2012年9月30日日曜日

“バーナード” ―全16場― 7

         ――――― 第 11 場 ―――――

         カーテン前。
         リチャード、下手より俯き加減で登場。
         シェイラ、それに続く。

  シェイラ「あの・・・リチャード・・・どうしたんですか?何か話しが
       あるって・・・」
  リチャード「(立ち止まり振り返る。)あの・・・さ・・・シェイラ・・・」
  シェイラ「(微笑んで。)はい。」
  リチャード「(シェイラを見詰め、口籠る。)・・・君・・・本当に綺麗
        になったね・・・」
  シェイラ「・・・リチャード・・・?」
  リチャード「君・・・本当に営業課のバーナードと付き合ってるの
        ・・・?」
  シェイラ「・・・え・・・?」
  リチャード「いや・・・あの女なんか選り取り見取りの奴が、本気
        でシェイラと付き合ってるとは思えないんだ!!・・・
        あ・・・ごめん・・・酷い事言って・・・」
  シェイラ「(首を振る。)リチャードがいつも私のことを心配して
       くれているのを知っています・・・(下を向いて。)私って
       ドジだから・・・それで他の人に迷惑を掛けて叱られて
       ・・・落ち込んだりした時に、いつも励ましてくれたのは
       リチャードだわ・・・。だから今回も心配してくれている
       のね・・・ありがとう・・・(微笑む。)」
  リチャード「・・・そんな・・・僕は君に礼を言われるような・・・そん
        な立派な奴じゃないんだ・・・」
  シェイラ「え・・・?」
  リチャード「そんな風に言わないでくれよ・・・(シェイラに背を向け
        る。)」
  シェイラ「リチャード?(リチャードを背後から覗き込むように。)」
  リチャード「僕は・・・ずっと前から君のことが好きだった・・・好き
        だけど、同僚たちから除け者にされるのが怖くて・・・
        ただ側で見ていることしか出来なかった・・・。それが
        ・・・君が綺麗になって、あのエリート社員と付き合って
        るって聞いて・・・あの男に嫉妬してる・・・ただの格好
        悪い男さ・・・」
  シェイラ「・・・リチャード・・・そんなことないわ・・・」
  リチャード「(振り返る。)え・・・?」
  シェイラ「あなたは格好悪くなんてないわ・・・。私はあなたのお陰
       で随分、力付けられたもの。本当よ。」
  リチャード「シェイラ・・・」
  シェイラ「あなたが・・・そんな風に私のことを思っていてくれたな
       んて、全然知らなかったから・・・ごめんなさい・・・。それ
       で・・・矢っ張り・・・ありがとうしか出てこないな・・・(微笑
       む。)でも嬉しいわ・・・」
  リチャード「(思わずシェイラの手を取る。)」
  シェイラ「(驚いて。)リチャード・・・」
  リチャード「僕の方こそ・・・ありがとう・・・(ハッとしてシェイラの
        手を離す。)本当は・・・あのエリート野郎の悪口でも
        君に吹き込んで、別れさせてやろうと考えてたんだけ
        ど・・・ごめんよ・・・僕の方こそ、いじけた奴だな・・・」
  シェイラ「(首を振る。)」
  リチャード「頑張れよ!!僕は失恋だけど・・・(笑う。)」

         そこへ、ジェラルド達、庶務課の男子社員
         上手より入って来る。

  ジェラルド「(リチャードとシェイラを認めて、近寄りながら。)おい
        おいリチャード、抜け駆けか?」
  リチャード「(振り返って明るく。)そうです!!でも振られましたけ
        どね。(シェイラに向き直って、片手を上げて。)じゃあ
        !!」

         リチャード、ジェラルドたちの横を通って、
         上手へ出て行く。
         ジェラルド、ジョー、ビリー、スティーヴ、
         シェイラの回りに集まる。

  スティーヴ「あいつ、前からシェイラに惚れてたんだ。」
  ビル「前から!?」
  ジョー「本当に?」
  スティーヴ「ああ。それがシェイラが綺麗になって、少し焦っていや
        がったからな。」
  ビリー「(シェイラに。)誘われた!?」
  シェイラ「(下を向いて首を振る。)」
  ビリー「よかった・・・」
  ビル「何がよかったんだよ!」
  ジョー「(横から割り込むように。)ねぇ、シェイラ!!たまには俺
      とデートしない!?」
  スティーヴ「おい!!何、割り込んでんだよ!!」
  ジェラルド「(シェイラの肩を抱いて。)矢張りここは大人の魅力
        で・・・」
  ビリー、ビル、ジョー、スティーヴ声を揃えて「課長!!」

         シェイラ、困ったような面持ちになる。
         そこへバーナード、硬い表情で上手より
         入って来る。
         シェイラを認め、歩み寄る。
         男子社員、バーナードに気付き、気まずい
         面持ちで、一寸シェイラから離れる。

  シェイラ「(バーナードを認め、嬉しそうに。)バーナード!」
  バーナード「(思わずシェイラの頬を叩く。)」
  シェイラ「(驚いて頬を押さえ、バーナードを見詰める。)・・・バー
       ナード・・・?」
  スティーヴ「(シェイラの肩を抱いて。)行き成り、何するんだよ!!
         」
 
         ビル、ビリー、ジョー口々に「本当だ!!」など。

  ジェラルド「(焦って。)・・・君・・・!!バーナード君!!何があった
        か知らないが、女性の美しい顔に手を上げるとは、なに
        ごとかね!!」
  バーナード「(誰の話しも、存在も気に入らないように、シェイラに
         向かって。)・・・見えていなかったなんて・・・嘘だった
         んだな・・・おまえは・・・俺を・・・裏切ったんだ!!」
  シェイラ「・・・バーナード・・・?」

         バーナード、シェイラから視線を捥ぎ取り、
         下手へ出て行く。
         シェイラ、頬を押さえて呆然とバーナード
         が出て行った方を見詰める。

  スティーヴ「大丈夫かい?」
  ビル「全く、何考えてるんだよ!!」

         シェイラ、下を向いて溢れる涙を拭う。

  ビリー「あ・・・泣くなよ・・・」
  ジョー「畜生、何て野郎だ!!」
  シェイラ「(呟くように。)バーナード・・・どうして・・・」

         音楽で暗転。
         




      ――――― “バーナード”8へつづく ―――――





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2012年9月24日月曜日

“バーナード” ―全16場― 6

        
         サミーと入れ代わるようにバーナード、
         テーブルへ戻って来る。

  バーナード「・・・お待たせ・・・(椅子に腰を下ろす。)」
  シェイラ「お帰りなさい!(嬉しそうに、バーナードを見詰める。
       )・・・どうかした・・・?」
  バーナード「え・・・?」
  シェイラ「何だか顔色が・・・」
  バーナード「あ・・・そんなことないよ。(微笑む。)サミーと何の
         話ししてたんだい?楽しそうな笑い声が、電話の
         ところまで聞こえてきたよ。」
  シェイラ「(微笑んで。)秘密!」
  バーナード「何だよ、それ。あいつまた俺の悪口でも言い触ら
         してたんだろ、全く・・・」
  シェイラ「悪口なんかじゃないわよ!(真面目な顔付きになっ
       て。)・・・私・・・もっとあなたのことが知りたい・・・(自分
       の言った言葉に焦ったように。)・・・あ・・・ごめんなさ
       い・・・変なこと言って・・・(笑って誤魔化す。)」
  バーナード「(シェイラを見詰める。)シェイラ・・・俺は・・・」
  
         バーナード、立ち上がって歌う。
         (いつの間にかバーナードとシェイラ、
         スポットに浮かび上がる。)

         “いつからだろう こんな気持ち・・・
         長く忘れていた心のときめき・・・
         おまえが側にいるだけで
         全てが違って見える・・・
         全てが輝き
         全てが素晴らしい!!”

  バーナード「シェイラ・・・(シェイラの手を取って、立ち上がらせ
         る。)・・・愛している・・・本当に・・・愛しているんだ
         ・・・(シェイラの手に口付ける。)」
  シェイラ「・・・バーナード・・・」

         バーナード、シェイラの手を取って前方へ。
         カーテン閉まる。バーナード、再び歌う。
         シェイラ、嬉しそうにバーナードを見詰める。

         “いつ気付いたんだろう この感動に・・・
         おまえが側にいるだけで
         こんなにも世界が違って見える・・・
         今まで気付こうとしなかった
         全てのものが愛しくて
         おまえが側にいるからだと・・・
         ああシェイラ・・・いつまでも・・・
         抱きしめたい・・・”

         バーナード、シェイラを強く抱きしめる。
         暗転。

        ――――― 第 10 場 ―――――

         カーテン開く。絵紗前。(事務室。)
         アルバート、ジェイムス、ソファーに座り、
         話し込んでいる。

  ジェイムス「しかし、あの女の言っていることを、全て信用する
        のはどうかと・・・」
  アルバート「私もそれは分かっている。」

         ジェーン、お茶を運んで来る。其々の前に
         2人の話しを聞くように、ゆっくりコップを
         置く。

  ジェーン「どうぞ。」
  アルバート「しかし、今は少しでも疑いのある者は、全て調べて
         おかなければ、敵の尻尾は掴めまい・・・」
  ジェイムス「だが、営業課の超エリート社員であるバーナードが
        まさか・・・」

         ジェーン、お茶を配り終え、強張った面持ちで
         出て行く。

  アルバート「守衛の証言からも、バーナードがあの日、社内に
        残っていたのは確かなのだ。だが、彼は猛烈社員
        の異名を持つ者・・・残業届けなどどうでもいいのだ
        よ。」
  ジェイムス「そうですね・・・まぁ、聞いてみるくらいはいいでしょ
        う。ただ、このことはシェイラ・ハミルトンに聞いたこ
        とにし、態々バーナードの耳に入れて欲しいと言った
        ダイアナは一体何を考えているのでしょうか・・・」
  アルバート「さぁ・・・社員のプライベートには興味はないが・・・
         美しく変身したシェイラに嫉妬でもしたのだろう。」
  ジェイムス「美しく・・・ですか・・・?(不思議そうな顔をする。)」
  アルバート「何だ、君はまだ美しく変身したシェイラに会ってい
        ないのかね?」
  ジェイムス「変身・・・?」
  アルバート「あれは変身と言うより、別人だな・・・。まぁ、彼女
         のことはどうでもいい・・・」
  ジェイムス「はぁ・・・」

         その時、扉をノックする音。

  アルバート「入りたまえ・・・」

         ジェイムス、立ち上がる。
         扉を開けて、バーナード入る。

  バーナード「お呼びですか・・・?」
  アルバート「・・・まぁ、掛けたまえ・・・」
  バーナード「失礼します・・・。(ソファーに腰を下ろす。)」

         ジェイムス、再び腰を下ろす。

  アルバート「どうかね?仕事の方は・・・。君にもう慣れたかね
         ?と聞くのは、愚問だな。もう今や君は、我が社の
         期待の星・・・。(笑う。)」
  バーナード「そんなことはありません。」
  アルバート「君程の人材が今まで・・・(机の上の書類を手に取
         り、ペラペラと捲くって見る。)名前も聞いたことの
         ないような・・・失礼・・・」
  バーナード「・・・いえ・・・」
  アルバート「中小企業に埋もれていたとは・・・全く不思議なこ
         とだな。ところで・・・(真面目な顔付きになる。)こ
         れから君に聞くことは我が社にとって、とても大事
         なことなのだが・・・(ジェイムスに話すように、目で
         促す。)」
  ジェイムス「(咳払いをして姿勢を正す。)実は・・・今月の6日
        の金曜日に・・・レジャー産業部門の金庫から、ある
        重要書類が何者かによって、盗み出されたのだ・・・
        」
  バーナード「・・・盗み出された・・・?」
  アルバート「そう・・・。それで我々は犯人捜しに躍起になって
         いると言う訳なのだが・・・」
  バーナード「・・・それで・・・私に何か・・・?」
  ジェイムス「あの日、君は残業していたようだね・・・?」
  アルバート「・・・だが残業届けは出ていなかった・・・」
  バーナード「残業届けなしで残っていたから、私が怪しいと・・・
         ・?」
  アルバート「いや・・・ただあの日の君の行動に、不審なところ
         があったと・・・ある女子社員からの報告を聞いて
         ね・・・」
  バーナード「・・・女子社員・・・?」
  アルバート「何もその報告を信じている訳ではないのだが・・・
        一応・・・」
  ジェイムス「(紙をバーナードの前へ置く。)これにサインを頂け
        ますか・・・?」
  バーナード「(紙を手に取って。)・・・身辺調査の同意書・・・?」
  ジェイムス「これは君だけに頼んでいるのではないのだ。あの
        日、社内にいたもの全てにサインをもらっているの
        だ。」
  アルバート「書類の中身は言えないが・・・あの書類が他社に
        流出したことによって、我が社の損害は計り知れな
        い・・・。その責任の追及先を定めたいと言うことな
        のだよ。」

         ジェイムス、ペンをバーナードへ差し出す。
         バーナード、それに目を遣るが、自分の
         スーツの内ポケットからペンを出し、紙に
         黙ってサインをする。

  バーナード「・・・これでよろしいですか?」
  アルバート「・・・あ・・・ああ・・・それではもう仕事に戻りたまえ
         。」
  バーナード「失礼します。(立ち上がって出て行こうとし、入り口
        のところで振り返る。)一つだけ・・・いいでしょうか・・・
        」
  アルバート「ああ、何かね?」
  バーナード「さっき、仰ってた・・・女子社員とは・・・?」
  アルバート「(ジェイムスと顔を見合わせる。)・・・庶務課の・・・
        シェイラ・ハミルトンだ・・・。君は知っているかどうか
        ・・・」

         バーナード、アルバートの話しを最後まで
         聞かずに顔を強張らせて出て行く。

  アルバート「(溜め息を吐く。)・・・猛烈社員の異名を取るだけ
        あって・・・中々難しい男だな・・・」
  ジェイムス「はぁ・・・」

         暗転。カーテン閉まる。







      ――――― “バーナード”7へつづく ―――――








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2012年9月18日火曜日

“バーナード” ―全16場― 5

  
         ――――― 第 9 場 ―――――

         カーテン開く。
         舞台はカフェ・バー。明るく楽し気な雰囲気が
         漂っている。
         歌手サミー、軽快なジャズを歌っている。
         そこへシェイラをエスコートしてバーナード
         入って来る。お互い顔を見合わせ微笑む。
         2人、空いているテーブルへ進み寄り、
         バーナード、椅子を引きシェイラに勧め、
         自分も座る。
         バーナード、手を上げてボーイを呼び、
         何かを注文する。シェイラ、落ち着きなく
         珍しそうに周りを見回している。
         サミーの歌が終わり、静かな音楽流れる。

  バーナード「どうしたんだい?」
  シェイラ「何だか・・・何もかもが新鮮で・・・」
  バーナード「こう言うところは初めて?」
  シェイラ「ええ・・・。仕事が終わると毎日家へ直行・・・寄り道な
       んて・・・」
  バーナード「(笑う。)面白いことを言うな。」
  シェイラ「本当よ。」

         ボーイ、飲み物を2つ運んで来る。

  ボーイ「お待たせしました。(テーブルへ飲み物を置く。)」
  バーナード「ありがとう。」

         ボーイ、下がる。

  バーナード「(グラスを持って。)素敵な夜に乾杯!(グラスに
         口を付ける。)」
  シェイラ「頂きます・・・(グラスに少し口を付ける。)」

         サミー、嬉しそうに2人のテーブルに
         近寄る。

  サミー「お久しぶり!バーナードさん!(横から椅子を取り、反
      対向きに置いて座る。)どうしてたんすか?」
  バーナード「よぉ、元気か?相変わらずいい声してるな。」
  サミー「ありがとう!(チラッとシェイラの顔を見る。)彼女?」
  バーナード「(シェイラに微笑みかけて。)ああ・・・同じ会社の
         シェイラ・ハミルトン・・・」
  シェイラ「初めまして・・・」
  サミー「どうも!じゃあ君もNYイン・・・」
  バーナード「(慌てて。)サミー!!プリンセス・コーポレーション
         だ!!」
  サミー「おっと・・・そりゃ、どっちも大手だ。(笑う。)」
  シェイラ「(不思議そうに。)・・・どっちも・・・?」
  バーナード「(シェイラに笑いかけて。)何でもないよ。サミー!
         !おまえいい加減にしろよ!!」
  サミー「ごめん、ごめん!!でも、羨ましいよなぁ・・・。バーナ
      ードさんはこんな美人の彼女がいて!!(立ち上がって
      。)綺麗な彼女!!ごゆっくり!!」      ※

         サミー、カウンターの方へ行く。

  シェイラ「綺麗だなんて・・・冗談ばっかり・・・(下を向く。)
       」
  バーナード「(微笑んで、シェイラを見詰める。)あいつは、嘘
        を吐くような奴じゃないよ。心からそう言ったんだ
        。」
  シェイラ「(顔を上げて。)バーナード・・・」
  バーナード「俺も奴とは同意見だな。」
  シェイラ「・・・私が何故・・・この会社を選んだか分かる・・・
       ?笑われるかも知れないけれど・・・名前がね・・・気
       に入ったの・・・。プリンセスだなんて、とっても素敵
       じゃない?私には一生縁のない言葉だもの・・・。せめ
       て毎日、働きに行く場所は、こんな素敵な名前の会社で
       もいいかな・・・って・・・。可笑しいでしょ・・・?
       」
  バーナード「そんな風に思っていたのかい?シェイラは今まで、自
        分の魅力に気付かなかったんだな、きっと・・・」
  シェイラ「魅力・・・?」
  バーナード「そう。今まで君はダイヤモンドの原石のようなものだ
         ったんだ。磨けば磨く程、美しく輝いていく・・・。本当
         に気付かなかった・・・?」
  シェイラ「(首を強く振る。)・・・私は今まで劣等感が強くて・・・姉
       がね・・・一人いるんだけれど・・・」
  バーナード「ああ・・・」
  シェイラ「姉は昔から頭が良くて、美人で、両親自慢の娘だった
       の・・・。反対に私は、姉みたいに優等生じゃなかったか
       ら、その頃から私は劣等性のお墨付きだったの・・・。姉
       のようになりたいと思って頑張れば頑張る程、自分が
       自分でなくなっていくような気がして・・・それでも私も両
       親自慢まではいかなくても、少しでも姉に近付きたいと
       思ったわ・・・。でもね、ある日突然思ったの・・・いくら頑
       張って姉のようになれたとしても、それは嘘の私であっ
       て、本当の私ではないんだ・・・って・・・。それからは優
       等生でなくても、私は・・・私らしく生きよう!って・・・そう
       思ったの。ごめんなさい・・・変な話しして・・・」
  バーナード「(微笑んで。)いや、構わないよ。」
  シェイラ「私、今こうしてあなたに出会えて、私の中にあった劣等
       感が少し軽くなった気がする・・・あなたのお陰で・・・」
  バーナード「俺は単なる、加工職人みたいなものだよ。君は君の
         力で輝き出したんだ・・・シェイラ・・・」
  シェイラ「・・・私が・・・私の力で・・・?」
  バーナード「そう・・・」

