
  ダスティン「そんなに欲しけりゃ、おまえにやろう・・・。」
  クリストファー「本当!?」
  ダスティン「但し・・・それは・・・不老不死の薬だ・・・」
  クリストファー「・・・不老不死・・・?」
  ダスティン「ああ・・・。今、助かるかわり・・・一生・・・永遠にそい
         つは、死ぬことの出来ない体になる・・・。」
  クリストファー「・・・どう・・・言うこと・・・?」
  ダスティン「しかも・・・人間として生きていくのではなく・・・人の
         世からはこれからこの先・・・ずっと隠れて生きていく
         しかない・・・バンパイアとして生まれ変わるのだ!!
         」
  クリストファー「・・・バンパイア・・・バンパイア・・・って・・・」
  ダスティン「人の生き血を啜ってしか生きることの出来ない・・・
         不老不死の吸血鬼としてな!!(声を上げて笑う。)
         」
  ケビン「・・・吸血鬼・・・!?」
  クリストファー「・・・そんな・・・そんな!!マーガレットをそんな
           化け物に出来ないよ!!」
  ダスティン「・・・化け物・・・?ああ・・・そうかもな・・・。じゃあ大人
         しく、死のお迎えを待つがいいさ・・・。俺には関係な
         い・・・。そいつが死ぬも生きるも・・・おまえ次第さ・・・。
         (フッと鼻で笑う。)」

         ダスティン、ゆっくり下手へ去る。

  クリストファー「あ・・・!!待って!!・・・畜生・・・どうすればい
           いんだ・・・。これを飲めば、マーガレットは助かる
           ・・・。だが・・・これから一生・・・罪の十字架を背負
           って・・・生きて行くことになるんだ・・・。飲まなけれ
           ば・・・マーガレットは確実に死ぬ・・・。そんな・・・
           僕に決められる筈ないじゃないか・・・!!」

         音楽流れ、クリストファー静かに噛み締めるように
         歌う。

         “どうしたらいい・・・
         こんな選択・・・
         自分が生きるか死ぬかなら
         なんの躊躇いも迷いもない筈・・・
         どうすればいい・・・
         非情な選択・・・”

  クリストファー「そうだ・・・僕も一緒に・・・生まれ変わればいいん
           だ・・・。何も・・・マーガレット一人で辛い思いをさ
           せなくても・・・僕も一緒に・・・マーガレットと行けば
           いい・・・」

         クリストファー、マーガレットを抱き起こし、薬を
         飲ませる。そして自分もその薬を、恐る恐る飲む。
         マーガレットをゆっくり下ろし、自分の変化を確認
         するように、自分を見る。

  クリストファー「何かが・・・変わったのか・・・?もう・・・さっきまで
           の僕とは・・・違うのか・・・。(一本の指を見詰め。)
           あ・・・指の怪我が・・・治っている・・・。では・・・もう
           ・・・」
    
