2013年5月30日木曜日

“アトラス” ―全8場― 2

             その時、上手よりクルーエル登場。

  クルーエル「アトラス!」
  アトラス「クルーエル・・・」
  クルーエル「こんなところで、何してるんだ!」
  アトラス「いや・・・別に・・・。何か用か・・・?」
  クルーエル「昨日までの続きをやろうと思ってな。(腰に差して
         いた剣に手をかけ、ニヤリと笑う。)」
  アトラス「まだやろうって言うのか?おまえのその腕の傷・・・次
       はそんなどころの騒ぎで済まないぜ?」
  クルーエル「百も承知だ!どちらかの命が尽きるまで、この勝負
         は続くんだ。」
  アトラス「・・・それがこの国のルール・・・」
  クルーエル「たとえ相手が誰であろうと、一度剣を交えた者は、
         必ずどちらかが死ぬ!(下手方に咲いていた花に気
         付き。)目障りな花だ!(花の方へ寄って行き、踏み
         付ける。)」
  アトラス「クルーエル!何も態々そんな隅っこで咲いている花を
       、踏み付けに行くことはないだろう?」
  クルーエル「アトラス・・・?おまえのものの考え方は、俺には理
         解し難いね・・・。どうもおまえはこの国の者としては、
         少々冷淡さに欠けるところがある。仮にもデビル様の
         跡取りとして、この世に生を受けた者らしからぬ発言
         だな。おまえの重臣として、忠告してやろう。もう一度
         、1から教育を受け直し、その考え方を改めた方が、
         これからのおまえの為だ。」
  アトラス「・・・余計なお世話だ・・・」
  クルーエル「この国は闇の国・・・暗黒の大地に誇らし気に咲く
         花など、無用の長物。踏み付けるは当たり前!!」
  アトラス「クルーエル・・・」
  クルーエル「心も同じ・・・。哀れみや同情、優しさなど我々には
         持ち合わせない感情の筈・・・。それなのにおまえは
         昔からどうも、ものごとをそう言った傾向に走らせ、考
         えるところがある・・・。丸でこの国の者ではないかの
         ようにな・・・。そんな調子では、たとえ親と子であっ
         ても、デビル様が放っておく筈がないと、俺は思うが
         ね・・・。自分以外の全てのものに浴びせる罵声はあ
         っても、かける情けは微塵もない。それが我々の根
         底にあるものだ。さぁ、剣を抜け!!今日こそは決着
         をつけるんだ!!そして・・・おまえを倒してこの俺が
         この国の王座につく!!」
  アトラス「・・・欲しいなら、いくらでもくれてやる、こんな身分・・・。
       」
  クルーエル「(アトラスを見る。)」
  アトラス「王座につきたいのなら、何も態々生死を賭けて戦うこ
       ともない・・・。おまえが望むなら俺は喜んでおまえにこ
       の地位、譲り渡そう。」
  クルーエル「はい、どうぞと差し出されて、この俺が喜ぶとでも
         思っているのか。俺だけでない、この国の者は誰で
         あっても、力を持って奪った勝利品に喜びを感じる
         のであって、たとえ金銀財宝、巨万の富であっても
         、楽して手にしたものになど、興味を持つ訳がない。
         全く、おまえのように甘い奴は、この国の落第者だ
         な。さぁ、やるのかやらないのか!?俺はこれから
         5人との決闘が待っているんだ!」
  アトラス「今日はやめておく・・・」
  クルーエル「(溜め息を吐く。)なんだ。それなら後、2、3人予約
         しておくんだったな。おっと・・・遅刻しちゃまずい。お
         まえは頭ばっかり使ってないで、もっと行動しろ!!」

         クルーエル、上手へ去る。
         アトラス、クルーエルが去った方を見詰める。

  アトラス「クルーエルの言うように・・・この国において・・・俺は甘
       過ぎるのか・・・」

         下手より、デビル登場。

  デビル「いつもながらあいつは、血気盛んな奴だな。」
  アトラス「(振り返り、デビルを認める。)父上・・・」
  デビル「全く、頼もしいばかりだ。それに比べておまえは、この国
      の者らしからぬ心持ち・・・。屹度、教えを説いて来た者た
      ちが、育て方を間違えたのだな。おまえを今まで教育して
      来た教育係りは、全て今日限りで首にし、即刻死刑に処
      す。」
  アトラス「父上!!・・・そんな・・・死刑だなど・・・」
  デビル「死刑が不満なのか?」
  アトラス「私の教育係りたちに、何の落ち度もありません。もし今
       の私が、父上の望むような者に成り切れていなかった
       とすれば、彼らの教えに集中出来なかった私自信の責
       任です!!だから死刑など・・・」
  デビル「死刑だ!!」
  アトラス「父上・・・!?」
  デビル「今のおまえのその言葉は、彼らに死を持って償わせる
      だけの意味が十分にある!!それが分からないようでは
      これからの・・・(ハッとしたように。)おまえに・・・
      王座につくに相応しい者かどうか、1つの課題を与えよう
      。その課題を見事クリア出来た時こそ、おまえは我が魔族
      の王となるに相応しい者であることを認め、この印の剣を
      おまえに授けよう。(腰に差していた剣を、高く差し出す
      。)」
  アトラス「・・・課題・・・?」
  デビル「そう・・・課題だ・・・。たった今から地上へと降り立ち
      、その目前に広がる世界を、その手に治めるのだ。」
  アトラス「治める・・・?」
  デビル「そして国々の者たちを見事に服従させてくるのだ。」
  アトラス「服従させるって・・・」
  デビル「その時、初めておまえにこの魔国を任せることとしよう
      ・・・。だが失敗した時には、もう二度とここへは戻って
      来るな。」
  アトラス「父上・・・」
  デビル「分かったな!?」
  アトラス「・・・(ゆっくり頷く。)」
  デビル「クルーエルを一緒に連れて行くがいい。」

         デビル、上手へ去る。

  アトラス「俺に・・・国を支配しろと・・・?そんなことが、この
       俺に本当に出来るのか・・・。だが、この国の者として
       生を受けた以上、この国の者として生きるべきなのだ
       ・・・。それがたとえ自分に納得のいかない生き方だと
       しても・・・」

         音楽流れ、アトラス歌う。

        “闇の国に必要なのは
         闇の国に相応しい
         闇の心・・・
         下手な優しさ思い遣り
         そんなものは必要ない
         いつも自分のことだけ
         考えていればいい・・・
         いつも自分さえよければ
         それでいい・・・
         その考え方が
         この国の正しい生き方・・・
         それを確かめる為
         俺は旅立つ・・・”

         暗転。  

    ――――― 第 3 場 ―――――

         緊迫した音楽流れる。
         カミナリの轟き音が響き渡り、風の音が
         強くなる。
         (舞台薄暗くなる。)
         下手より、下手方を気にするように走り
         ながら、人々登場。
         脅えるように歌う。

         “魔物よ!!助けて!!殺される!!
         心のない魔物よ!!殺しに来たわ!!
         冷淡な笑みを浮かべ追い詰める
         奴らは殺しを何とも思わない
         ただ自分たちの望みを叶える為に
         いつも誰かに犠牲を強いる
         魔物よ!!助けて!!殺される!!
         魔物よ!!助けて!!殺される!!”

         一時置いて、人々を追い詰めるように
         アトラス登場。
         上手方へ逃げようとした人々の、行く手
         を阻むように上手よりクルーエル、
         楽しそうに登場。

  アトラス「抵抗せずに大人しくこの国を明け渡せば、我々も手荒
       なことはしない。」
  村人1「助けて下さい・・・!私たちは何も抵抗など致しません。」
  村人2「この国が欲しいと言うなら差し上げます・・・!!」
  村人3「だから皆の命だけは・・・(手に持っていた短剣を、下へ
       置き手を上げる。)」
  クルーエル「なんだ、面白くない・・・。もっと抵抗してくれないと
         ・・・なぁ、アトラス!!」
  アトラス「いいだろう・・・」
  クルーエル「(怪訝な面持ちでアトラスを見る。)」
  アトラス「こちらも無血開国は望んでもないこと・・・」
  クルーエル「・・・アトラス・・・?」
  アトラス「無抵抗の者に、剣を向けるようなことはしない。」

         人々、幾分安心したように其々顔を見合す。

  村人1「魔国の方が、そのようなことを仰るとは、思ってもみま
      せんでした・・・。(他の人に。)なぁ・・・」
  村人2「(頷いて。)ああ・・・てっきり有無を言わさず切られるも
      のと・・・。今までの噂と随分違うな・・・。」
  村人3「よかった・・・」

         その時クルーエル、掛け声と共に、
         振り上げた剣を、一人の村人(オーファ)
         の背後から振り下ろす。
         オーファ、倒れる。他の人々、一瞬何が
         起こったか分からず、呆然と佇む。

  アトラス「クルーエル!!」
  村人1「・・・オーファ・・・」
  村人2「オーファ!!」

         人々、口々にオーファの名を呼び、
         駆け寄る。

  アトラス「クルーエル!!何てことをするんだ!!(クルーエル
       に駆け寄り、襟首を掴む。)」

         アトラス、クルーエル残して、カーテン
         閉まる。

  クルーエル「だったら、おまえは平気なのか!?あんな風に魔
         国の者たるに相応しくないと言われ、人々に安堵の
         笑みを浮かべられても!!俺は嫌だね!!おまえ
         はよくても、俺には許せない!!」
  アトラス「・・・分かった・・・クルーエル・・・」
  クルーエル「何が分かったんだ!!おまえはちっとも分かってな
         い!!おまえは魔国の者としては失格者だ!!デビ
         ル様が、そのおまえに下さった、最後のチャンスもも
         のにしないで、これからの人生を下界の卑しい人間
         共と一緒に生きていくと言うのか!!」

         その時、下手より一人の少年、怒りに
         肩を震わせ、走りながら登場。

  少年「人殺し!!」

         アトラス、クルーエル、少年の方を見る。

  少年「人殺し!!何故父さんを殺したの!!人殺し!!一体
     父さんが何したって言うんだ!!」
  アトラス「・・・おまえは・・・さっきの男の・・・?」
  クルーエル「なんだ小僧!!おまえも殺られたいのか!?」
  少年「・・・(一瞬たじろぐ。)人殺し!!人殺し!!」
  クルーエル「煩い!!(剣を振り上げる。)」
  アトラス「(クルーエルの振り上げた手を掴む。)もういい!!」
  クルーエル「アトラス!!」
  アトラス「・・・我々が憎いか?」
  少年「当たり前だい!!僕の・・・僕の大好きな、たった一人の
     父さんを・・・!!何で殺したんだよ・・・(泣く。)悪魔・・・!!
     悪魔!!」

         アトラス、スポットに浮かび上がる。

  アトラス「・・・悪魔・・・そう・・・我々は魔国に住む者・・・。悪魔と
       罵られようが、それは当たり前のこと・・・いつものことだ
       ・・・。なのに何故・・・ほんの少しだけ、その当たり前が
       疑問に思える・・・。確かに俺は・・・魔国の者・・・確かに
       ・・・。本当に父の子なのだろうか・・・。何故、俺はこんな
       に自分の心に不安を感じる・・・?この旅を終え、魔国へ
       戻った時には、父やクルーエルのように俺も・・・あんな
       風に冷淡な心を持つ・・・魔国の者然となるのだろうか
       ・・・。父の跡を継ぐに相応しい、氷の心を持つ魔国の王
       として・・・生まれ変われるのか・・・。」

         暗転。

    ――――― 第 4 場 ―――――

         上手客席より、腕組しながら考え事を
         するようにクルーエル登場。

  クルーエル「一体、あいつは本当に我々と同国の者なのか・・・。
         俺には全くあいつの考えていることが分からない・・・
         。俺たちは人の命に構っている時を待つ時間など、
         持ち合わせてはいない・・・。殺した人間に同情し、流
         す涙など一滴もある筈がない・・・。なのにあいつは
         ・・・」

         音楽流れ、クルーエル歌う。
         ゆっくり下手方へ。
      
         “変わってる・・・
         今まで魔国では
         お目にかかったことのない奴アトラス
         全く変だ・・・
         今まで見たことない
         いやに平和な目をした奴アトラス”

  クルーエル「ずっとあいつの側にいて、光と影のようにあいつに
         使えて来た・・・同じように教育も受けた・・・」

         “だが辿り着いた俺は魔国の者
         しかし奴は魔国の者になり切れない・・・
         何故なんだ・・・
         俺には奴の考えが分からない
         どうするつもりなんだ・・・
         いくら俺が手を出したところで
         奴にその気がなけりゃ
         所詮奴は・・・
         半魔国の者・・・”

  クルーエル「アトラス・・・おまえは一体、何がしたいんだ・・・。(
         首を振る。)駄目だ駄目だ・・・!!何故俺まで他の
         者のことを気にかけるんだ・・・。いくらあいつの家臣
         だからと言って、魔国の者に他の奴のことなど考え
         る心は持ち合わせてはいないのに・・・あいつのせい
         で・・・俺まで少し頭が変だ・・・。」

         クルーエル、下手へ去る。



     
                           
                        
                           



         ――――― “アトラス”3へつづく ―――――



























2013年5月29日水曜日

“アトラス” ―全8場―

       〈 主な登場人物 〉

   
    アトラス  ・・・  本編の主人公。

    スプリーム  ・・・  アトラスの父。

    ハーティ  ・・・  アトラスの母。

    デビル  ・・・  魔国の王。

    クルーエル  ・・・  アトラスの仲間。

    
    その他



 ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪


         開演アナウンスが流れる。

         微かに嵐のよう。

  声(エコー)「約束を忘れるな・・・将来、おまえに男の子どもが出
         来た時・・・おまえの命を助けた代価として、その子ど
         もは私が頂く・・・。我が魔族の跡継ぎとして、その生
         貰い受けよう・・・。(笑う。)」

         笑い声、段々遠ざかる。
         と、入れ代わるように、豪華な音楽、段々と
         大きくなる。

    ――――― 第 1 場 ―――――

         舞台、明るくなる。(城内の様子。)
         ポーズを取った人々、楽し気に歌い踊る。

         “王子が生まれたぞ!
         待ちに待った期待の時
         王子が生まれたぞ!
         待ち望んだこの国の宝
         青い海に囲まれた
         澄んだ青空広がる我が国
         楽園
         誰もが優しく温かな
         平和な我が国 パラダイス
         そこに生まれた平和の象徴
         王子が生まれたぞ!
         待ちに待った期待の時
         王子が生まれたぞ!
         待ち望んだ至福の瞬間!”

         人々、中央奥、設えられた段上を差し示し
         ポーズを取る。
         下手奥より、一組の男女(スプリーム、ハーティ)
         嬉しそうに、寄り添いあい登場。
         段上、中央へ。

  人々口々に「王様!王妃様!おめでとうございます!!」
          「王子ご誕生、おめでとうございます!!」

  スプリーム「ありがとう。」

         曲調変わり、スプリーム、ハーティ、
         静かに歌いながら、ゆっくり前方へ。
         同時に上手より乳母(バドル夫人)、
         ベビーベッドを押しながら舞台中央へ。

         “王子が生まれたありがとう
         皆に祝福され
         地上に舞い降りた
         平和の誓い”

         全員で歌う。

         “幸せの国に相応しく
         陽の光浴び
         天から使わされた
         未来ある者よ
         我が国を平和へと導く為に
         生まれし天の子”

         人々、ベッドの周りを取り囲み、覗くように。
         口々に歓待の声を上げる。

  人1「まぁ・・・なんて可愛らしい。」
  人2「安らかな寝顔だこと・・・」
  人3「左手にはまさに王家の紋章が・・・」
  バドル夫人「王子様はむずがることもせず、目を覚ましている
         時にはニコニコと・・・私の手を煩わせることをなさら
         ず・・・とてもいいお子ですわ。」
  人1「・・・まぁ・・・」
  スプリーム「早く大きくなって、強く立派な・・・この国の王となる
         のだぞ。」
  ハーティ「あなた・・・それはあまりにも気が早いですわ・・・。だっ
        てアトラスはまだ生まれたばかり・・・」
  バドル夫人「王様、お后様、また今日も各国からお祝いの品の
         数々が、山のように届いております。」
  スプリーム「そうか・・・。」
  バドル夫人「もうお部屋が一杯で、それ用に一部屋用意して頂
         かないと・・・」
  スプリーム「そうするとしよう・・・。」

         その時、突然辺りが薄暗くなり、俄かに
         風が強くなる。(嵐の前触れのよう。)
         人々、不安気に周りを見回す。

  ハーティ「あなた・・・どうしたのでしょう、突然・・・」
  スプリーム「・・・ああ・・・。バドル夫人、アトラスを部屋へ・・・」
  バドル夫人「はい。」

         バドル夫人、ベビーベッドを押しながら、
         上手方へ行きかけると、上手、下手より
         各一人、不適な笑いを浮かべた黒尽くめの
         男、登場し、人々の行く先を塞ぐように。

  バドル夫人「誰です!そこをどきなさい!」
  スプリーム「何者だ!?(剣に手をかける。)」
  ハーティ「あなた・・・!」

         その時、カミナリの轟き音が響き渡り、
         後方段上中央に、マントを付けた黒尽くめの
         男(デビル)登場。

  デビル「・・・久しぶりだったな・・・」

         皆、一斉に段上注目。

  スプリーム「誰だ!!」
  デビル「・・・忘れた・・・とでも言うのか・・・?私のことを・・・」
  スプリーム「おまえなど、知る訳がないだろう!!」
  デビル「おやおや・・・冷たいな・・・」
  スプリーム「一体何の用があって、王子誕生の祝典の最中、突
         然に・・・!!無礼であろう!!」
  デビル「・・・約束を果たして貰う為に、やって来たのだ・・・」
  スプリーム「約束・・・?」
  デビル「そう、約束だ・・・」
  スプリーム「約束とは一体、何の話しだ!!先に言った通り、私
         はおまえなど知らないし、そんな約束などした覚えも
         ない!!」
  デビル「人間と言う奴は・・・何でもかんでも忘れるのがお得意
       のようだ・・・。忘れたのはおまえの勝手・・・私と一度交
       わした約束は、何があろうと必ず守ってもらう。」
  ハーティ「・・・あなた!」
  スプリーム「・・・おまえと交わした・・・?一体、私とおまえの間に
         どんな約束があったと言うのだ・・・!!」
  デビル「・・・思い出したいか・・・?(ニヤリと微笑む。)」

         舞台、暗転。
         客席下手より一人の執事(レイク)、上手
         より一人のメイド(バドル)、走りながら登場。

  レイク「大変だ!!大変だ!!王子様が行方不明だなんて・・・
      !!」
  バドル「大変だわ・・・大変だわ・・・一体どこへ行かれたのかし
      ら・・・!!」
  レイク「(バドルを認め。)あ・・・!!バドル!!スプリーム王子
      様は見つかったか!?」
  バドル「あっ!!レイクさん!!それがどこにもいらっしゃらない
      んです・・・!!ちょっと目を離した隙に・・・王子様はどこ
      に・・・」
  レイク「王様とお后様のお留守の間に、王子様にもしものことが
      あったら・・・」
  バドル「そんな!!」
  レイク「いいか!!総動員でもう一度よく捜すんだ!!城中、く
      まなく・・・!!」
  バドル「はい!!」

         レイク、下手方へ、バドル上手方へ行きかける。

  バドル「・・・レイクさん!!スプリーム王子様・・・裏の雪山に入
      られたんじゃないでしょうね・・・?」
  レイク「・・・まさか・・・雪山になど・・・一歩でも足を踏み入れたな
      ら、二度と生きて戻っては来れなくなるんだぞ!!いつも
      王様から、絶対に行ってはならないと、きつく止められて
      いるんだ。」
  バドル「・・・でも、最近のスプリーム王子様は好奇心旺盛で・・・」
  レイク「・・・大丈夫に決まっているよ、バドル・・・。兎に角、もう一
      度よく捜そう・・・」
  バドル「はい・・・」

         其々、上手下手へ去る。
         舞台中央スポットに、寒そうに震えながら
         膝を抱え座り込んだ一人の少年(スプリーム)
         浮かび上がる。
         激しい風雪が吹き荒ぶ、雪山のよう。

  スプリーム「・・・すごく・・・寒い筈なのに・・・感覚がないや・・・も
         う・・・駄目だよ・・・一歩も歩けない・・・こんなところで
         僕・・・死んでしまうのかな・・・父様・・・母様・・・ごめ
         んなさい・・・言い付けを守らなくて・・・雪山を冒険し
         ようだなんて思い付いた僕を許してね・・・(倒れ込む
         。)・・・眠いよ・・・」