         バーナード、シェイラを見詰めたまま、
         テーブルの上を滑るように手を延ばし、
         シェイラの手を握る。

  シェイラ「(驚いて思わず手を引っ込めようとする。)バーナード
       ・・・」
  バーナード「(シェイラの手を強く握ったまま、シェイラを見詰め
         る。)」

         その時、サミー再び近寄る。

  サミー「(2人を見て肩を窄めながら。)やれやれ、いいムード
      のところ、お邪魔様!」
  バーナード「(シェイラの手を放して、溜め息を吐きながらサミ
         ーを見上げる。)野暮な奴だな。」
  サミー「仕方ないよ。バーナードさんに電話だもの。(電話の
      方を指差す。)」
  バーナード「電話・・・?可笑しいな・・・(独り言のように。)ここ
         に来てることを知ってる奴なんかいない筈なのに
         ・・・(立ち上がりながら。)シェイラ、少し待ってて
         くれ。」
  シェイラ「ええ。」
  サミー「バーナードさん、俺が彼女の相手しててやるから、ごゆ
      っくり!」
  バーナード「余計なこと、喋るなよ!!」
  サミー「OK!」

         バーナード、電話の方へ歩いて行く。
         サミー、さっきと同じように椅子を反対向け、
         腰を下ろし、シェイラと楽し気に会話し始める。

  バーナード「(電話を取って。)はい・・・(受話器を見て。)可笑
         しいな・・・」

         バーナード、受話器を置くと、背後に
         人の気配を感じ振り向く。
         (ジャック、立っている。)
         店の音楽、少し静かになる。

  バーナード「おまえは・・・」
  ジャック「矢張り彼女は美しい人でしたね。(サングラスを取り、
       ニヤリと笑う。)」
  バーナード「また俺達を付けていたのか・・・」
  ジャック「・・・シェイラ・ハミルトンをね。さっきはいいムードの
       ところ、邪魔して申し訳ありません。」
  バーナード「じゃあ、この電話はおまえが・・・?」
  ジャック「まぁ・・・ね。一言忠告して差し上げようと思いまして
       ・・・」
  バーナード「何だ・・・」
  ジャック「彼女に本気にならないことですよ・・・。彼女の命は
       私の手の中にあるのですからね・・・。」
  バーナード「待ってくれ!!彼女はあの日、俺の顔は見てい
        ないんだ!!重度の近眼で、あの日はメガネを掛
        けていなかった・・・!!」
  ジャック「・・・それで・・・?」
  バーナード「だから彼女を殺す必要はないんだ!!」
  ジャック「それは困りましたねぇ・・・。しかし私は、一度引き受け
       た仕事は、如何なる事情があろうと、必ず遂行する人間で
       す。残念ですが・・・」
  バーナード「金なら常務が約束した分も俺が払う!!それなら文句は
        ないだろう!?」
  ジャック「・・・やれやれ・・・私の忠告は遅過ぎたようですね・・
       ・」
  バーナード「・・・何・・・?」
  ジャック「あなたは彼女にどうやら・・・本気で惚れてしまったよう
       だ・・・。しかし、あなたには私を止めることは出来ない
       。(サングラスを掛け、出て行く。)」
  バーナード「・・・おい!!」

         バーナード、暫くジャックが出て行った方を
         呆然と見ている。
         再び、音楽大きくなる。

  サミー「・・・で、バーナードさんったら、柄にもなく向きになって
      怒るんだ。いつもみたいに“サミー!!いい加減にしろ
      !!”ってね。」

         シェイラ、サミーの話しに、可笑しそうに
         声を上げて笑う。

  サミー「(そんなシェイラの様子に嬉しそうに。)あんた、美人な
      のに全然気取ったとこないね。」
  シェイラ「・・・え?」
  サミー「普通、あんたみたいに綺麗な人は、俺らみたいな野郎
      と話して、ゲラゲラ笑ったりしないよ。(楽しそうに。)」
  シェイラ「(恥ずかしそうに下を向く。)ごめんなさい・・・あまりに
       あなたのお話しが可笑しくて・・・」
  サミー「謝ることなんてないさ!俺は褒めたつもりなんだから。
      あんたがバーナードさんの彼女でなかったら、俺が申し
      込むのに・・・。バーナードさんじゃ敵わないや。(立ち上
      がって。)彼氏、戻って来たよ!じゃあ!(手を上げて行
      きかけて、振り返る。)またいつでも来いよ!奢ってやる
      からさ!」



 




      ――――― “バーナード”6へつづく ―――――







   ※ この“サミー”君のような青年、とても好きなキャラで、
     特に昔に書いた趣味的な作品には、よく登場します^^;
     



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“アンソニー” ―全16場― 完結編

  

         ――――― 第 15 場 ―――――

         紗幕開く。と、舞台はシャンドール邸の中。
         呼び鈴の音が激しく鳴らされる。
         奥より執事ヨハン、慌てて登場。扉の方へ。

  ヨハン「はい!!只今!!」

         ヨハン、扉を開けると、村人達なだれ込むように、
         家の中へ入って来る。

  ジェラール「アンソニー・ヴェルヌはいるか!!出て来い!!ア
         ンソニー!!今こそおまえを殺める時が来た!!」
  リチャード「アンソニー・ヴェルヌ!!」

         皆、口々にアンソニーの名を叫び、1階を
         捜し回る。
         ヨハン、その様子にオロオロと。
         奥よりエリザベート、クリス、その騒ぎに
         怪訝そうに登場。ミシェル、続いて登場。

  エリザベート「何ごとですの!?」
  クリス「一体如何したのです、皆さん揃って・・・」
  フィリップ「エリザベート、クリス!それが・・・!!」
  ジェラール「(エリザベート達の前へ進み出る。)あなた方が、こ
         の家の?」
  エリザベート「・・・ええ・・・」
  ジェラール「アンソニー・ヴェルヌは何処にいる・・・。」
  ミシェル「・・・彼が如何したのです・・・?」
  フランツ「落ち着いて聞けよ・・・。奴は・・・人間ではない!!」
  エリザベート「・・・何ですって・・・?」
  ミシェル「(引き攣った笑いを浮かべるように。)・・・人間じゃない
       って・・・?」

         と、その時、一発の銃声が響き渡る。
         村人達、一瞬顔を強張らせて、一斉に
         2階を見上げる。

  ミハエル「何だ・・・今の銃声は・・・!?」
  クリス「リーザの部屋からだ!!」
  ミシェル「・・・姉さん!?」
  エリザベート「一体何があったの!?」

         ミシェル、階段の方へ駆け寄り、上がろうと
         する。と、2階奥より、エドワードゆっくり登場。

  エドワード「・・・私を捜しているんだろう・・・?ジェラール。」
  ジェラール「・・・エドワード・・・アンソニーは・・・!?」
  エドワード「おまえの狙いは、飽く迄私の筈だ・・・。」
  ミシェル「姉さんは!?」
  エドワード「安心しろ、リーザはアンソニーに、生きる希望を見出
         したんだ・・・。(ミシェルに微笑みかける。)しかしジェ
         ラール・・・とうとう追い付いたな。(笑う。)全く・・・狙っ
         た獲物は逃さない・・・。そのしつこい性格は、私に似
         たのかな・・・?」
  ジェラール「(杭を握り締め、下を向く。)・・・お祖父さん・・・神様
         の定められた運命に逆らって生きることは罪なこと
         です・・・。父が亡くなる時に、初めてあなたのことを
         聞かされた・・・。その時、私は父は亡くなる前の幻覚
         から、そんな奇妙なことを口走っているのだと思った
         ・・・。だが・・・(絞り出すような声で。)父の葬儀の日
         ・・・人込みの間に、あなたの顔を見つけた時・・・体
         中に戦慄が走り・・・父の言ったことは正しかったと・・
         ・!!(顔を上げ、エドワードを見詰める。)あの日か
         ら、あなたの運命を正す為に、私は生きることを誓っ
         たのです!!」
  エドワード「(微笑んで。)その正義感溢れる態度は、私の妻・・・
         おまのお祖母さんにそっくりだ・・・。」

         エドワード。ゆっくり階段を下りて来る。

  エドワード「さぁ・・・もう私は何も思い残すことはない・・・。おまえ
         のその手で、この罪な体を終わらせてくれ・・・。」
  ジェラール「・・・お祖父さん・・・。」
  エドワード「だがジェラール・・・これだけは覚えておいてくれ・・・
         私は自分の運命に感謝していることを・・・。奴に巡り
         会え、同じ時を共有できたことに、心から幸せだった
         と・・・今は言い切れるんだと言うことを・・・!!」

         エドワード、ゆっくりとジェラールの前へ。
         ジェラールが手に持っている杭を、自分の
         胸へ突き立てる。

  エドワード「・・・私の為に・・・ありがとう・・・。」

         ジェラール、躊躇うように下を向いたまま、
         涙を堪え立ち尽くす。

  ジェラール「・・・お祖父さん・・・。」
  エドワード「(力強い声で。)さぁ殺れ、ジェラール!!自分の正
         しいと思った道を進んでここまで来たんだろう!!そ
         れならば、最後までその意志を貫き通せ!!そうし
         てこそ、我がパーカー家の人間だ!!」

         ジェラール、顔を上げエドワードを暫く見詰める。
         エドワード優しく微笑み頷く。ジェラール、杭を
         エドワードの胸に立て、もう一方の手に握って
         いた、きねを振り翳す。
         ライト・アウト。
         娘達の悲鳴が響き渡る。
         ミシェル、一人スポットに浮かび上がる。

  ミシェル「・・・あれは・・・決して忘れることの出来ない・・・誰にと
        っても思い出すのも躊躇されるような・・・出来事だった
        ろう・・・。エドワードは跡形もなく消え・・・駆け上がった
        2階のどの部屋にも、アンソニー達の姿はなかった・・・
        。僕にとって、そのことよりも何よりも、姉さんが・・・あ
        の時一緒にいなくなった姉さんが、如何なったのか・・・
        捜す術もなく・・・幸せで行ったことを信じ・・・願わずに
        はいられない・・・。」

         ライト・アウト。

  ミシェルの声「あの時生きた者で、今なお残っているのは私一人
          だけとなった70年たった今も・・・」

    ――――― 第 16 場 ―――――

         舞踏会の音楽が流れてくる。
         ライト・インする。と、舞台はシャンドール邸の広間。
         美しく着飾った男女、左右より手を取り合って登場。
         ワルツを踊る。途中、奥より孫娘マリーに手を引か
         れ、年老いたミシェル、ゆっくり登場。
         壁際の椅子へ腰を下ろし、微笑ましく回りを見回す。

  マリー「ミシェルお祖父様、シャンペンでも如何?」
  ミシェル「ああ・・・いや、今はいいよ。」
  マリー「こんなに盛大な舞踏会は初めてよ。何だかワクワクしち
      ゃうわ。(嬉しそうに。)」
  ミシェル「(マリーの顔を見上げて微笑む。)私のことはいいから
       、おまえも踊っておいで。」
  マリー「でも・・・」
  ミシェル「(横からマリーの方を見ていた青年を、チラッと見て。)
       ほら、おまえに相手を願っている青年が待ってるよ・・・。
       」
  マリー「(その方を見て。)まぁ・・・」
  ミシェル「さぁ、あまり待たせると可哀相だ。」
  マリー「はい、お祖父様!(嬉しそうに、その青年の方へ駆け寄
      り、踊りの輪に加わる。)」

         ミシェル、再び人々の踊りを見ている。
         と、曲に紛れるように微かにミシェルの
         名を呼ぶ懐かしく愛しい声が聞こえる。

  ミシェル「(少し不思議そうに、ゆっくり辺りを見回す。)・・・今・・・
       誰かに呼ばれたような気がしたが・・・。もう私も年だな
       ・・・。(フッと笑う。)だが・・・あの声は何処かで・・・。」

         ミシェル、あまり気にも止めない風に、
         再び踊りを見ている。と、その踊りの輪の
         中から、立ち止まり自分の方を見ている
         2人の男女に気付き、息を飲み思わず
         立ち上がる。

  ミシェル「・・・姉さん・・・!?」

         それは正しく、70年前に消えたその時の姿の
         ままのアンソニーとリーザであり、寄り添うよう
         に立った2人は優しく微笑んで、ミシェルを見詰
         める。音楽少し小さくなり、薄暗くなった舞台上
         スポットにアンソニーとリーザ浮かび上がる。
         回りには何も気にせず踊る人々。
         ミシェル、2人に駆け寄りたい思いに駆られ
         ながらも、足が進まないように一歩だけ踏み
         出し、2人を見詰める。
         その時、今度はハッキリとリーザの声が響き
         渡る。

  リーザの声「・・・サヨナラ・・・」
  ミシェル「姉さん!!」

         再び明るくなり、音楽大きくなる。アンソニーと
         リーザ、踊る人々の波に掻き消える。
         ミシェル、慌てて2人を捜すように中央へ。

  ミシェル「アンソニー!!姉さん!!(何故か安心したような微
       笑みを洩らす。)あれは・・・正しく姉さんだ・・・。それも
       あの頃のまま・・・屹度・・・幸せに暮らしていたに違いな
       い・・・。そしてこれからも・・・永遠に・・・」











            ――――― 幕 ―――――







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2012年9月17日月曜日

“アンソニー” ―全16場ー 6

  エドモン「やぁ、アンソニー君。よく来られた。」
  アンソニー「今日はお招きありがとうございます。」
  ヴィクトリア「(リーザに微笑んで。)こちらの素敵なお嬢さんは?
          」
  リーザ「(恥ずかしそうに、アンソニーを見る。)」
  アンソニー「(微笑んで、頷く。)」
  リーザ「・・・リーザ・シャンドールです。」
  エドモン「リーザ・・・シャンドール・・・?」
  リーザ「はい・・・。」
  ヴィクトリア「じゃあ亡くなられた奥様の・・・?まぁ、何て美しい娘
          さんに成長したこと!お母様がもし生きてらしたら、
          屹度お喜びですよ!」
  エドモン「だが今まで何処に?」
  リーザ「・・・あの・・・」
  アンソニー「彼女はとても体が弱かったのです。」
  ヴィクトリア「まぁ、そうだったの・・・。シャンドール家の方達は、
         何も仰らないから・・・。それじゃあ、もうすっかりお体
         の方は、よくなられたのね?だって頬も紅潮して、と
         てもお元気そう・・・。」

         アンソニー、リーザ、お互い顔を見合わせて
         微笑む。その時、曲が新しく始まる。
         アンソニー、リーザの手を取って、エドモン、
         ヴィクトリアの手を取って、中央へ進み出、踊りの
         輪に加わる。
         エドワード、ルイ、其々ボーイからシャンパングラス
         を受け取り、壁の方へ。
         娘達、目敏く2人を認め、嬉しそうに駆け寄る。
         ルイ、その中の一人の手を取って、踊りに加わる。
         エドワード、困った面持ちで、娘達に取り囲まれて
         いる。
         音楽、少し静かに。中央にアンソニーとリーザ、
         踊るのを止めて見詰め合う。回りに踊る人々、
         アンソニーとリーザを残して、何時の間にか退場
         する。

  リーザ「(嬉しそうに。)こんな風にあなたと踊れるなんて・・・。」
  アンソニー「(微笑んで。)僕は嘘は言わないんだ・・・。特に大切
         な人にはね・・・。」        ※
  リーザ「アンソニー・・・私・・・あたなに出会えてよかった・・・。あ
      なたに巡り合わせてくれた神様に、感謝しなくちゃ・・・。」
  アンソニー「・・・自分の・・・運命を恨むことなく・・・感謝を・・・?」
  リーザ「・・・何故?こう言う運命のお陰で、あなたと出会えたの
      よ・・・。神様は屹度、最初からお分かりだったのね・・・。
      こうして・・・あなたに・・・巡り会えることを・・・。」
  アンソニー「リーザ・・・(思わずリーザを胸に抱く。)僕の方こそ、
         君に出会えたことを感謝する・・・。」
  リーザ「アンソニー・・・」

         再び音楽大きくなり、アンソニー、リーザの
         手を取って踊り出す。
         アンソニーとリーザのデュエットダンス。(スモーク。)
         嬉しそうに寄り添い合うアンソニーとリーザ。
         紗幕閉まる。

    ――――― 第 13 場 ―――――

         紗幕前。
         上手より村人達、話しながら登場。

  オスカー「けど、全くこの間の舞踏会の時には、驚かされたよな
        。」
  エリーズ「ええ。もう私なんかショックで・・・。」
  ミレーヌ「伯爵様の相手が、シャンドール家からは、私達はずっ
       と寝たきりで体の弱い前妻の娘がいるにはいるけど・・・
       と、聞かされていたその娘だったなんて・・・。」
  シャロン「私はシャンドール家に、もう一人娘がいることなんて、
        全然知らなかったわ。」
  シャルル「僕だって隣に住んでいながら、全く驚きだよ。」
  クラウス「僕は子どもの頃、シャンドール邸の庭を覗いた時に、
        色の白い・・・透き通るような肌を持った娘を見かけた
        ことがある・・・。エリザベート達が来る少し前の話しだ
        ・・・。今思えば、あの時あそこにいた娘が彼女だった
        んだな・・・。」
  フランツ「そういやぁ・・・僕もたった一度、シャンドール邸に忍び
       込んだことがあるんだ。皆で鬼ごっこをしている時に・・・
       。森の方へ回った時・・・シャンドール邸の裏口の方だな
       、その時、2階の端の窓から覗く天使を見た・・・。そう思
       ってたんだ、ずっと・・・。屹度彼女だ・・・。その後、執事
       のヨハンに見つかって、こっぴどく叱られたっけ。(笑う。)
       」
  エリーズ「あなたって、昔から悪戯小僧だったのね。」
  フィリップ「僕は全然知らなかったなぁ・・・。けど、綺麗な人だっ
        たよなぁ・・・。」
  ミレーヌ「・・・そうね・・・。悔しいけどお似合いだったと言うべきか
       しら・・・。」

         その時、下手よりジェラール、ミハエル、
         ルドルフ登場。

  ミハエル「先生!今夜はベットの上で眠れますよね!」
  ルドルフ「昨夜は参ったよなぁ。まさか、森の中で野宿するなん
        て・・・。」
  ミハエル「木の上で枝に寄りかかって眠るのは、流石にしんどか
        ったよな。」
  ルドルフ「俺なんか何回も落ち掛けて、その度に目が覚めちゃっ
        たよ。(笑う。)」
  ジェラール「だが眠っている間に、野獣に襲われるよりはマシだ
         ろ?」
  ルドルフ「そりゃあそうですけど・・・。できればフカフカのベットに
        埋もれて眠りたい・・・。」
  