         その時、上手より若い姿のフランク、登場する。

  フランク「クリストファー様、捜しましたよ。(マーガレットに気付き
        。)マーガレット様!?どうされたのです!?(驚いて
        駆け寄る。)」
  クリストファー「大丈夫・・・直ぐ、気が付くよ・・・。それより・・・フラ
           ンク・・・」
  ケビン「・・・フランク・・・?あの若いのが・・・?」
  クリストファー「お別れだ・・・」
  フランク「え・・・?」
  クリストファー「・・・僕達は、これから2人で生きていかなければ
           ならないんだ・・・。父様・・・母様のことを・・・よろ
           しく頼むよ・・・。」
  フランク「(笑って。)何を仰るのです・・・。さあ、お家に戻りましょ
        う・・・。もう間もなく夕食の時間です。」
  クリストファー「・・・駄目なんだ・・・」
  フランク「どうしてそんな我が儘を・・・。」
  クリストファー「これから話すこと・・・誰にも言わないで、自分の
           胸の中だけに仕舞っておいてくれる・・・?」
  フランク「それは聞いてみないことには分かりませんね・・・。」
  クリストファー「・・・うん・・・。けど、誰かに話しても、決して・・・誰
           も信じてくれはしないだろうから・・・。」
  フランク「・・・どんな・・・話しですか・・・?」
  クリストファー「・・・僕達は・・・(黙る。)」
  フランク「・・・クリストファー様・・・?」
  クリストファー「・・・僕達は・・・もう人間じゃないんだ・・・。」
  フランク「・・・人間ではない・・・?言っている意味が分かりませ
        んが・・・。一体どう言う・・・」
  クリストファー「・・・もうパンも食べない・・・スープも飲まない・・・
           それでも死ぬことの出来ない体・・・そんな体に
           なってしまったんだ・・・。」
  フランク「一体何を可笑しなことを言っているのです・・・?」
  クリストファー「・・・僕達は・・・吸血鬼になってしまったんだ・・・。
           」
  フランク「(笑って。)また、そんな作り話しを・・・。」
  クリストファー「・・・いいんだ、信じてくれなくて・・・。だから、これ
           から僕達は、永遠に人の世からは身を隠して、
           ひっそりと生きていかなければならないんだ・・・」
  マーガレット「(目覚め、ゆっくり起き上がる。)・・・お兄様・・・」
  クリストファー「マーガレット!!もう・・・大丈夫かい?」
  マーガレット「ええ・・・。私、どうしていたのかしら・・・。」
  クリストファー「よかった・・・。これからは、何があっても2人きり
           だ・・・。」
  マーガレット「・・・2人きり・・・?」
  フランク「クリストファー様・・・」
  クリストファー「心配はいらないよ・・・。僕がいるからね・・・。」
  マーガレット「分からないわ、お兄様の言ってること・・・。」
  クリストファー「うん、そうだね・・・。でも・・・行こう、マーガレット
           ・・・。さようなら・・・フランク・・・。」
  フランク「クリストファー様!!」
  クリストファー「(マーガレットに。)歩けるかい?」
  マーガレット「・・・ええ、お兄様・・・平気よ・・・。どこへ行くの・・・
          ?」
  クリストファー「いい所さ・・・」
  マーガレット「お母様達が心配するわ・・・。」
  クリストファー「・・・うん、そうだね。でも、父様や母様の為にも、
           こうするのが一番なんだ・・・。」
  マーガレット「・・・そうなの・・・。分かったわ。私、お兄様と行く
          ・・・。」

         クリストファー、マーガレット、ゆっくり下手方へ
         行きかける。

  フランク「クリストファー様!!・・・お待ち下さい!!お2人を黙
        って行かせる訳にはいきません!!(2人の前へ、立
        ち塞がる。)」

         2人、フランクを避けて歩き続ける。

  フランク「クリストファー様!!」
  クリストファー「僕達を止めることは出来ないんだ・・・。」
  フランク「クリストファー様!!・・・分かりました!!・・・分かりま
        した・・・。」

         2人、立ち止まり、振り返る。

  フランク「・・・クリストファー様の言うことを、信用しましょう・・・。
        そのかわり・・・まだ学校も卒業していないようなお2人
        を、2人っきりで行かせる訳には参りません・・・。私も
        お供します・・・。宜しいですね?」
  クリストファー「フランク・・・。でも、僕達は歳をとらないんだ・・・。
           死なないんだよ・・・?」
  フランク「私ばかりが歳を取り・・・やがて土に帰るその時まで・・・
        お2人にお仕えするのが、小さい時から、お2人の教
        育係としてお側にいた、私の役目です・・・。共に参りま
        しょう・・・地獄の果てまでも・・・」
  クリストファー「・・・フランク・・・(嬉しそうに微笑む。)・・・うん・・・
           。」
                
           







      ――――― “ダスティン”2へつづく ―――――







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2012年9月1日土曜日

“ダスティン” ―全4場―

 


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    〈主な登場人物〉

    ダスティン  ・・・  新聞記者の男。

    ケビン  ・・・  ダスティンの後輩。(カメラマン。)