         一時置いて、デビル、スポット上に登場。
         倒れているスプリームを、見下ろす。

  デビル「・・・おい・・・」
  スプリーム「・・・う・・・ん・・・」
  デビル「・・・死ぬつもりか・・・?」
  スプリーム「(ゆっくりデビルを見上げる。)」
  デビル「尤も、この吹雪の中じゃ死ぬつもりも何も・・・放って置
       いたって、死んでしまうだろうがな。(笑う。)ところで・・・
       死ぬつもりはさて置き・・・」
  スプリーム「・・・死にたいだなんて・・・」
  デビル「そのつもりで今ここに横たわっているんじゃないのか?
       」
  スプリーム「・・・死にたくないよ・・・」
  デビル「ほう・・・。人間ってのは、変わった生き物だ・・・。つまり
      おまえは死にたくないのに、今まさに死の淵にいる・・・そ
      うだろ?・・・生きたいか・・・?」
  スプリーム「・・・勿論・・・」
  デビル「・・・助けてやろうか・・・?」
  スプリーム「・・・え・・・?」
  デビル「おまえの命・・・この私が助けてやってもいい。」
  スプリーム「・・・本当に・・・?」
  デビル「その代わり・・・その代価はちゃんと払ってもらう・・・。」
  スプリーム「・・・代価・・・?」
  デビル「ああ・・・なぁに、たいしたことじゃない・・・。それよりおま
      えは、もっと生きたいのだろう?もっと生きて、まだまだや
      りたいことが山のようにある・・・」
  スプリーム「・・・うん・・・僕はまだ死にたくない・・・分かったよ・・・
         僕を助けてくれるなら・・・僕に出来ることは何だって
         する・・・約束するよ・・・だからお願い・・・僕を助けて
         ・・・」

         その時、カミナリ音が轟き渡る。

  デビル「分かった・・・おまえの望みを叶えてやろう・・・」
  スプリーム「・・・ありがとう・・・。・・・あなたは・・・誰・・・?」
  デビル「・・・私は・・・デビル・・・魔国の王だ・・・」
  スプリーム「・・・デビル・・・悪魔・・・?(意識がなくなる。)」

         フェード・アウト。
         舞台薄明るくなる。と、1場の様子。
         (デビル、片手に赤ん坊を抱かえている。)

  スプリーム「・・・おまえはあの時の・・・」
  デビル「・・・思い出したかな?」
  ハーティ「あなた・・・約束って一体・・・」
  スプリーム「・・・あの時の・・・あれは・・・」
  デビル「約束通り、この子は私が頂いていくことにする。」
  ハーティ「アトラス!!あなた!!アトラスが・・・!!」
  スプリーム「まっ・・・待ってくれ・・・!!頼む・・・他に望むものは
         何でも用意させる!!だから、その子だけは・・・!!
         金でも宝石でも・・・何でも・・・」
  デビル「・・・私を、金や宝石を欲しがる低俗な人間と一緒にして
       もらっては困るよ・・・。私が欲しいのは、私の跡継ぎだ。
       王家の血筋を持つ跡取りだ。この印を持つ者・・・(赤ん
       坊の手を見る。)」

         デビル、上手方へ去る。その後を追おう
         とするスプリームの前に、黒尽くめの男たち
         が立ち塞がる。

  スプリーム「・・・待て!!待ってくれ!!どけ!!どかないと・・・
         (剣を抜き、男たちの方へ差し向ける。)おまえたちを
         殺してでも・・・!!」

         男たち、顔を見合わせ不適に微笑むと、
         スプリームの前でマントを翻し、其々
         上手下手へ走り去る。
         スプリーム、その翻したマントに煽られる
         ように、手にしていた剣を思わず落とし、
         膝をつく。

  ハーティ「あなた!!(駆け寄る。)」
  スプリーム「糞う・・・!!アトラス・・・アトラス!!」

         暗転。

    ――――― 第 2 場 ―――――

         音楽流れる。
         下手客席より、穏やかな顔付きの一人の
         少年(アトラス)、歌いながら登場。上手方へ。
         途中、咲いている一輪の花に気付き、そっと
         手に触れ、愛でるように。

         “美しい花を見た時
         美しいと思うことはいけないことなの?
         可愛い生き物に触れる時
         優しい気持ちになるのは悪いこと?
         冷たく冷酷に・・・
         飽くまで冷淡に・・・
         僕には分からないその意味が・・・
         美しい花を見た時
         踏み付けて通り過ぎる無関心・・・
         可愛い生き物に触れた時
         その命の芽を摘む平常心・・・
         それが大切なことだと言うけど
         僕には分からない
         その意味が・・・”

         上手客席より、黒尽くめの男、登場。
         アトラスを認め、近付く。

  男「アトラス様・・・こんなところにお出ででしたか・・・。デビル様
    が、お捜しになっておられます。お城へお戻り下さい。」
  アトラス「・・・うん・・・分かった・・・」

         アトラス、男、上手客席へ去る。
         入れ代わるように、上手舞台より成長し、
         幾分険しい顔付きの青年になったアトラス、
         歌いながら登場。下手方へ。

         “暗いこの世に必要なのは
         暗い心と憎しみ溢れる冷たい眼差し
         暗いこの世に相応しいには
         ただ心もなく見詰める冷静な眼差し
         降り注ぐ陽の光を遮る厚い雲が
         辺りを包む・・・
         暗黒の世界が訪れ
         この世は我々のもの”

         アトラス、足元に咲いていた一輪の花に
         気付き、踏み付けようと足を上げるが、
         躊躇し足を下ろす。












      ――――― “アトラス”2へつづく ―――――



























2013年5月28日火曜日

“古びた洋館の隠れた住人・・・” ―全6場― 完結編

     ルルル「どうしてマーサが・・・」

         そこへマーサ、下手より登場。

  マーサ「私が何か・・・?」
  ドン、デン、グン、ポー「わ・・・わあーっ!!またお化けだーっ!
                !」

         ドン、デン、顔を上げる。

  ドン「・・・って・・・もういいぜ。お化けは見慣れた。」
  デン「うん・・・」
  グン「えーっ・・・!?」
  ポー「おじさんたち怖くないのー・・・!?」
  ドン「俺たちは大人だからな。(笑う。)」
  デン「そ・・・そう言うこと・・・。いつまでも怖がっちゃいられないっ
     て・・・(マーサをチラッと見て。)で・・・でも・・・やっぱり・・・
     ちょっと・・・こ・・・怖い・・・」
  マーサ「(恐ろし気な声で。)何なんですか!!この人間たちは
       !!」
  デン、グン、ポー「わあーっ!!(手を取り合って震える。)」
  ルルル「マーサ・・・」
  ドン「・・・あんたがマーサ・・・?」
  マーサ「誰!?あなたたちは!!危険ですわ、お嬢様方!!早
       くこちらへ!!」
  ラララ「マーサ、大丈夫よ。ここにいるのはただの人間・・・。私た
      ちには、子ねずみ程も恐ろしくないわ。ねぇ、ルルル・・・(
      笑う。)」
  ルルル「ええ・・・(笑う。)」
  ドン「・・・悪かったな・・・」
  マーサ「まぁ、お嬢様たちったら・・・。でも、そのただの人間がど
       うしてここに!?」
  ドン「(咳払いをする。)それはだな・・・」
  マーサ「事と次第によっては・・・生きてここから帰れると思わな
      いことね・・・」
  デン、グン、ポー「ヒーッ!!」
  ドン「ま・・・まぁまぁ・・・待ってくれよ、そんな怖い顔しないで・・・」
  マーサ「怖い顔ですって・・・!?」
  ドン「ヒッ・・・(思わず目を伏せる。)あ・・・あの・・・だから少し落
     ち着いて・・・」
  マーサ「フン!私はいつも落ち着いてますわ!さぁ、何故生きた
      人間がこの屋敷の中をウロウロしているのか、教えて頂
      きましょうか・・・?」
  ドン「あ・・・そうそう・・・では先ずお聞かせ願いたいのですが・・・
     あなたがこの2人のお嬢さん方の乳母のマーサ夫人・・・?
     」
  マーサ「・・・ええ・・・それが何か・・・?私が先に質問したんです
       よ?あなたに聞かれる謂れは・・・」
  ドン「まぁまぁ・・・。ところであなたもこの2人が探し回っている、
     水晶玉のことをご存知で・・・?」
  マーサ「水晶玉ですって!?そんなものは知りません!!お嬢
       様方!!またそんなありもしないことを、よりによって、
       こんな人間に話すなんて・・・!」
  ルルル、ラララ其々「ごめんなさい・・・」
  マーサ「そんな水晶玉の話しなど、ただの子どもたちの空想で
       す!」
  ドン「本当に・・・?」
  マーサ「ええ。」
  ドン「何故あなたはそう言い切れるんですか?」
  マーサ「それは・・・」

         音楽流れ、ドン歌う。

         “あなたは何か重大な
         秘密を知っているんじゃないか
         我々誰も知りえない
         大切な心に秘めた何かが・・・
         ここにいる皆を欺き
         ただ一人・・・
         知り得た重大な何かを・・・”

  マーサ「そ・・・そんなもの、ある筈ないでしょう・・・。私はただの
       召使・・・」
  ドン「(デンをつついて。)おい!ほら、さっきのあれ・・・おまえが
     持ってる奴を出せよ。」
  デン「え・・・?ああ・・・(ポケットから水晶玉を取り出す。)これ・・・
     ?」

         その場にいた者、水晶玉を認め、一斉に
         驚きの声を上げる。

  ラララ「あっ!!」
  ルルル「それは私の水晶玉!!」
  ラララ「本当にあったのね・・・」
  ルルル「(恐ろし気な声で。)やっぱりあなたが盗んだのね!!」
  デン「わ・・・わあー!!違う・・・違います!!これは兄貴が!!
     」
  ルルル「兄貴?(ドンに。)あなたが犯人!?」
  ドン「ま・・・待て待て!!落ち着け!!これは俺がさっき、この
     屋敷の中で偶然見つけたんだ!!」
  ルルル「・・・見つけた・・・?嘘!!盗んだのよ!!」
  ドン「ち・・・違うんだ!!本当に見つけたんだって!!」
  ルルル「・・・本当・・・に・・・?」
  ドン「ああ!!神かけて誓う!!(手を上げる。)」
  ルルル「・・・そう・・・(デンから水晶玉を取り上げるように。)ああ
       ・・・でもよかった・・・!!本当に長いこと探していたのよ
       ・・・!!(水晶玉を愛おしそうに手で包む。)」
  ラララ「ねぇ、マーサ!!やっぱりルルルは本当のことを話して
      いたのね。」
  マーサ「・・・外からは分からなかった筈よ・・・」
  ラララ「・・・え・・・?」
  ドン「だから、うっかり壁に穴を・・・」
  デン「兄貴・・・!!」
  ドン「あっ・・・」
  マーサ「・・・どれ程の長い時・・・沈黙を守り・・・ただひたすら知
       らん顔を決め込み・・・今まで一体どれだけ心痛め・・・
       この身朽ち果ててなお、屋敷に心留め置き暮らして来
       たと思っているの・・・!?」
  ルルル「マーサ・・・」
  ドン「矢張りあなたがその水晶玉を隠してたんですね、マーサ夫
     人・・・」
  マーサ「(ハッとして。)あ・・・あの・・・いえ・・・だからそれは・・・」
  ルルル「マーサ・・・どうして・・・」
  マーサ「お嬢様・・・」
  ラララ「ルルル!私にも懐かしいお父様、お母様の様子を見せ
      て頂戴!!」
  マーサ「ま・・・待って!!」
  ラララ「え・・・?」
  ドン「マーサ夫人・・・ひょっとして・・・あなたは何か、この水晶玉
     に映し出されると困るような秘密を持っている・・・違います
     か・・・?」
  マーサ「・・・ち・・・違い・・・ます・・・」
  ドン「本当に・・・?」
  マーサ「・・・ええ・・・」
  ドン「では・・・この水晶玉を、皆で覗いて見ようではありません
     か・・・。懐かしい昔々の全てを・・・」
  マーサ「・・・(項垂れる。)分かりました・・・お話しします・・・何も
       かも・・・」

         皆、マーサに注目する。

  マーサ「私には・・・その昔、たった一人の家族がいました・・・。
       とても可愛くて優しい弟でした・・・。でもその弟は、とて
       も重い病で・・・その治療費は貧乏暮らしの我が家には
       到底払えないような金額だったのです・・・。でも何とし
       ても、弟の病気を治してやりたい・・・どんなことをしても
       ・・・そう・・・私にはどうしても・・・大金が必要だったので
       す・・・。そこで目を付けたのが・・・」
  ドン「目を付けたのが・・・?」
  マーサ「このお屋敷だったのです・・・。丁度その頃、このお屋敷
      で働かせてもらっていた私は・・・悪いことと知りながら・・・
      至る所に転がっていた金目のものを、誰にも気づかれな
      いよう、少しずつ拝借し・・・」
  ドン「弟の治療費に充てていた・・・」
  マーサ「(頷く。)・・・私にはどうしてもお金が必要だったのです。
      病気の弟の治療の為に・・・」
  デン「このお屋敷の財産を、黙って使っていたんだ・・・」
  マーサ「だから・・・そのことがお嬢様にバレでもして、ここを追い
      出されるようなことにでもなれば・・・忽ち弟の治療費が、
      払えなくなって弟は死んでしまう・・・」
  ラララ「追い出すなんて・・・」
  ルルル「そんなこと、ある筈がないじゃない・・・」
  ラララ「ハッキリ言ってくれれば、お金なんていくらだって・・・」
  ルルル「マーサの弟の為になら、私たち・・・屹度このお屋敷だ
       って手放したでしょう・・・」
  マーサ「お嬢様・・・」
  ドン「それを隠す為におまえさんは、その水晶玉を壁の裏に埋
     め込んだ・・・。それが年月と共に壁がもろくなり・・・さっき
     俺が穴を開けた場所から見つかった・・・と・・・」

         (ルルル、手に持っていた水晶玉を、
         テーブルの上へ置く。)
         音楽流れ、ルルル、ラララ、マーサの側へ。
         マーサの手を取り、歌う。

         “大好きなマーサ
         今までずっと側にいて
         私たちを温かな
         愛情で包み守ってくれた
         そんなあなたにどれ程の
         感謝を持ってこれまできたか・・・
         ああ大好きなマーサ・・・
         あなたがいたから私たち
         今まで少しも淋しいなんて
         思ったことはないのよ”

  マーサ「お嬢様・・・」
  ルルル「マーサだって、早く弟のところへ行きたかったでしょう
       ・・・?」
  ラララ「それなのに今まで、私たちとずっと一緒にいてくれたわ
      ・・・」
  ルルル、ラララ「ありがとう、マーサ・・・」
  マーサ「お嬢様・・・!!申し訳ありません・・・!!(泣く。)」
  デン「(テーブルの上の水晶玉を見ていて、何かに気付いたよう
     に。)ねぇ、兄貴・・・この水晶玉って・・・ビデオカメラみたい
     なものなんだな・・・」
  ドン「・・・ん・・・?」
  デン「だって、この水晶玉に映るのは、オイラたちがさっき見た
     ことばっかで、見たことのないものは一つだって見せてくれ
     ないぜ。」
  マーサ「・・・え・・・?」
  ラララ「・・・なんですって?」
  ルルル「見たことだけ・・・」
  ドン「そうか・・・あんたがどんな悪事を働いてきたとしても・・・そ
     んなものは水晶玉には知ったこっちゃねぇ・・・その水晶玉
     には、彼女たちのあんたに対する思い出だけが映し出され
     るってことか・・・。」
  ルルル「(水晶玉を手に取り見る。)・・・マーサ・・・笑ってるわ・・・
       私たちも・・・幸せそう・・・」
  ドン「彼女たちは、笑顔のあんたしか知らなかったってことだな
     ・・・」
  デン「じゃあ何故、魔法使いのお婆さんは、誰にも見せるだなん
     て・・・?」
  ドン「人間の欲が働くと、勘違いと言う・・・自分に都合のいいも
     悪いも分からない・・・間違った心を見せるからじゃないか
     ・・・?あんたみたいに・・・。彼女たちの心を信じていれば、
     もっと早く、彼女たちもあんたも心安らかになることが出来
     たのに・・・」
  ルルル「でも私は、あなたたちに出会えて、楽しかったわ!」
  ラララ「私も!こんな長い時をここに留まっていなければ・・・」
  ルルル、ラララ「あなたたちと出会うことはなかった・・・」
  ドン「え・・・?あ・・・ありがとう・・・(照れたように笑う。)」
  ルルル「マーサ!さぁ、向こうの世界へ行きましょう。」
  ラララ「お父様やお母様・・・そしてあなたの弟も、きっと首を長く
      して待っている筈よ・・・」
  マーサ「お嬢様方・・・お嬢様、ありがとうございます・・・(涙声で
       。)」
  ルルル「さ・・・参りましょう・・・」

         マーサを挟むようにルルル、ラララ並び、
         3人上手方へ行きかける。

  ルルル「そうだわ・・・(後方、棚の上から封筒を取り、ドン、デン
       の方へ歩み寄る。)これ・・・(封筒を差し出す。)」
  ドン「・・・なんだい・・・?(封筒を受け取る。)」
  ルルル「私の大切な宝物を見つけてくれたお礼よ・・・」
  ドン「お礼・・・?」
  ルルル「このお屋敷はもう、これからは本当に空き家になるの
       だから、あなたたちに差し上げるわ・・・泥棒さん!」
  ドン「え・・・知って・・・!?」
  ルルル「私たちは、あなたたちよりずーっとお姉さんなんですか
       らね。(笑う。)」
  ラララ「そうそう、そこら辺に転がっている丸いものは、(グン、ポ
      ーを覗き込むように見て。)そこの2人の坊やたちにあげ
      るわ。丸いものを探しに来たんでしょう?(笑う。)」
  グン「あ・・・そうだ!!僕の大切なボール・・・!!」
  デン「ボール・・・?あ・・・(ポケットを探る。)確か・・・」
  ドン「また、おまえか?何でも拾ったものをポケットに仕舞う癖、
     なんとかしろよ・・・。」
  デン「だって・・・(ポケットからボールを取り出し見せる。)・・・こ
     れ・・・」
  グン「あ!!それだ!!僕の探してた大切なボール!!」
  デン「屋敷の中に入る前に、ここの庭で拾ったんだ。はい・・・(グ
     ンに差し出す。)」
  グン「(ボールを受け取り。)ありがとう!!やった!!」
  ポー「よかったね、グン!!」
  グン「うん!!」
  ラララ「本物も見つかったって訳ね・・・」
  ルルル「さぁ、行きましょう。」
  ラララ「ええ・・・さよなら・・・」
  ルルル「さよなら・・・」

         マーサ、ルルル、ラララ、嬉しそうに
         寄り添い合い、上手へ去る。

  ドン「さよなら・・・さよなら・・・!!また会おうぜ!!(手を振る。
     )」

         4人、残したまま場面変わる。

    ――――― 第 6 場 ―――――

  グン「おじさんたち、これからどうするの?」
  ポー「このお屋敷に住むの?」
  ドン「さぁな・・・いっちょ、病院にでも改築するか!」
  デン、グン、ポー「病院!?」
  ドン「壁の中で水晶玉を見つけた時、一緒にこいつを見つけた
     んだ!(ポケットからキラキラ光る、何かを取り出し見せる
     ように。)」
  デン「ダイヤモンド!?」
  ドン「ああ!これだけあれば、病院だろうが何だろうがこの屋敷
     を改築して、新装オープン出来るぜ!!」
  グン、ポー「わーっ!!」
  ドン「病気の人を助ける為にこの屋敷を使えば・・・あの3人も喜
     んでくれるんじゃないか・・・」
  デン「兄貴・・・」
  ドン「大病院のオーナー様・・・ってのも、悪くないだろ?」
  デン「兄貴ー!!」
  グン「じゃあ僕たち帰るよ!パパやママが心配してるといけない
     から。」
  ドン「おう!」
  グン「病院が出来たら、遊びに来るね!!」
  ドン「馬鹿!病院に遊びに来るとは、どう言った見解だ!」
  グン、ポー「あはははは・・・(笑う。)」
  ドン「その前に、丸いもの取りに来いよ!!」
  グン「うん!!」

         グン、ポー、嬉しそうに下手へ走り去る。
         音楽流れ、ドン、デン歌う。

         “恐る恐る近付いた
         巷で有名 幽霊屋敷
         中に入れば本当の
         幽霊だらけのお屋敷さ
         だけど気持ちは暖かで
         楽しい気分に浸れるぜ
         まぁ一度来てみなよ 皆でさ
         怖いなんて思い違いだってこと
         中に住むのは誰も知らない・・・
         ただの愛に溢れた幽霊たちさ!”