         ジェラール、話し込んでいる村人達に気付いて
         近寄る。

  ジェラール「こんにちは、皆さん。」
  リチャード「(つられるように挨拶をしながら、ジェラール達を見る
         。)こんにちは・・・。」
  ジェラール「君達は、この村の人間かね?」
  リチャード「そうだけど・・・何か・・・?(ジェラール達をマジマジと
         見る。)」
  ジェラール「私はトランシルヴァ二アから来た医者で、ジェラール
         ・パーカー。(ミハエルとルドルフを見て。)この2人は
         私の連れで、ミハエルとルドルフ・・・。」
  ミハエル「どうも・・・。」
  シャロン「・・・トランシルヴァ二ア・・・?」
  オスカー「へぇ・・・そんな遠くから、先生がまた何でこの村へ?」
  クラウス「・・・観光・・・?(ジェラール達を見て。)にしちゃあ、軽
        装だよなぁ・・・。」
  ジェラール「いや、実は人を捜して・・・。ミハエル。」

         ミハエル、ポケットから写真を取り出す。

  ミレーヌ「トランシルヴァ二ア・・・って言うと、伯爵様達のことは
       ご存じかしら?」
  ジェラール「・・・伯爵・・・?もしかして伯爵と言うのは・・・アンソ
         ニー・ヴェルヌ・・・」
  エリーズ「ええ!お知り合いですの?」
  ミハエル「・・・先生・・・。」
  ジェラール「(ミハエルから写真を受け取り、村人達の方へ差し
         出す。)この写真の男を・・・?」
  フランツ「ああ、この人を捜してたんなら、この村に一カ月程前
       から来られてますよ。」
  シャロン「伯爵様のお友達のエドワード様よね。」
  ジェラール「(絞り出すような声で。)・・・年恰好同じにかね・・・?
         」
  シャロン「ええ。ここに写ってる通りの方ですわ。」
  ルドルフ「ずっと追い続けているけど、一体先生とどんなつなが
        りのある人なんですか?まさか、お孫さんとか・・・?」
  ミハエル「馬鹿!孫ならこんなに憎しみを持って、追い続ける訳
        ないじゃないか。」
  ジェラール「・・・この写真の男は・・・私の祖父・・・エドワードだ
         ・・・。」
  ミハエル「え・・・?また冗談ばっかり!!どう見たって、俺達と
        同じ年頃ですよ!!」
  ジェラール「その写真に写っているのは・・・100年前の私の祖
         父、エドワード・パーカー男爵だ・・・!!」
  ミハエル「・・・100年・・・前・・・?」
  フィリップ「100年・・・ったって、シャンドール家に居るのは、この
        写真通りの人物ですよ・・・。(笑う。)」
  ジェラール「(ポケットから、もう一枚写真を取り出し、村人達の
         方へ差し出す。)こいつは・・・?」
  エリーズ「アンソニー・ヴェルヌ伯爵様・・・その人ですわ・・・。」
  ジェラール「そう・・・奴の名は・・・アンソニー・ヴェルヌ・・・ドラキ
         ュラ伯爵・・・。(ミハエルとルドルフの方を見て。)おま
         え達に、この間話したトランシルヴァ二アに伝わる奇
         話は覚えているだろう・・・。あの時、消えた伯爵こそ
         アンソニー・ヴェルヌ・・・。奴がこの世に生を受けた
         のは、400年以上昔の話しだ・・・!!」
  ルドルフ「えーっ!!」
  ミハエル「まさか・・・」
  ミレーヌ「嘘・・・」
  ジェラール「奴が何故、そんなにも生き長らえて来たか・・・それ
         は奴が、夜な夜な美女の生き血を啜る、化け物だか
         らだ!!」
  ルドルフ「えーっ!?」

         皆、一斉に驚きの声を上げる。

  ジェラール「奴をこのまま生かしておくことは出来ない・・・!!そ
         の胸を銀の杭で深く突き刺し、この世の塵と化すの
         だ!!我が祖父のような犠牲者を、これ以上増やさ
         ない為にも!!」

         緊迫した音楽が響き渡り、暗転。

    ――――― 第 14 場 ――――― A

         紗幕開く。と、絵紗前。リーザの部屋。
         ベットの上で、枕に凭れているリーザ。その横に
         腰を下ろしたアンソニー、楽し気に語らっている。

  アンソニー「僕の村では、昔々から春になると色とりどりの花で
         覆われ、それはそれは美しく衣替えをするんだ。冬
         の雪の白から、夏の木々の緑の間にその季節がや
         ってくる・・・。全く、自然の芸術と言うのは、何時の世
         でも本当に素晴らしいと感動させられるよ・・・。その
         後に秋の紅葉がくる・・・。僕は子どもの頃から、春の
         淡色がとても好きだったよ。そのことで、からかわれ
         たりしたこともあったけどね・・・。」
  リーザ「(微笑んで。)昔から優しかったのね・・・。」
  アンソニー「リーザ・・・(微笑んで。)君はどんなことでもプラスに
         考えられる人なんだね・・・。僕は君といると、とても
         心が和むようだ・・・。こんな気持ちになったのは、生
         まれて初めてのような気がする・・・。」
  リーザ「私の方こそ、あなたに色々なことを教わったわ・・・。あな
      たは私の知らないことばかり知っている・・・。あなたといる
      と、とても楽しいわ・・・。」

         その時、突然扉が開いて、エドワードとルイ、
         駆け込んで来る。
         アンソニーとリーザ、驚いてその方へ見る。

  アンソニー「・・・どうした・・・?」
  エドワード「ジェラールが・・・追い付いた・・・。」
  アンソニー「・・・そうか・・・」
  エドワード「早くしろ・・・時間がない・・・。」
  アンソニー「(リーザを見詰める。)」
  リーザ「(何かを悟ったように。)・・・もう・・・行ってしまうのね・・・。
      (涙が溢れる。)」
  アンソニー「リーザ・・・(暫く考えるように。リーザを見詰める。)
         一緒に・・・来ないか・・・。」
  リーザ「・・・え・・・?」
  エドワード「アンソニー!?」
  アンソニー「・・・俺達は・・・君も感ずきつつあるように・・・普通の
         人間とは違う・・・。昔から・・・人の世で疎外され続け
         て来た・・・永遠の命を持つ者・・・ヴァンパイアだ・・・。
         ・・・君を我々の仲間に加える準備をするのは簡単だ
         ・・・。ただ・・・君の意思とは別に、君の体が拒否すれ
         ば・・・君はこの世から消えて・・・なくなるんだ・・・。」
  リーザ「(ゆっくりと。)・・・いいわ・・・例え・・・塵となって消える運
      命でも・・・。私は、あなたに付いて行きたい・・・。あなたと
      共に生きられるかも知れない道を選びたい・・・。例え・・・
      あなたが人の世の運命に逆らって、生きてきた者だとして
      も・・・。誰一人あなたのことを、認めようとしなくても・・・初
      めて、あなたが私に力を与えてくれたあの時から・・・もう
      私はあなたを受け入れてた・・・。あなたは私にとって、たっ
      た一人の・・・あなたこそが、私を初めて受け入れてくれた
      人だから・・・。他の誰でもない・・・たった一人の私が・・・
      生まれて初めて・・・愛した人・・・アンソニーだもの・・・。一
      緒に連れて行って・・・!!(アンソニーに抱き縋る。)」
  アンソニー「・・・リーザ・・・!!僕こそ君を愛している・・・!!(
         暫くリーザを抱き締め、立ち上がる。)そうと決まれば
         急ごう!!(エドワードとルイを見る。)」

         アンソニー、リーザの手を取る。リーザ立ち上がる。

  エドワード「・・・あ・・・アンソニー・・・先に行ってくれるか・・・?」
  アンソニー「エドワード・・・?」
  エドワード「・・・いや・・・ここらで、そろそろ奴とは一度、正面きっ
         て話し合った方がいいと思ってたんだ・・・。(チラッと
         ルイを見る。)・・・奴は・・・俺の・・・身内だからな・・・。
         」
  ルイ「エドワード・・・」
  エドワード「大丈夫、直ぐに追い付くさ・・・。」
  アンソニー「・・・だが・・・」
  エドワード「(微笑んで。)そんな顔するな・・・。奴に会ったら、直
         ぐ追い掛けるって言ってるだろ・・・?」
  アンソニー「・・・分かった・・・待ってるぞ・・・。(リーザの方を向い
         て微笑む。)おいで・・・」
  
         アンソニー、側へ来たリーザを軽々と抱き上げ、
         テラスの方へ行きかける。

  エドワード「(思わず。)アンソニー!!」
  アンソニー「(振り返る。)」
  エドワード「・・・今度は女連れなんだ・・・気を付けて行けよ・・・。」
  アンソニー「・・・分かってるさ・・・。」
  ルイ「(笑って。)・・・変な言い方するんだな。」
 
         暫くアンソニー、エドワード、お互いの心の内を
         悟ったように見詰め合う。
         その時、屋敷の中に村人達がなだれ込んで来た
         音や、アンソニー達の名を呼ぶ叫び声が、聞こえ
         てくる。

  ルイ「来た!!」
  エドワード「早く行け・・・。」
  アンソニー「(エドワードを見詰めたまま、ゆっくり頷く。)」
  ルイ「アンソニー!俺も後からエドワードと行くよ!」
  エドワード「ルイ!!駄目だ!!」
  ルイ「(エドワードの声は耳に入っていないように。)野暮なこと
     はしないよ。さ、早く行けよ、アンソニー!!エドワードのこ
     とは俺に任せな!!」
  アンソニー「ルイ・・・」

         アンソニー、頷いて2人から視線を捥ぎ取り、
         リーザを抱いたまま、風のようにテラスへ出て
         行く。

  エドワード「ルイ!!俺は・・・!!」
  ルイ「(笑って。)分かってるって・・・。これからは、アンソニーに
     はリーザがいるだろ?もう俺の役目も終わる時が来たって
     ことだよ。」
  エドワード「ルイ・・・」
  ルイ「俺はあいつが永遠の命を持っていながら、何ものにも満た
     されない思いを抱いていることに感ずいて、あいつの生き
     方に共に行こうと決めたんだ・・・。そのあいつが・・・今、彼
     女と出会って、やっと生きがいを見出した・・・。見ただろ?
     あいつの嬉しそうな顔・・・。」
  エドワード「(フッと笑って。)ルイ・・・おまえ・・・」
  ルイ「俺にしちゃあ、よく分かっただろ?引き時ってやつをさ。(
     笑う。)」
  エドワード「(笑って。)偉いよ。」
  ルイ「(服の内ポケットから、銀の銃を取り出して、エドワードの
     方へ差し出す。)・・・最後の我が儘だ・・・おまえの手で・・・」
  エドワード「ルイ・・・!!」
  ルイ「(笑って。)さぁ、早いとこ殺っちまってくれよ。(エドワードの
     手を取って、銃を握らせる。)」
  エドワード「(顔を伏せて。)ルイ・・・」
  ルイ「俺は幸せなんだぜ。おまえの手で終われることが・・・。も
     し・・・こんな俺達でも・・・もし・・・生まれ変わることが出来た
     なら・・・来世でも・・・おまえとアンソニー・・・3人でまた・・・
     同じ時を過ごせたらいいな・・・。(微笑む。)」
  エドワード「ルイ!!(銃をルイに向ける。)」

         ライト・アウト。一発の銃声が響き渡る。

  エドワードの声「ルイ・・・俺達に・・・来世はないんだ・・・」

    ――――― 第 14 場 ――――― B

         紗幕前。アンソニーとリーザ、フェード・イン。
         寄り添うように。

  アンソニー「(銃声で2人の死を悟り。)エド!!ルイ!!・・・」
  リーザ「・・・アンソニー・・・」
  アンソニー「・・・俺は何時も一人だった・・・。何時の時代を生き
         た時にも・・・幾度、春が巡ってこようと・・・たった一人
         で生きて来た・・・。それが当たり前かのように・・・。
         そんな時、エドワードやルイに出会ったんだ・・・。彼ら
         は何も言わず、俺を認めてくれた・・・。初めて受け入
         れてくれる奴らに出会ったんだ・・・。今まで、疎外され
         続けて生きて来た俺を・・・初めて理解し・・・共に生き
         ようと・・・!!(言葉に詰まる。)」
  リーザ「(アンソニーの肩を抱くように。)これからは・・・私がいる
      わ・・・。何時も・・・あなたの側に・・・」

         音楽で暗転。


 

       ――――― “アンソニー”完結編につづく ―――――








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2012年9月16日日曜日

“アンソニー” ―全16場― 5


    ――――― 第 10 場 ―――――

         絵紗前。村の洋品店。娘達、手に其々ドレス
         を持ち、嬉しそうに歌う。

         “舞踏会!舞踏会!
         村中挙げての盛大で豪華絢爛
         アンソニーに見初められる為に
         どの娘達よりも一番素敵に輝いて
         女王のようにドレスをまとい
         家中の宝石で飾りたて
         舞踏会!舞踏会!”

         娘達、其々ドレス選びに夢中になる。
         奥より登場した用品店店主ピエール、
         その様子を不思議そうに見詰める。
         横のソファーには腰を下ろして、新聞
         に見入るクリス。時々、娘達の様子に
         呆れたような視線を向ける。

  シャロン「あら、その色も素敵ね!ちょっと見せて!(ミレーヌの
        持っていたドレスを、手に掛ける。)」
  ミレーヌ「駄目よ!これは私が先に見つけたのよ!」
  シャロン「先に見つけたって、私の方が屹度似合うわよ!貸して
        !(無理矢理ドレスを取り上げる。)」
  ミレーヌ「酷い!!(脹れて他のドレスを探す。)」
  ピエール「お嬢さんには、こっちのドレスもお似合いですよ。」
  ミレーヌ「(チラッと目を遣って。)そうねぇ・・・」
  ピエール「全く・・・ここ暫くの店の繁盛の様子ときちゃあ・・・何か
        あるんですかい?」
  エリーズ「あるもないも、エドモン様のお屋敷で、今度の日曜日
        にこの村始まって以来と言われる、盛大な舞踏会が
        開かれるのよ!」
  ピエール「へぇ・・・。あ・・・もしかして、シャンドール家のお客人
        の歓迎パーティですかい?」
  エリーズ「そう言うこと!」
  ピエール「あの世にも稀な美男子とか言う・・・」
  シャロン「彼に見初めてもらう為に、お洒落しなくっちゃ!」
  クレナ「(2枚のドレスを持って、クリスの方へ。)お兄様!こっち
      のドレスとこっちのドレス、どちらが私に似合うとお思いに
      なって?」
  クリス「(チラッと目を遣る。)さぁ・・・どっちでもいいんじゃないの
      かい?」
  クレナ「まぁ、お兄様!!頼りにならないのね!!」
  クリス「そんなことより、まだ決まらないのかい?(溜め息を吐い
      て。)一体、何日前までの新聞を読めばいいんだよ・・・。」
  ステラ「(ドレスを手に2人の側へ。)1ヶ月よ!!」
  クリス「1ヶ月!?」
  ステラ「クレナ!!このドレスに私の持っていた髪飾りで合うか    
      しら?」
  クレナ「そうねぇ・・・」

         クレナ、ステラ話しながら、クリスから離れる。

  クリス「(肩を窄めて。)1ヶ月ね・・・(再び新聞を広げる。)だけ
      ど、ここに1ヶ月前の新聞なんてないぜ・・・」    ※
  
         そこへアンソニー、エドワード、ルイ、戸を
         開けて、回りを見回しながら登場。
         (戸を開けると、呼び鈴の音。)

  ピエール「いらっしゃいませ・・・」
  アンソニー「こんにちは。」
 
         娘達、その声に驚いて一斉に戸の方へ。
         アンソニーを認めて駆け寄る。

  娘達口々に「伯爵様!!」
  アンソニー「やぁ・・・(微笑む。)皆さんお揃いで、お買い物です
         か?」
  ミレーヌ「え・・・?あ・・・(ドレスを背後に隠す。)・・・ええ・・・!」

         娘達、其々ドレスを隠すように。

  エリーズ「伯爵様は何をお求めに来られましたの?」
  アンソニー「洋服をね・・・(ピエールに向かって。)ご主人!少し
         ドレスを見せて頂きたいのですが・・・。」
  ピエール「はいはい、どうぞこちらへ。(ドレスの掛かっているハ
        ンガーを差し示す。)この辺りに・・・。」
  
         アンソニー、その方へ。エドワード、ルイ、
         ソファーに腰を下ろす。
         娘達、アンソニーに付いて行く。

  アンソニー「(ドレスを見る。)・・・もっとこう・・・違うものはありま
         せんか?いや・・・、ここに掛かっているものも素晴ら
         しいのですが・・・」
  ピエール「いえいえ、伯爵様はお目が肥えていらっしゃる。さぁ
        ご覧下さいまし。お気の済むまで!(横のカーテンを
        開く。)」

         カーテンの中に、豪華絢爛なドレスがずらっと
         掛かっている。
         娘達、そのドレスを認め、声を上げる。  

  アンソニー「そう、こう言うドレスを探していたのです。(その中
         の一枚を選び、取り出す。エドワード達の方へ向っ
         て。)おい、エドワード!ルイ!(ドレスを見せて。)ど
         うだ!?」
  ルイ「(笑って。)よく似合うぜ!」
  アンソニー「馬鹿野郎!!エドワード?」
  エドワード「(チラッと目を遣って。)いいんじゃないか・・・」
  アンソニー「何だ、気のない返事だな。(ドレスを見て。)よし、こ
         れを貰うとしよう。(ピエールの方へドレスを差し出す
         。)」
  ピエール「ありがとうございます。」
  アンソニー「他に、これに合うアクセサリーと靴を・・・。飛びっきり
         の品を!」
  ピエール「(嬉しそうに。)はいはい、只今!!」
  シャロン「伯爵様・・・そのドレス、如何なさるお積りですの?」
  アンソニー「(微笑んで。)・・・ある人に・・・」

         “まぁ!!””キャーッ!!”など、口々に
         驚きの声を上げる娘達を残して、紗幕閉まる。

  ステラ「ある人にですって!!」
  シャロン「一体誰に差し上げるのかしら!?」
  クレナ「屹度、パートナーに選ばれた女性に贈られるのよ!!」
  ミレーヌ「もうお心に決めたお方がいらっしゃるのかしら!?」
  エリーズ「お心に決めた!?」
  皆「一体誰!?(お互いの顔を見回す。)」