    クリストファー

    マーガレット  ・・・  クリストファーの妹。

    フランク  ・・・  執事。元、クリストファー兄妹の教育係。


 
 ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪


         客電落ちる。
         開演アナウンス。

   ――――― 第 1 場 ――――― A
         静かな音楽で、幕が上がる。
         風雨が激しく吹き荒れ、雷が轟く、大嵐の様子。
         客席後方より、雨を避けるように身を屈め、
         2人の男(ダスティン、ケビン。)走りながら登場。

  ケビン「先輩!!待って下さいよー!!」
  ダスティン「馬鹿!!早く走れ!!カメラが壊れちまうぞ!!」
  ケビン「だって、重くって・・・!!」

         2人、下手方舞台前へ。雨宿りするように。
         (上を見ながら、服を払ったりしている。)

  ダスティン「全く・・・急にこの大嵐・・・参ったなぁ・・・。」
  ケビン「天気予報じゃ、今日は雨なんか降る筈なかったのに・・・
       。」
  ダスティン「天気予報なんか当てになるもんか・・・。山の天気は
         女と一緒で、気紛れなんだよ・・・。」
  ケビン「へぇ・・・、そう言うもんなんだ・・・。でもこれからどうすん
       ですか・・・?車は山の麓に置いたままだし、こんな大嵐
       の中、とてもじゃないけど、あそこまで戻れないですよ
       ・・・。カメラだって重いし・・・。」
  ダスティン「(何かに気付いたように、舞台上を見る。)丁度いい
         具合に、屋敷があるじゃないか・・・。・・・ここ・・・誰か
         住んでんのかな・・・?」
  ケビン「え?(舞台上を見て。)本当だ・・・。全然、気が付かなか
       ったですね。こんなに大きな家なのに・・・。」
  ダスティン「(ゆっくり舞台上へ。)・・・すみませーん・・・。」
  ケビン「(ダスティンに続いて、回りを見回しながら舞台上へ。)
       黙って入っちゃ不味いですよ、先輩!!」

         舞台上、薄明るくなる。と、古びた屋敷内の様子。

  ダスティン「どなたかいらっしゃいませんか・・・。」
  ケビン「なんか薄気味悪い屋敷だなぁ・・・。丸で幽霊でも住ん
       でそうな・・・。」
  ダスティン「何言ってんだ。この文明社会の世の中に、幽霊な
         んてものが存在する訳ないだろ、全く・・・。」
  ケビン「だけど・・・このカビ臭い臭い・・・。屹度、長い間空き家
       だったんじゃないかな・・・?」

         再び、大きな雷の音が響く。

  ケビン「わあっ!!」
  ダスティン「(その声に驚いたように。)わっ!!ビックリするだろ
         !!」
  ケビン「・・・ごめんなさい・・・。」

         その時、上手より一人の執事(フランク。)手に
         ランプを持ち、ゆっくり登場。

  フランク「どなたですかな・・・?」

         ダスティン、ケビン驚いて、上手方を一斉に見る。

  ケビン「ひっ!!」
  ダスティン「・・・あ・・・すみません、黙って入って・・・。ただの
         空き家かと思ったもので・・・。」
  フランク「(笑って。)こんな山の中の古びた一軒家・・・、確かに
        人が住めるような所ではありませんが・・・。」
  ダスティン「いや・・・。そうだ、私達はNT新聞社の者で、今、取
         材の帰りなのですが、この突然の大嵐で、立ち往生
         してしまって・・・。」
  ケビン「車を山の麓に置いたままだし・・・」
  ダスティン「暫く、この嵐が治まるまで、凌がせてもらえないで
         しょうか。」
  フランク「・・・しかし・・・」
  ダスティン「雨さえ避けられれば、この玄関先でもどこでも・・・。」
  ケビン「カメラぶっ壊しちゃったら、大目玉食っちゃうし。(笑う。)」
  フランク「・・・いや・・・だが・・・この屋敷は・・・」
  ケビン「カビ臭いのを除けば、結構手入れの行き届いた快適そ
       うな屋敷・・・。部屋だって、沢山ありそうだし・・・ね?」
  フランク「それは・・・その・・・」
  ダスティン「・・・何か不味いことでも・・・?」
  フランク「・・・いえ・・・」