         ドン、後方へ向かって歩き出す。

  デン「そう言やぁ、お屋敷の中で謎解きしてる時、兄貴ってば“
     名探偵ドン”って感じだったなぁ。(笑う。)」
  ドン「なぁに馬鹿なこと言ってんだよ。行くぜ!」
  デン「あ・・・待って来れよーっ!!兄貴ーっ!!」

         デン、ドンを追い掛けるように。






         ――――― 幕 ―――――
  

2013年5月27日月曜日

“古びた洋館の隠れた住人・・・” ―全6場― 4

  ドン「(何かに気付いたように。)・・・ん・・・?」
  デン「ど・・・どうしたんだい、兄貴・・・」
  ドン「(恐々とゆっくりラララたちの方へ。3人をマジマジ見て。)」
  デン「あ・・・兄貴!!」
  ドン「な・・・なぁんだ・・・増えた幽霊は1人だけだ!こっちの2人
     は生きた子どもだぜ。」
  デン「子ども・・・?」
  ドン「驚かすなよ!全く・・・」
  デン「で・・・でも、一人は増えたんだろ・・・?2人でも3人でも・・・
     幽霊がいて怖いのは同じじゃないか・・・」
  ドン「大丈夫さ!ほら見てみろ!(ルルルとラララを交互に見て。
     )同じだ!」
  デン「同じ・・・?」
  ドン「増えたように見えるだけで、こっちの幽霊さんが鏡に映っ
     てるだけだ。」
  デン「鏡に映って・・・?」
  ドン「ああ!」
  デン「な・・・なぁんだ・・・。けど・・・あ・・・兄貴・・・最近の鏡って・・・
     3D映像みたいになってるんだね・・・」
  ドン「え?」
  デン「だ・・・だって両方共・・・えらく立体的・・・」
  ドン「なんだよ、人が折角・・・(ルルルとラララを交互に見て。)・・・
    ホントだ・・・。あ・・・そうか!分かったぞ!!」
  デン「え・・・?」
  ドン「きっと、分身の術だ!!」
  デン「ぶ・・・分身の・・・?」
  ドン「ああ!!全く、驚かしやがって・・・(笑う。)幽霊なんだもん
    な!何か俺たち人間が知らない術を使えたって、不思議は
    ないさ!」
  デン「な・・・なぁんだ・・・」
  ドン「(グン、ポーに。)おい、そこの餓鬼2人!」
  グン「(恐る恐る顔を上げ。)・・・え・・・?」
  ドン「おまえら、なんでこの屋敷にいるんだ?」
  グン「おじさん・・・誰・・・?」
  ドン「俺・・・?俺かぁ・・・俺様は天下のおおど・・・っと・・・か・・・
    会社員様だ!!」
  グン「会社員・・・?働いている人・・・?」
  ドン「お・・・おう、そうさ!」
  グン「じゃあ・・・生きてるの・・・?」
  ドン「当たり前だ!」
  ポー「幽霊じゃない・・・?」
  ドン「この手足を見てみろ!!(自分の手足を叩く。)これのどこ
    が幽霊だ、馬鹿!」
  グン「おじさんたち・・・本当に生きてる人間なんだ・・・」
  ポー「よかったー・・・」
  ドン「それより、おまえたちみたいな餓鬼が、なんでこの屋敷の
    中にいるんだ?」
  デン「こ・・・ここはお化け屋敷なんだぜ・・・」
  グン「や・・・やっぱり・・・」
  ポー「だ・・・だから2人もお化けがいるんだ・・・」
  ドン「(ルルルとラララを見て。)ああ、こいつは本当は一人なん
    だが、分身の術で・・・」
  グン「分身・・・?そんな訳ないじゃない!(ラララを指差して。)
     こっちの幽霊さんは、僕たちとずっと一緒だったんだよ!」
  デン「え・・・?」
  ドン「けど、同じ顔・・・(ルルルとラララを交互に見る。)」
  グン「(ルルルとラララを交互に見る。)あ・・・ホントだ・・・」
  ポー「ね・・・ねぇ、グン・・・ど・・・どうして同じ顔のゆ・・・幽霊さん
     が2人も・・・いるの・・・?」
  デン「あ・・・兄貴・・・」
  ドン「こ・・・こいつは・・・」
  ルルル「私たちの・・・」
  ラララ「お屋敷にようこそ・・・」
  ドン、デン、グン、ポー「わあ―――っ!!お化けが増えたーっ
                !!(4人、手を取り合って震える。)」
  ルルル「人間ってホントに面白いわねぇ・・・」
  ラララ「あら、あなただってずーっと昔は、人間だったじゃない・・・
      (笑う。)」
  ルルル「・・・そうだったわね・・・(笑う。)」
  ラララ「ところで、どうしてあなたはこんな人間と一緒にいるの?
      」
  ルルル「あら、あなただってそんな子どもたちと一緒に・・・一体
       どこへ行くつもり?」
  ラララ「私はあなたの為に、この子どもたちに付き合ってるの。」
  ルルル「私の為・・・?」
  ラララ「私は何百年もこんな屋敷に縛られてないで、さっさとあな
      たの探し物を見つけて、早く向こうの世界へ行きたいのよ
      。」
  ルルル「それで?」
  ラララ「この子どもたちが、あなたの丸い水晶玉を探しにここへ
      来たって言うから、私はそれについて行って、取り返して
      あげようとしてただけ。」
  ルルル「(恐ろし気な声で。)その子どもたちが、私の水晶玉を
       盗みに来たですって!?」
  グン「わあーっ!!ぼ・・・僕たち幽霊さんの水晶玉なんて盗み
     に来てないよ!!」
  ポー「僕たちはただ、グンのボールを・・・!!」
  ルルル「じゃあやっぱり、こっちの2人組が私の水晶玉を盗みに
       来てたのかしら!?」
  ドン「えーっ!!」
  ルルル「あなたたちの言ってたお宝って、私の大切な水晶玉の
       ことだったの!?」
  ドン「お・・・俺たち、そんなものを盗む為にここに入ったんじゃあ
     ・・・!!」
  デン「う・・・うん・・・!!オイラたちは単純に金になるお宝を・・・
     !!」
  ドン「しっ!!馬鹿!!」
  デン「あ・・・」
  ルルル「ふうん・・・。じゃあ、水晶玉のことは知らないと言うのね
       ・・・。」
  ドン「あ・・・ああ!!勿論さ!!な・・・なあ・・・デン・・・」
  デン「(何かに気付いたように。)・・・あ・・・そう言えば・・・」
  ドン「え・・・?(小声で。)何だよデン・・・!!」
  デン「(小声で。)兄貴がさっき、オイラにくれたあれ・・・確か・・・」
  ドン「(何か思い出したように。)あ・・・」
  ルルル「何!?」
  ドン「あ・・・えっと・・・いや・・・」
  ラララ「隠すと為にならなくてよ。」
  ドン「あ・・・いや・・・違うんだ・・・(小声で。)おい、デン!あの水
    晶玉どこにやったんだよ・・・!」
  デン「(小声で。)オ・・・オイラのポケット・・・」
  ドン「(小声で。)えーっ・・・!!マジかよ・・・!」
  ルルル「なんなの!?さっきからコソコソ。」
  ラララ「ルルル・・・なんだか怪しいわね、この2人・・・」
  ドン「い・・・いや・・・怪しいことなんて何も・・・なぁ、デン・・・!」
  デン「う・・・うん!!」
  ドン「(小声で。)おい・・・!そんなの持ってるのがバレたら俺た
    ちも、この幽霊さんと一緒にあっちの世界へ行くことになるぞ
    !!」
  デン「(小声で。)えーっ・・・!!そんなぁ・・・!!」
  ドン「(小声で。)・・・早くどっかへやれよ!!」
  デン「そんなこと・・・急に言われても・・・」
  
         ドン、ルルルとラララに一寸近寄り、
         2人の気を引くように話し掛ける。
         (その間にデン、ポケットを押さえ、
         後ろを向いてオロオロする。)

  ドン「(ルルルとラララに。)な・・・なあ、おまえたち・・・なんで、そ
    んなにその水晶玉を一生懸命何百年もの間、探し回ってん
    だ?余っ程、大切なものなんだな・・・。」
  ルルル「だからさっきから言ってるでしょ!!私の大切な思い出
       が沢山詰まった水晶玉だって!!」
  ドン「あ・・・悪い・・・そうでした・・・か・・・」
  ルルル「あの水晶玉は、私たちが小さい頃に亡くなった、お父様
      お母様と過ごした、楽しかった時をもう一度見ることが出
      来る魔法の水晶玉・・・」
  ドン「・・・え・・・?小さい頃に亡くなった・・・?」
  ルルル「ええ・・・」
  ドン「じゃあ、おまえたちを育てたのは・・・?」
  ラララ「マーサよ!」
  ドン「マーサ・・・?」
  ラララ「ええ!私たちが生まれた時から、私たちの面倒を見てく
      れてる私たちの乳母よ!」
  ドン「・・・へぇ・・・」
  ルルル「マーサは私たちが死ぬまで・・・」
  ラララ「あら、違うわ!死んでからもよ!」
  グン「・・・え・・・?」
  ポー「あは・・・ははは・・・グ・・・グン・・・僕・・・なんかいやな気が
     してきた・・・」
  グン「う・・・うん・・・僕も・・・」
  ルルル「ずっと私たちの側で私たちの面倒を見てくれてる人・・・
       」
  ドン「そのマーサ・・・ってのは、おまえさんの大切な水晶玉のこ
     とは知らないのかよ・・・?」
  ルルル「マーサは・・・」
  ラララ「マーサは水晶玉なんて、最初からなかったんだって言っ
      てるわ。現に私だって、そんな水晶玉は見たことないし・・・
      」
  デン「あれ?可笑しいじゃない・・・。君はその水晶玉を取り返す
     為に、この子たちに付いて来たって・・・」
  ラララ「あー・・・もう面倒臭いわねぇ・・・ルルルは水晶玉でなくて
      も、丸いものなら何でもいいの!!だから、その子たちが
      丸いものを探してるって言うから・・・それを拝借しようと考
      えたのよ。」
  ドン「丸いものならなんでもいいのか・・・?」
  ルルル「違うわ!!」
  ラララ「マーサは、ルルルは丸いものを集めたがる、精神の病な
      んだって言ってるわ。私も最初は可笑しいと思ってたけど
      、これだけこのお屋敷の中を何百年も探し回って、見つか
      るのはボールやゴムまりみたいなものばかり・・・。今じゃ
      マーサの言うことが正しいんだと思ってる・・・。」
  ルルル「ラララ・・・!!」
  デン「ふうん・・・」
  ドン「マーサは・・・水晶玉なんて、最初からないんだって言い切
     ってたってのか・・・」
  ラララ「そうよ。」
  ルルル「でも・・・私、マーサにだけ見せたことが・・・」
  ラララ「大体、魔法使いのお婆さんが、誰にも見せるなって言っ
      てたものを、マーサにだけ見せたなんて可笑しな話し・・・
      その魔法使いだって、ルルルの単なる思い過ごしなのよ
      、きっと・・・。あんな汚らしいカエルが、魔法使いのお婆さ
      んだったなんて・・・信じられる筈ないもの。」
  ドン「あんな汚らしいカエル・・・?」
  ラララ「え・・・?ええ・・・」
  ドン「君もそのカエルは見たんだな・・・?」
  ラララ「ルルルったら、平気で手の平に乗せて・・・。私、恐ろしく
      って、飛んでマーサに言いつけに行ったわ!」
  ドン「ほう・・・。カエルに変えられた魔法使いの婆さんが・・・誰
     にも見せるな・・・か・・・。これは何だかきな臭い・・・」
  デン「何臭いって・・・?兄貴・・・」

         音楽流れ、ドン歌う。

         “何だかこいつはきな臭い
         怪しい香りが立ちこめる”

  ドン「えー・・・では、そこの証人前へ・・・(デンを見る。)」
  デン「(回りを見回し、自分を指差す。)お・・・オイラ・・・?」
  ドン「あなたは、つい今しがた、この屋敷で何かを見つけません
     でしたか?」
  デン「え・・・あ・・・あの・・・丸いものを沢山・・・」
  ドン「そう!!丸いものだ!!確かにこの屋敷は丸いものだら
     けだ・・・。では一体、その丸いものはどこからやって来たの
     だろうか・・・?」

         ドン、歌う。

         “丸いものを集めたくなる
         不知の病のお嬢様”

  ドン「さて・・・果たしてこの世に、そんな変わった病が本当に存
     在するものなのかどうなのか・・・」
  ルルル「私はそんな病気ではないわ!!私は大切な水晶玉を
       ・・・!!」
  ドン「水晶玉・・・?」
  ルルル「え・・・?ええ!!」
  ドン「その水晶玉に、なぜあなたはそんなに執着するのか・・・?
     」
  ルルル「その水晶玉には、懐かしい思い出が映し出されるの!
       !」
  ドン「ほう・・・それは珍しい水晶玉だ・・・。」
  ルルル「だって魔法使いのお婆さんが、ピンチから救ったお礼
       に私の願いを何でも一つだけ、叶えてくれると言ったわ
       。だから私、お父様とお母様と私たち姉妹が仲良く暮ら
       してた頃の思い出を、もう一度見せてと頼んだのよ!」
  ドン「では、その水晶玉は過去を見せる魔法の水晶玉だと?」
  ルルル「そうよ!!」

       コーラス“だけどみんなが口揃え
             そんなものは初めから
             この世に存在しないもの
             そんな風に言い続け
             いつしか誰もがそう信じ
             疑う者などいなくなった・・・”

  ドン「次の証人、前へ・・・(ラララを見る。)」
  ラララ「(回りを見回して、自分を指差す。)わ・・・私・・・?」
  ドン「あなたはカエルを見ましたか・・・?」
  ラララ「ええ、見たわ!汚らしいひき蛙をね!」
  ドン「そのカエルが魔法使いだったとは・・・?」
  ラララ「そんなの知らないわよ!誰が考えたって、カエルが魔法
      使いのお婆さんだなんて、可笑しいじゃない!」

         ドン、歌う。

         “カエルは確かにそこにいた
         存在したのは事実のようだ
         だけどカエルが魔法使いだなんて
         それを見たのはただ一人
         お礼をもらった娘だけ・・・”

  ルルル「だって・・・だって本当のことよ!!私は嘘は吐かない
       わ!!」
  ドン「しっ!!誰も君が嘘吐きだなんて言ってやしない。」
  ルルル「でも・・・!!」
  ドン「さて、そこの子ども2人・・・おまえたちはなぜ、この屋敷に
     ?」
  ポー「ぼ・・・僕たち、グンの大切なボールが、このお屋敷の中に
     飛び込んだんじゃないかって・・・だから・・・」
  ドン「忍び込んだ・・・?」
  ポー「ごめんなさい!!人のお屋敷に黙って入るなんて、悪い
     ことだと思ったけど・・・」
  グン「あのボールはパパに買ってもらった、僕の宝物なんだ!!
     それで・・・」
  ドン「それで・・・?屋敷の中でボールは見つかったかな?」
  グン「(首を振る。)」
  ドン「確かにこの屋敷の中に、丸いものは沢山あった・・・」
  グン「その中に僕のボールもあったの!?」
  ドン「まあ、待て。おまえの探してるボールが、どんなボールか
    知らないが、その中の一つかも知れない・・・」
  ラララ「マーサは丸いものを沢山集めて、ルルルが満足したら、
      向こうの世界へ行けると言っていたわ。だから私たちは丸
      いものを見つけると、それが何だか分からなくても持って
      行って、丸いものばかり集めているタンスの中へ仕舞うの
      。」
  デン「・・・あ・・・あのタンスだ・・・」
  ドン「そこでだ・・・最初の話しに戻るが・・・あんたが丸いものを
    集めたがる精神の病だと言ったのは・・・」
  ルルル「マーサ・・・」
  ドン「だから丸いものを沢山集めようと言ったのは・・・」
  ラララ「マーサ・・・」
  ドン「(ルルルに。)おまえが見せてはいけないと婆さんに言わ
    れたのに、その水晶玉を見せた・・・と言うのは・・・」
  ルルル「マーサ・・・」
  ドン「ずっと、ずっとずーっと2人の側にいたのは・・・」
  ルルル、ラララ「マーサ・・・」
  ドン「うん・・・キーワードはマーサだな!!」
  ドン以外の全員「マーサ!?」










   ――――― “古びた洋館の隠れた住人・・・”
                         5へつづく ―――――


























2013年5月25日土曜日

“古びた洋館の隠れた住人・・・” ―全6場― 3

    ドン「付いて行ったところで、お宝さえ見つけ出して、この屋敷か
     らとっととおさらばすりゃあ・・・」
  デン「幽霊さんの探し物は・・・?」
  ドン「一体何探してんのか知らねぇけど、そんなの上手いこと誤
     魔化しゃあいいだろ・・・!!」
  デン「えーっ・・・!!」
  ドン「馬鹿!!声がデカイ!!」
  ルルル「コソコソいつまで相談してるの?決まった?私だって忙
       しいのよ・・・。」
  ドン「あ・・・ああ・・・よし分かった・・・おまえさんの言うように、一
     緒に探し物を見つけ出そう・・・!!」
  ルルル「(微笑んで。)こんな風に見えて、あなたたちより私はず
       っとお姉さんなんですからね・・・。悪知恵働かそうなん
       て考えないことね・・・」

         その時、冷たい風が吹き抜ける。

  ドン、デン「ヒッ・・・!!」
  ルルル「もし裏切ったらどうなるか・・・」
  ドン、デン「・・・は・・・はい・・・!!」

         ルルル、ゆっくり上手方へ。

  デン「あ・・・兄貴・・・なんかやばくない・・・?」
  ドン「しっ!!もう乗り掛かった船だ・・・!!」
  ルルル「(2人の方を向いて。)早く行くわよ・・・」
  ドン、デン「は・・・はい!!」

         3人、上手へ急ぎ足で去る。

    ――――― 第 3 場 ――――― C

         一時置いて、下手よりグンとポー、身を
         寄せ合って、恐る恐る回りを見回し登場。
         歌う。

         “怖いよ怖い・・・
         恐ろしい・・・
         こんな屋敷は初めてだ・・・
         助けてパパママ
         こんな場所・・・
         やっぱり来るんじゃなかった
         最初から・・・”

  グン「おまえが入ろうって言い出したんだからな!!」
  ポー「だってボールが・・・屹度、割れた窓ガラスから、お屋敷の
     中に飛び込んだんだよ・・・だから僕・・・」
  グン「兎に角、早く探し出してとっととこんな薄気味悪いとこ、出
     ようぜ・・・!!」
  ポー「う・・・うん・・・!!」
 
         2人、其々タンスの下を覗き込んだり
         している。

  ポー「・・・可笑しいなぁ・・・」
  グン「廊下の割れた窓ガラスから飛び込んだボールが、こんな
     部屋の中まで転がってくるかなぁ・・・」

  声「あなたたちは誰・・・?」

         ポー、頭を上げて回りを見回す。

  ポー「え・・・?何か言った?グン・・・」
  グン「何?」
  ポー「うん・・・、今誰かの声が聞こえたような・・・」
  グン「俺たちの他に誰がいるんだよ。」
  ポー「・・・そうだよね・・・」
  グン「(ソファーの下を覗きながら。)・・・そんなことより、早く探
     せよ・・・」
  ポー「う・・・うん・・・(探し出す。)」

  声「何を探しているの・・・?」

  ポー「(頭を上げる。)誰!?」
  グン「・・・誰?誰も何も、僕しかいないだろ・・・?さっきから可笑
     しな奴だなぁ・・・」
  ポー「でも・・・」
  グン「それより見つかったのか?」
  ポー「う・・・ううん・・・」

  声「何が見つかったの?」

  グン「え・・・?」
  ポー「ほ・・・ほら・・・今の声・・・聞こえただろ・・・グン・・・僕たち
     の他に・・・このお屋敷に誰かいるんじゃ・・・」
  グン「ば・・・馬鹿!そんなこと・・・変なこと言うなよ・・・怖いじゃ
     ないか・・・」
  ポー「だって・・・」
  グン「怖い怖いと思うから、余計怖くなるんだ!」
  ポー「そ・・・そうだね・・・」
  グン「う・・・歌でも歌おうぜ!!」

         明るい音楽流れ、2人声を揃えて歌う。

         “明るい森の楽しい場所
         いつでも賑やか
         温かな歌声
         降り注ぐ陽が辺りを包む!
         (曲調、恐ろし気な感じに変わる。)
         だけど陽が落ち・・・
         辺りが闇に包まれる頃・・・
         土の下から這い上がる・・・”

  グン「・・・え・・・?」

         “誰も知らない・・・
         ここは世にも恐ろしい・・・
         死者の森!!”