         音楽で暗転。

    ――――― 第 11 場 ―――――

         下手方スポットに、ジェラール、ミハエル、
         ルドルフ浮かび上がる。

  ミハエル「先生、次の村にはあいつらはいるんでしょうかね?」
  ルドルフ「足取りが分からなくなって、もう3週間・・・。あんなに
        深い傷を負っていた筈なのに、こんな遠くまで本当に
        逃げて来てるのかなぁ・・・」
  ジェラール「羽ばたきの遠ざかった方向から、こちらの方へ逃げ
         て来たのは間違いない筈・・・」
  ミハエル「羽ばたき・・・って、先生、変なこと言うんですね。(笑う
        。)」
  ジェラール「早く見つけなければ・・・。そしてこの手で決着をつけ
         なければ・・・。」
  ルドルフ「決着って・・・?」
  ジェラール「私が生きているうちに・・・」
  ミハエル「先生・・・」
  ジェラール「(2人をゆっくり交互に見ながら。)おまえ達は知って
         いるか・・・?トランシルバニアに伝わる、昔からの奇
         話を・・・」
  ミハエル「奇話って・・・?」
  ジェラール「今から数百年昔・・・その地方に絶世の美女と謳わ
         れた舞姫がいた・・・。その舞姫を巡って、幾多の男
         性達が、何度無意味な争いを繰り返そうとも、誰一
         人として、舞姫の心を射止めることはできなかった
         ・・・。そんなある時・・・一人の世にも稀な美男子と
         囁かれる伯爵が現れ、2人は忽ちそのお互いの美し
         さに惹かれ、恋に落ちた・・・。今までどんなに手を尽
         くしても決して心を開くことのなかった舞姫を、たった
         一目で我が者にしてしまった伯爵は、人々の反感を
         一手に引き受けることになり、数日後、誰とも分から
         ない者の手によって・・・その命を殺められてしまった
         んだ・・・。それを知った舞姫の悲しみは尋常ではなく
         、誰がどんな慰めの言葉を掛けようとも、彼女は決し
         て泣き縋ったその体から離れようとせず、とうとう明
         日は埋葬と言う前の日の晩、遅く・・・その伯爵の体
         の上で、自らの命を短剣で胸深く突き刺し、絶ってし
         まったのだ・・・。あくる朝、その惨状を見た人々の驚
         きようは、言葉では言い表せない程だったそうだ・・・。
         何故なら、その場には、前の日まで静かに眠ってい
         た伯爵の遺体はなく、自害した舞姫の亡骸だけが、
         静かに横たわっていたから・・・。そして、その舞姫の
         様子は、悲しみに暮れてはいても、昨日までの美しく
         輝いていた姿とは打って変って、体中の血液と言う
         血液が流れ出たでもなく、全て吸い尽くされでもした
         ように、丸で・・・干物のようになっていたと言うことだ
         ・・・。」
  ルドルフ「(顔を強張らせて。)・・・それで・・・その伯爵は・・・?」
  ジェラール「未だ嘗て分からない・・・」
  ミハエル「・・・けど・・・今の話しと・・・先生が奴らを追い続けてい
        ることと、何の関係が・・・?」
  ジェラール「何れ、おまえ達にも分かる時が来る・・・。何れ・・・」

         ジェラール、ミハエル、ルドルフ、フェード・アウト。
         入れ代るように、上手、アンソニー、エドワード、
         ルイ、フェード・イン。

  エドワード「(溜め息を吐いて。)アンソニー・・・余計な好奇心は
         出すなと言ってあっただろう・・・。こんなことは言いた
         くはないが、おまえ・・・あの娘に入れ込み過ぎじゃな
         いのか・・・?あんなドレスまで・・・。」
  ルイ「そうそう、あの後の村の娘達の騒ぎようったらなかったぜ
     。“あのドレスをどう為さるおつもりかしら!!”って。(笑う。
     )」
  エドワード「ルイ!!」
  アンソニー「彼女は俺のことを、天使のようだと言ったんだ・・・。」
  ルイ「(笑って。)天使?堕天使の間違いだろ?」

         アンソニー、ルイを一瞬見据える。

  ルイ「(ハッとして。)・・・ごめん・・・」
  エドワード「兎に角だ・・・。もう直ぐこの村へやって来て一月・・・
         奴らが追い付いて来ても、可笑しくない頃だ・・・。」
  アンソニー「分かっている・・・。長の滞在は命取りになることを
         ・・・。だが、俺は彼女を一人にすることが出来ない
         !!」
  ルイ「じゃあ、いっそのこと、仲間にしてしまえば?」
  エドワード「ルイ・・・軽々しくそう言うことを言うな・・・。幾等、仲
         間に入れたくても・・・彼女がそう望んだとしても・・・
         彼女の体が拒絶すれば、彼女はこの世の塵となり、
         消滅するんだ・・・。」
  ルイ「・・・ごめん・・・。確率は五分五分・・・か・・・。じゃあ、俺達
     は運が良かったんだな。(笑う。)」
  エドワード「・・・そう言うことだ・・・。」
  アンソニー「・・・一人がどう言うことか・・・。一人でずっといなけ
         ればならないことが、どんなに苦しいことか・・・俺に
         は・・・よく分かるんだ・・・。」
  エドワード「・・・アンソニー・・・」

         フェード・アウト。

    ――――― 第 12 場 ―――――

         豪華な音楽が流れてくる中、紗幕開く。
         と、舞台はエドモン邸。
         美しく着飾った男女、音楽に乗ってワルツを
         踊る。

  エリーズ「結局、伯爵様があのドレスをどう為さったか、分から
        ず仕舞いね。」
  ミレーヌ「本当!けれど見たところ、村の娘にプレゼントしたん
       じゃないってことは事実のようね。だって誰も、あの豪華
       な絹のドレスを身に纏っている者はいないんだもの。」
  シャロン「がっかりだわ・・・。」
  エリーズ「でも、この中の誰かがそのドレスを着て、伯爵様とワ
        ルツを踊っているのを見るよりはいいわ!」
  シャロン「そうね!もしそんな光景を見なくちゃならないのなら、
        私、屹度ショックで倒れてしまうわ!!」
  オードリー「(3人の側へ。)皆さん、何のお話し?」
  エリーズ「(オードリーに気付いて。)あら、オードリー。」
  ミレーヌ「いえね・・・伯爵様がお求めになったドレスの行き先は、
       何処なのかって・・・。」
  オードリー「そうねぇ・・・まさか・・・」
  ミレーヌ「え?」
  オードリー「まさかシャンドール家の誰かに・・・!?」
  シャロン「ああ、それなら大丈夫。さっき3人には会ったけれど、
        誰もあの豪華絢爛な衣装を身に着けた者はいなかっ
        たわ。」
  オードリー「(ホッとして。)そう・・・。で、当の伯爵様は?」
  エリーズ「それがまだお見えになってらっしゃらないみたい。」

         そこへ奥よりエリザベート登場。
         オードリー、逸早くエリザベートを認め、
         ドレスをたくしあげ駆け寄る。

  オードリー「エリザベート!!伯爵様は!?」
  エリザベート「あら、オードリー。それがここへ来る前、私が部屋
          へお迎えに上がった時には、もういらっしゃらなくて
          ・・・」
  オードリー「いらっしゃらない?そんな筈ないでしょ!?今日は
         伯爵様の歓迎パーティなのよ!?主役がいなくちゃ
         話しにならないじゃない・・・。」
  マルガリーテ「(オードリーの側に来て。)まぁまぁ・・・もっと落ち
           着きなさい、オードリー。」
  オードリー「(振り返ってマルガリーテを認める。)お母様・・・」
  エリザベート「今日の舞踏会を忘れる筈はないし・・・」

         その時、入口に正装したアンソニー、リーザを
         エスコートして現われる。2人の後ろに、
         エドワードとルイ立つ。リーザはアンソニーが
         洋品店で求めた豪華なドレスに身を包み、
         頬は興奮の為に少し紅潮している。嬉しそうに
         見回すリーザに、優しく微笑みかけるアンソニー。
         中にいた者、踊っていた者は止めて、アンソニー
         達を認め、一様に驚きの声を上げ、釘付けに
         なる。
         その人々の騒めきに気付いたエリザベート、
         オードリー達もその方を見、アンソニー達を
         認めただ驚く。

  オードリー「・・・伯爵様・・・」
  エリザベート「・・・リーザ・・・」
  オードリー「(エリザベートの体を揺する。)な・・・何よ・・・誰・・・?
         あの女・・・。」
  マルガリーテ「・・・確か・・・シャンドール家の亡くなった奥様の
           一人娘だった・・・」
  オードリー「え!?」

         クレナ、ステラ、エリザベートに駆け寄る。

  クレナ、ステラ「お姉様!!」

         エリザベート、凄い形相でその方を見据え、
         足早に立ち去る。
         クレナ、ステラ、慌てて後を追う。

  クレナ、ステラ「お姉様、待って!!」

         オードリー、アンソニー達の方を気にしながら、
         エリザベートを追うように去る。
         エドモン、ヴィクトリア、アンソニー達に近寄る。













       ――――― “アンソニー”6へつづく ―――――












    ※ 今の私なら、「100年前」と書いていたでしょうね^^;
      それで、アンソニー達の過去と、リンクさせる物語にして
      いると思います(^^)





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2012年9月15日土曜日

“アンソニー” ―全16場― 4

         アンソニー、歌いながらリーザの側へ。そっと
         リーザの手を取る。リーザ、アンソニーに導か
         れるように立ち上がり、嬉しそうにアンソニーを
         見詰める。アンソニー、リーザの手を引いて、
         前方へ。紗幕閉まる。

         “空がどんなに青いのか・・・
         海がどんなに広いのか・・・
         風はどんな風に戦ぐとか・・・
         陽はどんな風に降り注ぎ・・・
         小鳥達は何を囀り合うのか・・・
         ただ当たり前のことを
         ただ何時も見聞きしていることを
         僕の肌で感じ
         僕の心で見・・・
         感動し・・・心動かされ・・・
         生きていることが素晴らしいと
         この思いを君にも・・・

         朝陽が昇り・・・朝露が弾け・・・
         木漏れ日が暖かく・・・
         人々の騒めき・・・喜び・・・
         笑い声・・・
         月が昇り・・・星が降り注ぎ
         辺りが闇に包まれても・・・
         僕の肌で感じ・・・
         心動かされ・・・
         生きていることが素晴らしいと
         この思いを君にも・・・”

         見詰め合うアンソニーとリーザ。暗転。

    ――――― 第 8 場 ―――――
         音楽で、紗幕開く。と、舞台は村の風景。
         村人達、楽し気に歌い踊る。
         決めのポーズで其々、散り散りになり、話し
         込んでいたり、仕事をしていたり。
         下手より、ゆっくりアンソニー、エリザベート
         並んで登場。
         一寸遅れてルイ、続いて深く帽子を被った
         エドワード登場。

  アンソニー「外へ出るのは、怪我して以来、今日が初めてだが、
         この村は本当に綺麗な所ですね・・・。こうして歩いて
         いるだけで、心が洗われるようです・・・。」
  エリザベート「傷にも屹度、いいと思いますわ。」
  アンソニー「そうですね。もし、世の中に自分はこの直ぐ側にい
         るにもかかわらず、この美しい風景を知らずに生き
         ていかなければならない人がいるとすれば、それは
         本当に不幸なことです・・・。」
  エリザベート「え・・・?(一瞬、驚いた面持ちをする。)」
  アンソニー「(そのエリザベートの様子に気付きながら、知らん
         顔で振り向く。)エドワード、おまえも外に出るのは久
         しぶりだろ?気持ちいいと思わないか?」
  エドワード「・・・俺は太陽は、どうも苦手だ・・・。」
  アンソニー「(笑って。)変わった奴だな。こんな気持ちのいい陽
         射しが、苦手だなんて・・・。」
  ルイ「(笑って。)どっちが・・・」
  エドワード「おまえ達は健康的だからな・・・。」

         戯れていた娘達、アンソニー達に気付いて
         素早く近寄る。

  エリーズ「こんにちは、エリザベート!!」
  エリザベート「こんにちは、みなさん。」

         みんな、エリザベートと挨拶を交わしながら、
         目はアンソニーをチラチラ盗み見している。

  ミレーヌ「そちらが、お噂の・・・」
  エリザベート「ええ。ご紹介します。こちら我が家の大切なお客
          様で、アンソニー・ヴェルヌ伯爵。お隣はお友達の
          エドワード様、ルイ様・・・。」
  アンソニー「(微笑んで。)初めまして。(手を差し出す。)」
  
         娘達、順番に嬉しそうに手を出して、握手を
         しながら、挨拶を交わす。

  シャロン「お散歩ですか?」
  アンソニー「ええ。こんないい天気の日に、家にばかり籠もって
         いるのは余りに勿体なく、エリザベートに村を案内し
         てもらっていたのです。(傍らに咲いている花々に目
         を遣って。)ほら・・・外へ出れば、こんなに綺麗な花
         々が咲き乱れている・・・。」

         娘達、その方へチラッと目を遣るが、直ぐに
         アンソニーの回りに戯れる。

  エリーズ「伯爵様はどちらからお越しになられましたの?」
  ミレーヌ「お年は?」
  シャロン「どう言ったご旅行で、この村へ?」
  リチャード「(娘達の背後から。)いつまでご滞在なさいますの?
         」

         娘達、リチャードに気付いて振り返る。

  ミレーヌ「リチャード!!(怒ったように。)」

         リチャード、肩を窄めてその場から離れる。

  エリザベート「(慌てたように。)ちょっと、みなさん!!そんなに
          一度に質問して、アンソニーを困らせないで下さい
          な!!」
  アンソニー「(取って付けたように笑う。)ハハハ・・・困ったな・・・
         。」
  エリザベート「ほら、ご覧なさい!!」
  アンソニー「(微笑んで。)さて・・・何から答えればよかったかな
         ?」
  ルイ「(笑ってアンソニーの耳元で。)年だよ。」
  アンソニー「(一瞬、瞳を輝かせて。)そう・・・年は・・・424歳・・・
         。」
  エドワード「アンソニー!!」

         娘達、一瞬呆然とアンソニーを見詰めるが、
         直ぐにお互い顔を見合わせて笑う。

  シャロン「いやだわ、伯爵様!」
  エリーズ「ご冗談ばっかり!」
  ミレーヌ「424・・・24歳ね?そうでしょ?」
  アンソニー「(笑って。)当たりです。次は・・・」
  シャロン「どこからお越しになったの?」
  アンソニー「ヨーロッパの外れ・・・トランシルヴァ二アからです。
         この旅行は、(エドワードの肩に手を置いて。)こい
         つの傷心旅行なんですよ。愛しい人に振られた・・・。
         」
  エドワード「(驚いて。)アンソニー!!おまえ・・・」
  ルイ「(大声で笑う。)」
  ミレーヌ「まぁ、そうですの・・・」
  エリーズ「お可哀相に・・・。けれどエドワード様も、伯爵様とは
        何れ劣らぬ美男子でいらっしゃるから、また直ぐに、
        いい人が現れますわ。」
  ミレーヌ「そうそう。それに、もう少し愛想よく為さると、もっと宜し
       いんじゃないかしら。」
  ルイ「(再び声を上げて笑う。)」
  エドワード「(少し照れたように。)・・・それは、ご忠告をどうも・・・
         。」
  アンソニー「(笑って。)良かったな、自分の欠点を知ることがで
         きて。」
  エドワード「(アンソニーをチラッと睨む。)」

         そこへ下手より、エドモン、ヴィクトリア、
         従者ハンスを従えて登場。

  フィリップ「(エドモン達に気付いて。)エドモン様。」
  エドモン「やぁ・・・よい天気だね。」

         他の者達も、エドモン達に気付く。

  シャロン「エドモン様、奥様、こんにちは!」
  ヴィクトリア「みなさん、こんにちは。」

         みんな其々エドモン、ヴィクトリアと挨拶の
         言葉を交わす。

  エリザベート「(エドモンの前へ進み出て。)こんにちは、エドモン
          様。ご紹介致しますわ。(振り向いて、アンソニー達
          の方を指示して。)こちら、我が家のお客様で、アン
          ソニー・ヴェルヌ伯爵とご友人のエドワード様とルイ
          様です。(アンソニーの方を向いて。)伯爵様、こち
          らは弁護士のエドモン様と、その奥様・・・。」
  エドモン「おお。ではこちらがこの間話していた・・・」
  アンソニー「初めまして。」
  ヴィクトリア「お噂はかねがねお聞きしていましたわ。ぜひ、お目
         にかかりたいと、主人とも申しておりましたの。」
  アンソニー「(微笑んで。)それは大変光栄です、奥様・・・。(ヴィ
         クトリアの手を取って、口付ける。)」
  エドモン「それで、この村には何時まで?」
  アンソニー「はい。傷の方はシャンドール家の方々の手厚い看
         護によって、もう殆ど完治していますので、立てと言
         われたなら、今直ぐにでも出発できるまでになって
         います。」
  エリザベート「(慌てて。)まだ駄目ですわ!!今、無理を為さっ
          て、折角治り掛けている傷が、また悪化するとも限
          りません!!」
  アンソニー「(微笑んで。)ただ、僕はこの村がとても気に入りま
         してね。シャンドール家の迷惑でなければ、もう暫く
         置いてもらおうかと考えている所なんです。」
  エリザベート「ええ!!もう全然・・・迷惑だなんてとんでもない
          !!何時までもゆっくりしていらして結構ですのよ
          !!」
  エドモン「それならば、ぜひ歓迎の舞踏会でも盛大に開かなけ
        ればいけないな。」
  ヴィクトリア「そうですわね。」
  エドモン「では、仕事が一段落する次の日曜日にでも、我が家
        で久々の舞踏会を催すとしよう。如何かね?アンソニ
        ーくん。」
  アンソニー「そう言うことなら、勿論喜んでお伺いしますよ。」
  ヴィクトリア「まぁ、良かったこと。日曜日が楽しみですわね。」

         娘達、歓喜の声を上げる。
         暗転。
         
    ――――― 第 9 場 ―――――

         フェード・インする。と、絵紗前。リーザの部屋。
         窓から遠くを見遣るように立ち、呟くように歌う
         リーザ。

         “森が呼んでる・・・風を戦がせて・・・
         小鳥が囁く・・・早くおいでと・・・
         花は何故咲くの・・・?
         何時かは散りゆくのに・・・
         その見事なまでの輝きを
         あなたに見せる為・・・
         あなたに微笑んでもらう為に・・・
         ほんの一瞬の時を大切に生きたい・・・”

         奥より、ガウンを持ってクララ登場。

  クララ「(驚いて。)お嬢様!ベットから起き上がられたりしたら、
      お体によくありません。さ、早くお戻りになって下さい!」
  リーザ「(微笑んで。)大丈夫よ、クララ。心配しなくても・・・。何故
      だか分からないけれど、ここ数日はすっかり病気が良くな
      ったかのように、調子がいいの。」
  クララ「でも・・・もし、また以前のようにお倒れになられたら・・・
      (心配そうに。)」
  リーザ「ありがとう・・・。そうね・・・、じゃあベットに戻ります。」