         その時、クリストファーの声が聞こえる。

  クリストファーの声「・・・どうぞ・・・構いませんよ・・・」

         ダスティン、ケビン、一瞬その声に体が強張った
         ように。回りをゆっくり見回す。
         上手後方に置いてあった、一つの大きな回転椅子
         に座っていたクリストファー、こちらを向き、ゆっくり
         と立ち上がる。

  フランク「クリストファー様・・・!」
  クリストファー「この嵐だ・・・、今、外へ出ても無事に山を下りる
           ことが出来るかどうか・・・。こんな古びたカビ臭
           い所でよければ、ゆっくりして行って下さい。(微
           笑む。)」
  ケビン「あ・・・!カビ臭いって言ったのは・・・あれは・・・!」
  クリストファー「いいんですよ・・・。この屋敷は、湿気が多くて
           いつもジメジメしている・・・。あなたが言ったよう
           に本当にカビ臭いんですから・・・。」
  ダスティン「(ケビンの方を向いて、声を出さずに。)馬鹿・・・!
         すみません・・・まさか、そこに人がいるなんて気付き
         もしなくて・・・。」
  クリストファー「フランクに部屋を用意させましょう・・・。」
  フランク「クリストファー様・・・」
  ダスティン「いや・・・本当にもうここで十分です。」
  クリストファー「駄目ですよ。こんな居間で、お客様をお泊めする
           なんて・・・。空いている部屋は山のようにあります
           。どうぞ風雨が治まるまで、一晩でも二晩でも・・・
           。」
  ダスティン「・・・さっきは・・・(フランクをチラッと見て。)何か不味
         いことがあるような口振りだったが・・・」
  クリストファー「フランクは歳のせいで、何事にも慎重なだけです
           。見ず知らずのあなた方を、この家の中に招くの
           はどうかと・・・。」
  フランク「申し訳ありません・・・。」
  クリストファー「さぁ、フランク・・・お二人の為に、部屋を用意して
           差し上げなさい。」
  フランク「はい、分かりました。ただ今直ぐに・・・。」

         フランク、上手へ去る。

  クリストファー「(上手を示して。)どうぞ・・・。身の回りの世話を
           する者は、この屋敷にはフランクしかいないので、
           行き届かない所があるでしょうが・・・。いつまでも
           ゆっくりと・・・。」

         ダスティン、不審気にクリストファーを見ながら、
         ゆっくり上手方へ。ケビン、嬉しそうに続く。

  ダスティン「この屋敷に住んでいるのは・・・あなたとフランク・・・
         ?」
  クリストファー「・・・もう一人・・・僕の妹がいます・・・。後で、お茶
           の時にでも紹介しますよ・・・。何分、世間知らず
           な娘なもので、あなた達にも失礼があるかと思い
           ますが、お許しを・・・。(再び、上手方を示す。)」

         ダスティン、ケビン、ゆっくり上手へ去る。
         微笑んで見ていたクリストファー、2人が去ると、
         打って変って真顔になり、上手方を見据える。
         その時、娘の楽しそうな笑い声が聞こえる。と、
         下手方よりマーガレット、嬉しそうに走り登場。

  マーガレット「久しぶりね!!久しぶりのお客様ね、お兄様!!
          」
  クリストファー「マーガレット!そんな風に、あからさまに喜ぶの
           は、はしたないよ。」
  マーガレット「だって嬉しいんですもの!!もうお腹がペコペコ
          ・・・。お兄様はいいわ!いつだって好きなように、
          麓の町まで行って、お腹一杯ご馳走にあり付ける
          んだもの。いつもいつも兄様に分けてもらう食事だ
          けでなく、もっと違ったものが私は欲しかったの!
          !」
  クリストファー「駄目だよ!!自分勝手な行動をしちゃ!!」
  マーガレット「・・・お兄様・・・」
  クリストファー「後でちゃんと、おまえの望むようにさせてやる
           ・・・。だから少しの間、普通の娘らしく振舞うん
           だ・・・。いいね?」
  マーガレット「・・・分かったわ、お兄様・・・。でも、普通の娘らし
          く・・・って・・・」
  クリストファー「普通だよ・・・。昔を思い出して・・・。だが・・・見
           たか・・・マーガレット・・・」
  マーガレット「見た・・・って、何を・・・?」
  クリストファー「あの男の顔さ・・・。」
  マーガレット「顔?顔は暗くて、よく分からなかったわ!だって
          顔なんて、私には関係ないもの。」
  クリストファー「あの忌々しい奴に、瓜二つのあの人間の顔・・・
           。」
  マーガレット「忌々しい奴・・・?」
  クリストファー「僕達を、こんな体にした張本人さ!!」