  2人「わあーっ!!」
  グン「何歌ってんだよ!!この歌、ハロウィンソングじゃないか
     !!」
  ポー「だってーっ!!」

  声「あははははは・・・」

  グン、ポー「え・・・?」

         グン、ポー手を取り合い、恐る恐る回りを
         見回す。

  声「あははははは・・・人間って面白い生き物ね・・・」

         その時、中央回転椅子が向きを変え、
         そこに座っていたラララ、立ち上がる。

  グン、ポー「わ・・・わあーっ!!お・・・お化けーっ!!」

         グン、ポー腰を抜かし、抱き合い震える。

  グン「た・・・助けて下さい・・・助けて下さい!!」
  ポー「ごめんなさい・・・!!ごめんなさーい・・・!!」
  ラララ「あははははは・・・一体あなたたち、何に謝っているの?」
  グン「だ・・・だって無断でこのお屋敷に入って・・・」
  ポー「だから・・・!!」
  ラララ「・・・なんだ・・・いいのよ、ここは空き家なんだし・・・」
  グン「で・・・でも・・・ゆ・・・ゆ・・・幽霊さんの・・・」
  ラララ「私たちは見える人間もいれば、見えない人間もいる・・・
      ええ・・・昔々は確かに私たちの家だったけれど・・・今は
      ただの廃墟・・・人間はお化け屋敷・・・とも言うわね。(笑
      う。)」
  ポー「お・・・おば・・・お化け・・・」
  ラララ「それで・・・一体あなたたちは何を探していたのかしら・・・
      ?」
  グン「い・・・いえ・・・別に・・・何も・・・」
  ポー「僕たちは・・・何も幽霊さんの家を・・・荒そうだなんて・・・」
  グン「僕たちはただ・・・」
  ポー「グンの大切な・・・」
  グン「丸い・・・」
  ラララ「丸い・・・?丸いですって・・・?」
  ポー「(両手で丸を作って。)これくらいの丸い形をしたボール・・・
     」
  ラララ「(ポーの言葉を最後まで聞かずに遮るように。)いいわ!
      私がその丸いものを、あなたたちと一緒に探してあげる
      わ。」
  グン、ポー「えーっ!!」
  グン「う・・・嘘だろ・・・」
  ラララ「さぁ、早く探しに行きましょう、そのあなたたちが探してい
      る大切な丸いものを・・・」

         ラララ、上手方へ行き掛ける。

  ポー「ど・・・どうする・・・?」
  グン「どうするもこうするも、相手は幽霊・・・」
  ポー「ぼ・・・僕・・・怖いよ・・・」
  グン「僕だって・・・!!」

         音楽流れ、グン、ポー、歌う。

         “どうする?信じる?
         こんな話し・・・
         幽霊の言うことなんて
         信じていいのか本当に・・・
         だけど見つけたい大切な
         だから勇気絞ってやって来た
         どうする?信じる?
         嘘のような話しだけれど
         信じてみよう・・・
         ちょっとだけ!!”

         グン、ポー、お互い顔を見合わせ頷く。

  ラララ「いつまで話しているの・・・?早くしないと暗くなるわよ・・・
      」

         その時、時計の音(“ボーン”)が、鳴り響く。

  グン、ポー「わあーっ!!」
  グン「はい!!はい!!」
  ポー「今、行きまーす!!」

         ラララ、上手へ去る。
         グン、ポー、恐る恐るラララに続いて上手へ
         去る。
         紗幕閉まる。

    ――――― 第 4 場 ―――――

         紗幕前。
         下手スポットにマーサ浮かび上がる。

  マーサ「(受話器を持って、電話しているように。)ええ・・・ええ
      ・・・えっ!?本当に!?分かったわ!!今度はいくらい
      るの?大丈夫!!お金ならまた私がなんとかするから!
      弟の手術のことはお願いね・・・。私・・・そっちへは行けな
      いけど・・・」

         その時、下手スポットへ飛び込むように
         ルルル登場。

  ルルル「マーサ!!」
  マーサ「(慌てて電話を切る。)ルルルお嬢様!!」
  ルルル「・・・電話?」
  マーサ「い・・・いいえ・・・違いますわ。それよりどうしたんですか
      ?こんな遅い時間に・・・。ラララお嬢様は、とっくにベッド
      にお入りになられてますのに・・・。」
  ルルル「マーサだけに、私の秘密を教えたかったの!!」
  マーサ「秘密・・・?」
  ルルル「そう!!マーサは私の親友だから、私の秘密を知って
       て欲しかったの!!」
  マーサ「お嬢様・・・」
  ルルル「でも誰にも内緒にしててね!!ラララにも言っちゃ駄目
       !!」
  マーサ「内緒に・・・?(溜め息を吐いて。)仕方ないですわね・・・
       」
  ルルル「約束よ!!(小指を差し出す。)」
  マーサ「(微笑んで。)はい・・・(ルルルと指切りする。)」
  ルルル「(嬉しそうに微笑み、ポケットから水晶玉を取り出す。)
       ・・・見て・・・これ。」
  マーサ「・・・水晶玉・・・?」
  ルルル「(頷く。)魔法の水晶玉よ!!」
  マーサ「魔法の・・・って・・・」
  ルルル「ほら、見て!!幸せそうな私たち!!」
  マーサ「(水晶玉を覗き込む。)あっ!!これは・・・」
  ルルル「ね!!お父様とお母様!!それに小さい頃の私たち
       よ!!とても幸せそうでしょ?」
  マーサ「あの・・・」
  ルルル「カエルに姿を代えられてしまってた、魔法使いのお婆
       さんを助けたお礼に、そのお婆さんが私にくれたのよ!
       けど、誰にも見せたりしたら駄目だって・・・。でも、マー
       サにだけは私の秘密、知ってて欲しかったの!!」
  マーサ「ルルルお嬢様・・・」

         2人、水晶玉を覗き込んでいる。

  マーサの声「・・・大変だわ・・・この水晶玉で、もし私のしている
          ことがバレでもしたら・・・弟の病院代が払えなくな
          ってしまう・・・。どうしよう・・・どうしたら・・・そうだわ
          ・・・!!」

         暗転。

    ――――― 第 5 場 ―――――

         音楽流れ、紗幕開く。と、屋敷の中の部屋。
         上手より摺り足でルルル登場。歌う。
         (後ろからルルルについて、恐る恐る回り
         を見回し、ドン、デン登場。)

         “どこにあるの私の探し物
         こんなに探して見つからない
         誰が隠した私の宝
         許さないわ見つけたら
         この手で必ず捻り潰す”

  ドン「お・・・おい・・・なんて歌、歌ってんだよ・・・。」
  デン「うん・・・」
  ルルル「あら・・・変かしら?」
  ドン「変も何も・・・捻り潰すだなんて・・・」
  ルルル「(笑う。)だって、悪いことをしたら罰を受けるのは当た
       り前・・・。そうでしょ?」
  ドン「そりゃあ・・・。けど、悪いことったって、まだ本当に盗られた
     かどうかなんて分かりゃ・・・」
  ルルル「(一際恐ろし気な声で。)盗られたのよ!!」
  ドン、デン「ヒーッ!!ごめんなさい!!」
  ルルル「私の宝を黙って盗っておいて、ただで済むと思ったら大
       間違い・・・」
  デン「な・・・何もオイラたちは幽霊さんのお宝を盗もうなんて・・・
     ねぇ、兄貴・・・!」
  ドン「・・・ちょっと待てよ・・・盗まれたってことは・・・ひょっとして
     もうどこか、この屋敷の外に持ち出されてて、この家の中に
     はないんじゃないか?(笑う。)」
  ルルル「(再び恐ろし気な声。)煩いわね!!」
  ドン、デン「わあーっ!!ごめんなさい!!」
  デン「兄貴!!何てこと言ってんだよ!!」
  ドン「悪い、悪い!!冗談だってば・・・」
  ルルル「たちの悪い冗談だこと・・・」
  ドン「すんません・・・。それよりおまえの探してるお宝って言うの
     は、一体何なんだ?」
  デン「うん・・・」
  ルルル「私の大切な思い出を見る為のもの・・・魔法使いのお婆
       さんに貰った、大切な・・・」
  デン「(下手方を見て。)あ・・・兄貴!!向こうから誰か来る・・・
     !!」
  ドン「デン、またかよ・・・。このお屋敷は空き家だって、この幽霊
    さんも仰って・・・た・・・(下手方を注視する。)・・・え・・・?」

         ドン、デン、下手方を見つめたまま、
         動きが止まる。

  ドン、デン「わ・・・わあーっ!!」
  ドン「お化けだーっ!!」
  デン「お化けがまた増えた!!」
  ドン「・・・1人・・・?いや・・・後ろからもう2人・・・!!」
  デン「3人!?」
  ドン、デン「わあ・・・わあーっ・・・!!(2人、腰を抜かしたように
        。)」

         そこへ下手より、ラララ摺り足でゆっくり
         登場。続いてグン、ポー、恐々回りを見回し
         ながら、手を取り合い登場。
         (ドン、デン、震えている。)

  ラララ「(ルルルを認め。)あら・・・こんなところで奇遇ね・・・」
  ルルル「ラララ・・・」

         グン、ポー、ルルルを認める。

  グン、ポー「わ・・・わあーっ!!」
  グン「またお化けだーっ!!」
  ポー「怖いよーっ!!」
  グン「ごめんなさーい・・・!!」

         (グン、ポー、身を寄せ合い震える。)









    ――――― “古びた洋館の隠れた住人・・・”
                         4へつづく ―――――

  























2013年5月23日木曜日

“古びた洋館の隠れた住人・・・” ―全6場― 2

             ――――― 第 2 場 ――――― C

         舞台、フェード・インする。(紗幕開く。)と、
         Aの場面。

  ラララ「つまらない話し・・・」
  ルルル「ラララ・・・」
  ラララ「大体、あんな汚らしいカエルが、どうして魔法使いのお
      婆さんだった訳?その水晶玉の話しだって本当かどうか
      分からないわ。だって私に一度も見せてくれたことがない
      じゃない。そんなの屹度、全部ルルルの作り話よ!」
  ルルル「違うわ!!嘘なんかじゃない!!そう・・・マーサなら
       ・・・マーサに一度だけ、話したことがあるのよ!!マー
       サ・・・マーサ!!」

         そこへ上手より、摺り足で一人の召使
         (マーサ)、ゆっくり登場。

  マーサ「お2人共・・・こんなところにいらしたのですか・・・?さっ
       きからご夕食の用意が整いましたと申し上げております
       のに・・・」
  ラララ「マーサ・・・私たちは食事などいらないの。」
  マーサ「またそんなことを言って・・・私のことを困らさないで下さ
       いな・・・」
  ルルル「ねぇ、マーサ!!私の水晶玉をどこかで見なかった!
       ?」
  マーサ「水晶玉・・・?」
  ルルル「私、マーサに見せたことがあるでしょう?過去に起こっ
       た真実だけを見ることの出来る水晶玉!!」
  マーサ「またそのお話しですの・・・?」
  ルルル「懐かしいお父様やお母様と、幸せそうに暮らす私たち
       が見えたでしょう?」
  マーサ「ルルルお嬢様・・・そんな水晶玉のことなど、私は知りま
       せん・・・。」
  ルルル「マーサ・・・」
  マーサ「水晶玉など、お嬢様の病からくる、ただの幻覚なのです
       わ・・・。いい加減、水晶玉のことなどお忘れ下さい・・・。
       それに丸いものなら、ほら・・・(上手方のタンスを開く。
       と、ボールのような丸いものが、沢山転がり出る。)」
  ラララ「あははははは・・・。まぁ、お姉様・・・本当に沢山集めたこ
      と・・・」
  ルルル「これらは全部、私の水晶玉ではないわ!!私の水晶
       玉は・・・」
  マーサ「お医者様が仰ってましたでしょ?ルルルお嬢様は、水
       晶玉でなくても、丸いものを見るとなんでも欲しくなる、
       精神の病だと・・・。早く、あんな水晶玉のことは忘れて
       ・・・3人であちらの国へ参りましょう・・・。」
  ルルル「でも・・・!!」
  ラララ「水晶玉を通さなくても、あちらの国へ行けば、直接お父
      様やお母様に会えるじゃない。(笑う。)」
  マーサ「そうですよ・・・。さぁ、お2人共、我が儘ばかり申さない
       で、お夕食に致しましょう・・・。(摺り足で上手へ去る。)」
  ラララ「はい・・・」

         ラララ、摺り足でマーサについて上手へ去る。

  ルルル「でも・・・どうしてもあの水晶玉を見つけなければいけな
       いような気がするの・・・。何故だか分からないけれど・・・
       どうしても探し出して・・・」

         フェード・アウト。
         紗幕閉まる。

    ――――― 第 3 場 ――――― A

         紗幕前。音楽流れ下手より、抜き足差し足で
         ドン、デン登場。歌う。

       デン“不気味だやっぱり・・・
          怖いぞなんだか・・・”

       ドン“2人いるから大丈夫・・・”

       デン“2人いても不安だ少し・・・
          1歩踏み出し立ち止まる
          1歩踏み出し振り返る
          誰かが見ているその陰だ・・・”

       ドン“思い過ごしだ馬鹿野郎・・・”

         デン、ドンにベタベタ引っ付く。

  ドン「お・・・おい!!押すなよ・・・!!」
  デン「だって・・・」
  ドン「そんなに引っ付いたら、上手く歩けないだろ!!」

    ――――― 第 3 場 ――――― B

         紗幕開く。と、洋館の中。
         ドン、デン、恐々回りを見回す。
         その時、時計の音(“ボーン”)が響く。

  ドン、デン「わあーっ!!ごめんなさい!!ごめんなさい!!」

         ドン、デン、耳を塞いでしゃがみ込む。

  ドン「(恐る恐る目を開け、回りを見回す。)馬鹿・・・!!時計の
     音じゃないか!!」
  デン「(溜め息を吐いて。)・・・なんだ・・・」
  ドン「何驚いてんだよ!!」
  デン「あ・・・兄貴だって・・・」
  ドン「おまえがビクビクするから、俺まで伝染するんだろ!!」
  デン「そんなー・・・」
  ドン「もっと落ち着け!!」
  デン「う・・・うん・・・それより外で見るより、中はもっと不気味だ
     なぁ・・・」
  ドン「そんなことより見てみろ!!(壁に掛かる大きな肖像画を
     指し示す。)こんな大きな肖像画、今まで見たことあるか!
     ?このお屋敷に住んでた貴族って、相当金持ちだったんだ
     ぜ!!屹度探せば金銀財宝ザックザク・・・!!海賊船も
     真っ青ってな!!」
  デン「・・・海賊船が何・・・?」
  ドン「・・・あ・・・いや・・・兎に角こんな大きな屋敷・・・今まで入っ
     たどんな邸宅より一番だ!!早いとこ、そのお宝の山を拝
     見したいぜ。」
  
         デン、横のタンスを見ている。

  デン「(引き出しを開ける。)わぁーっ・・・!!」
  ドン「(デンの声に驚いたように。)どうした!!宝の山を見つけ
     たか!!」
  デン「いや・・・これみんな・・・丸いけどボール・・・?」
  ドン「ボール?そんなもんで遊んでないで、早く金目のもんを見
     つけろ!!」
  デン「(引き出しの中の物を取り出し見る。)・・・ビー玉・・・風船
     ・・・スーパーボールに丸い石・・・丸く形作った・・・なんだろ
     ・・・消しゴム・・・?兎に角この引き出しの中は、全部丸い
     ものだ・・・」
  ドン「丸いもんなんかいらないぞ!!」
  デン「う・・・うん・・・」

         デン、膝を付き、下を見たりしている。
         ドン、壁をトントン叩いている。と、壁に
         穴が開く。

  ドン「(驚いて。)やっべぇ・・・!!」
  デン「何?(頭を上げる。)」
  ドン「あ・・・いや何でもない・・・!!」
  デン「そう・・・(再び、下を探す。)」
  ドン「(穴を見て。)ありゃりゃ・・・(何かに気付いたように。)あれ
     ・・・?(穴に手を入れ、中を探るように。何かを取り出し。)
     何だこれ・・・(取り出したものを見て、何か思い付いたよう
     に。)おい、デン!」
  デン「何?(立ち上がる。)」
  ドン「ほら!!(手にしていたものを、デンの方へ投げる。)」
  デン「え?あっ・・・おっと・・・!!(ドンが投げたものを受け取る。
     )なんだよ、兄貴・・・(受け取ったものを見る。)」
  ドン「おまえの好きな丸いもんだ!(笑う。)」
  デン「えー・・・そんなこと・・・」
  ドン「多分、水晶玉だろ。ダイヤモンドとはいかないが、そいつ
     を使って占いの館かなんかやったらどうだ?(笑う。)」
  デン「えーっ・・・嫌だよ・・・!(暫く水晶玉を見て、ポケットに仕舞
     う。)」
  ドン「けど、なんだってこんな壁の裏っ側みたいなとこに、水晶玉
     が・・・?ひょっとして壁の中にお宝の山が、埋められてん
     のかなぁ・・・(穴を覗き、手を入れて探ってみる。)」

         その時、冷たい風が吹き抜ける。

  デン「寒・・・」
  ドン「おい、デン!!おまえ入って来る時、ちゃんと扉閉めたか!
     ?どっかから隙間風が入ってくるぜ!」
  デン「ろ・・・廊下の窓ガラスが割れてたし・・・古いお屋敷だから
     仕方が・・・(何かに気付いたように、上手方を注視する。)」
  ドン「扉が閉まってるか見てこいよ!!」
  デン「あ・・・兄貴・・・」
  ドン「何だよ!!早く閉めてこないと、寒いだろ!!」
  デン「あ・・・兄貴・・・そこ・・・そこに、だ・・・誰かいる・・・!!」
  ドン「誰かいるだって?何、可笑しなこと・・・(顔を上げて、上手
     方を注視する。)」

         冷風が静かに音を立て吹き抜け、
         上手より摺り足でルルル、ゆっくり
         登場。

  デン「あ・・・あ・・・お・・・おば・・・お化け・・・お化けだ・・・!!本
     物の・・・兄貴・・・お化けだ・・・(震える手で、ドンに縋るよう
     に。)」
  ドン「・・・お・・・おい・・・デン・・・あれは・・・幻覚だ・・・俺たち・・・
    同じ幻覚を見ているのさ・・・ハハハ・・・(作り笑いする。)で
    ・・・でなきゃ・・・あんな青白い顔の・・・病人だ・・・!!屹度
    この屋敷に住む・・・病気の娘・・・」
  デン「あ・・・兄貴・・・!!この屋敷は空き家なんだろ・・・?」
  
  ルルルの声(エコー)「誰・・・!?私の家に無断で侵入する不逞
                の輩は・・・」

  デン「あ・・・兄貴・・・お・・・俺・・・幻聴までしてきた・・・」
  ドン「ば・・・馬鹿・・・あれは、ほ・・・本物の・・・ゆう・・・幽霊だー
     っ!!」
  デン「えーっ!!兄貴・・・幽霊なんていないって言ったじゃない
     !!」

         2人、抱き合って震える。

  デン「ごめんなさい・・・!!ごめんなさい・・・!!」
  ドン「ゆ・・・許してくれ・・・!!無断で入って壁まで壊しちまって
     ・・・!!俺たちが悪かった!!だから許してくれー・・・!!
     」
  デン「えー・・・兄貴、壁を壊したって・・・!?」

         ルルル、2人の側へ。

  ルルル「私の家の中で、何をしているの?何か探し物・・・?」
  ドン「い・・・いえ・・・もう何もいりません!!だから命だけは・・・
     !!」
  デン「お宝なんてどうでもいいです・・・!!ね!!兄貴!!」
  ドン「あ・・・ああ・・・!!」
  デン「だから助けて下さい・・・!!」
  ルルル「お宝・・・?お宝と言うのは何・・・?」
  デン「え・・・?」
  ドン「・・・お宝をしらない・・・?こ・・・このお屋敷のどこかに眠る
    金銀財宝・・・」
  ルルル「・・・そう・・・あなたたちは、そのお宝を探しているのね
       ・・・?」
  ドン「・・・え・・・あ・・・ああ・・・まぁ・・・」
  デン「あ・・・兄貴・・・!!何、幽霊と会話してんだよ・・・!!」
  ドン「・・・そ・・・そうだった・・・お・・・おまえは幽霊・・・」
  ルルル「そうよ・・・。私は何百年も昔にこのお屋敷で亡くなった
       ・・・今はあなたたちの言うように・・・幽霊として存在する
       もの・・・」
  ドン、デン「キャーッ!!(抱き合う。)」
  ルルル「でも、そんなに驚かなくてもいいわ・・・。あなたたちが、
       何もしなければ、私はあなたたちを許してあげる・・・」
  ドン「はい!!はい!!」
  デン「何も致しません!!俺たちは本当に何も・・・!!ね!!
     兄貴!!」
  ドン「ああ!!だから見逃して下さい・・・見逃して・・・お化け様
     !!」
  ルルル「そうねぇ・・・じゃあ・・・私と取り引きしないこと・・・?」
  ドン「と・・・取り引き・・・?」
  ルルル「・・・ええ・・・私がその・・・金銀財宝の在り処を教えてあ
       げるわ・・・」
  デン「兄貴・・・ゆ・・・幽霊と取り引きって・・・」
  ドン「・・・けど・・・おまえ・・・お宝のことは・・・知らなかったんじゃ
     あ・・・」
  ルルル「馬鹿ね・・・私はこのお屋敷に、何百年も昔から住んで
       いるのよ・・・。金目のものがあるところくらい知ってるわ
       ・・・」
  ドン「ほ・・・本当か・・・?」
  ルルル「ええ・・・」
  ドン「・・・俺たちに、その在り処を教えてくれるのか・・・?」
  ルルル「いいわ・・・教えてあげても・・・その代わり・・・」
  ドン「・・・その代わり・・・?」
  ルルル「私も探しているものがあるの・・・」
  デン「探しているもの・・・」
  ルルル「人間の勘とやらを働かせて、その私の探し物を見つけ
       て頂戴・・・」
  ドン「えっ・・・」
  ルルル「どう?そうすれば、このお屋敷に眠るお宝は、全部あな
       たたちのもの・・・」

         ドン、デン、顔を見合わせる。
         音楽流れ、2人歌う。

         “どうする?信じる?
         こんな話し・・・
         幽霊の言うことなんて
         信じていいのか本当に・・・
         だけど欲しいお宝さ
         だから勇気絞ってやってきた
         どうする?信じる?
         嘘のような話しだけれど・・・
         信じてみよう・・・
         ちょっとだけ・・・!!”