         リーザ、ベットに横になる。クララ、ベットの
         横の台の上から、薬とコップを手に取り、
         リーザへ差し出す。

  クララ「さ、お薬を飲んで下さい・・・。」

         リーザ、クララから薬とコップを受け取り、
         それを飲み、コップを再びクララへ手渡す。

  クララ「それでは、ちゃんとお休みになってて下さいましね。」

         クララ、扉の方へ進む。

  リーザ「クララ・・・」
  クララ「はい?(振り向く。)」
  リーザ「・・・お父様・・・お母様や・・・エリザベート達は、如何して
      いらっしゃる?」
  クララ「あの・・・(困ったような面持ちで。)ご主人様と奥様は、ま
      だ・・・ご旅行中です・・・。エリザベート様達は・・・その・・・
      リーザお嬢様のご心配をしていらってしゃいました・・・。あ
      の・・・ご心配を・・・(言葉に詰まる。)」
  リーザ「クララ・・・、いいのよ。分かってるわ・・・。ごめんなさいね。
      あなたを困らせるようなことを聞いてしまって・・・。」
  クララ「お嬢様・・・すみません!!(頭を下げて、素早く去る。)」

         一時置いて、鳥の羽ばたく音が聞こえる。
         リーザ、一瞬テラスの方へ顔を向けるが、
         直ぐ横の台の上から一冊の本を取り、膝の
         上へ置き目を遣る。
         そこへテラスより、アンソニー登場。

  アンソニー「(微笑みながら、リーザの方へ近寄る。)こんにちは
         。」
  リーザ「(アンソニーを認めて、嬉しそうに微笑む。)アンソニー
      !!何処から来られたの!?」
  アンソニー「空から・・・。」
  リーザ「(クスクス笑って。)あなたって変わった所から、いらっ
      しゃるのね。」
  アンソニー「何せ秘密の訪問だからね。(笑う。)」
  リーザ「ごめんなさい・・・」
  アンソニー「何も謝ることはない・・・。僕が自分で来たいと思っ
         たから来たんだから・・・。あ、プレゼントがあるんだ。
         (手に持っていた小さな花束を、リーザの方へ差し出
         す。)」
  リーザ「(花を受け取って、溜め息を吐く。)・・・まぁ・・・何て綺麗
      な花なの・・・?ありがとう、アンソニー・・・。(嬉しそうに、
      花を愛でる。)」
  アンソニー「(そのリーザの様子を微笑ましく見詰めながら、ベッ
         トの傍らへ腰を下ろす。)今は春・・・外にはこんな美
         しい花々が、山のように咲いているんだ。」
  リーザ「そう・・・。屹度素敵でしょうね・・・。」
  アンソニー「ああ、素敵だよ!!(思わずリーザの手を握る。)一
         緒に行こう!!」
  リーザ「・・・一緒に行ける・・・?」
  アンソニー「ああ、行けるよ!!」
  リーザ「本当に・・・?」
  アンソニー「ああ、本当だとも!!」
  リーザ「(微笑んで。)あなたに言われると、どんなことも叶えら
      れるような気がするから不思議ね・・・。」
  アンソニー「必ず叶うんだ。不思議じゃないさ!そうだ!その証
         拠に、先ずは今度の日曜日にエドモン邸で行われる
         舞踏会に、君を連れて行ってあげよう!」
  リーザ「(呆然と。)・・・舞踏会・・・?」
  アンソニー「そう、我々の歓迎パーティを開いてくれるそうだ。そ
         こには村中の連中が集まることだろう。」
  リーザ「・・・でも・・・!」
  アンソニー「どうした?体のことなら、心配する必要はない。」
  リーザ「私・・・今まで一度も舞踏会なんて・・・(俯く。)」
  アンソニー「僕が一緒なんだ。大丈夫・・・君をエスコートするか
         ら・・・。」
  リーザ「(ゆっくり顔を上げて、アンソニーを見詰める。)ずっと・・・
      側にいてくれる・・・?」
  アンソニー「(微笑んで。)ああ・・・」
  リーザ「(嬉しそうに頷く。)」
  アンソニー「決まりだ!!」
  リーザ「舞踏会なんて本で読んだことしかなくって・・・。今まで私
      には御伽の国の話しだった・・・。まさか、その舞踏会に、
      私も行けるなんて・・・。(溜め息を吐く。)夢みたいだわ・・・
      。」
  アンソニー「舞踏会では、男性は紳士然と、その日ばかりは美
         しく着飾ったご婦人方をエスコートするんだ・・・。それ
         は何時の世も変わりはしない・・・。豪華な音楽と煌び
         やかな人々・・・。」
  リーザ「美しく・・・着飾ったご婦人方・・・?」
  アンソニー「ああ・・・。(笑って。)それはそれは皆、普段とは全く
         別人のような変わりようさ。」
  リーザ「・・・私・・・(下を向く。)」
  アンソニー「何だい?」
  リーザ「・・・折角のお気持は嬉しいけれど・・・私・・・やっぱり行
      けない・・・。」
  アンソニー「(驚いて。)如何して!?」
  リーザ「(悲しそうに微笑む。)あなたもご存じでしょう?私は一
      度もこの部屋から出たことがない・・・って・・・。
  アンソニー「・・・ああ・・・」
  リーザ「他のご婦人方のように、美しく着飾れるようなものは、何
      も持っていないんです・・・。(自分の身に着けている、ナイ
      トウエアを見て。)こんな格好で・・・貴公子のあなたにエス
      コートされるなんて出来ないでしょう・・・。」
  アンソニー「(ホッとしたように微笑む。)・・・何だ・・・そんなこと・・
         ・。」
  リーザ「そんなことじゃないわ・・・。あなたにとっては些細なこと
      でも、私には・・・!」
  アンソニー「すまない・・・そんなつもりで言ったんじゃないんだ。
         君は何も心配しないで、日曜日を楽しみにしておい
         で・・・。」
  リーザ「・・・アンソニー・・・」
  アンソニー「僕に任せて・・・」

         手を取り、見詰め合うアンソニーとリーザ。
         音楽で暗転。            
    
        
   








       ――――― “アンソニー”5へつづく ―――――










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“リトルパイン7周年記念公演のお知らせ♪”


         



     リトルパイン7周年記念公演の詳細が決まりましたので、
     お知らせします(^。^)



 ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪



   ミュージカル人形劇団“リトルパイン”7周年記念公演♪




      日にち   ・・・  2012年11月2日(金)


      時間   ・・・  PM18:00開場 
                
                PM18:30開演



      会場   ・・・  吹田市文化会館“メイシアター”
                
                  小ホール



                入場無料



   
   第1部    『アリアの海―全6場―』  公演時間35分
   

         (あらすじ)

         海の国に住むアリアは、好奇心旺盛なお姫様です。

         ある時、父である海の国の王様に、行ってはならない
         と言われていた人間達の住む陸地へ、友達のイルカ
         (キューイ)とこっそり遊びに出掛けました。
         そこでアリアは、海の国へ入る為に必要な門の鍵、
         “貝の笛”を砂浜でなくしてしまったのです。
         
         アリアは無事にその笛を見つけ出し、海の国へと
         帰ることが出来るのでしょうか・・・?



             ――― 休憩 15分 ―――



   第2部    『J“未来の君へ”―2幕―』 公演時間1時間
                             (幕間休憩5分)


         (あらすじ)

         “J(ジェイ)”は、正義感一杯の子どもです。いつも
         いじめっ子から友達を守ることに一生懸命なJは、
         今日も友達のマイクを庇い、いじめっ子達に立ち向
         かっていました。
         その時、転がったボールを追い、車の前へ飛び出し
         た子犬を助ける為に、Jは子犬の身代わりとなって、
         死んでしまったのです。

         さて・・・そんな理由から天界へとやって来たJですが
         ・・・“いいこと”をして命を落とした為、一つだけ願い
         を叶えてもらえることになりました。
         Jの願いとは一体・・・そしてその願いは叶うことが
         出来るのでしょうか・・・?






 ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪



    今回は、記念公演と言うことで、日頃、リトルパインを応援
   
   して下さっている方達にも楽しんで頂ける作品を・・・と考え、

   いつものように子ども向きの作品(“アリアの海”)と、大人の方
   
   にも満足して頂ける作品(“J―未来の君へ―”勿論子どもさん

   でも楽しんで頂けるような作品になっていますので、ご安心
  
   を・・・^^;)の、2本立てを用意しております(^_^)


   念願であった、思い出の会場での公演・・・

   休日前の夜公演・・・

   そして、リトルパインではお目にかかることがほぼないであろ

   う、ちょっと大人な作品と・・・

   初めてのことばかりで、私自身、まだ試行錯誤を重ねながら、

   団員達と共に、準備を進めていっている最中であります^_^;


   ・・・が・・・

   足を運んで下さる皆様のことを思い、少しでも満足度の高い

   公演を行う所存で頑張って参りますので、

   お時間、ご興味がおありでしたら、秋の夜長・・・

   演じては人形ではありますが、1年以上かけ準備を進めて来た

   ミュージカルを、是非ご覧になりにいらして下さい





                   ミュージカル人形劇団“リトルパイン”

                                 代表 どら。





 ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪


       (おまけフォト^^;)

       

    
    これ ↑ は、“J”作品の私の台本の1ページです(^.^)

   綺麗だった台本が、1年の歳月をかけ編集、練習と重ね
   ていった後、こんな風に、どこに何が書かれてあるのか
   自分でもあまりよく分からないような台本に変わっていく
   のです(>_<)

   よ~く見て頂くと、Jがどんな願いを叶えてもらったのかが
   分かりますね^^;
   
   黄色のマーカーが引いてある箇所がJ(私)の台詞・・・上の
   写真の台本部分は、歌になります^_^;
   この作品、歌が主流の作品になるので、台詞だけの箇所
   を探すほうが、実は難しいのです(^_^;)

   かれこれ1年以上前、台詞メンバー達が四苦八苦し、文句
   を散々言いながらも録音に挑んだ作品・・・ある意味、
   私にとっても色々と思い出に残る作品であります(*^_^*)








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2012年9月14日金曜日

“アンソニー” ―全16場― 3

         エリザベート、オードリー、マルガリーテ座る。
         ステラ、クレナ側へ立つ。

  エリザベート「こちらは隣家のマルガリーテ小母様と・・・」
  オードリー「娘のオードリーですわ!」
  アンソニー「(微笑んで。)全くこの村のご婦人方は、皆さん素敵
         な方達ばかりだ・・・。あ・・・失礼・・・。僕はアンソニー
         ・ヴェルヌ・・・。この二人は友人のエドワードとルイ。
         ヨーロッパ全土を旅して回る途中で、今は皆さんご存
         じの、この通りですよ。」
  オードリー「(溜め息を吐いて。)本当に、お噂通りのお方ですの
         ね。」
  アンソニー「噂・・・?」
  オードリー「ええ、村中の噂ですのよ。シャンドール家に滞在為
         さってるお客人は、世にも稀な美男子だと・・・。」
  アンソニー「それは参ったなぁ・・・」
  エリザベート「元を辿れば、ステラとクレナが言い触らしたような
          ものですけど。」
  ステラ「あら、嫌だわお姉様。言い触らしただなんて。」
  クレナ「そうよ。ただ黙ってることが出来なかったのよ、嬉しくて。
      こんな素敵なお客様が、我が家にいることが!!」  
  オードリー「(アンソニーに近寄って、マジマジと見詰め。)けど、
         本当にクレナ達の気持ちが分かってよ・・・」
  マルガリーテ「これ、オードリー!はしたないですよ!!」
  オードリー「(ハッとして。)あら・・・ごめんなさい・・・。」
  アンソニー「(微笑んで。)構わないですよ。僕の方こそ、そんな
         風に思ってもらえて光栄です。」
  オードリー「(エドワードとルイを見て。)それにお友達の方も、
         何れ劣らぬ美男子・・・。本当に、家に来て下されば
         良かったのに!!」
  エリザベート「あら、駄目よ!!」
  エドワード「あの時は、一刻も早くアンソニーを休ませたかった
         もので、兎に角一番初めに目に付いた、この屋敷の
         ドアを叩いたのです。」
  アンソニー「本当に感謝していますよ、エリザベート・・・。本来な
         らば、楽しいだけの旅先で、怪我をするなどと、全く
         とんだ失態です。」
  エリザベート「でも回復が早くて、驚きましたわ。あの時は本当
          に今にも死にそうなご様子でしたから・・・」

         エドワード、ルイ、そっと顔を見合す。

  アンソニー「こう見えても僕は昔から、体力には自信がありまし
         たからね。(笑う。)」
  ルイ「(笑って。)そうそう!昔からこいつときたら、クラス中の奴
     らが風邪で休んだとしても、たった一人でピンピンしている
     ような男でしたよ。」
  マルガリーテ「学生時代からのお友達?大変仲がお宜しいのね
           。」
  アンソニー「ええ。腐れ縁と言う奴ですよ。」
  ルイ「酷いな。(笑う。)」
  アンソニー「(微笑んで)まぁ、冗談はさて置き、2人は僕にとって
         は大親友と言った所でしょうか・・・。(エリザベートと
         オードリーの方を向いて。)あなた方も?」
  エリザベート「私達は正しく腐れ縁・・・。即ち犬猿の間柄、あなた
          方のように、大親友だなんてとんでも・・・」
  オードリー「そもそも私達の仲の悪さは、お互いの両親から受け
         継いだみたいなものなんです。」
  マルガリーテ「まぁ、私達のせいにされちゃあ困るわ。」
  エリザベート「今日だって、呼びもしないのに、オードリーがどうし
          てもアンソニーに会いたいと無理矢理・・・」
  オードリー「無理矢理ですって!?見せびらかす為に呼んだの
         は誰よ!!」
  マルガリーテ「オードリー!」
  アンソニー「(微笑んで。)喧嘩をする程、仲が良いと言うでしょう
         。そう言う間柄程、お互い気付かないうちに、お互い
         を認め合っているものなんですよ。それで、知らず知
         らずのうちに、相手を必要としている・・・。良い関係
         だと思いますよ、とっても・・・。」
  エリザベート「今までオードリーのことは、そんな風に思ったこと
          ありませんけど、あなたに言われると、何だか本当
          にそんな気がしてきますわ・・・。」
  オードリー「本当・・・」
  ステラ「まぁ、アンソニーに言われると、意見まで合うのね。」
  アンソニー「(何か思いついたように。)そうだ!みんなで鬼ごっ
         こでもしましょう!」
  エドワード「アンソニー!!」
  アンソニー「(エドワードの声は耳に入っていないように。)じっと
         してばかりいると、体が鈍ってしまいそうですよ。」
  オードリー「でも傷は・・・」
  アンソニー「大丈夫!少しくらい運動した方が傷にもいいんです
         よ。さぁ、僕から鬼です!20数える間に、みんな逃
         げて下さいよ!!」

         オードリー、エリザベート、マルガリーテ、
         ステラ、クレナお互いの顔を見合わせる。

  エリザベート「それじゃあ・・・」

         5人、其々頷いて嬉しそうに声を上げて、
         散々に部屋から走り去る。

  アンソニー「(大きな声で。)1、2、3・・・さぁ、おまえ達も逃げろ
         よ!」
  エドワード「一体何考えてるんだ、おまえは・・・」
  アンソニー「こんな所に座って、うだうだ話すのは嫌なんだ。あ
         れこれ根掘り葉掘り自分のことを探られてるようで・・
         ・。学生時代からの腐れ縁とは、よく言ったな・・・。(
         笑う。)」
  エドワード「アンソニー・・・」
  アンソニー「19、20!!(エドワードに飛び掛かる。)摑まえた
         !!次はおまえが鬼だぞ!!来い、ルイ!!(部屋
         から走り去る。)」
  ルイ「OK!!(アンソニーに付いて、走り去る。大きな声で。)
     次はエドが鬼だ!!」
  エドワード「(呆然と2人が出て行ったドアを見ている。)・・・全く
         、仕方ないな・・・。けど、何で俺が・・・くそう!!」

         エドワード、ドアから走り去る。
         音楽でフェード・アウト。

    ――――― 第 7 場 ―――――

         フェード・インする。と、絵紗前。
         リーザの部屋。
         中央に設えたベットの上に、リーザ、腰を
         下ろしている。
         一寸離れてミシェル立つ。

  リーザ「それで、学校の方はどう・・・?」
  ミシェル「どうもこうも、姉さん。相変わらずベア先生ときたら、皆
       に受けないようなジョークばかり飛ばして、酷いもんさ!
       おまけに、笑わない者には、決まって他の奴より宿題が
       多いときたら、皆可笑しくなくても、笑うしかないだろ?
       全く、ベア先生の授業は、拷問にでもかけられてるみた
       いだよ。」
  リーザ「(楽しそうに笑う。)まぁ・・・それであなたは?」
  ミシェル「決まってるさ、皆より一番!!・・・宿題が多い生徒さ
       ・・・残念ながらね。」
  リーザ「あら、でも皆より沢山、勉強が出来るんだもの、先生に
      感謝しなくちゃね。」
  ミシェル「冗談言ってら。それより、体の調子はどう?発作は?」
  リーザ「ありがとう、心配してくれて・・・。最近はとても具合がい
      いの。今日みたいに、ベットから起き上がれたり・・・窓を
      思い切り開けて、外の空気を吸ってみたり・・・」
  ミシェル「(リーザの側へ寄って。)あまり無理しちゃ駄目だよ。ま
       た、いつ発作が起きるとも限らないんだ。僕が来てる時
       ならまだしも、一人の時には・・・」
  リーザ「分かってる。(微笑んで。)ミシェルは優しいのね・・・。」
  ミシェル「昔・・・僕が好奇心からこの部屋のドアを開かなかった
       ら、僕は姉さんの存在に気付くことはなかった・・・。あの
       時から子ども心に、この部屋に囲われていた姉さんの、
       僕はナイトにならなけりゃ・・・って、そう思ったんだ。」
  リーザ「ミシェル・・・私はあなたが時々訪ねて来てくれるのが、
      とても嬉しいわ・・・。あなたの話しを聞いて、あれこれ想
      像出来るのが、とても楽しくて・・・。ありがとう・・・。」
  ミシェル「そんな・・・。けど、最近は学校が忙しかったりして、中
       々会いに来れなくて・・・ごめんよ・・・。」
  リーザ「(首を振る。)あなたにはあなたの生活が一番大切よ・・・
       」
  ミシェル「姉さん・・・」

         外から、娘達の楽し気な笑い声が、遠くに
         聞こえてくる。
         リーザ、ミシェル、扉の方へ顔を遣る。

  ミシェル「まただ・・・」
  リーザ「旅の途中に、お怪我為さって立ち寄られたお客様?」
  ミシェル「(頷く。)全く、あんな大怪我をしておきながら、一週間
       やそこらで鬼ごっこが出来るまでに回復するなんて、
       本当、強靭な体力の持ち主だよ。おまけにご婦人方の
       持て成し方が、凄く上手いんだ。まぁ、それだけで姉さん
       達がキャーキャー騒いでる訳じゃないんだけど・・・。(思
       い出したように腕時計を見て。)あ・・・姉さん、ごめん!
       !今日は午後から授業があったんだ!!もう行かなけ
       りゃ・・・」
  リーザ「いいのよ。(微笑む。)」
  ミシェル「また来るよ!!(急いで、ドアの方へ。)余り無理しちゃ
       駄目だよ!!」