         雷の音が鳴り響く。
         暗く重々しい音楽流れ、クリストファー、スポットに
         浮かび上がり歌う。

         “この呪われし運命の
         定めたるは憎き奴
         この世の果てまで付きまとう
         永遠の呪縛に苛まれ
         心の安らぎは遥か彼方・・・
         夜の闇が安息の時
         月の輝きが
         ただ黒い瞳を映し出す・・・”

         暗転。

   ――――― 第 1 場 ――――― B

         舞台、薄明るくなる。(前場の様子。)
         一時置いて、上手より一冊の本を手に、
         読みながらケビン登場。

  ケビン「先輩!!先輩!!どこ行っちゃったのかなぁ・・・?それ
       にしても広いお屋敷だなぁ・・・。(回りを見回す。)退屈
       凌ぎに部屋で見つけた童話、一緒に読もうと思って、持
       って来たのに・・・。童話なんて、子どもっぽいか・・・。」

         ケビン、一人で話しながら、上手後方の
         回転椅子へ腰を下ろす。

  ケビン「けど、昔の童話って何でこう・・・どれもこれも残酷なんだ
       ろう・・・。子どもに読ませて聞かせる為のものじゃなくて、
       大人のうっぷん晴らしの為に、書かれたとしか思えない
       よなぁ・・・。それにしても、これは・・・誰が書いたのかな
       ・・・?原本がここにあるってことは・・・クリストファー・・・
       ?(笑って。)まさかね・・・。どう見ても、まだ10代・・・?
       結構、何冊もあったし・・・。まぁいいや・・・。・・・その昔・・
       ・ある小さな村に、とても仲の良い2人の兄妹が住んで
       いました・・・。2人はいつも一緒に遊び・・・学び・・・そし
       て語り合うのでした・・・。大好きな丘に登り・・・自分達の
       将来を・・・」

         遠くで明るい音楽流れ、段々大きくなるように。
         それと同時にケビン、フェード・アウトする。

   ――――― 第 2 場 ―――――

         音楽大きく、舞台明るくなる。(村の丘の風景。)
         下手より、花の冠を被り、花籠を手にした
         マーガレット、歌い踊りながら登場する。
         マーガレット、舞台中央に腰を下ろし、籠の中
         から花を取り出し、花輪を作り始める。
         そこへ上手より、ダスティン登場。
         回りを見回しながら、マーガレットのことは気にも
         止めない風に、ゆっくり下手方へ。

  マーガレット「こんにちは。旅の方?」
  ダスティン「(チラッとマーガレットを見るが、知らん顔する。)」
  マーガレット「この丘、綺麗でしょう?私はここから見る、村の
          様子が一番好き。村に立ち寄る旅の人は、この
          場所を知ると、必ず決まって、次に訪れた時にも
          是非もう一度ここへ来たいものだ!と言われるわ
          !(客席方を指差し。)見て!あの赤い屋根の家、
          あれが私の家よ!その隣の藁葺きの家が、アン
          ディおばあさんの家。おばあさんの焼くスフレは、
          とっても美味しいの!・・・それからあの十字架が
          ・・・」
  ダスティン「煩い!!俺の前でベラベラお喋りしていると、とん
         でもないことになるぜ・・・。」








      ――――― “ダスティン”2へつづく ―――――







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