         ドン、デン、顔を見合わせ頷く。










    ――― “古びた洋館の隠れた住人・・・”3へつづく ―――

   







2013年5月21日火曜日

“古びた洋館の隠れた住人・・・” ―全6場―

          〈 主な登場人物 〉

     
      ドン  ・・・  2人組泥棒の兄貴分。

      デン  ・・・  2人組泥棒の弟分。

      グン  ・・・  少年。

      ポー  ・・・  グンの友達。

      ルルル  ・・・  洋館の住人。

      ラララ  ・・・  ルルルの双子の妹。 

      マーサ  ・・・  ルルルとラララ付きの召使。


      その他


 ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪
  

    ――――― 第 1 場 ―――――

         静かな音楽流れ、幕が開く。
         舞台中央後方に、怪しげな風貌の大きな
         屋敷が聳え立つ。
         (カラスの鳴き声、時折、冷たい風が吹き抜ける。)
         そこへ上手より、黒スーツに身を包んだ
         2人組の男(ドン、デン。)登場。

  デン「あ・・・兄貴・・・こんな恐ろし気な屋敷止めて・・・とっとと帰
     りましょうよ・・・」
  ドン「馬鹿!何、ビクビクしてんだよ!町で噂話を聞いただろ!
     ?山の麓に建つ洋館のこと・・・」

         ドン、歌う。

         “山の麓に淋し気に
         建つは立派で素晴らしい
         広大な敷地に目を見張る
         大きな大きなお屋敷さ
         絢爛豪華な装飾品
         見れば誰もが歓待の
         声を上げるに違いない・・・
         昔々の貴族様
         持てる限りの贅を尽くし
         建てた自慢のお屋敷さ”

  デン「知ってるよ・・・。オイラだって兄貴と一緒に聞いてたんだ
     から・・・」
  ドン「おお、そうか!」
  デン「でもその歌には続きがあるだろ!!」

         デン、歌う。

         “だけどある時忽然と
         姿を消した貴族様・・・”

         ドン、歌う。

         “後に残るは莫大な
         金銀財宝お宝さ!”

         2人、歌う。

         “盗みに入ったお屋敷は
         この世のものとは思えない・・・”

       ドン“世にも稀な黄金の屋敷!!”

       デン“世にも恐ろしい幽霊屋敷!!”

         2人、驚いた面持ちで顔を見合わせる。

  ドン「馬鹿!!何が幽霊屋敷だ!!」
  デン「兄貴こそ、そこんとこ間違ってるよ!!黄金の屋敷の訳な
     いじゃないか!!見てくれよ、この草ボウボウで荒れ果て
     た土地に建つ・・・見るからに幽霊屋敷・・・。屹度、中に入
     ればウジャウジャいるんだ・・・」
  ドン「何がウジャウジャいるんだよ!!」
  デン「しっ!!(小声で。)お化けだよ・・・お化けに決まってるだ
     ろ・・・!!」
  ドン「お化けって・・・おまえ、ホント怖がりだなぁ・・・。ウジャウジ
     ャ転がってるのはお宝さ!!」

         ドン、歌う。

         “なんて怖がりなんだ
         呆れた奴だ
         この世に幽霊なんているもんか
         この世にあるのは目に見える
         現実に存在するもののみだ!”

  デン「そんなことないよ・・・!!」

         ドン、歌う。

         “暗い闇に光るのは幽霊の足跡?”

  デン「えー・・・」
  ドン「(首を振る。)」

         ドン、歌う。

         “違うねそれは俺様に
         富をもたらす輝きさ!”

  デン「(安堵の溜め息を吐く。)」

         ドン、歌う。

         “頬を過ぎる冷たい風は魂の通り道?”

  デン「う・・・嘘だ・・・」
  ドン「(ニヤリと笑う。)」

         ドン、歌う。

         “それは宝の在り処へ導く道標
         だから
         見えないものにビクビクするな!
         何かを感じるなんてそんなの嘘だ
         怖いと思えば何でも怖い
         この世で一番怖いもの
         それはおまえの目の前にある!!”

  デン「え・・・?」
  ドン「この俺だ!!」
  デン「えーっ・・・兄貴ー・・・!!」
  ドン「お宝の山を、こんな目の前にして尻込みするな!!さぁ、
     愚図愚図言ってないで行くぞ!!(下手へ走り去る。)」
  デン「あ・・・兄貴ー!!(ドンを追い駆けようとして転ぶ。)あっ!
     !いってぇ・・・なんだよ・・・(躓いた方を見ると、そこにボー
     ルが落ちている。ボールを拾う。)なんだ・・・?ボール・・・?
     誰だよ、こんなところにボールを置いとくなんて・・・。足取ら
     れちゃったじゃないか・・・あ・・・!!そうだ!!兄貴ー!!
     待ってくれよー!!(ボールを持ったまま、慌ててドンを追
     い駆け、下手へ走り去る。)」

         そこへ上手より、2人組の少年(グン、ポー。)
         何かを探すように回りを見回しながら登場。
         グン、歌う。

         “どこにあるんだ僕の宝物
         確かこの辺りに飛んできた
         見つからないよ宝物”

  グン「もっとよく探せよ!」
  ポー「うん・・・」
  グン「おっかしいなぁ・・・確かこっちに・・・」

         ポー、後ろに佇む洋館に気付き、
         グンの肩を叩く。

  グン「なんだよ、ポー!!僕は今探し物を・・・(下を向いて何か
     を探し続ける)」

         ポー、歌う。

         “あるのは古びた洋館の
         カビた臭いの立ち込める
         村で評判恐ろしい
         誰もが恐れるお化け屋敷”

  グン「お化け屋敷!?(顔を上げ、屋敷を認める。)ここは・・・」
  ポー「村の人たちが噂してるお化け屋敷って・・・このお屋敷の
     ことだよ・・・。屹度・・・ボールはこの中だよ・・・!!」
  グン「えー・・・!!おい、ポー!!おまえが取りに行って来いよ
     ・・・!!ボールはこのお屋敷の中って、ポーが言ったんだ
     から・・・!!」
  ポー「そんな・・・嫌だよ・・・。グンが投げたんだ・・・グンが行けよ
     ・・・!」
  グン「そんなこと言うなら、その投げたボールを受け取らなかっ
     たポーが悪いんだ!!ポーが一人で探しに行って来いよ
     !!」
  ポー「グン!!」
  グン「僕、ここで待っててやるから早く行って来いよ!!(ポーの
     背中を押す。)」
  ポー「えー・・・!!グン、一緒に行ってくれよ!!僕、一人でお
     化け屋敷に入るなんて無理だ・・・!!」
  グン「あのボールは、誕生日にパパが買ってくれた大切なボー
     ルなんだぞ!!」
  ポー「分かってるよ!!分かってるから2人で行こうよ!!その
     方が屹度早く見つかるから・・・!!お願いだよ!!」
  グン「・・・もう!!仕方ないなぁ・・・!!」

         音楽流れ、2人歌う。(紗幕閉まる。)

         “行こう足を忍ばせて・・・
         屹度見つかる探し物
         怖くはないさ2人なら
         手をつないで一歩ずつ・・・
         早く行こう 日のあるうちに
         尻込みしないで勇気を出して
         だけどやっぱり・・・恐ろしい・・・”

  グン「嫌だなぁ・・・」
  ポー「怖いよ・・・」

         その時、カラスの鳴き声が聞こえる。

  グン「わあっ!!(耳を塞ぐ。)」
  ポー「グン!!(グンに抱き付く。)」

         2人、手を取り合い、回りを見回しながら
         恐る恐る下手へ去る。
         暗転。

    ――――― 第 2 場 ――――― A

         舞台、薄明るくなると、古びた洋館の中。
         (紗幕開く。)
         中央、後ろ向きに一つの大きな椅子。
         そこへ上手よりドレス姿の一人の女性(ルルル。)
         摺り足で慌てた様子で登場。

  ルルル「ああ・・・本当にどこにいったのかしら・・・ああ・・・私の
       大切な宝物・・・」

         ルルル、歌う。

         “どこにあるの私の探し物・・・
         ずっとずっと探してる・・・
         屹度ある筈 私の宝
         心から大切にしてたわ
         いつも肌身離さず
         なのにある日 忽然と・・・
         影も形もなくなった・・・”

  ルルル「ああ・・・一体どこにあるの・・・?ああ・・・困ったわ・・・」
  
  ラララの声「もう・・・いつもいつも煩いわね・・・」

         中央椅子、回転して前方を向くと、ルルルと
         瓜二つの双子の妹(ラララ。)座っている。

  ラララ「お姉様、少しくらい落ち着いて座られたらどう?」
  ルルル「ラララ!!そんなこと言ったって、あの水晶玉がないと、
       私、いつまでもこの屋敷から離れられないわ!!」
  ラララ「そうだったわね。けれど・・・水晶玉、水晶玉・・・お姉様の
      頭の中は、いつだって水晶玉のことで一杯・・・。お陰で、
      何故か私まで、いつまでもこの屋敷に縛られたまま・・・双
      子だって言ったって、個人個人、別人の筈なのに・・・。私
      はそろそろ向こうの国へ行きたいわ・・・」
  ルルル「ごめんなさい・・・けど、あの水晶玉は私の宝物なの!!
       魔法使いのお婆さんに貰った・・・ずっと大切にするって
       約束したのよ!!」

         舞台フェード・アウト。(紗幕閉まる。)
   
    ――――― 第 2 場 ――――― B

         音楽流れ、紗幕前スポットに、子どもの
         姿のルルルとラララ、浮かび上がる。
         2人、座り込んで鼻歌を歌いながら、花の
         冠作りに夢中になっている。

         “綺麗ね お花の冠よ
         色取り取り沢山の
         花を摘みましょ 作りましょう”

  ラララ「見て、ルルル!!出来たわ!!綺麗でしょう!?」
  ルルル「私も出来た!!」
  ラララ「私の方が綺麗だわ!!」
  ルルル「お花はどれも同じに綺麗よ!だからどの冠も、同じくら
       い綺麗なの!」
  ラララ「そんなことないわ、私のが1番・・・(ふと、視線を落とし。)
      キャーッ!!カエルよ、カエル!!醜いわね!!あっち
      へ行きなさいよ!!」
  ルルル「ラララ!そんな風に酷いこと言わないで!なんだか、こ
       のカエルさん・・・少し元気がないみたい・・・(カエルを
       手に取る。)」
  ラララ「キャーッ!!ルルル!!そんなカエルによく平気で触る
      ことが出来るわね!!マーサ!!マーサー!!ルルル
      お姉様ったら、とっても不潔なことをしているわー!!マ
      ーサー!!(下手方へ。)」

  マーサの声「お嬢様ー!!どちらにお出でですかー?」

  ラララ「マーサー!!」

         ラララ、マーサの名を叫びながら
         下手へ去る。

  ルルル「(呆れたように下手方を見ているが、ハッとしてカエル
       を見る。)どうしたのかしら・・・お腹が空いているの・・・
       ?」
  カエル「・・・違う・・・水・・・」
  ルルル「・・・お水・・・?分かったわ、喉が渇いているのね!・・・
       え・・・?今・・・あなたが喋ったの・・・?」
  カエル「・・・ああ・・・そうさ・・・」
  ルルル「まぁ!!あなた喋れるのね、カエルさん!!」
  カエル「早く・・・水を・・・水のある場所へ・・・」
  ルルル「ああ、そうだったわね・・・!!えっと・・・(上手方に置い
       てあったバケツを見て。)あ!!あれだわ!!(急いで
       カエルを上手バケツの中へ入れる。)」

         その時、バケツの中から白煙が立ち昇る。

  ルルル「え・・・?」

         “ボンッ”と爆発音と共に、大きな煙が
         上がり、そこに老婆が現れる。

  ルルル「キャーッ!!(耳を塞いでしゃがみ込む。)」
  老婆「やれやれ・・・やっとこさ元の姿に戻れたわ・・・。お嬢ちゃ
     ん、ありがとうよ・・・。」
  ルルル「・・・え・・・?(恐る恐る、老婆を見る。)・・・お婆さん・・・
       誰・・・?」
  老婆「わしは、さっきのカエルじゃよ。」
  ルルル「・・・カエルさん・・・?」
  老婆「訳あって、ひき蛙の姿に変身させられてたのじゃ。危うく
     人間の姿に戻る前に、干からびてしまうところじゃったわ。
     (笑う。)」             ※
  ルルル「・・・変身・・・って・・・」
  老婆「さぁて、魔法の国の掟じゃからの、助けてもらった礼をせ
     ねばならん。なんでもよいぞ、一つだけそなたの願いを叶
     えてやろう・・・。」
  ルルル「・・・え・・・?」
  老婆「早よう言え・・・」
  ルルル「・・・本当に・・・?」
  老婆「ああ。」
  ルルル「・・・それじゃあ・・・(少し考える。)無理かも知れないけ
       れど・・・」
  老婆「魔法使いに無理なことなど、ありゃせん。」
  ルルル「・・・私が小さい頃になくなった・・・お父様とお母様と過
       ごした楽しかった様子を・・・たった一度でいい・・・もう一
       度覗いてみたい・・・」
  老婆「そんなことでいいのか?」
  ルルル「ええ!!勿論だわ!!本当に見ることが出来るなら
       ・・・!!」
  老婆「お安い御用さ・・・(マントの懐の中から袋を取り出し、ル
     ルルの方へ差し出す。)ほれ・・・」
  ルルル「(恐々受け取る。)・・・何・・・?」
  老婆「見てご覧・・・」
  ルルル「(袋の中を見て、一つの水晶玉を取り出す。)・・・水晶
       玉だわ・・・綺麗・・・」
  老婆「その水晶玉の中を覗いて見るがいい・・・。」
  ルルル「え・・・」
  老婆「ほれ・・・」
  ルルル「(水晶を覗き込む。)・・・あ・・・!!お父様とお母様だわ
       !!それに小さい頃の私たちもいる!!とっても楽しそ
       う・・・」
  老婆「それは、おまえさんの望む過去の全てを見せてくれる、魔
     法の水晶玉じゃ。おまえさんが見たいと思った時を思えば、
     その水晶玉は、おまえさんにその懐かしい思い出をいつで
     も・・・見せてくれるじゃろう。」
  ルルル「本当にいつでも見れるの・・・?」
  老婆「ああ、いつでも・・・何度でも・・・」
  ルルル「・・・いつでも会える・・・ありがとう、お婆さん!!私、ず
       っとこの水晶玉を大切にするわ!!」
  老婆「但し・・・その水晶玉は、おまえさん一人で見て楽しむんじ
     ゃぞ・・・。決して人に見せびらかせたり、自慢してはならん。
     もしそんなことをすれば、その水晶玉は・・・見なくてもよか
     ったものまで、見せようとするじゃろう・・・(笑う。)」
  ルルル「・・・分かったわ・・・(頷く。)」
  老婆「その水晶に映るものは、いいも悪いも過去に起こった真実
     のみ・・・」

         魔法使いの笑い声で、フェード・アウト。
       










  ――― “古びた洋館の隠れた住人・・・”2へつづく ―――











   ※ “ひき蛙”に変身・・・どこかで聞いたことがありませんか
     ・・・^^;?もう少しこのお婆さんが誰か、分かりやすく書
     けばよかったのですが・・・実は、クリフくんとジークくんに
     “人間をひき蛙に変える薬”を飲まされた、森の薬やさん
     だったのでした~・・・へへへ・・・(^_^)v





















2013年5月20日月曜日

“アンドレ” ―全10場― 完結編

            ――――― 第 10 場 ――――― A

         フェード・インする。と、ミリオッタの部屋。
         中央ベッドにミリオッタ、起きて座り、
         何か考えるように窓の外に、目をやって
         いる。
         (側に、ジャクリーヌ、アーサー、其々の
         場所に位置する。)

  ミリオッタ「お姉さん・・・私・・・アンドレに会いたいわ・・・。何故、
        来てくれないのかしら・・・」
  ジャクリーヌ「え・・・?(ミリオッタを見る。)」
  ミリオッタ「私、意識のない間、ずっと夢を見ていたの・・・何か優
        しい・・・温かい思いが私を包み込んで、片時も離れず
        側にいてくれた・・・アンドレでしょう?ずっと手を握って
        ・・・不思議だけれど、私には分かるの・・・。アンドレの
        お陰で私は戻って来れたんだもの。」
  ジャクリーヌ「ミリオッタ・・・」
  ミリオッタ「ね、お姉さん、私、アンドレにお礼を言いたいの。会っ
        て“ありがとう”って・・・。“あなたは命の恩人よ”って、
        言いたいの・・・。(微笑む。)アンドレはどこにいるの?
        呼んで来てくれないかしら。そしたら・・・」
  アーサー「ジャクリーヌ、本当のことを言った方がいいよ・・・。」
  ジャクリーヌ「でも・・・」
  ミリオッタ「・・・どうしたの?本当のことって・・・?ね・・・お姉さん
        ・・・?アーサー・・・?」
  アーサー「ミリオッタ・・・アンドレは今日、この村を出て行くんだ
        ・・・」
  ミリオッタ「え・・・」
  アーサー「エリザベスが亡くなって・・・今度こそ一人きりで旅立っ
        て行く・・・」
  ミリオッタ「・・・嘘・・・エリザベスが亡くなったなんて・・・アンドレ
        が出て行くなんて嘘よ!!」
  アーサー「彼は自分の人生が辛いんだろう・・・。大切な者が皆
        いなくなって・・・」
  ミリオッタ「違うわ!!アンドレのせいなんかじゃない!!彼は
        いつも一生懸命だったわ!!そりゃ、辛い人生だった
        かも知れないけど、彼のせいなんかじゃない、決して
        ・・・。アーサー!!お姉さん!!アンドレを独りぼっち
        で行かせないで・・・!!お願い!!私はアンドレがい
        てくれたから助かったの・・・!!」
  アーサー「ミリオッタ・・・」
  ミリオッタ「・・・お願い・・・アンドレのところへ連れて行って・・・」
  ジャクリーヌ「無理よ・・・」
  ミリオッタ「彼を愛しているの・・・」
  ジャクリーヌ「ミリオッタ・・・」