         ミシェル、そっと扉を少し開いて、外の
         様子を覗くように。誰もいないのを確認
         して、リーザに手を上げ、さっと出て行く。
         再び、外から笑い声。リーザ立ち上がって
         窓の側へゆっくりと進む。
         その時、突然扉が開き、息を弾ませた
         アンソニー飛び込んで来る。
         アンソニー、リーザ其々お互いを見詰め、
         驚いた面持ちで立ち尽くす。

  アンソニー「あ・・・すまない!!」
  リーザ「(首を振る。)あ・・・(突然苦しそうに胸を押さえて座り込
      む。)」

         アンソニー、リーザのその様子に、ゆっくりと
         近付き、そっと自分の胸に抱き寄せる。
         暫くすると、リーザの発作は治まる。

  リーザ「(自分自身、体のその変化に驚いたように。)私・・・」
  アンソニー「大丈夫かい?」
  リーザ「(頷く。)」
  アンソニー「(リーザの手を取って立たせてやり、ベットの上へ腰
         を下ろさせる。)この部屋の扉は、決して開けてはい
         けない・・・そう言う風に言われていたけど・・・。」
  リーザ「(一瞬、悲しそうな面持ちになる。)・・・そう・・・」
  アンソニー「この家の人達は、こんなに美しい娘を、自分達以外
         の者の目に触れることを拒絶してたのかな・・・?」
  リーザ「・・・そんな・・・。(ゆっくりと。)この家の人達にとって、私
      は邪魔者以外の何者でもありません・・・。」
  アンソニー「如何してそんな風に・・・?よかったら話してみない
         か?あ・・・決して怪しい者じゃないんだ。僕はアンソ
         ニー・ヴェルヌ・・・一週間前・・・」
  リーザ「存じてますわ・・・。怪我を為さって、家で養生されてた
      お客様ですわね?」
  アンソニー「その通り・・・。君は・・・?」
  リーザ「私はこの家の娘で、リーザと申します・・・。」
  アンソニー「この家の娘・・・と言うことは、エリザベート達とは姉
         妹に?」
  リーザ「はい・・・。血はつながってませんけど・・・。」
  アンソニー「血はつながっていない・・・とは?」
  リーザ「私の本当の母は、私が小さい頃に亡くなりました・・・。
      エリザベート達は、今の母の連れ子だったんです・・・。」
  アンソニー「成る程・・・」
  リーザ「末のミシェルだけは、その後に生まれた子ですから、血
      のつながった姉弟と言うことになりますけど・・・。」
  アンソニー「それで、君は・・・みんなに疎まれていると・・・?」
  リーザ「(淋しそうに微笑む。)・・・さっき、あなたもご覧になった
      でしょう・・・私は生れつき体が弱くて、みんなに迷惑ばか
      りかけてきたんです・・・。」
  アンソニー「じゃあ、ずっとここで・・・?」
  リーザ「はい・・・。この部屋の中だけが私の世界・・・。この窓か
      ら見える風景だけが私の外の世界・・・。ミシェルが時々、
      みんなに隠れて、会いに来てくれるんです。それで色々
      自分が経験してきたことなんかを、私に話してくれるわ・・・
      。あの子の話すことが私の全て・・・。私・・・この家の者以
      外の人に会ったのは、あなたが初めて・・・。(嬉しそうに
      微笑む。)さっき、あなたが飛び込んで来た時、余りにも
      あなたが健康的で眩しくて・・・まるで、天使が舞い降りて
      来たようだった・・・。思わず息を飲んで、言葉も出なかっ
      たわ・・・。」
  アンソニー「・・・天使・・・?僕が・・・?」
  リーザ「ええ・・・天の国から舞い降りて来た、黒髪の天使・・・」
  アンソニー「・・・リーザ・・・。これからは、僕も出来る限り君に会
         いに来よう・・・。それで、僕が色々と見聞きしてきた
         ことを、君に教えてあげよう・・・。」
  リーザ「え・・・?」
  アンソニー「君の知らない世界の話しをしてあげよう・・・。屹度
         ミシェルよりもずっと沢山の話しをしてあげられると
         思うよ・・・。」
  リーザ「でも、家の者達に見つかると・・・」
  アンソニー「大丈夫。君も言っただろう?僕は天使だって・・・。
         羽根を持つ者は、何処からだってやってこれる・・・。
         そうだ。(窓から外を見て。)この森の奥に、とても素
         敵な場所がるんだ。辺り一面の花畑!ここへ来る途
         中、見つけた・・・。小鳥達が囀り・・・蝶達が舞う・・・。
         今度、連れて行ってあげよう!」
  リーザ「(悲しそうな顔付になる。)アンソニー・・・あなたのその
      お気持ちはとても嬉しいわ・・・。でも私は・・・外に出るこ
      とは・・・」
  アンソニー「(微笑んで。)大丈夫・・・僕の力を、君に分けてあげ
         るから・・・」
  リーザ「あなたの・・・力・・・?」
  アンソニー「そう、僕の力だ・・・」











       ――――― “アンソニー”4へつづく ―――――









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2012年9月13日木曜日

“アンソニー” ―全16場― 2

  ルイ「それにしても腹減ったなぁ・・・」
  アンソニー「・・・俺の為に、力を使い過ぎたんだろ?満月だとし
         ても、傷の治りの早さから分かるよ。」
  ルイ「(笑って。)あれ程、沢山の血を流されたんじゃね。」
  エドワード「先に食事に行って来いよ。」
  ルイ「ラッキー!(テラスの方へ行こうとする。)」
  エドワード「ルイ!!」
  ルイ「(振り返り。)何?」
  エドワード「この家の人間には、手を出すんじゃないぞ。」
  ルイ「了解!」

         ルイ、テラスへ出て行く。と、鳥の羽ばたく音
         が遠ざかる。

  アンソニー「(笑って。)余程、腹を空かしてたんだな。」
  エドワード「アンソニー・・・」
  アンソニー「ん?」
  エドワード「さっきはすまない・・・」
  アンソニー「ああ・・・別に、たいしたことじゃないさ。何で奴らが
         俺達を執拗に追い続けているのか・・・。ルイが知っ
         たところで、何の得にもならないだろ?それなら知ら
         なくていいんだよ・・・。」
  エドワード「・・・そうだな・・・」

         その時、ドアをノックする音。
         2人、驚いたように顔を見合わせて、アンソニー
         慌ててベットに潜り込む。
         それを見届けてからエドワード、ゆっくりドアの
         方へ。

  エドワード「はい・・・。(ドアを少し開ける。)」
  
  クララの声「あの・・・お嬢様に言われまして・・・。どうぞ。」

         エドワード、クララから盆を受け取る。

  エドワード「・・・ありがとう・・・。」

  クララの声「失礼致します・・・。(ドアを閉める。)」

         エドワード、困ったような面持ちで、受け取った
         盆を持って、アンソニーの側へ近寄る。

  エドワード「アンソニー・・・」
  アンソニー「行ったか?」
  エドワード「ああ。」
  アンソニー「(起き上がる。)誰・・・?(エドワードの持っている盆
         に気付いて。)・・・何だい、それは・・・?」
  エドワード「(アンソニーの膝の上へ盆を置いて、被せてあった
         布巾を取る。)ご親切に、夕食を提供してくれたよう
         だ・・・。」
  アンソニー「パンにスープに干し肉・・・こう言うものは、何年ぶり
         だろう?(笑う。)」
  エドワード「・・・悪いけど俺は・・・(横を向く。)」
  アンソニー「全く・・・相変わらず偏食だな、おまえは。(笑う。)
         ルイの奴に取って置いてやれよ。屹度、涙流して喜
         ぶんじゃないか?」
  エドワード「(思わず吹き出し、声を上げて笑う。)そうだな。」
  アンソニー「(エドワードに釣られて笑う。)」

         2人の笑い声残して、紗幕閉まる。

    ――――― 第 5 場 ―――――

         紗幕前。村人達、アンソニーの噂話しを歌う。

         “ねぇ ねぇ お聞きになった?
         ねぇ ねぇ お聞きになった?
         シャンドール家のお客人のこと
         世にも稀な美男子が
         漆黒の髪を風に靡かせ
         透き通るような白い肌で
         弁舌爽やか 会話は上手い
         一旦彼に見詰められると
         誰もが忽ちそのとりこ
         ねぇ ねぇ お聞きになった?
         シャンドール家に立ち寄った
         貴公子のこと!!”

  エリーズ「ねぇ、知ってる?」
  シャロン「この世の者と、思われないいい男なんでしょ?」
  リチャード「どっかの国の貴族らしいぜ。」
  オードリー「ねぇ、お母様!!そのお方が助けを求められたの
         が、どうしてシャンドール家なの!?うちとは目と鼻
         の先の、御隣同士だって言うのに!!」
  マルガリーテ「屹度、森を抜けてこられたんでしょう。」
  フィリップ「そうか・・・だから一番最初に目に付く明かりの点いた
        家・・・即ち、シャンドール家に飛び込んだって言う訳か
        ・・・。」
  オードリー「でなけりゃ、造りからして比べ物にならない立派な、
         うちの方へお越しになる筈よね!!」
  ミレーヌ「どっちが立派かなんて、見る人によるんじゃないの?」
  フランツ「確かに、シャンドール邸も、オードリーの家も、立派な
       建物には違いない。」
  シャルル「(笑って。)そうそう、お母さんときたら、シャンドール
        家と張り合いながら、どんどん家をでかくするものだか
        ら・・・。」
  マルガリーテ「シャルル!!私は昔から何があっても、シャンド
           ール家に負けることだけは我慢がならないのよ
           !!」
  エリーズ「小母様は、何かシャンドール家に恨みが御有りなの
        ?」
  マルガリーテ「人に言う程のことではないけれど・・・」
  オードリー「本当。犬猿の仲のお母様と、幼友達のお隣の小父
         様・・・。お母様が想いを寄せているのを知らずに、
         隣村から奥様をお貰いになったのよね。(笑う。)」
  マルガリーテ「オードリー!!私は何もあんな人に・・・!!何
           も想いを寄せていたなんて・・・(しどろもどろに。)
           」
  オードリー「誤魔化さなくてもいいじゃない。」
  ミレーヌ「まぁ・・・小母様にも、青春時代がおありだったのね。」
  マルガリーテ「当たり前ですよ!」

         みんな笑う。そこへ従者ハンスを従え、
         村の有力者で弁護士のエドモンと、その妻
         ヴィクトリア、腕を組んで登場。
  
  エドモン「これはこれはみんな、楽しそうだな。」
  クラウス「エドモン様。」
  ヴィクトリア「御機嫌よう、みなさん。」
  娘達口々に「こんにちは、奥様。」

         みんな頭を下げる。

  エドモン「何かいいことでもあったのかな?」
  エリーズ「いいえ。マルガリーテ小母様の若き日のお話しを、伺
        ってましたの。」
  エドモン「ほう。それは楽しそうだな。」
  マルガリーテ「いやですわ。」
  ヴィクトリア「ところでみなさんは、シャンドール家のお客人のこ
          とを、もうご存じかしら?」
  シャロン「ええ、勿論ですわ!!今もマルガリーテ小母様のお
        話しを伺う前に、噂してましたの。」
  ミレーヌ「とっても美男子で貴公子だそうですね。」
  ヴィクトリア「ええ。」
  オードリー「一度、彼を見かけた者は、その美しさに目を奪われ
         、話しをした者はその教養の高さに引き込まれると
         か・・・。」
  ヴィクトリア「とても社交的なお方のようですわね。」
  エドモン「私達も是非一度、その者に会ってみたいと思っておる
        のだが・・・如何せん、ここ暫くは裁判裁判で・・・。」
  クラウス「何かあったんですか?」
  エドモン「いや何・・・隣村のことなんだが、少し奇妙な事件が起
        きておってな。」
  フランツ「奇妙な・・・とは?」
  エドモン「昨日まではピンピンしておった娘達が、あくる日には
        丸で生気を吸われてしまったかのようにぐったりなって
        いると言う・・・。初めは変な病気でも流行っているん
        じゃないかと、騒ぎになったそうなんだが、その娘達も
        数日後にはすっかりよくなり、何事もなかったように暮
        らしているんだが、不思議なことにその娘達は、決まっ
        て窓から忍び寄る黒い影を見たと証言するのだ。それ
        で、警察当局の調べで、一人の薬売りが捕らえられ・・
        ・私はその男の弁護を引き受けているのだが・・・」
  リチャード「その男が、薬を使って娘達に幻覚を見せたと?」
  エドモン「ああ・・・。だが、その男の話しを聞く限りでは、幻覚を
        見せる薬はあっても、そう一晩のうちに血の気がみん
        な引いてしまうようなことになる薬などないと言うのだ
        ・・・。それに最大の問題点は、その男は足が悪いと
        言うことだ。普通に歩くくらいには何の問題もないんだ
        が・・・窓からしか入り込めないようなところへ、どうや
        って忍び込むことができると言うんだ。全くもって不可
        思議なことだよ・・・。と言う訳で、私はまた今から隣村
        まで出掛けねばならないと言うことなのだ。」     
  ヴィクトリア「時間ができれば、是非うちで盛大にお茶会など、
         催したいと思ってますの。そのお客人達が、まだ滞
         在なさってればの話しですけど・・・。」
  オスカー「大丈夫ですよ。まだ傷の方は、そう直ぐにはよくなら
        ないだろうし。」
  ヴィクトリア「そんなに大怪我をなさってたんですか?」
  マルガリーテ「ええ。だけど驚く程回復が早くて、もう普通に歩く
           くらいなら、平気なんだと聞きました。」
  エドモン「ほう・・・」
  ハンス「旦那様、そろそろ参りませんと・・・」
  エドモン「ああ、そうだったな。(ヴィクトリアの方へ向いて。)で
        は、行こうかね。」
  ヴィクトリア「ええ。それでは皆さん、その節は是非いらして下さ
          いね。」
  
         エドモン、ヴィクトリア去る。ハンス、2人に続く。
         村人達も其々続いて去る。
         暗転。

    ――――― 第 6 場 ―――――

         紗幕開く。と、舞台はシャンドール邸の居間。
         ソファーに深々と身を沈め、長足をテーブルの
         上へ無造作に投げ出したアンソニー。
         隣にはエドワード、ゆったりと座る。
         ルイは2人の側へ立っている。

  アンソニー「それにしても、こんな無意味な時を過ごさなければ
         ならないなんて・・・」
  ルイ「(笑って。)俺は無意味だなんて、全然感じてないぜ。」
  アンソニー「そりゃ、おまえは自由だからな。俺が好き勝手動け
         るのは、日もどっぷりつかった真っ暗闇の中だけな
         んて・・・。」
  エドワード「仕方ないだろ?この屋敷の中だけでも、歩き回れる
         んだ、感謝しろよ。」
  アンソニー「(溜め息を吐く。)OK・・・」
  ルイ「俺が色々と村の様子を教えてやっただろ?何時もみたい
     に勘を働かせて想像しろよ。(笑う。)」
  アンソニー「馬鹿!」
  ルイ「(エドワードに向いて。)どうして外へ出ないんだ?」
  エドワード「俺は人と交わるのは苦手だ・・・。」
  ルイ「そんなこと言ってると老けるぜ。(笑う。)」
  エドワード「好き勝手言ってろよ。俺はおまえとは違うんだ。」
  アンソニー「俺のことなら気にしなくていいんだぜ。」
  エドワード「馬鹿、本当に出たくないんだ・・・。行きたくなったら、
         おまえに止められたって俺は行くさ。」
  アンソニー「そうか。(微笑む。)ところで・・・2階の一番奥の部
         屋だけは入るなって・・・」
  エドワード「アンソニー、余計な好奇心を出して、この家の人間
         の、機嫌を損ねるような真似だけはするなよ。」
  ルイ「そうそう。近寄るなと言われている所には近寄らない・・・。
     それで2週間を平穏無事に過ごして、この家ともおさらば
     ってことさ。」
  アンソニー「そうだな・・・」
  エドワード「俺達がこれからも、何事もなく旅し続ける為には、少
         しでも疑われるような行動は、慎むべきなんだ・・・。」
  ルイ「(笑って。)一晩で大怪我が跡形もなく治って、元気になる
     とか?」
  エドワード「そう言うことだ・・・。ルイ、おまえも気を付けろよ。隣
         村で騒ぎになりつつあるだろう・・・?人間が出来そう
         にないことはするな。いいか?」
  ルイ「了解!」
  アンソニー「(笑って。)全くおまえは、何時も理路整然としている
         よ。」
  エドワード「アンソニー!冗談で言ってるんじゃないぜ。それで
         なくても、ジェラールが後から俺達のことを、バラして
         回る為に、二度と同じ所へは行けないと言うのに。」
  アンソニー「分かってるよ。おまえの言ってることは何時も正しい
         。おまえがいてくれて嬉しいよ。」
  ルイ「俺もさ!(笑う。)」
  エドワード「(呆れたように呟く。)・・・おまえ達は・・・」
  アンソニー「(何かに気付いたように、テーブルの上から足を下
         ろし、姿勢を正して座り直す。)誰か来る・・・」
  ルイ「えー・・・?」

         一時置いて、エリザベート、オードリー登場。
         続いてマルガリーテ、ステラ、クレナ登場。

  エリザベート「お加減は如何かしら?」
  アンソニー「エリザベート。(立ち上がる。)もうご心配には及び
         ません。ありがとう・・・。(微笑む。)」

         女性達、憧れの眼差しでアンソニーを見詰める。

  エリザベート「少し、ご一緒して宜しいかしら?」
  エドワード「(小声でアンソニーに。)相変わらず宜しい勘で・・・」
  アンソニー「(エドワードをチラッと見、直ぐにエリザベート達の方
         へ向き直り、椅子を勧めるように。)どうぞ、マドモア
         ゼル。僕達も丁度、退屈していた所ですよ。」

         エドワード、立ち上がる。

  ルイ「(クスクス笑って。)・・・僕?」
  エドワード「ルイ!」
  ルイ「(笑うのを止めて、きちんと立ち直す。)」
         









     ――――― “アンソニー”3へつづく ―――――












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2012年9月12日水曜日

“バーナード” ―全16場― 4


  ジュディ「勿論、本当です!!それからこれにはオマケの話し
       が付いてて、営業課の私の彼、フランクに聞いたんだ
       けど、なんと!!」
  ビル「なんと!?」
  ジュディ「営業課のエリートハンサムボーイのバーナードさんと
       シェイラがどうも付き合ってるらしいって!!」

         一時置いて、再び一斉に大笑いになる。
         ダイアナだけは、何か思い詰めた表情を
         している。

  ジョー「フランクの言ってることだろ?当てになるもんか!!」
  ジュディ「そんなことないわよ!!彼、バーナードさんとは親しく
       してもらってるもの!!現に、シェイラの変身はバーナ
       ードさんのアイデアらしいわよ!!」
  スティーヴ「まさか!!」

