2012年4月4日水曜日

“ライアン” ―全8場― 完結編

マイク「当たり前って・・・」
  ライアン「おじいさん達の時代でもあるでしょ?国際結婚って!」
  マイク「おまえ、国際結婚って言うのは・・・」
  ライアン「いいじゃない!そんなこと!そのお陰で、僕は“再生の力”
       を持って生まれて来れたんだし。」
  マイク「再生の力・・・。その力で家の下敷きになって瀕死の重傷を
      負ったジェシカを助けてくれたんだな・・・。」
  ライアン「僕、そろそろ自分の世界へ帰んなきゃ・・・。」
  マイク「え・・・?もう・・・?」
  ライアン「僕の仕事は終わったから・・・。」
  マイク「まだいいじゃないか!もっと未来の俺のことを・・・」
  ライアン「また会えるよ、その内・・・。じゃあね!ひいひいおじいさん
       !!(笑う。)」

          ライアン、上手へ走り去る。

  マイク「あ!!待てよ!!それに俺はまだそんな年じゃないぞ!!
      そうだな・・・タイムマシンで簡単に未来や過去へ行き来できる
      時代なんだ・・・。宇宙人がいた所で、何の不思議のないんだ
      ろうな・・・。ひいひいじいさんって・・・150歳まで生きるのか、
      俺・・・。(笑う。)生意気な奴だな。“玄孫”・・・か・・・。何年後に
      会えるんだろう・・・。頑張んなきゃな、俺・・・。働くぞーっ!!」

          暗転。

    ――――― 第 8 場 ―――――

          舞台明るくなる。と、未来の風景。(2場と同じ。)
          下手より、マイクが乗った車椅子を押しながら、
          老ジェシカゆっくり登場。

  ジェシカ「あなた、ハリケーンも無事にそれて行ったようで、よかった
       ですわね。」
  マイク「ああ、そうじゃな、ジェシカ。」
  ジェシカ「ハリケーンと言えば昔・・・何だか不思議な出来事があった
       ような気がしますの・・・。遠い昔のことで、よく思い出せない
       んですけれど・・・」
  マイク「(笑う。)ハリケーンなど、そう珍しくもないじゃろう。」
  ジェシカ「まぁ、そうですわね。」

          そこへ上手より、ライアンの母、ライアンを
          捜すように登場。

  ライアンの母「ライアーン!!ライアーン!!あ、おじいさん、おばあ
          さん!ライアンを見なかったですか!?」
  マイク「いいや、見とらんよ。」
  ライアンの母「もう、全くあの子は一体何処へ行ったのかしら、本当
          に!!一旦家を飛び出せば、丸で鉄砲弾のようなん
          だから!!こんな時、再生の力なんて、何の役にも立
          ちゃしないわ!!」 
  マイク「まぁそう言わなくても、再生の力も満更でもないと思うがの・・・
      」
  ライアンの母「おじいさんったら・・・。それにしても、ハリケーンが逸
          れてくれて、本当によかったですね。」
  マイク「そうじゃなぁ・・・」
  ライアンの母「おじいさん、ライアンを見かけたら、私が捜してたと伝
          えて下さいます?」
  マイク「ああ、分かったよ・・・。」
  
          ライアンの母、下手へ去る。
          一時置いて、上手より慌てた様子のライアン、
          走り登場。

  ライアン「おじいさん!!あ・・・(マイクを認め駆け寄る。)おじいさん
       !!・・・(ジェシカを認め。)・・・誰・・・?」
  ジェシカ「誰?まあ、この子ったら面白い冗談ばっかり・・・。(笑う。)」
  マイク「ジェシカじゃないか、ライアン。忘れたのか?」
  ライアン「ひいひいおばあさん・・・?」
  ジェシカ「どうしたの?ライアン。本当に大丈夫?そんな驚いた顔をし
       て・・・。」
  ライアン「だって・・・」
  ジェシカ「だって?」
  ライアン「今までどこに・・・」
  ジェシカ「今までどこにって・・・ずっと、あなたと一緒に暮らしているで
       しょ・・・?」
  ライアン「・・・本当・・・に・・・?」
  ジェシカ「可笑しな子ね。(笑う。)それよりお母さんが、あなたのこと
       を捜し回っていたわよ。」
  ライアン「ママが・・・?」
  ジェシカ「余りお母さんに心配かけちゃ駄目よ。」
  ライアン「おばあさん・・・」
  ジェシカ「さぁ、あなた、少し冷えてきましたわ。そろそろ部屋へ入り
       ましょうね。」
  マイク「ああ・・・。」

          ジェシカ、マイクの乗った車椅子を押し、
          下手方へ行こうとする。

  マイク「ライアン・・・」
  ライアン「・・・何・・・?」
  マイク「最後の約束を果たしてくれて、ありがとう・・・。」
  ライアン「おじいさん・・・」
  ジェシカ「約束って何ですの?」
  マイク「ライアンとわし・・・2人だけの秘密じゃよ・・・。」
  ジェシカ「まぁ・・・いいですわね、男同士で・・・。」

          マイクとジェシカ、下手へ去る。
          アイアン、呆然と2人が去るのを、見詰めている。

  ライアン「僕・・・過去へ行って、約束を果たして来たんだ・・・。本当に
       ・・・。ジェシカおばあさんが・・・生きてる・・・。微かに僕の心
       の中に残る、大切な人達との思い出が・・・。」

          音楽流れ、ライアン歌う。

          “遠い彼方の遠い空・・・
          たった少しの未知への旅
          そこで出会った初めての懐かしさ
          大切だと思う心と
          大切に出来る思い出の幸せ・・・
          誰もが持つ心の片隅にある
          優しい温もり・・・”

          瞳を輝かせ、遠くを見遣るライアン。




           ――――― 幕 ―――――

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