         フェード・アウト。

    ――――― 第 10 場 ――――― B

         上手客席後方より、グレミン牧師、続いて
         アンドレ、話しながら登場。舞台上へ。
         舞台上はいつしか村の風景。

  グレミン「・・・出て行くのかい・・・?」
  アンドレ「はい・・・」
  グレミン「ミリオッタには・・・?」
  アンドレ「・・・(ゆっくり首を振る。)いいえ・・・私は彼女の命が助
       かった・・・ただそれだけで満足です・・・。またここで私が
       彼女に会うことは、今度こそ彼女の身に何が起こるか
       分からない・・・。」
  グレミン「君は本当に自分を、そんな運命の持つ者だと信じてい
       るのかね・・・?」
  アンドレ「信じるも何も・・・」
  グレミン「アンドレ・・・神様は全ての人間を平等にお創りになら
       れたのだよ。何も君だけを、呪われた運命を持つ者とし
       て、この世に遣わされた訳ではないのだ・・・。人間は皆
       、大なり小なり生きて行く上で、試練を与えられるものな
       のだよ・・・。それは君にとっては少し過酷な試練であっ
       ただろう・・・。神は君に、立ち向かう勇気を・・・乗り越え
       られる強さを求めておられるのだ・・・。もうそろそろ逃げ
       ることばかりを考えるのではなく・・・自分自身の幸せを
       考えてみないかね?君が3日3晩、寝ずに側に付いて
       いたミリオッタは、奇跡的に助かったではないか・・・。」
  アンドレ「(悲しそうに微笑む。)彼女が助かって、本当によかっ
       た・・・。もう私は何も思い残すことなく・・・また今までの
       ように旅立って行けます・・・。グレミン牧師・・・ミリオッタ
       に会ったら伝えて下さい・・・どこにいても君の幸せを祈
       っていると・・・」

         その時、ミリオッタの声が聞こえる。

  ミリオッタの声「祈るだけじゃ嫌・・・」

  アンドレ「(振り返り。)・・・ミリオッタ・・・?」

         ミリオッタ、アーサーに支えられるように
         下手より出る。ジャクリーヌ続く。

  アンドレ「(驚いたように。)ミリオッタ!!そんな体で外に出るな
       んて無茶だ!!」
  ミリオッタ「(微笑んで。)私はもう大丈夫・・・あなたに命を貰った
        から・・・。あなたのお陰で私は助かったのよ・・・。あり
        がとうが言いたくて・・・それなのに私に黙って出て行
        こうとするなんて・・・(涙声で。)」
  アンドレ「ミリオッタ・・・すまない・・・」
  ミリオッタ「行かないで・・・(アーサーの手を離し、ゆっくりアンド
        レの方へ。)」
  アンドレ「・・・え?」
  ミリオッタ「この村にいて・・・これからもずっと私の側にいて・・・」
  アンドレ「・・・だが・・・」
  ミリオッタ「私はあなたが、あなたの言うような人間だなんて・・・
        これっぽっちも信じてないわ。けど、もし仮にそうであっ
        たとしても・・・私は命尽きるその時まで、あなたが側
        にいてくれたことの方を神様に感謝し、幸せな人生だ
        ったと言い切れるわ!!あなたを愛しているの!!私
        を愛して欲しいなんて言わない!!ただもう逃げない
        で・・・」
  アンドレ「ミリオッタ・・・」
  
         優しい音楽流れ、アンドレ歌う。
         (グレミン、上手方へ、ジャクリーヌ、アーサー、
         下手方へ、其々嬉しそうに去る。)
      
         “・・・時が過ぎ・・・
         忘れ去りたい過去が思い出に・・・
         変わろうと・・・
         今・・・感じる・・・
         ・・・それは全て・・・
         君が私の側にいてくれたお陰・・・
         今まで目を背け
         ただの一度も心を開かなかった・・・
         忘れ去りたい過去が思い出に・・・
         今変わり行く・・・
         時が至福に満ち
         それは全て・・・
         愛する者が側にいてくれたお陰・・・”

  アンドレ「ミリオッタ・・・愛している・・・」
  ミリオッタ「アンドレ・・・」
  アンドレ「私の側に・・・いてくれるかい・・・?」
  ミリオッタ「(溢れる涙を堪え、大きく頷く。)」
  アンドレ「(微笑んで。)永遠に・・・」
  ミリオッタ「・・・勿論よ・・・!!アンドレ!!」
  
         アンドレの広げた両腕の中に、ミリオッタ
         飛び込む。
         音楽盛り上がり、固く抱き合う2人で。






          ――――― 幕 ―――――  





























2013年5月19日日曜日

“アンドレ” ―全10場― 4

              ――――― 第 8 場 ―――――

         フェード・インする。(カーテン開く。)
         と、のどかな村の風景。
         グレミン牧師とエドワード、ゆっくり
         話しながら上手奥より出る。

  エドワード「いやはや、今日はまたいい陽気ですな、全く・・・」
  グレミン「本当ですね。」
  エドワード「あの大嵐以来、どうもパッとしない日が多いと思って
         いたが・・・こんな日にする仕事もなく、ま、急患でも運
         び込まれない限り・・・のんびりと過ごせると言うのは、
         今まで仕事人間として生きてきた私としては、何とも
         いいもんですな。(笑う。)」
  グレミン「先生は、この村の開業医としてだけでなく、隣町や・・・
       はたまたその隣町にまで往診に出掛けたり・・・今までが
       忙し過ぎたのでしょう。それに明後日には、道路が開通
       するそうですね・・・。そうなればまた・・・」
  エドワード「いやあ・・・これでやっと仕事に戻れると言うものです
         よ。随分長いこと、ゆっくりさせてもらいましたなぁ・・・
         。またこれから、以前以上に張切れそうですよ。(笑う
         。)」
  グレミン「そうですね。それにいい具合に開通して、明後日の村
       の収穫祭は、これで賑やかになりそうじゃないですか。」
  エドワード「そうそう、年に一度の祭りが、閉じ込められた村の中
         でしか出来ないとなると、いやが上にも盛り上がりに
         は欠けると言うものですからな。私も収穫祭が済むま
         では、のんびりと過ごすつもりですよ。」
  グレミン「それがいいでしょう。」

         そこへ下手より、話しながらジャクリーヌ、
         アンドレ、ゆっくり登場。

  ジャクリーヌ「(エドワード達を認め。)こんにちは、先生。グレミン
          牧師。」
  エドワード「やあ、ジャクリーヌ。」
  グレミン「こんにちは。」

         アンドレ、頭を下げる。エドワード、グレミン、
         それに応えるように軽く頷く。

  エドワード「どうだね、新婚生活は?上手くやっているかね?」
  ジャクリーヌ「まぁ、先生ったら・・・」
  エドワード「(笑って。)君達に“上手くやっているか”とは、愚問
         だな。」
  グレミン「(アンドレに向かって。)どうですか?この村の住みご
       こちは・・・。大分慣れたでしょう。」
  アンドレ「はい。家の人達の親切に、心から感謝しています・・・
       。」
  エドワード「3日後の祭りの日には、やっと道路が通れるように
         なるそうだが、どうするつもりだね?」
  アンドレ「・・・3日後・・・」
  ジャクリーヌ「まぁ・・・そうですの・・・」
  エドワード「ま、落ち着くも良し、去るも良し・・・全ては気の向くま
         ま・・・と言うことだよ。じゃ、我々はこの辺で・・・。牧
         師・・・」
  グレミン「じゃあ・・・」
  ジャクリーヌ「さようなら・・・」

         エドワード、グレミン、下手へ去る。
         アンドレ、頭を下げる。

  ジャクリーヌ「・・・開通すれば・・・もうこの村から自由に出られる
          んですものね・・・あなた達がいてくれたから、ミリオ
          ッタも私がいなくなって、淋しくなかったでしょうね。
          あ・・・早く出発したかった、あなた達にしてみれば、
          とんだ災難だったでしょうけど・・・。よかったわね・・・
          。」
  アンドレ「初めは・・・おっしゃる通り、何故こんなところで足止め
       を食うのかと、あの嵐を恨んだものです・・・。だが・・・今
       は・・・」
  ジャクリーヌ「・・・え?」
  アンドレ「ミリオッタに感謝をしています・・・。彼女のお陰で、この
       先の人生の正しい歩き方を、知ることが出来たのです
       から・・・。」
  ジャクリーヌ「あの子・・・何かしたのかしら・・・?」
  アンドレ「いいえ・・・彼女の真っ直ぐ前を向いた生き方が、自分
       が間違った道を歩んでいたと、分からせてくれたのです
       ・・・。」
  ジャクリーヌ「父や母のこと・・・お聞きになったのね・・・?」
  アンドレ「聞いた時は何故、そんな風に平然と自分の罪を話せ
       るのか呆れました・・・。だが彼女も自分の中で戦い、自
       分の正しい道を模索し、やっと探り当てたのだと知った
       時、彼女の勇気と力強さと・・・そして優しさが・・・私の
       頑ななまでに固く凝り固まった心を、少しずつ溶かして
       いったのです・・・。死神と呼ばれ・・・誰からも疎まれ・・・
       私の側へ近寄ろうとする者などいない・・・いつも一人だ
       った・・・。妹だけは、そんな私に付き合って、一緒にいて
       くれましたが・・・この村に来るまで、心はいつも孤独に
       苛まれ、自分の運命を呪ったものです・・・。だが、彼女
       に教えられた・・・本当に沢山のことを・・・」
  ジャクリーヌ「ミリオッタのことが・・・好き・・・?」
  アンドレ「・・・好き・・・?」
  ジャクリーヌ「あの子はあなたのことをとても好いているわ・・・。
          私には分かるの・・・。あの子は昔からただ一途で、
          心に思ったことを直ぐ行動に移せる・・・。自分の殻
          に閉じこもり気味の私にしてみれば、あの子のそん
          な性格がとても羨ましかった・・・。もし、あなた達が
          もうこの村から出て行くと知ったら、きっと悲しむで
          しょうね・・・」
  アンドレ「私は・・・(言いかけて止め、上手奥を注視する。)」
  ジャクリーヌ「アンドレ・・・?(アンドレの視線を追って、上手方を
          見る。)」

         上手奥よりジョセフ、ぐったりしたミリオッタを
         抱きかかえ出る。
         ジャクリーヌ、驚いて駆け寄る。
         呆然とゆっくり近付くアンドレ。
         下手にエリザベス登場。その様子を認め、
         驚いて佇む。

  ジャクリーヌ「ミリオッタ!?ミリオッタ!!」
  アンドレ「・・・ミリオッタ・・・」
  ジャクリーヌ「どうしたの、ジョセフ!?」
  ジョセフ「(下手方へ歩きながら。)一本杉へ行こうとして、崖か
       ら落ちたんだ・・・。」
  ジャクリーヌ「一本杉・・・?何故そんな危険なところへ・・・!?」
  ジョセフ「それより早く、エドワード先生に・・・!!」
  ジャクリーヌ「え・・・ええ・・・!!」

         ジャクリーヌ、下手へ走り去る。
         ジョセフ、ミリオッタを抱いたまま
         その後へ続く。
         アンドレ、茫然自失でミリオッタの
         方へ。
  
  アンドレ「ミリオッタ・・・(ミリオッタに触れようとする。)」
  ジョセフ「(アンドレを見据える。)触るな!!おまえのせいだ・・・
       おまえがこの村に来たから・・・!!もしこいつがこのま
       ま目を覚まさなければ、俺はおまえを生かしておかない
       からな!!」

         ジョセフ、怒りに肩を震わせながら、
         下手へ去る。
         アンドレ、遣りきれない思いが溢れる
         ように、呆然と佇み、握り拳を握って、
         上手へ走り去る。
         エリザベス残してカーテン閉まる。

  エリザベス「・・・まさか・・・本当に怪我するなんて・・・私のせい
         だわ・・・私が嘘を言ったばかりに・・・。ミリオッタにも
         しものことがあったらどうしよう・・・。」

         エリザベス、スポットに浮かび上がり、
         不安気に歌う。

         “大切な者を失うのが怖かっただけ・・・
         今まで感じたことのなかった思いで・・・
         胸が張り裂けそうな程
         ただとても不安だっただけ・・・
         私の知らないところでどんどん
         何かが変わっていくようで・・・
         何かが遠くへ行くようで・・・
         あなたが私のものでなくなる・・・
         そんな思いが段々膨らんで
         ただ怖くて見ていられなかっただけ・・・”

         フェード・アウト。

    ――――― 第 9 場 ――――― A

         静かな音楽でフェード・インする。
         (カーテン開く。)
         と、ミリオッタの部屋。
         中央、設えられたベッドの上にミリオッタ
         横になっている。
         エドワード、横の椅子に腰を下ろし、
         ミリオッタの腕を取り、脈を見ている。
         反対側にジャクリーヌ立ち、心配そうに
         ミリオッタを見詰めている。

  ジャクリーヌ「先生・・・ミリオッタは・・・」
  エドワード「うむ・・・(ミリオッタの頭を見る。)別段、傷も見当た
         らんし・・・どこか打ちどころでも悪かったのか・・・。ま
         ぁ、もう暫く様子を見るとしよう。」
  ジャクリーヌ「はい・・・。先生、隣の部屋で少し休んで下さい・・・。
          私、付いていますから・・・」
  エドワード「じゃあ、そうさせてもらうとするかな・・・。少し横にな
         っているから、何かあれば呼んでおくれ。」

         エドワード、下手方の扉より出て行く。
         入れ代わるようにアンドレ入る。ゆっくり
         ミリオッタの側へ。
         ジャクリーヌ、アンドレに気付き、気を利かせて
         何も言わず、扉よりそっと出る。
         アンドレ、ベッドの横へ跪き、ミリオッタの手を
         取る。

  アンドレ「(絞り出すような声で。)・・・ミリオッタ・・・目を開けてく
       れ・・・目を開けてもう一度・・・私に微笑みかけてくれ・・・
       ・・・愛しているんだ・・・心から・・・こんなに誰かを大切に
       思ったのは初めてなんだ・・・。君が助かるのなら・・・私
       は私の命を捧げてもいい・・・。お願いだ・・・目を開けて
       おくれ・・・ミリオッタ・・・(ミリオッタの手にそっと口付ける
       。)」

         途中エリザベス、扉よりそっと入り、そんな
         アンドレの様子を辛そうに見ている。
         エリザベス残してカーテン閉まる。

  エリザベス「・・・お兄さん・・・」

    ――――― 第 9 場 ――――― B

         カーテン後ろより、傷心の面持ちでアンドレ
         出る。

  エリザベス「お兄さん・・・!(アンドレに走り寄る。)ミリオッタは
         !?」
  アンドレ「エリザベス・・・(エリザベスの肩に手をかける。)大丈
       夫さ・・・きっと・・・直ぐによくなるさ・・・きっと・・・(自分に
       言い聞かせるように。)」
  エリザベス「お兄さん・・・私のせいなの!!私が・・・!!」
  アンドレ「(エリザベスの言葉を遮るように。)エリザベス!!・・・
        大丈夫・・・」

         そこへ上手より出、2人の様子を見ていた
         ジョセフ、ゆっくりと2人へ近付く。

  ジョセフ「・・・何が大丈夫なんだ・・・」
  
         アンドレ、エリザベス、ジョセフを認める。

  ジョセフ「大丈夫だと?(笑う。)まだミリオッタは目を覚まさない
       んだぞ!!何が大丈夫なものか!!巫山戯るな!!
       やっぱりあの新聞記事の通りだ・・・おまえは死神じゃな
       いか・・・!!おまえがこの村へ来たばっかりにミリオッ
       タはあんなことに!!」
  エリザベス「違うわ!!お兄さんのせいじゃない!!私が・・・!
         !」
  ジョセフ「この死神め!!」

         ジョセフ、隠し持っていたナイフを取り出し、
         アンドレの方へ駆け寄ろうとした時、
         逸早くナイフに気付いたエリザベス、アンドレ
         の後方より飛び出し、アンドレを庇ってジョセフ
         のナイフに刺される。

  アンドレ「エリザベス!!」

         ジョセフ、驚いて下手へ走り去る。
         エリザベス、アンドレの腕の中で崩れる
         ように倒れる。
         アンドレ、エリザベスを抱き起こす。

  アンドレ「エリザベス!!しっかりしろ!!今直ぐ誰か・・・!!
       (回りを見回す。)」
  エリザベス「・・・お兄さん・・・私・・・お兄さんをミリオッタに取られ
         るようで・・・とても・・・不安だったの・・・だから・・・ほ
         んの少し・・・意地悪したくなって・・・ごめんなさい・・・
         ミリオッタにも・・・(アンドレを見詰め微笑む。亡くなる
         。)」
  アンドレ「・・・エリザベス・・・エリザベス・・・?エリザベス!!」

         アンドレの叫び声で暗転。

    ――――― 第 9 場 ――――― C

         アンドレ、スポットに浮かび上がる。

  アンドレ「・・・父や・・・母・・・そして妹まで・・・神よ・・・何故あな
       たは私の大切な者を全て・・・私から引き離そうとなさる
       のです・・・。何故いっそ・・・私を連れて行っては下さら
       ないのか!!何故私をいつまでも晒し者のように生き
       長らえさせるのです!!何故私をあなたの側へ行かせ
       ては下さらないのです・・・!!その方が何れ程・・・楽か
       知れない・・・(ハッとして。)それだけでない・・・次には、
       ミリオッタまでも連れて行こうとなさる・・・。今度はハッキ
       リと見えるのです・・・(両手を見て。)この指の間から摺
       り抜けてしまおうとする大切な者の影が・・・。私の命な
       ど何の惜しくもない!!私の命と引き換えにしても彼女
       をお助け下さい・・・!!彼女の瞳が再び陽の光を映し
       出すことが出来るならば、私は喜んであなたのお側へ
       参りましょう・・・」

         アンドレ、歌う。

         “おおミリオッタ・・・
         命に代えても守りたい他人・・・    ※
         初めて出会った思いの他人・・・
         おおミリオッタ・・・
         その眩いばかりに輝いた
         瞳に映る明日の陽を
         再び目にすることが出来たなら
         甘い蜜の唇に
         息吹を吹き込むことが出来たなら
         その時 私と引き換えに
         暖かい温もりを肌で感じ
         命尽きても構わない・・・
         おおミリオッタ・・・
         今一度私の目の前に・・・
         現してくれ花の女神の如く・・・”

         訴えるような面持ちで、遠くを見遣るアンドレ。
         フェード・アウト。









        ――――― “アンドレ”5へつづく ―――――












      ※ 他人=“ひと”とお読み下さい♥



















2013年5月18日土曜日

2013年5月16日 保育所公演日記♪

       3013年5月16日(木)

     今回は、某公立の保育所で公演させて頂いて来ました。
   
    保育所と言うことで、小さな子どもさんも沢山いたのですが、

    人形劇に反応しながら、一生懸命見てくれていて、とても

    賑やかで楽しい一時を過ごすことができました♥

    




         9:30   ・・・   保育所到着。



                    


                
            舞台設置。公演準備。
               




    

              舞台設置完了。



                   ↓




    

     子ども達が入ってくるまで、自分達の準備をしながら
    待っているところです(^-^)

    ・・・私は・・・足だけ映っていますね・・・(^^;



    

    10:20   ・・・   “楽しい森の仲間たち”開演。



                   
    





    

     3月に公演した時に、「岩が落ちた」教訓を生かし、
    今回は1人の団員がずっと手で押さえてくれていました。
    



    






    10:35   ・・・   “楽しい森の仲間たち”終演。



                     




    10:40   ・・・   “ピンクのももちゃん”開演。



    
    

     ももちゃんの向こうに、背景を押さえている手が見える
    でしょうか・・・?(^^;

    実は今回は“岩”は落なかったのですが・・・ももちゃんの
    背景が途中で剥がれてしまったのでした~(>_<)
    
    その時に手空きの団員が絵を押さえていたのですが、
    保育所の先生が一人、テープを持って飛んで来て下さり、
    応急処置的に貼り直して下さったのです。
    ・・・が・・・
    最後の最後に再び剥がれ落ちてしまいました~(^_^;)
    
    どの先生が来て下さったのかは覚えていませんが、
    「ありがとうございましたm(_ _)m」



                   


    

     写真はピンボケですが、背景を押さえる手はバッチリ
    分かりますね(^^;



                   
                  ↓



   
    

       ↑  背景、風前の灯状態フォトです^^;





    







          10:55   ・・・   公演終了。


              
                    


     
                片付け。撤収。







    

     


      今回も沢山の方々のお手伝いと協力の元、無事終了

      することができました♥

      キラキラした可愛い瞳にも出会うことができました♪

      お世話頂いた皆様、本当にありがとうございました

      m(_ _)m


      
      さて、公演後談でありますが・・・

      喜んで頂けたようで、こんな風に公演に行かせて頂い

      た先で、次公演の依頼をその場で受けることは、今ま

      でありませんでしたが、初めて今回、2月26日にされる

      お楽しみ会での公演をお願いされ、帰って来ました♥
       
      とても嬉しいことだと思っています!