         そこへ、ジェラルド、ジャッキー入って来る。

  ジェラルド「どうした?皆、集まって。」
  ハッティ「課長!シェイラはもう来てます?」
  ジェラルド「さぁ。今日はまだ見てないな。もうそろそろ来るんじ
        ゃないか?」
  ジュディ「ジャッキーさん!!更衣室にシェイラいませんでした
       か?」
  ジャッキー「さぁ・・・私が行った時は、誰もいなかったけど・・・。
        シェイラがどうかしたの?」
  ダイアナ「それがジュディが更衣室で、美人になったシェイラを
       見たって・・・」

         ジェラルドとジャッキー、お互いの顔を
         見合わせて、一時置いて大笑いする。

  ジェラルド「何、馬鹿なこと言ってるんだ?」
  ジャッキー「天地が引っ繰り返っても、シェイラが美人になるな
        んてこと、ある訳ないじゃない!!」
  ジェラルド「そりゃそうだ。」

         今まで黙って聞いていたリチャード、皆に
         近寄る。

  リチャード「シェイラは・・・彼女はいつもはあんな格好している
        から分からないけれど・・・綺麗だったよ・・・」

         皆、一斉にリチャードに注目して、再び笑う。

  スティーヴ「(リチャードの肩に手を置いて。)矢っ張り、おまえ
        シェイラに惚れてたんだな!」
  リチャード「それは・・・」
  スティーブ「隠すことないだろ?別にああ言うのが好みの奴も
        たまにはいるだろうさ!」

         その時、入り口からシェイラ入って来る。
         シェイラ、昨日までとは打って変わり、一変
         して洗練された美人オフィス・レディになって
         いた。皆、一斉にシェイラに注目して、ただ
         ポカンと口を開け、呆然と見詰める。

  シェイラ「(いつもと変わりなく。)おはようございます。」

         シェイラ、自分のデスクへ行き、書類を整える。
         皆、まだシェイラに注目したまま、目が離せな
         いで呆っとしている。

  シェイラ「(皆の方を向いて。)あの・・・これは何処へ運べばい
       いでしょうか?」
  ジェラルド「(ハッとして。)・・・あ・・・ああ・・・あ・・・(皆を見回す
        。)」
  スティーヴ「・・・お・・・俺、行って来ます!!コピー室ですよね
        !!(慌ててシェイラに近寄り、書類を持つ。)俺が
        行って来るよ!!」
  シェイラ「でも・・・」
  スティーヴ「いいって!!」
  ダイアナ「スティーヴ!!」

         スティーヴ、ダイアナの声は聞こえていない
         ように出て行く。
         リチャード以外の男子社員、いつの間にか
         シェイラの周りに集まる。
         女子社員、面白くないと言った風に、遠巻き
         に見詰める。
         リチャードだけは、少し淋しそうな面持ちで。

  ジェラルド「一体どうしたんだ、シェイラ!!」
  ジョー「偉く変わったなぁ!!」
  ビル「まさかこんなに美人だったなんて!!」
  ビリー「俺は最初から分かっていたさ!!彼女がそこいらの女
      共より美人だって!!」
  ジョー「調子いいぞ、おまえ!!」
  ジェラルド「おまえら始業時間はとっくに過ぎてるんだぞ!!
        さっさと仕事に就けよ!!」

         ジョー、ビル、ビリー顔を見合わせて。

  ビル「ちぇっ!一番調子いいのは、課長じゃないか・・・」
  ジェラルド「何か言ったか?」
  
         皆、其々仕事に就く。が、目線は専ら
         シェイラの方を向いている。

  ジェラルド「(シェイラの両肩を持って、椅子に座らせながら。)
        さぁ、君はここに座って、ゆっくりしときたまえ。」
  シェイラ「(ジェラルドを見上げて。)でも・・・」
  ジェラルド「いいの、いいの!!美人は課の宝なんだから、何
        もしなくていいんだよ!!」

         ジェラルド、入り口から出て行く。
         シェイラ、周りを見回して、ただ黙って下を
         向く。シェイラと目が合った男子社員、
         ウインクを返したりする。
         その時、入り口からバーナードとフランク、
         入って来る。
         バーナード、椅子に座っているシェイラを
         認め、近寄る。フランク、ジュディのデスク
         に近寄る。

  バーナード「おはよう、シェイラ!」

         皆、驚いた面持ちで2人に注目している。
         女子社員、2人に注目しながら、ダイアナ
         のデスクに近寄って行く。

  シェイラ「(顔を上げてバーナードを認め、嬉しそうに立ち上が
       る。)バーナード!!」
  バーナード「今日、お昼一緒にどう?」
  シェイラ「・・・でも外回りは?」
  バーナード「午前中は近くだけだから、大丈夫さ!イタリア料理
         でどう?」
  シェイラ「(微笑んで。)・・・私は何でも・・・」
  バーナード「じゃあ予約しとくから!(シェイラの頬に口付ける。
         )」
  シェイラ「バーナード・・・(恥ずかしそうに。だが嬉しそうに、
       バーナードの背中を見詰める。)」
  バーナード「(フランクを認めて。)フランク!!行くぞ!!」

         バーナード、出て行く。

  フランク「(慌ててバーナードの後を追う。)待って下さいよー!
       !」
  
         女子社員残して、カーテン閉まる。
         ジャッキー、少し皆と離れて立つ。

  フィービー「一体何!?バーナードさんと付き合ってるって言う
        噂も本当な訳!?」
  ハッティ「何か頭きちゃうわよね!!」
  ジュディ「だから言ったでしょ!フランクは嘘なんて吐かないも
       の!!」
  ハッティ「でも、どうしてバーナードさんがシェイラなんかと!?
       確かに見た目はよくなったけど・・・。」
  ジュディ「そこまではフランクだって知らないわ。ただ言い寄っ
       たのはバーナードさんからだって。」
  フィービー「本当!?」
  ダイアナ「・・・許せないわ・・・」
  フィービー「え・・・?」
  ダイアナ「許せないわ・・・!!彼は私が先に目を付けたのよ
       !!それをちょっと綺麗になったからって、横取りす
       るなんて絶対許せない!!」
  ジュディ「え・・・あ・・・でもダイアナさんには・・・スティーヴがい
       たんじゃ・・・」
  ダイアナ「(鼻で笑って。)スティーヴ?あんなの何でもないわ
       !!あいつは綺麗になったシェイラに、一番に鼻の
       下伸ばして寄って行ったのよ!!馬鹿にしてるわ!
       !覚えてらっしゃい!!」
  ジャッキー「(腕組みしながら。)でも男って正直な生き物よね
        ぇ・・・悔しいけど、誰もシェイラに勝てやしないわ・・・
        。あなたもね、ダイアナ。」

         ジャッキー、下手へ出て行く。4人、後に
         従うように出て行く。
         入れ代わるように、下手よりアルバート、
         ジェイムス、ロベール出る。
         ダイアナ、振り返り3人を見ながら出る。

  アルバート「それで先週の金曜日に、残業届けが出ていた者
        の中で、怪しい者はいなかったと言うのか。」
  ジェイムス「はい。一応、一通り問い質したりはしてみたのです
        が・・・。後一人、庶務課のシェイラ・ハミルトンには
        まだ聞いていないのですが、彼女は多分大丈夫で
        しょう。ただ・・・残業届けを出さずに、社内に残って
        いた者も数名いるようですし、実際誰があれを盗ん
        だか・・・となると、多分捜し出すのは無理ではない
        かと・・・」
  アルバート「あれがNYインターナショナルに流れたことによっ
         て、我々の今回の計画は握り潰されたも同然・・・
         なんとしてでも犯人を見つけ出す・・・!!(ロベ
         ールの方を向いて。)ロベール、NYインターナショ
         ナルの方はどうだ?何か情報は入ったか?」
  ロベール「はい。NYインターナショナルの方は、着々とクリア
        島全土に進出して来ている模様です。」
  アルバート「・・・前回の仕返しのつもりか・・・」

         その時、ダイアナ再び出る。

  ダイアナ「(3人に近寄って。)アルバート専務・・・」
  ジェイムス「(驚いて。)何だ!!君は!!」
  ダイアナ「庶務課のダイアナ・バリーです。さっき・・・お話しが
       チラッと聞こえたのですが・・・」

         3人、其々強張った顔を見合わせる。

  ダイアナ「・・・私も先週の金曜日・・・社内に残っていました。」
  アルバート「何・・・?」
  ダイアナ「(目を輝かせて。)そのことで、お話しがあります・・・」

         暗転。


       



     ――――― “バーナード”5へつづく ―――――









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“アンソニー” ―全16場―

  

   〈主な登場人物〉


   アンソニー  ・・・  吸血鬼ドラキュラ伯爵。本編の主人公。

   リーザ  ・・・  シャンドール家の前妻の娘。

   エドワード  ・・・  お供として、アンソニーに付いている。
    
   ルイ  ・・・  アンソニー、エドワードと一緒に旅している。

   ミシェル  ・・・  シャンドール家の後妻と主人の息子。

   ジェラール  ・・・  吸血鬼達を、執拗に追う男。老医者。

   ミハエル  ・・・  ジェラールの助手。

   エリザベート  ・・・  後妻の娘。長女。

   

   その他



 ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪


          ――――― 第 1 場 ―――――

         音楽で幕が上がる。と、木々が茂り、小鳥達の
         囀り、木漏れ日溢れる、見るからに爽やかな
         奥深い森の風景。
         若い男女が左右より登場、楽し気に手を取り合
         いながら、歌い踊る。
         男女が左右へ去ると、中央より長髪のアンソニー
         ゆっくり登場。森の中を楽しむように踊る。
         その面影は、黒い髪に透き通るような白い肌を
         持ち、何故か赤い唇だけが一際目を引く。
         その容姿は俗世の者と思われないよう。
         と、その時、数発の銃声が辺りに響き渡り、一瞬
         顔を強張らせたアンソニー、誰のものとも分から
         ない“当たったぞー!!”の叫び声を残して、森
         の奥へと消える。
         紗幕閉まる。

          ――――― 第 2 場 ―――――

         紗幕前。
         上手より、慌てた感じのミハエル、ルドルフ走り
         登場。続いてジェラール、銃を片手に幾分落ち
         着いて登場。

  ミハエル「一体何処へ行ったんだ!?」
  ルドルフ「確かに、弾が当りましたよね!!」
  ミハエル「当たり前だ!!あれだけ血痕が残ってるんだ、可なり
        の傷を負ってるに違いない!!」
  ジェラール「あいつらを、普通の人間と同じように考えるんじゃな
         いぞ。」
  ミハエル「先生・・・」
  ジェラール「多分、あのくらいの傷、明日になれば跡形もなく、治
         っている筈だ。」
  ルドルフ「(笑う。)そんな・・・」
  ミハエル「じゃあ一体・・・?」
  ジェラール「本当にあいつらを殺そうとするなら、銀の杭を、その
         胸に深く・・・深く突き刺すしかない。」
  ミハエル「・・・銀の杭を・・・?」
  ジェラール「そして、その杭を突き刺すのは・・・この私だ!!」
  ルドルフ「でも・・・何で先生はそんなに・・・」
  ジェラール「あいつとは、100年来の因縁の間柄だ・・・。」
  ルドルフ「100年って・・・俺がまだ生まれるずっと前から・・・(
        ハッとして。)あれ・・・?先生だって生まれていない・・・
        」
  ミハエル「そんなに昔から?けど先生、さっき言ってた、普通の
        人間と思うだなんて一体・・・」
  
         その時、数羽の鳥の飛び立つ音が
         響き渡る。

  ルドルフ「(思わず身を屈めて。)わぁっ!!コウモリだ!!」
  ジェラール「(顔を強張らせて、空を見上げる。)また捜し直しだ
         ・・・。今日は・・・満月だな・・・。さぁ、行くぞ!!」

         ジェラール、下手へ去る。ミハエル、ルドルフ、
         ジェラールに続く。

          ――――― 第 3 場 ―――――

         楽し気な音楽が流れる中、紗幕開く。
         舞台は屋敷の中。手に其々洋服を持った
         シャンドール家の娘達。長女エリザベート、
         次女で双子のステラ、クレナ姉妹、陽気に
         歌い踊る。

         “見て見て何て素敵な色かしら
         見て見て何て可愛い仕上がりかしら
         屹度みんなが目を奪われるわ
         屹度みんなが私に注目する
         誰よりも一番綺麗で
         誰よりも一番素晴らしい
         見て頂戴
         今度のお茶会では私が主役”

         ソファーに腰を下ろして、3人の歌を聞いて
         いた、3人の兄クリス、立ち上がる。

  クリス「(首を傾げて。)そんなに一番がいいのかね。」
  エリザベート「お兄様には分からなくってよ!!」
  クリス「しかし、こんな小さな村の中じゃ、一番だろうが二番だろ
      うが、たいして変わりはないと思うがね。(笑う。)」
  クレナ「(溜め息を吐いて。)これだから男って・・・」
  エリザベート「(ドレスを胸に抱いて。)何時もみんなの目を惹く
          私は、その内国中の知れるところとなって、ある日
          その噂を聞いた素敵な王子様が、私を尋ねて来て
          くれるのよ!」
  クリス「(笑う。)本気にそんなことを考えているのかい?」
  エリザベート意地悪ね!」

         その時、2階より末弟ミシェル、本を片手に
         ゆっくり下りて来る。

  ステラ「(ミシェルに気付いて。)あらミシェル、また読書してたの
      ?」
  ミシェル「うん・・・」
  クレナ「偶には私達と一緒に、お茶でもどう?」
  エリザベート「お兄様は偶には読書でもなさったら?」
  クリス「煩いな!(ミシェルに近寄って。)おまえ、この頃はあの
      部屋へ行ってないだろうな?」
  ステラ「・・・あの部屋って・・・?」
  エリザベート「・・・まさか・・・黒い扉の・・・!?ミシェル、あなた
          ・・・」
  ミシェル「行ってないよ・・・」
  クリス「ならいいんだ。ちょっと聞いてみただけさ。」

         ミシェル、上手へ去る。4人、暫くその方を
         見ている。

  クレナ「何だって、あの子・・・」
  クリス「よく知らないが、以前、偶々あの部屋から出て来たミシェ
      ルを見かけてね・・・。どうもみんなに隠れて、ちょくちょく
      顔を出してたようなんだ。」
  エリザベート「それで!?」
  クリス「勿論、それからは決して近寄るなと、念押しはしておい
      たんだが・・・」
  ステラ「ならいいじゃない。本人も行ってないって言ってたんだし
      ・・・」
  エリザベート「あなたって呑気でいいわね。お母様に知れたら事
          よ!」
  ステラ「私は来週のお茶会のことで、頭が一杯なの!」

         その時、ドアの呼び鈴の音。
         執事のヨハン、奥より登場し扉の方へ。
         何時の間にか奥よりメイド、クララ登場、
         娘達のドレスを仕舞ったり、用事をしている。

  ヨハン「はい、どなたで?(扉を開ける。一時置いて。)あの・・・、
      しかし・・・」
  
  ルイの声「頼む!!怪我人がいるんだ!!一晩だけ・・・一晩
        だけ休ませてくれれば、明日には出て行く!!」

  ヨハン「・・・事情は分かりますが・・・何分、ご主人様はご旅行中
      でして・・・」
  
  ルイの声「頼む!!」

         エリザベート、ヨハンの様子に気付いて
         近寄る。
 
  エリザベート「ヨハン、どなた?」
  ヨハン「あ・・・お嬢様、それが・・・」
  エリザベート「(扉の外を覗いて。)どちら様ですか?」
  
  ルイの声「あ・・・突然すまない。旅行中に友人が怪我をして・・・
        一晩だけでいいんだ、宿を!!」

  エリザベート「そう言うことならどうぞ。お友達の方も。」

  ルイの声「ありがとう!!」

  ヨハン「お嬢様!!」
  エリザベート「一晩くらい、いいじゃない。」

         ルイ登場。続いてエドワードに抱かえられ、
         ぐったりとしたアンソニー登場。

  アンソニー「・・・すまない・・・」

         エリザベート、クレナ、ステラ、思わずぼうっと
         アンソニーに見惚れる。

  ルイ「あの・・・何処へ・・」
  エリザベート「(ハッとして。)あ・・・お2階へどうぞ!!お友達の
          方、大分お悪いようですし、一晩だけと言わず、傷
          が治るまで養生していらして下さいな。」
  ヨハン「お嬢様!!」
  エリザベート「お父様がお帰りになったら、私からお話しするわ!
          !」
  エドワード「いや・・・今晩だけで・・・」
  エリザベート「いいえ。お見かけしたところ、一晩やそこらで良く
          なるような傷とは思われませんし、そんな怪我人を
          放り出すような真似はできませんわ。」

         エドワードとルイ、そっと顔を見合わせる。

  エドワード「・・・それじゃあ・・・」
  エリザベート「(思わず嬉しそうに。)よかった!!ロベール!!」

         奥より使用人ロベール登場。

  ロベール「(エリザベートに近寄って。)はい!」
  エリザベート「大切なお客様よ!2階の一番上等の客間に、ご
          案内してさしあげて!!」
  ロベール「分かりました。(エドワード達の方へ向いて。)こちらへ
        どうぞ。」

         エドワード、ルイ、アンソニー、ロベールに
         付いて2階の方へ。

  エリザベート「(思い出したように。)あ・・・!!先生をお呼びしま
          しょうか?」
  エドワード「いや!!・・・結構だ・・・」
  エリザベート「(頷く。)それと!!2階の一番奥の・・・突き当たり
          に見える黒い扉の部屋だけは、決して開けないで
          下さい。(微笑んで。)後は、何処の部屋へ入られて
          も構いませんわ。」

         3人、ロベールに付いて、2階へ上がる。

  ステラ「(4人が出て行くのを見計らって、エリザベートに駆け寄
      る。)お姉様!!あの黒髪の怪我人、素敵なお方ね!!
      (溜め息を吐く。)」
  クレナ「本当ね!!この世の者とは思われない・・・。見た!?
      あの透き通るような肌!!」
  エリザベート「いいこと!?抜け駆けはなしよ!!」
  クリス「(肩を窄めて。)やれやれ・・・」

         暗転。

         ――――― 第 4 場 ―――――

         音楽でフェード・インする。と、アンソニー達が
         通された客間。
         アンソニー、ベットの上に横になっている。
         エドワード、窓を開けると、もう暗くなっている
         空には、満月が昇っているのが、窓の向こう
         に見える。

  エドワード「全く、今日のアンソニーは、彼には珍しく不用心だっ
         たな・・・。」
  ルイ「あんなに沢山、無駄な血を流してしまって勿体ない。(笑う
     。)」
  エドワード「笑いごとじゃないだろ?」
  ルイ「それにしても、本当にしつこい奴らだな。何でジェラール
     は、あんなにも俺達のことを?」
  エドワード「・・・さぁ・・・」
  ルイ「俺が君達の仲間に入った時には、もう何時も後ろにはあ
     いつがいた・・・」
  アンソニー「どうでもいいんじゃないか、そんなことは・・・」
  エドワード「アンソニー!!」

         アンソニー、ベットの上へ起き上がる。

  ルイ「アンソニー!!」

         エドワード、ルイ、アンソニーの側へ近寄る。

  アンソニー「奴らが何処の誰で、何故俺達を執拗に追い回すの
         か・・・別にどうでもいいことさ・・・。」
  エドワード「・・・アンソニー・・・」
  ルイ「そうだな。(笑う。)」
  エドワード「ところで、もう体はいいのか?」
  アンソニー「ああ。(ベットから立ち上がって、両腕を高く上げ、
         元気だと言う風に見せる。)この通り!!もう今直ぐ
         にでも立てるぞ。」
  エドワード「(笑う。)そうか。だが、そう言う訳にもいかなくてな。」
  アンソニー「ああ・・・俺の傷が治るまで、客人としてこの屋敷に
         留まることにしたんだっけ・・・?」
  ルイ「その通り!よく分かったな。」
  アンソニー「朦朧としながらも、気は張ってたからね・・・。傷の酷
         さも知られてしまったことだし、2週間くらいは大人し
         くしてなけりゃいけないかもな?」
  エドワード「そうだな・・・。大分逃げて来たから、そのくらいなら
         平気だろう。だが、くれぐれも気を付けてくれよ。さっ
         きまで死にそうな顔をしてた奴が、もうピンピンしてる
         と分かったら、それこそ大騒ぎだ。」
  アンソニー「(笑う。)OK。だが、俺にはちょっとばかり辛い忠告
         だな。」
       
  











       ――――― “アンソニー”2へつづく ―――――












 ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ 


    (どら余談^^;)

    そんなに直ぐに治るんなら、ちょっと木陰でも休んでいれば
    いいのに・・・などと、色々と思うところがおありでしょうが・・・
    “物語”の不思議・・・と言うことで、あまり深く考えずにお楽し
    み頂ければいいかな・・・と思います(^_^;)

    「入るべからず・・・」と言ったお話しも、昔から色んなお話し
    に登場する、ありがちなキーワードとしてお読み下さい^^;







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2012年9月11日火曜日

“未来への扉” ―全9場― エンディング


  ジョーイ「それはないだろう?・・・しかし・・・アレックスと比べた
        りしたら申し訳ないよ。私のは飽く迄、一つの息抜き
        のようなものだったから・・・。あいつはでっかい奴だっ
        たよ・・・最後まで・・・。何ものにも屈せず、あいつは
        自分の意志を・・・夢を貫き通したんだ・・・。ただ一つ
        ・・・私が悔やむのは・・・最後の別れをちゃんとしなか
        ったことだ・・・。」
  クリスティーン「あなた・・・。」
  ジョーイ「(微笑んで。)今更言っても始まらないな・・・。」
  クリスティーン「・・・ジョーイ・・・」
  ジョーイ「(笑って意外そうにクリスティーンを見る。)おいおい、
        名前で呼ぶなんて、何年振りだい?」
  クリスティーン「(微笑んで。)ええ・・・、何だかあの頃が・・・3人
           でワイワイ楽しんでた頃が、何だかとても・・・懐
           かしくなって・・・。」
  ジョーイ「・・・そうだな・・・よき青春時代だった・・・。」

         2人、微笑み合い、寄り添うように下手へ去る。
         音楽で紗幕開く。

    ――――― 第 9 場 ――――― B

         上手より、バスケットボールを片手にアレックス、
         息を切らせながら走り登場。
         ドリブルしたりしながら、ゆっくり下手方へ。
         そこへ上手よりアレックスの友人、アレックスを
         追い掛けるように登場。

  友人「待ってくれよ、アレックス!!全く、おまえには叶わない
      よ・・・。」
  アレックス「(笑う。)そんなことないさ。」
  友人「おまえは何だって出来るんだから参るよ・・・。」
  アレックス「仕方ない。じゃあ今日の昼食は、俺が奢ってやる
         よ。」
  友人「本当に!?」
  アレックス「ああ・・・。毎日おまえに奢ってもらってたんじゃ、悪
         いからな。(嬉しそうに。)だけど、言い出したのは、
         おまえの方だぜ。フリースローで得点の少ない方が、
         昼食を奢ろうって・・・。(笑う。)」
  友人「(溜め息を吐いて。)もう、止めようぜ・・・。でないと、俺は
      卒業するまで、おまえに昼食を奢り続けなきゃならない
      よ・・・。」
  アレックス「OK。」
  友人「それはそうと、おまえロッククライミング部に入ったんだっ
      て?」
  アレックス「ああ。」
  友人「知ってるのか?あの部は、学校一キツイって言われて
      るのを・・・。」
  アレックス「(笑って。)知ってるよ。」
  友人「じゃあ、何で・・・!」
  アレックス「俺は何か、今しか出来ないことで・・・今だから出来
         ることで、自分を試してみたいんだ・・・。」
  友人「・・・へぇ・・・。俺には到底、真似出来ないな・・・。柄にも
      なく、医大なんて入ってしまって、付いて行くのが精一杯
      ・・・。おまえみたいに、趣味のことにまで頑張ろうなんて
      、とてもとても・・・。ま、応援くらいはしてやるよ。」
  アレックス「サンキュ!」

         2人、笑い合いながら下手方へ、歩いて行き
         かけると、下手より2人の娘(一人はエンゼル。)
         、楽しそうに話しながら登場。
         エンゼル、友人、お互いを認めて。

  エンゼル「あら・・・。」
  友人「よぉ・・・。」
  エンゼル「(アレックスに目を遣って、見詰める。)」
  娘「行きましょう、エンゼル。授業が始まるわ。」
  エンゼル「ええ・・・。」
  友人「じゃあな!」

         アレックスとエンゼル、其々擦れ違い様、
         振り返ってお互いを見詰める。
         が、エンゼル、娘と上手へ去る。
         アレックス、その方を暫く呆然と見ている。

  友人「(呆っとしているアレックスに気付いて。)如何した?」
  アレックス「(ハッとして。)ん・・・?いや・・・、彼女・・・知ってる
         のか?」
  友人「知ってるも何も、俺の妹さ。(アレックスの肩を叩く。)」
  アレックス「え・・・?」
  友人「何、驚いたような顔してるんだよ。俺だって兄妹くらい
      いるさ。」
  アレックス「だけど、おまえに妹がいたとはね・・・。」
  友人「(笑って。)別に隠してた訳じゃないよ。生まれてからずっ
      と、フランスの祖母の所で暮らしていたんだ。」
  アレックス「フランス・・・」
  友人「ああ・・・。少し体が弱くてね。向こうは空気がいいだろ?
      今度、紹介してやるよ。」
  アレックス「ああ・・・。」

         友人、下手へ去る。
         アレックス、立ち止まったまま、再び振り返る。

  アレックスの声「必ず・・・また会おう・・・。」

         音楽盛り上がる。






        ――――― 幕 ―――――











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2012年9月10日月曜日

“未来への扉” ―全9場― 5


         ――――― 第 6 場 ―――――

         俄に嵐がやってくる様子。風雨の吹き荒れる
         音が、段々と大きくなり、船が不気味に軋む。
         フェード・インする。と、船室。
         (中央に一つの小さなタンス。)
         中央に、手を組み不安気に佇むエンゼル。
         側にヘンリー立つ。

  ヘンリー「雨風が酷くなってきましたね・・・。」
  エンゼル「・・・ええ・・・」
  ヘンリー「(微笑んで。)そんな顔をしなくても大丈夫ですよ。この
        船は、そこら辺のボートやヨットなんかとは違いますか
        らね。ちょっとやそっとで沈んだりしませんよ。それより
        も僕は、明日の豪華な船上結婚式に、響きゃあしない
        かと、その方が心配ですよ。我々の門出は、皆に盛大
        に祝ってもらいたいですからね。(笑う。)」
  エンゼル「・・・折角来て下さった、お客様達は大丈夫かしら・・・。
        」
  ヘンリー「屹度、心配には及ばないでしょう。今夜は皆、嵐のこと
        など気にも止めないで、楽しんでいるでしょうから。この
        船には、バーにプールに映画館、ビリヤード・・・ありと
        あらゆる娯楽施設が整っていると言うのに、自分の部
        屋へ閉じ籠って、嵐に脅えているのは馬鹿馬鹿しいで
        しよう?」
  エンゼル「・・・どうぞ私のことは構いませんから、皆さんと一緒に
        楽しんでいらして下さい・・・。」
  ヘンリー「僕が風雨に脅えている、可愛い花嫁を独りぼっちにし
        て行くと思いますか?それは僕としては、些か心外だ
        な。僕は紳士ですからね。」
  エンゼル「・・・あなたは・・・私のことを、如何思っていらっしゃる
        のですか・・・?」
  ヘンリー「(少し驚いたように、エンゼルを見る。)つまらない・・・
        質問ですね・・・。」
  エンゼル「・・・愛して下さっているのですか・・・?」
  ヘンリー「あなたは如何なのです?」
  エンゼル「・・・私は・・・」
  ヘンリー「所詮、結婚とはそう言うものです。愛しているとかいな
        いとか・・・そう言うのは疲れるだけでしょう?もっと割
        り切りましょう。私達のこれからの生活に、何の苦労も
        ないのですから・・・。何か楽しみを見つけることです。
        趣味とか・・・時には恋をするのも悪くない・・・。」
  エンゼル「え・・・?」
  ヘンリー「秩序ある大人の行動を守って頂けるのなら、好きな
        男性がいたって構いやしません。心は其々自由なの
        ですから。」
  エンゼル「・・・あなたにも・・・そう言った、お相手がいらっしゃる
        のですか・・・?」
  ヘンリー「今のところはいません。しかし、僕も一人の健康な男
        性ですからね。」
  エンゼル「(何か落胆した面持ちで、ヘンリーを見詰める。)」
  ヘンリー「(エンゼルを見て。)あの時、僕はハッキリと言った筈
        です。結婚イコールビジネスだと。よく、そのことを考
        えたうえで、あなたは今ここに、こうして明日に結婚を
        控えた幸せな女性として、来ているのだと思っていま
        したが・・・。」

         その時、室外が俄に騒がしく、人々が何かを
         叫んでいるのが聞こえて来る。

  ヘンリー「(下手方を見て。)何か騒がしいな・・・。」
  
  外の声「(遠くに。)沈没するぞーっ!!」

  ヘンリー「(その声に顔色を変え。)・・・何かただならぬ様子です
        ね・・・。少し見て来ます。あなたはここにいて下さい。
        いいですね?」

         ヘンリー、下手奥へ入る。

  エンゼル「(ヘンリーが出て行くのを見ている。出て行くのを見計
        らって。)・・・私が考えてるより・・・あの人はもしかした
        ら・・・いい人なのかも知れない・・・。でも、私にはそれ
        が分からないのです・・・。“恋をしろ”と平気で言って退
        ける、あの人の心が分からない・・・。このまま自分を押
        さえ込んで、両親の引いてくれたレールの上を、歩き続
        けて行くと、私は駄目になってしまう・・・。それは丸で、
        生きるしかばね同然の、私にとっては苦痛以外の、何
        ものでもないのです・・・。それならばいっそ・・・この手
        で、この忌まわしい自分の呪われた運命に、ピリオドを
        打つのが、せめて私に残された、唯一の自分の意志に
        よる決定・・・。屹度、こんな考えは・・・人から見れば、
        ただの私の我が儘・・・。何一つ、自分の意志で決めた
        ことのなかった私は・・・自分の人生の・・・最後位・・・
        自分で決めたかった・・・。(両手を胸の前で組み、膝を
        付き天を仰ぐように。)神様・・・愚かな私をお許し下さい
        ・・・。神様が、折角お与え下さった命を、自らの手で断
        ち切ってしまうことを・・・。けれど、これだけは分かって
        欲しいのです。決して神様のお考えに背き、永遠に御
        身から遠く離れて行こうとしているのではなく、神様の
        足元へ跪く為に・・・お傍へ参り、かしずく為に・・・私は
        自分から行くのです・・・。」

         エンゼル立ち上がり、台の引き出しから小さな
         包みを出し、それに包んであったものを口に含む。
         再び引き出しから、短刀を取り出す。

  エンゼル「・・・さようなら・・・お父様・・・お母様・・・。さようなら
        ・・・私が・・・愛したもの達・・・。永遠にもう、私はあな
        た達にこの世では会えません・・・。けれど・・・悲しま
        ない・・・で・・・。私は・・・今が・・・今・・・この時が・・・
        一番・・・幸せなのだから・・・」

         エンゼル、短刀を手首に押し当て、切り付けた後
         短刀を落とし、ゆっくり倒れる。
 
  エンゼルの声「サヨウナラ・・・」

         風雨が、益々激しく吹き荒れるよう。
         一時置いて、下手奥よりヘンリー、洋服に
         掛った雨雫を払うように登場。

  ヘンリー「いやぁ、参りましたよ、外はもの凄い嵐で・・・。何やら
        小さなヨットが遭難したようですよ。こちらの船に助け
        上げる間もなく、乗員諸共、海の底へ・・・(倒れている
        エンゼルを認める。)・・・フランシス、如何しました?
        気分でも・・・(言いかけて、ただならぬエンゼルの様子
        に、慌てて駆け寄り揺する。)フランシス!?フランシス
        !!(抱き起こし、エンゼルの頬を叩く。)フランシス、
        一体・・・!?(手首の傷に気付いて、掴み見る。)・・・
        これは・・・!!(下に落ちていた短刀を拾い見詰める。
        )何故あなたは・・・自分の命を・・・!!」

         音楽盛り上がって、紗幕閉まる。

     ――――― 第 7 場 ―――――
         
         下手より傷心のクリスティーン、その肩を抱く
         ようにジョーイ登場。中央へ。

  クリスティーン「・・・私のせいだわ・・・。私が彼を行かせたから
           ・・・。(涙を堪えるように。)」
  ジョーイ「馬鹿なことを言うんじゃないよ。」
  クリスティーン「でも、ジョーイ!!私がもっと、彼に行かないで
           と頼んでたら・・・!!」
  ジョーイ「(クリスティーンの肩に手を掛けて。)クリスティーン、
        あいつは君にいくら止められたって、行ってたよ。それ
        に、それなら俺だって同じじゃないか・・・。あいつの
        出発を知ってて、見す見す黙って行かせたんだから
        ・・・。」
  クリスティーン「でも!!」
  ジョーイ「いくら言っても・・・もう遅いんだ・・・。」
  クリスティーン「じゃあ、ジョーイはこれでよかったと言えるの?
           これが私達がすべき、ベストの道だったと言い
           切れるの!?」
  ジョーイ「クリスティーン・・・いくら君が、ここで悔やんだところで、
        あいつが生きて戻って来る訳じゃ・・・(思わず言葉に
        詰まる。)俺っだって口惜しい・・・!!あいつを黙って
        死なせた自分が許せない・・・!!」
  クリスティーン「ジョーイ・・・」
  ジョーイ「だけど・・・あの嵐じゃ、どうしょうもなかったんだ・・・。
        立ちはだかる自然の猛威の前に・・・あいつはあれ程
        憧れ続けた、広大な海に眠ることが出来たんだ・・・。」
  クリスティーン「・・・ごめんなさい・・・。あなたを責めたりして・・・。
           アレックスが亡くなって辛いのは、あなたも同じな
           のに・・・。」
  ジョーイ「・・・いいんだ・・・。君に問われたことは、尤もなことな
        んだから・・・。」
  クリスティーン「・・・何故・・・あの時、別れたりしたのかしら・・・。
           アレックスがそう望んだとしても、私は如何して
           すんなり受け入れたりしたのかしら・・・。本当は、
           彼が待っていてくれと言うなら、何ヶ月だって・・・
           何年だって待つつもりだったのに・・・。彼が海へ
           出てからも・・・つまらない意地を張って・・・こんな
           ことになるなら・・・こんなことに・・・(思わず声を
           上げて泣く。)」

         ジョーイ、優しくクリスティーンを抱き寄せる。

  ジョーイ「・・・俺達は、あいつが残して行った思いを、大切に引
        き継いでいかなければならない・・・。あいつの心を
        ・・・。」

         音楽でフェード・アウト。(紗幕開く。)

     ――――― 第 8 場 ―――――

         フェード・インする。と、島。
         風が静かに戦ぎ、カモメは遠くに飛び交い、
         波が押し寄せる。
         中央、ズボンのポケットに両手を突っ込んで、
         後ろを向いて佇むアレックス。エンゼル、その
         回りをチョロチョロしている。
         ふと、アレックスを気に止め近寄る。

  エンゼル「如何したの?」
  アレックス「(振り返って。)ずっと考えてた・・・。これから俺が
         すべきことを・・・。」
  エンゼル「・・・すべきこと・・・?」
  アレックス「ああ・・・。」
  エンゼル「決まってるじゃない!」
  アレックス「え?」
  エンゼル「歩くことよ!」
  アレックス「歩く・・・って・・・」

         エンゼル、明るく歌う。

         “何かが変わりそうな気がする
         自分が目指したことへ
         ほんの少しだけども
         踏み出した今・・・
         過去に過ぎ去ったことは
         ただ遠い思い出
         振り返ることをしないで
         このまま進もう
         (アレックスの手を取る。)
         共に残した足跡は
         良しも悪しも確かな道
         目の前に広がる真っ直ぐの道も
         確かな自分の道
         だけど見ているだけじゃ何も始まらない
         偶には振り返るのもいいけれど
         今は真っ直ぐ突き進もう”

  アレックス「(溜め息を吐いて、微笑む。)そんな風に前向きに
         考えられるおまえが、如何して自分で自分の命を
         終わらせようとしたんだ?もっと他に、解決する方法
         なんていくらでもあっただろう・・・?」
  エンゼル「あなたが言うように・・・今なら立ち向かって行けたか
        も知れない・・・。」

         エンゼル、思いを馳せるように、遠くを見遣る。

  エンゼル「あの頃の私は・・・自分一人が悲劇のヒロインだった
        のね・・・。今考えると、可笑しくなっちゃう・・・。ヘンリ
        ーに結婚してからも“好きな相手を見つけろ”なんて言
        われて・・・。小さい頃から思い描いてきた、私の理想
        の結婚像が、見事に砕け散ったの・・・。結婚イコール
        ビジネスだなんて・・・。」
  アレックス「・・・エンゼル・・・そうだったのか・・・。軽々しく死を
         選ぼうとしたことは、許されることじゃないが・・・何が
         あったかを聞きもしないで・・・傷のことに触れたのは
         軽率だったな・・・。ご免・・・。」
  エンゼル「(首を振り、微笑む。)もう気にしてないわ。あなたに
        聞いてもらったお陰で、私の心もスッキリしたし・・・。
        あなたに元気づけられたのは、これで2回目よ・・・。
        ありがとう・・・。」
  アレックス「・・・2回・・・?」









     ――――― “未来への扉”6へつづく ―――――









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