      そして・・・新作書きに追われます(^^;
      
      


                  ミュージカル人形劇団リトルパイン

                                 代表 どら。








― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪



    (どら余談^^;)

    先日、取材に来て頂いたボランティア冊子のfree paper
    “comvo”誌が出来上がり、大阪市内の主要JR駅などで
    配布が始まりました(^O^)

    小さく載せて頂いているので、機会があればご覧になって
    みて下さい(^-^)
    






















2013年5月17日金曜日

“アンドレ” ―全10場― 3

         ――――― 第 5 場 ―――――

         (カーテン前。)
         下手よりジョセフ出る。続いてその後輩
         クリスト、ジョセフを追うように出る。

  クリスト「待って下さいよ、ジョセフさん!!どうしたんですか!?
       」
  ジョセフ「(立ち止まって振り返る。)何がだ!?」
  クリスト「ジョセフさん、崖崩れでこの村から出られなくなってか
       ら、やけに機嫌が悪いんだから・・・」
  ジョセフ「おまえの思い過ごしだ!」
  クリスト「えー・・・そうですか?僕、不思議に思ってたんですよ。
       ジョセフさん、仕事に行けなくなって、こんなに荒れる程
       仕事好きだったかなって・・・」
  ジョセフ「何だって!?」
  クリスト「あ・・・すみません・・・。けど・・・やっぱりなんかトゲトゲ
       しい・・・」
  ジョセフ「それより復旧作業の進み具合はどうだった?」
  クリスト「それが思った程、捗った様子はなくて・・・」
  ジョセフ「何だと!?」
  クリスト「(ジョセフの声に、思わず身を屈める。)ごめんなさい!
       !」
  ジョセフ「馬鹿、何謝ってるんだ。」
  クリスト「だって・・・」
  ジョセフ「じゃあ開通の見当もつかないのか?」
  クリスト「はぁ・・・」
  ジョセフ「(独り言のように。)畜生・・・あの野郎・・・」
  クリスト「(不思議そうに。)あのやろう・・・?」
  ジョセフ「煩い!!」

         その時、上手よりエドワード出る。ジョセフ
         たちを認め、近寄る。

  エドワード「やぁ、君たち・・・何を揉めているんだい?(楽しそう
         に。)」
  ジョセフ「(振り返り、エドワードを認める。)先生・・・」
  クリスト「こんにちは・・・」
  ジョセフ「中々道路が開通する見込みがなさそうなのでちょっと
       ・・・」
  エドワード「ああ・・・私も仕方がないので、当分、町での仕事は
         諦めたよ。(笑う。)屹度、働き者の多いこの村の人
         間に、神様が暫くの休息を下さったのだろう。」
  クリスト「(思わず嬉しそうに。)僕も、思わぬ休暇が取れて、嬉
       しいんですけどね!!」
  ジョセフ「馬鹿!!」
  クリスト「・・・すみません・・・」
  エドワード「ところで・・・ミリオッタの家の客人なのだが・・・」
  ジョセフ「え・・・?」
  エドワード「いや・・・私の思い違いか・・・どこかで見かけたこと
         があるような気がしてならんのだよ・・・」
  ジョセフ「どこか・・・って・・・?」
  エドワード「さぁ・・・それが・・・年のせいかね、中々思い出すこと
         が出来なくてね。(胸を押さえて。)ここら辺がモヤモ
         ヤと・・・」
  ジョセフ「先生!!どこで見かけたか是非思い出して下さいよ!
       !もし悪い奴なら・・・!!」
  エドワード「(笑って。)余程、君はミリオッタの家に、あの客人が
         滞在していることが、面白くないようだな。」
  ジョセフ「あ・・・いや・・・(思わず口篭る。)」
  クリスト「(不思議そうに。)あれ?どうしてですか?」
  ジョセフ「煩い・・・」
  エドワード「この村では、誰も知らない者がいない程、有名な話
         しだよ、ジョセフのミリオッタ病は。(笑う。)」
  ジョセフ「先生!!」
  エドワード「ん?言っては不味かったかね?」
  クリスト「ミリオッタ病・・・えー!?そうだったんですか!?」
  ジョセフ「ミリオッタに言うなよ!!村人が殆ど皆知ってるような
       話しでも、あいつは気付いていないんだから・・・」
  エドワード「確かに彼女は君のことを兄さんみたいに思っている
         ところもあるようだし・・・」
  クリスト「了解です!だけど・・・へぇ・・・(嬉しそうに。)そうだった
       のか・・・だから機嫌が良くなかったんだ・・・。」
  ジョセフ「いつまでも煩い奴だな!」
  エドワード「まぁ、道が開通すれば、ジョセフの苛々も収まるだろ
         う。(笑う。)」
  ジョセフ「先生!!」
  エドワード「(何か思い出したように。)ああ・・・思い出したぞ・・・
         あれは確か・・・今から丁度2年程前の新聞で・・・」
  ジョセフ「え!?」
  エドワード「2人の写真が載っていた・・・。記事の内容までは読
         まなかったが・・・見出しは・・・“死神・・・来る・・・”」
  ジョセフ「死神・・・?」

         音楽。3人、困惑した面持ちで其々見合わす。
         フェード・アウト。(カーテン開く。)

    ――――― 第 6 場 ―――――        

         明るい音楽でライト・オンする。(村の教会前。)
         中央にピンクの花飾りの付いたドレスに
         身を包み、花カゴを手に持ったミリオッタ、
         ポーズしている。
         ミリオッタ、幸せそうな面持ちで、歌いながら
         花カゴの中から花びらを手に取り撒く。

         “夢・・・夢・・・幸せな時
         今・・・今・・・満ち足りた時
         今日この時より2人は
         永遠の愛により2人は
         決して離れることのない
         強い絆で結ばれた!
         共に手を取り見つめ合い
         労わりあい寄り添ったまま・・・
         大勢の祝福の元
         愛・・・愛・・・幸せな時・・・
         今・・・ここで・・・誓い合う
         あなたと・・・!”

         歌の途中、後方に設えられた教会の扉が
         開き、中より幸せそうに寄り添いあった
         ジャクリーヌとアーサー出る。
         続いてグレミン牧師、結婚式に参列して
         いた者、エドワード、ジョセフ、アンドレ、
         エリザベス出る。
         グレミン、エドワード、ジョセフ、2人に
         祝福の拍手を送る。
         アンドレ、中央歌っているミリオッタに、心
         が向くように、つい視線を追わせる。
         それに気付いたエリザベス、ミリオッタを
         見据える。
         同じようにアンドレの視線に気付いた
         ジョセフ、アンドレを睨む。
         (他の者は気付かない様子。)
         ミリオッタ、前方一寸脇へ寄り、幸せそうな
         祝福される者たちを、微笑ましく見詰める。
         結婚式の音楽、段々遠くへ。
         フェード・アウトしながらミリオッタ、スポット
         に浮かび上がり、変わって豪華な音楽、
         鐘の音が遠くから木霊するように段々大きく。
         フェード・インする。と、舞台上にはスモーク
         流れ、中央にアンドレ。(バック・ポーズ。)
         ミリオッタ、アンドレを認め嬉しそうに微笑む。
         アンドレ、振り返りミリオッタを認める。
         ミリオッタ、アンドレに駆け寄り、2人嬉しそうに
         抱き合う。
         (ミリオッタの幻想。)
         幸せそうに寄り添い合う2人。カーテン閉まる。

    ――――― 第 7 場 ―――――

         カーテン前。
         (前場とガラッと変わった音楽。)
         ジョセフ、上手より登場、力強く歌う。
         下手方へ。

         “必ず・・・!!暴いてやる
         おまえの・・・!!正体を
         きっと・・・!!掴んでやる
         隠された・・・!!真実を
         何食わぬ顔をした
         その面の下には
         誰にも見せたことのない
         秘密の鬼面
         あいつは誤魔化せても
         他の誰も見破れなくても
         俺だけは騙せない!!
         偽りに包まれた
         本当の素顔を・・・!!”

         ジョセフ、堅い決心に瞳を輝かせ、
         下手へ去る。
         一時置いて、上手よりクリスト、手に紙を
         持ち、慌てた様子で走り登場。

  クリスト「(誰かを捜すように。)ジョセフさーん!!(辺りを見回
       す。)ジョセフさーん!!一体どこへ行ったんだよ、こん
       な大切な時に!!やっと死神の記事を見つけたって言
       うのに!!ジョセフさーん!!」

         クリスト、ジョセフを捜しながら、下手へ
         走り去る。
         再び、一時置いて、上手よりエリザベス
         登場。続いてミリオッタ登場。

  ミリオッタ「あの・・・話しって何?」
  エリザベス「(振り返り、ミリオッタを見詰める。)お兄さんのこと、
         どう思ってるの・・・?」
  ミリオッタ「え・・・?」
  エリザベス「好き?」
  ミリオッタ「(少し戸惑ったように。)素敵な方だと思うわ・・・」
  エリザベス「そんなこと聞いてるんじゃないわ。好きかどうか、聞
         いているのよ。(突き放すように。)」
  ミリオッタ「ええ、好きよ。」
  エリザベス「愛しているの・・・?」
  ミリオッタ「・・・ええ・・・」
  エリザベス「お兄さんはあなたのことなんて、なんとも思ってな
         いわ!それでもあなたは愛してるの?」
  ミリオッタ「(微笑む。)・・・ええ。私は何も見返りを求めて、誰か
        を好きになるんじゃないわ・・・。そりゃあ私のことを好
        きになってもらえたら、素晴らしいけれど・・・思いは人
        其々の筈よ。ねぇ、エリザベス・・・恋をしたことがある
        ・・・?恋をしたことのある女の子なら、誰だって分かる
        筈よ・・・。好きな人を見ているだけでときめいたり・・・
        キュンとなったり・・・時には切なかったり・・・。でも、そ
        う感じたり出来ることが幸せなんだもの・・・。私は愛し
        て欲しいと願うことは二の次ね。(クスッと笑う。)色々
        な人がいるんですもの、私なんかと全然違った考えを
        持っている人も、沢山いるんでしょうけど・・・。自分が
        誰かを愛する時に感じる幸せは、誰でも同じだと思う
        わ・・・。」
  エリザベス「(一時、ミリオッタを見据える。)・・・もういいわ・・・。
         ・・・お兄さんから伝言があったの・・・」
  ミリオッタ「伝言?」
  エリザベス「・・ええ・・・。話があるから、一本杉のところで待って
         るって・・・」
  ミリオッタ「・・・一本杉・・・?」
  エリザベス「ええ・・・森の奥の一本杉よ・・・」
  ミリオッタ「でも、あそこへ行くには、切り立った崖っ淵を通らなけ
        ればならないから、村の人たちだって、余程のことが
        ない限り、行ったりしない危険な場所よ・・・?」
  エリザベス「そんなこと知らないわ・・・。私はお兄さんからあな
         たに伝えてくれって、頼まれただけだもの。人に聞か
         れたくないような話しが、あるんじゃなくて・・・?」
  ミリオッタ「・・・そう・・・分かったわ!行ってみる!ありがとう、エ
        リザベス!」
  
         ミリオッタ、手を上げて嬉しそうに上手へ
         走り去る。
         エリザベス、意地悪そうな面持ちで、
         ミリオッタが出て行った方を見詰めている。

  エリザベスの心の声「今まで私達はずっと2人だった・・・。その
               私達の間に割り込むことなんて、絶対にさ
               せないわ・・・!!」

         そこへ下手より、クリストと話しながらジョセフ
         登場。エリザベスを認め、2人顔を見合わせ、
         上手方を見据えたままのエリザベスの側へ。

  ジョセフ「・・・こんにちは、エリザベス・・・」
  エリザベス「(振り返って2人を認める。)さようなら・・・(2人の横
         を通って、下手方へ行こうとする。)」
  ジョセフ「ちょっと待てよ・・・」
  エリザベス「何かしら・・・私、急いでるんだけど・・・」
  ジョセフ「何故、逃げるように旅を続けている・・・?」
  エリザベス「(振り返って、ジョセフを見据える。)そんなこと、あ
         なたに関係なくてよ!」
  ジョセフ「死神だからか・・・?」
  エリザベス「(ジョセフを睨み付け、背を向け下手方へ行きかけ
         る。)」
  ジョセフ「違うんなら釈明してみろよ!」

         エリザベス、歩を止める。

  ジョセフ「おまえ達が立ち寄った町や村では、必ず奇妙な事件
       や事故が起こっているじゃないか!!(手に持っていた
       紙の束を投げ捨てる。)ここにある新聞や雑誌の記事
       には、おまえ達がやって来た時には気をつけろと書か
       れている・・・。・・・一体・・・おまえ達兄妹は・・・おまえの
       兄貴は何者だ・・・!?」
  エリザベス「(振り返ってジョセフを見詰め、意地悪そうに微笑
         む。ゆっくり近寄って。)私に詰め寄る暇があったら・・・
         ミリオッタの心配でもした方がいいんじゃなくて・・・?」
  ジョセフ「ミリオッタの・・・!?(ツカツカとエリザベスに近寄り、
       腕を掴む。)」おい!!あいつがどうしたんだ!?何かし
       たのか!?」
  エリザベス「その汚い手を離して!!(微笑んで。)聞きたい?」
  ジョセフ「ふざけてないで、さっさと言えよ!!」
  エリザベス「一本杉へ行ったわ!!」
  ジョセフ「一本杉・・・」
  エリザベス「死んじゃえばいいのよ、あんな女!!(声を上げて
         笑う。)」
  ジョセフ「ミリオッタ!!」
 
         ジョセフ、慌てて上手へ走り去る。

  クリスト「(エリザベスの方を気にしながら。)ジョセフさん!!」

         クリスト、ジョセフの後を慌てて追う。
         エリザベスの狂ったような笑い声で、
         フェード・アウト。









      ――――― “アンドレ”4へつづく ―――――
























2013年5月16日木曜日

“アンドレ” ―全10場― 2

      ――――― 第 3 場 ―――――

         カーテン前。
         下手より、村の医師エドワード、グレミン牧師
         話しながら出る。

  エドワード「いやぁ、昨夜の嵐は凄かったですなぁ・・・」
  グレミン「ええ、全くです。もう少しで教会の屋根が、吹き飛ばさ
       れるんではないかと、ゆっくり眠りにつくことも出来なか
       った程ですから・・・」
  エドワード「(笑って。)私もですよ、グレミン牧師。」
  グレミン「(一瞬、不思議そうに。)え?あなたもですか、先生・・・
       。」
  エドワード「可笑しいですか?私が嵐などに怯えて眠れないの
        は。」
  グレミン「いえ・・・(口籠もる。)」
  エドワード「(笑って。)自分でも可笑しいのだから、グレミン牧師
         に不思議がられるのも尤もですがね。お陰で昨夜は
         読む暇もないままに、買って置いてあった書物の山
         を、随分と整理することが出来ましたよ。(再び笑う。
         )」
  グレミン「それは嵐に感謝しなければならないと言うことですね
       ?」
  エドワード「その通りです。」
  グレミン「ところで今日はどちらへ?」
  エドワード「いや、何ね、検察官と言う訳でもないのだが、一昨
         日、隣町で起こった、旅籠の火事で亡くなった宿主
         の検視を頼まれましてね。」
  グレミン「それはそれは・・・。では今から隣町まで?」
  エドワード「ええ。今晩は泊まりですよ。(笑う。)」

         そこへ上手より、新聞記者ジョセフ、幾分
         早足に出、エドワードたちを認めて近寄る。

  ジョセフ「エドワード先生、グレミン牧師、おはようございます!」
  エドワード「(ジョセフを認め。)やぁ、おはよう。」
  グレミン「おはよう、ジョセフくん。」
  ジョセフ「昨夜は凄かったですね!教会は大丈夫でしたか?」
  グレミン「村人たちが、いつもこまめに修理をしてくれているお陰
       で何とかね。」
  ジョセフ「それはよかった。」
  エドワード「君も今から、隣町へ出勤かね?」
  ジョセフ「先生も隣町へ出掛けるところだったんですか?」
  エドワード「ああ。よかったら一緒に私の馬車で・・・」
  ジョセフ「大変有り難いのですが、先生、我々は当分この村から
       一歩たりとも出ることが出来なくなったんですよ。」
  エドワード「・・・と言うと?」
  ジョセフ「(上手方を指差して。)この先の村の出入り口の1本道
       が、昨夜の嵐で崖崩れに遭い、道路が寸断されたので
       す。」
  グレミン「え!?」
  エドワード「(驚いて。)本当かね!?」
  ジョセフ「たった今、出勤しようと出掛けて行って、この目で見て
       来たばかりですから確かですよ。」
  エドワード「何てこった・・・私はこれから大切な仕事があったと
         言うのに・・・」
  ジョセフ「仕方ないですね・・・」
  グレミン「家屋が無事だっただけでも、感謝しなければ・・・」

         その時、下手よりミリオッタ出る。続いて
         アンドレ、エリザベス出る。

  ミリオッタ「おはようございます、皆さん。」
  
         皆、一斉にミリオッタの方を向く。

  エドワード「おはよう、ミリオッタ。」
  ジョセフ「おはよう!今日は早いんだな。昨夜の嵐が怖くて、眠
       れなかったかな?(笑う。)」
  ミリオッタ「失礼ね!それよりどうしたの?皆揃って何の相談?
        」
  エドワード「それが昨夜の嵐で、この先の道が通行不可能にな
         ってしまって、仕事に行けない我々は、途方に暮れ
         ていたと言う訳だよ・・・。」
  ミリオッタ「え・・・?」
  アンドレ「通れない・・・!?」
  ジョセフ「・・・(ミリオッタの後ろのアンドレたちに気付いて。)・・・
       ミリオッタ・・・誰だい?」
  ミリオッタ「昨夜、旅の途中にこの村に立ち寄られたご兄妹・・・
        宿屋がなくて困ってらしたから、うちへお泊めしたの。」
  ジョセフ「おまえのところへ?」
  ミリオッタ「ええ。丁度空き部屋もあったし・・・。それより・・・(アン
        ドレの方を向いて。)先を急いでたようだけど、この村
        から出られないのなら仕方ないわ。道が元通りになる
        まで、うちにいらっしゃって下さいな。」
  アンドレ「しかし・・・」
  ミリオッタ「うちは構わないのよ!!ね、そうしなさいよ!!」
  ジョセフ「ミリオッタ・・・」

         困惑した面持ちのアンドレ、嬉しそうな
         ミリオッタでフェード・アウト。

    ――――― 第 4 場 ―――――

         楽しそうな音楽が流れてくる。(カーテン開く。)
         フェード・インする。と、舞台は村の丘。
         其々の位置にポーズするアーサーと
         ジャクリーヌ、幸せそうに歌う。

      2人“待ち望んだ今この時・・・
         幸せに満ちた心の充実
         あなたといればただそれだけで
         たとえ何が起ころうと
         回りは全てバラ色に変わりゆく”

      アーサー“冬の寒さも2人でいれば”

      ジャクリーヌ“涙の時もあなたがいれば”

      2人“ただそれだけで
         全ては幸せ色に染まりゆく
         花の香りも芳しく
         あなたの温もりに心時めく
         2人で共に生きる喜びに
         満ち足りた今この時・・・
         あなたさえいれば
         この世は全て
         生きる希望へと変わりゆく・・・”

         アーサー、ジャクリーヌを抱き締める。
         2人幸せそうに微笑み、手を取り合い
         上手奥へ出て行く。
         入れ代わるように下手より、2人を見て
         いたようにアンドレ、エリザベスゆっくり
         出る。

  エリザベス「私たち、いつになったらこの村から出られるの?」
  アンドレ「私にも分からないよ・・・」
  エリザベス「もう一週間も経つのよ!今までこんなに長い間、同
         じところに滞在したことって、私たちが生まれ育った
         村くらい・・・」
  アンドレ「仕方ないだろう。真逆、空を飛んで行く訳にもいかない
       し・・・」
  エリザベス「(溜め息を吐いて。)羽があったらいいのに・・・。私
         ・・・ミリオッタのこと嫌いだわ。」
  アンドレ「どうして?親切な人だと思うけど・・・。」
  エリザベス「確かに親切よ!でもその親切が・・・!お兄さんは
         ・・・どう思ってるの・・・?」
  アンドレ「どう思うも何も・・・知ってるだろ?私は誰に近付くこと
       もしたくないんだ・・・。おまえが一体、何を心配している
       のか分からないけれど、道が直れば、この村とも直ぐに
       お別れだ・・・。」
  エリザベス「本当ね?」
  アンドレ「ああ・・・」
  エリザベス「昔から私の勘はよく当たるのよ・・・。お願い、お兄
         さん、ミリオッタにだけは近付かないでね・・・。」
  アンドレ「ああ・・・可笑しな奴だな・・・(笑う。)」
  エリザベス「私だけよ・・・お兄さんの側にいてあげられるのは・・・
         。」
  アンドレ「・・・分かっているよ・・・私の為に、おまえにまで不自由
       をかけていることは・・・」
  エリザベス「(アンドレの腕にしがみつく。)そんなことないわ!!
         私はお兄さんの側にいられることが幸せなんだから
         ・・・。」
  アンドレ「こうして立ち寄った村で、おまえの気に入った場所が
       見つかれば、私に気兼ねすることなく、おまえの好きな
       ようにしてもいいんだ・・・」
  エリザベス「私はずっとお兄さんと一緒に行くわ・・・(小さくくしゃ
         みをする。)」
  アンドレ「ほら、私に付いてこんなところまで登って来るから・・・
       暖かくなったと言っても、午後からは丘の上はまだまだ
       冷えて来るんだ。さぁ、先にお帰り。もうそろそろお茶の
       時間だろう?」
  エリザベス「でも・・・」
  アンドレ「私も直ぐに戻るから・・・」
  エリザベス「(頷く。)早くね・・・」
  アンドレ「ああ・・・」

         エリザベス、アンドレを気にするように
         上手奥へ出て行く。
         アンドレ、エリザベスが出て行くのを
         見計らって、後方小高く盛り上がった
         丘の上へ腰を下ろし、ゴロンと横に
         なる。
         そこへ一時置いて、上手よりミリオッタ、
         誰かを捜すように出、アンドレを認め
         嬉しそうに駆け寄る。

  ミリオッタ「こんなところにいたの!?」
  
         アンドレ、ミリオッタを認め、ゆっくり
         起き上がる。

  アンドレ「・・・何か用でも・・・?」
  ミリオッタ「もう直ぐお茶の時間なのに、姿が見えないからどこへ
        行ったのかと思って!この場所はこの村で一番見晴
        らしのいい丘なのよ。登って来るのは結構大変だけど
        、眼下に広がる村を見た途端、そんなことは吹っ飛ん
        でしまう程!!ね、素敵だと思わない?」
  アンドレ「(立ち上がって服を払う。)私は余計なお喋りに付き合
       う気はないので・・・(出て行こうとする。)」
  ミリオッタ「(アンドレの腕を取って。)待って!折角ここまで来た
        んだから、もう少し楽しみましょうよ!」
  アンドレ「・・・お一人でどうぞ・・・」
  ミリオッタ「駄目よ!あなたも一緒でないと!」
  アンドレ「君に一言忠告しておこう・・・私に・・・近付かない方が
       いい・・・」
  ミリオッタ「近付かない方がいい?何故?」
  アンドレ「私は昔から・・・側にいる人々を不幸にしてしまう運命
       を持って生まれた者なのだ・・・」
  ミリオッタ「(笑う。)私、そんなこと気にしないわ!」
  アンドレ「気にするしないの問題じゃない。君も私に近付くと、き
       っとロクなことはない・・・。怪我の一つもしないうちに・・・
       余計な好奇心を出して、あれこれ私に構うのを止める
       ことだ・・・。」
  ミリオッタ「エリザベスはどうなの?あなたはずっとエリザベスと
        2人、旅して来たのでしょう?もし本当にあなたが、今
        言ったような人なら、真っ先にエリザベスがどうかした
        んじゃなくて?今まで色々あったんだとしても、それは
        単なる偶然で、何もあなたがいたからそうなったんじゃ
        ない筈よ、きっと・・・。」
  アンドレ「・・・どう思われても・・・今までのことは、私の幻想でも
       夢でもない・・・本当に起こったことなのだから・・・」
  ミリオッタ「へぇ・・・でも今まで確かに色々あったかも知れない
        けど、これからも同じようなことが起こるとは限らない
        でしょ?ね?」
  アンドレ「それは・・・だが・・・!」
  ミリオッタ「今までどんな町や村を見て来たの?私なんて、生ま
        れてから一番遠くに出掛けたことって隣町よ!(笑う。)
        あなたから見れば、きっと私の世界なんて、ちっぽけ
        な世界なんでしょうね・・・。」
  アンドレ「(溜め息を吐いて。)本当に知らないからな・・・。」
  ミリオッタ「ひょっとして・・・だからずっと旅して来たの?自分の
        生まれ育った故郷を捨てて・・・一所に留まることなく
        ・・・」
  アンドレ「・・・だったら・・・?」
  ミリオッタ「そんなのって、悲しいじゃない・・・」
  アンドレ「・・・親しい者たちが私の目の前で次々と亡くなるんだ
       !!そんな別れを、運命にまざまざと見せ付けられるく
       らいなら、私はどこの地にも愛着を持たず、ただの通り
       すがりの旅人として生きて行く方が、余程いいんだ・・・
       。」
  ミリオッタ「エリザベスも納得しているの?それで・・・」
  アンドレ「ああ・・・」
  ミリオッタ「あなたの生き方は、ただ運命に流されてるのよ・・・。」
  アンドレ「何・・・?」
  ミリオッタ「だってそうでしょ?何故逃げてばかりいるの?何故
        もっと立ち向かおうとしないの?辛いことから目を背け
        て生きて行くのは、勇気ある者の選択ではないわ・・・」
  アンドレ「放っといてくれ・・・おまえに“死神”と呼ばれ続けて来
       た者の気持ちなど、分かろう筈がない・・・(ミリオッタに
       背を向けて、出て行こうとする。)」
  ミリオッタ「私だって!!父さんや母さんが・・・私の不注意で亡
        くなった時・・・生きていくのが嫌になったわ!!まだ
        ほんの小さな子どもだったけど・・・!!罪の意識に苛
        まれて・・・何故私はあの時・・・火を点けたんだろう・・・
        って・・・」
  アンドレ「・・・火を点けた・・・?(振り返って、ミリオッタを見る。)
       」
  ミリオッタ「丁度あの日も・・・あなたたちが私のところへ来た時
        と同じような、冷たい雨が激しく降っている日だった・・・
        出掛けていた父さんと母さんが、雨に濡れて戻って来
        たら、風邪をひくんじゃないかって・・・納屋で焚き火を
        したのよ・・・。その為に納屋が火事になって、戻って驚
        いた父さんと母さんは・・・馬を助ける為に中へ飛び込
        んで、その小屋ごと・・・。ね!!私こそ裁かれるべき
        者でしょ・・・」
  アンドレ「何故・・・そんな風に平然としていられるんだ・・・」
  ミリオッタ「これでも・・・こんな風に平気で人に話せるようになっ
        たのは、つい最近のこと・・・。偉そうに言ったけど、やっ
        ぱり立ち直るまで・・・何年もかかったもの・・・。けど私
        には姉さんがいた・・・。あなたにもエリザベスがいるよ
        うに・・・。それにいつも私の回りには、優しく見守って
        くれたこの村の人達が大勢いたから・・・。あなたが立
        ち直る為に、もっと他に誰かの手を必要とするなら、私
        が力を貸すわ!!」
  アンドレ「・・・何故・・・ただの通りすがりの私の為に・・・?」
  ミリオッタ「・・・何故かしら・・・多分・・・あなたの目を見ていると
        ・・・昔の私を思い出すから・・・。辛いこと悲しいことを
        全部忘れるのは無理かも知れない・・・。償いの気持
        ちを持ち続けることも大切だわ・・・。けど・・・生きて行
        く為には、前を向いて歩かないと・・・!!」

         ミリオッタ、思わずアンドレの手を取り、
         力強く歌う。
         呆然とミリオッタを見詰めるアンドレ。

         “夢を見よう
         どんな小さなことでも
         夢を見つめよう
         たとえちっぽけで
         人から見れば取るに足らない
         そんな夢でも
         夢を思い明日を夢見て
    
         歩いてみよう
         過去を見ないで
         昨日流した涙のことも
         きっと明日は乾いていると
         信じて今日は微笑もう

         心を開いて
         自分を悪く言わないで
         正しいと思う真実を
         心の瞳を見開いて
         今まで自分が拘った
         どんな些細な思いでも
         悲しみに打ち拉がれた
         自分を捨てよう
         未来を見れば
         昨日の心の小ささに
         閉じ篭った自分の殻が見える筈
         きっと気付いて今日は微笑もう”

         カーテン閉まる。
       
                






     ――――― “アンドレ”3へつづく ―――――















2013年5月15日水曜日

“アンドレ” ―全10場―


   〈 主な登場人物 〉

  
   アンドレ  ・・・  旅を続けている青年。

   ミリオッタ  ・・・  村に住む娘。

   ジャクリーヌ  ・・・  ミリオッタの姉。

   エリザベス  ・・・  アンドレの妹。

   アーサー  ・・・  ジャクリーヌの婚約者。

   エドワード  ・・・  村の医師。

   グレミン  ・・・  村の牧師。

   ジョセフ  ・・・  新聞記者。

   クリスト  ・・・  ジョセフの後輩記者。




 ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪


    ――――― 第 1 場 ―――――
  
         鐘の音が鳴り響く中、幕が上がる。
         豪華な音楽が流れ、ライト・オン。
         すると、舞台上は草花が咲き乱れる
         小高い丘の風景。
         ポーズを取った3組の男女、楽しそう
         に歌い踊る。

         “明るい陽差しのように
         心も何故だか騒ぐ
         新緑の香り辺を包み
         体が何故だか踊る
         爽やかな風が頬を過ぎ
         その心地良さに身を委ねる

         変わりゆく季節に時の
         流れを感じて逸るように・・・
         春の息吹を感じながら
         若芽の間を縫う様に
         軽やかにステップ踏んで
         爽やかな風が頬を過ぎ
         その心地良さに身を委ねる”

         踊っていた男女、掛け声と共にポーズを
         取り、上手下手へ其々去る。
         優しい音楽流れ、上手奥よりどこか冷めた
         目をした、長身の一人の青年登場。
         (青年の名前はアンドレ。)
         アンドレ、歌いながらゆっくり中央前方へ。

         “この広い大地に生かされる限り
         決して我が心に安らぎが
         訪れることはないと
         ただ目覚めれば
         再び蘇る悪夢に
         この身を呪い生かされている限り
         決して幸せに満ちた平穏が
         訪れることはないと
         ただ繰り返す
         永遠の躊躇いに翻弄され
         明日への希望すら地の果てへと
         追いやる運命に抵抗さえ
         思いつかずに
         ただ流される・・・
         陽が昇り続ける限り
         明日と言う日が来る限り
         この命果てるその時まで
         ただ・・・生きるだけ・・・”

         遥か彼方に思いを馳せるように、
         遠くを見遣るアンドレ。
         フェード・アウト。(カーテン閉まる。)

    ――――― 第 2 場 ―――――

         ライト・アウトのまま、人々の暗い歌声が
         どこからともなく木霊するように聞こえて
         来る。段々と大きく。

         “おまえは死神だ!!
         おまえは死神だ!!
         おまえと関わった人間は
         たとえ血を分けた肉親さえ
         死の淵へと追いやる!!”

         人々の歌声、再び木霊するように遠ざかる。
         歌声に重なるように、嵐の為の風雨が
         吹き荒れる音が段々大きくなる。
         上手スポットにアンドレと、アンドレの妹
         エリザベス、風雨を避けるようにコートを
         深く被り、肩を寄せ合って小走りに下手へ
         走り去る。
         風雨の音、幾分小さく。
         フェード・インする。と、舞台はジャクリーヌ、
         ミリオッタ姉妹の屋敷。(居間。)
         中央、置かれたソファーにジャクリーヌ、腰
         を下ろしてレース編みに指を動かしている。
         ジャクリーヌの後方窓辺にミリオッタ、外の
         風雨を心配そうに見つめている。

  ミリオッタ「凄い嵐ね・・・」
  ジャクリーヌ「(編み物の手を休めて。)ええ・・・この時期にして
          は珍しいわね・・・。(ミリオッタの方を見る。)何か私
          には、自然が目に見えないものに感応して、唸り声
          を上げているように感じるわ・・・」
  ミリオッタ「(ジャクリーヌを見て微笑む。)何、変なこと言ってる
        の?結婚前って言うのはナーバスになるのかしら・・・
        (笑う。)それよりどう?来週結婚式をあげる花嫁さん
        の気分は。」
  ジャクリーヌ「(大きく溜め息を吐いて。)何だかまだ実感がなく
          て・・・」
  ミリオッタ「(ジャクリーヌの側へ来て、膝を付きジャクリーヌの手
        を取る。)・・・幸せになってね、お姉さん・・・」

         優しい音楽流れ、話し掛けるように
         ミリオッタ歌う。

         “いつも・・・いつもありがとう
         私の側で見守ってくれて
         とてもとても感謝してる
         私のことを愛してくれて”

  ミリオッタ「父さんや母さんが亡くなってから、ずっと私の為に働
        いてきてくれたんだもの、お姉さんには一番幸せにな
        ってもらいたいの。」
  ジャクリーヌ「ミリオッタ・・・ありがとう・・・。でも私がいなくなった
          ら・・・」
  ミリオッタ「大丈夫よ!!(立ち上がる。)私のことなら心配しな
        くたって!!こう見えても柔軟性があるんだから!!
        一人になったら一人になったで、何とかやっていける
        わ!!」
  ジャクリーヌ「(微笑む。)そうだったわね。(立ち上がる。)あなた
          は昔から、私なんかよりずっと行動力もあって、私
          の方がいつもどれだけあなたに助けられたか・・・」
  ミリオッタ「そうよ!お姉さんの方こそ、私がいなくなって大丈夫
        ?(笑う。)それより、アーサーは今日は来れないわね
        。来週になったら、もう嫌でも毎日顔を付き合わせて
        生活するって言うのに、毎日必ず仕事の帰りに、お姉
        さんの顔を見に寄るものね。」
  ジャクリーヌ「(窓の方を見て。)雨・・・益々酷くなるわね・・・」

         その時、風の音に紛れるように、扉を
         叩く音が聞こえる。

  ミリオッタ「誰か来た・・・」
  ジャクリーヌ「風の音じゃないの?」

         再び、微かに扉を叩く音。

  ミリオッタ「ほら!(扉の方へ駆け寄る。)」

         ミリオッタ、慌てて扉を開けると、雨具を
         頭からすっぽり被った一人の青年、風に
         押されるように入って来る。
         ミリオッタ、青年入ると扉を急いで閉める。

  ミリオッタ「・・・アーサー・・・?」
  アーサー「(雨具のフードを取って。)こんばんは。」
  ジャクリーヌ「アーサー!!(アーサーに駆け寄る。)どうしたの
          !?こんな嵐の日に!!」
  
         ミリオッタ、微笑ましく2人を見ながら、
         横のタンスの引き出しの中からタオル
         を出し、アーサーの方へ。

  アーサー「毎日、君の顔を見ないと安心して眠れないからね。」
  ミリオッタ「はい。(アーサーへタオルを差し出す。)」
  アーサー「(タオルを受け取って。)ありがとう、ミリオッタ。」

         ミリオッタ、2人から離れ、ソファーへ腰を
         下ろし、テーブルの上に置いてあった本を
         取って、読む。

  ジャクリーヌ「だけど・・・」
  アーサー「どうした?それとも君は僕に会いたくなかった?(微
        笑む。)」
  ジャクリーヌ「そんなこと!!勿論、会えて嬉しいわ!!」
  アーサー「だったらよかった。それより今日は、午後から全く酷
        い風雨だったよ。配達の荷物が雨に濡れやしないか
        と心配する前に、飛ばされやしないかとヒヤヒヤもの
        さ。(笑う。)」
  ジャクリーヌ「(心配そうに。)大丈夫だったの?」
  アーサー「勿論!力だけは人一倍あるものでね。さぁて、ジャク
        リーヌの顔も見れたことだし、雨がこれ以上酷くならな
        いうちに帰るとするかな。」
  ジャクリーヌ「ええ。」
  アーサー「そうだ、ミリオッタ!(ミリオッタの方を向いて。)君は
        本当に僕たちと一緒に暮らさないのかい?(雨具のフ
        ードを被りながら。)」
  ミリオッタ「ええ!」
  アーサー「僕たちに気を遣うことはいらないんだよ。」
  ミリオッタ「ご心配なく!私のことなら誰に気を遣ってる訳でもな
        くて、本当に一人で大丈夫なんだから!アーサーの方
        こそ私に気を遣わないで、ジャクリーヌとの新婚生活
        を満喫して頂戴!」
  アーサー「OK。まぁ、目と鼻の先にいるんだ、何かあったらいつ
        でも飛んで来るから!」
  ミリオッタ「ありがとう、お兄さん!」
  アーサー「(微笑んで。)ジャクリーヌの大切な妹は、僕にとって
        も大切な妹だからね。じゃあジャクリーヌ、僕が帰った
        後はちゃんと戸締りするんだよ。おやすみ!(ジャクリ
        ーヌの頬にキスする。)」
  ジャクリーヌ「おやすみなさい。」
  アーサー「さよなら、ミリオッタ!(手を上げる。)」
  ミリオッタ「さよなら!(手を振る。)」

         アーサー、扉を開けて素早く出て行く。
         ジャクリーヌ、扉を閉めて、窓から外を
         見る。

  ミリオッタ「(ジャクリーヌの側へ。)いい人ね、私のお兄さんにな
        る人は。」
  ジャクリーヌ「(振り返って。)アーサーもああ言ってるんだし、私
          たちと一緒に暮らしたって構わないのよ、ミリオッタ
          。」
  ミリオッタ「もう、その話しは無し!私は父さんや母さんがたった
        一つ・・・残してくれた、この家を守っていくから・・・。今
        までお姉さんが守ってくれたこの家を、今度は私が・・・
        守っていくから・・・。」
  ジャクリーヌ「・・・ミリオッタ・・・分かった・・・もう言わないわ。」

         ジャクリーヌ、ミリオッタ、ソファーの方へ。
         その時、扉をノックする音が聞こえる。
         2人、扉の方を向く。

  ミリオッタ「アーサーかしら?(扉の方へ行く。)」

         ミリオッタ、扉を開けると、黒いコートに身を
         包み、肩を寄せ合うようにアンドレとエリザベス
         入って来る。

  ミリオッタ「(戸惑ったように。)あの・・・」
  アンドレ「突然、すまない・・・」
  ミリオッタ「(2人の様子を見て。)こんなに濡れてちゃ、風邪をひ
        くわ!もっと中へどうぞ!お姉さん、暖炉に火を入れ
        て!」
  ジャクリーヌ「ええ。(暖炉の方へ行き、薪を焼べる。)」

         ミリオッタ、エリザベスの肩を抱いてソファーの
         方へ。アンドレ、2人に続く。

  ミリオッタ「さぁ、コートを脱いで!(エリザベスのコートを脱がせ、
        ソファーへ腰を下ろさせる。アンドレの方を向いて。)
        あなたも!」

         ミリオッタ、タンスの引き出しよりタオルを
         出して、アンドレに渡す。

  アンドレ「(タオルを受け取り。)ありがとう・・・。エリザベス・・・(
       タオルを一枚、エリザベスへ渡す。)」
  
         ミリオッタ、テーブルの上のポットからカップへ
         飲み物を注ぎ、2人へ其々手渡す。

  ジャクリーヌ「一体どうなさったんです?こんな嵐の中を・・・」
  ミリオッタ「見かけない・・・顔ね・・・旅の方?」
  アンドレ「(頷く。)・・・私はアンドレ・・・こっちは妹のエリザベス
       ・・・。今日中にもう一つ向こうの村まで行って、宿を取
       るつもりだったのですが、この嵐で思うように進むこと
       が出来なくて・・・。雨具も持たず、途方に暮れていたと
       ころ、ここの灯りが見えたので・・・思わず扉を叩いてし
       まいました・・・。ご迷惑でしょうが、妹の為に今夜一晩
       だけ、ここで風雨を凌がせて頂きたい・・・。頼みます・・・
       。(頭を下げる。)」
  ミリオッタ「そう言うことでしたら・・・ね、お姉さん。」
  ジャクリーヌ「ええ・・・。宿屋のないこの村に、こんな嵐の中、旅
          のお方を放り出すようなことは出来ませんわ。どう
          ぞ粗末な家ですけれど、我が家でくつろいで行って
          下さい。」
  アンドレ「ありがとう・・・」
  ミリオッタ「丁度、一部屋空いてるし・・・」
  ジャクリーヌ「ええ。」
  アンドレ「いや・・・もうここで・・・」
  ミリオッタ「あなたはソファーで良くても、妹さんが駄目よ。」
  ジャクリーヌ「そうね。どうせ使ってない部屋ですし・・・どうぞ・・・
          (手で奥を示す。)」
  アンドレ「・・・(少し躊躇ったような面持ちをするが、頷いて。)・・・ 
       じゃあ・・・(エリザベスの方を向いて。)エリザベス・・・」

         ジャクリーヌ、アンドレとエリザベスを引率
         するように、先に奥へ入る。
         アンドレ、エリザベス、ジャクリーヌに続く。

  ミリオッタ「後でお食事をお持ちしますわ!!」

         ミリオッタ、何故だか分からないが、心が
         時めくのを感じたように頬を紅潮させ、
         瞳を輝かせて2人が入るまで、その方を
         見ている。
         入るのを見計らって正面。嬉しそうに、何
         か期待に胸膨らませるように遠くを見遣り、
         音楽でカーテン閉まる。
         








       ――――― “アンドレ”2へつづく ―――――