〈 主な登場人物 〉
ドン ・・・ 泥棒。
マックス ・・・ 少年。
デン ・・・ ドンの弟分。
サンタ ・・・ サンタクロース。占い師をしている。
トナ ・・・ トナカイ。
シスター ・・・ 孤児院の先生。
ラリー ・・・ 孤児院に住む。
その他。
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クリスマスソングが流れ、幕が上がる。
(街の中。)
――――― 第 1 場 ―――――
雪がチラチラ舞う中、楽しそうな人々が
行き交う。
そこへ一人のサンタクロースの格好を
した男(ドン。)、上手より大きな袋を
抱え、重そうに持ち登場。歌う。
“メリーメリークリスマス
街中浮かれたハッピークリスマス
誰もが心踊る
明るく楽しいクリスマス
街中煌くイルミネーション
色とりどりの眩い灯りに
目も開けられない”
ドン「(袋を下へ下ろし、中を覗き込む。)へっへっへ・・・この時
期は、どこの家も全く無用心ときたもんだ。皆、浮かれて、
外から来る者は誰しもサンタクロースだと思い込んでいや
がる。お陰で俺たちみたいな盗みを生業としてるような者
にとっちゃ、とんと都合がいいってことさ。」
“ハッピーハッピークリスマス
一年で一番浮かれた時
誰も人のことなんて
構やしないぜメリークリスマス!”
そこへ上手後方より、一人の少年
(マックス。)登場。
ドン、袋の中から宝石を取り出し、
嬉しそうに眺めている。
マックス「(ドンを認める。)サンタさん!!サンタさんだ!!(ド
ンに駆け寄る。)サンタさん!!あなたサンタさんでしょ
!?やっと見つけた!!」
ドン「お・・・(慌てて宝石を袋に入れる。)え・・・?(マックスを認
め。)なんだ、餓鬼か・・・」
マックス「ねぇ、サンタさん!!今、皆の家を回って、プレゼント
を配ってるんでしょ!?僕ンところには、いつになったら
来てくれるの!?僕ずっと待って・・・」
ドン「(面倒臭そうに。)うるせぇなぁ・・・」
マックス「僕、サンタさんが中々来てくれないから、体から抜け
出して、こんなとこまで捜しに来っちゃったよ!!」
ドン「え・・・体?ばぁか!ベッドから抜け出した・・・だろ!それよ
り・・・(回りを見回し。)ホントだ・・・おまえこんな時間にベッド
から抜け出して、夜の街をウロウロするなんて、とんだ不良
子どもだな。」
マックス「ねぇ!僕、どうしてもサンタさんにお願いしたいことが
あるんだ!!早く、僕のところへ来てよ!!」
ドン「ああ・・・はいはい、分かった分かった・・・分かったから、さ
っさと自分の家へ帰って、ベッドへ入りな!いいか?サンタ
クロースってのは、クリスマスイブの夜にやって来るんだ!
それに子どもが、寝静まってからそっと来るんだからな。お
まえみたいに目、煌煌と光らせて、こんなとこウロウロして
る餓鬼のとこには来てくんねぇぞ。」
マックス「そんなこと言わないで、早く僕のところへ来てよ!僕
時間が・・・」
ドン「時間・・・?時間って何だよ。可笑しな餓鬼だな・・・。クリス
マスはまだ明後日だぞ。」
マックス「僕、大切なお願いがあるんだ・・・!!」
ドン「お願いお願いって・・・そんなものは父ちゃん、母ちゃんに
言えよ・・・。」
マックス「だっておじさん、サンタさんなんでしょ?サンタさんは
1年間いい子にしてた子どもに、何か一つプレゼントを
くれるんでしょ?」
ドン「(溜め息を吐いて。)それはだなぁ・・・大人が勝手に・・・」
マックス「だから、僕、早くサンタさんが来てくれないかなぁ・・・
って、ずっと待って・・・」
ドン「はいはい・・・じゃあその願いとやらを、さっさと言って、と
っとと帰れよ・・・」
マックス「本当!?」
ドン「ああ・・・」
マックス「本当に?」
ドン「ああ、だから早く言えよ・・・」
マックス「僕・・・僕ね・・・!!(何かに気付いたように、上手方を
見て。)あ・・・誰か来る・・・」
ドン「え・・・?(回りを見回す。)
ドン、スポットに残し、マックス消える。
ドン「おい・・・!?(回りを捜すように。)あれ・・・?」
その時上手より、サンタクロースの格好を
したデン、走りながら息を切らせ登場。
デン「兄貴ー!!兄貴ー!!いたいた・・・一体どこ行ったかと
思ったじゃない・・・」
ドン「あ・・・?ああ、デンか・・・」
デン「どうしたんだよ、そんな気の抜けた顔してさ・・・」
ドン「え・・・あ・・・いや・・・別に・・・。それより、今そっちの方へ、
少年が走って行かなかったか・・・?」
デン「少年・・・?」
ドン「ああ・・・」
デン「さぁ・・・オイラ、一本径を走って来たんだけど、人っこ一人
・・・犬コロにだって出会わなかったぜ。」
ドン「・・・そっ・・・か・・・」
デン「何?その少年がどうかしたのかい?」
ドン「・・・いや・・・」
デン「それより兄貴!今の時期は稼ぎ時なんだから、こんなとこ
で呆けてないで、早いとこ次の家に・・・プレゼントを届けに
行こうよ!」
音楽流れ、デン歌う。
“ハッピーハッピークリスマス!
街中浮かれたメリークリスマス!”
ドン「・・・そうだな!!」
ドン、歌う。
“夜はこれから
サンタの出番はまだまだだ”
2人、歌う。
“皆が寝静まり
辺りはひっそり闇の中
待ってましたとサンタが飛び出す
待ちわびる子ども達に届け物
袋一杯のプレゼント
だけど・・・
闇の中でこっそりと・・・
動き回るは働き者のサンタさん
ホントの仕事は・・・
大泥棒!”
ドン、デン、笑い合う。
暗転。(カーテン閉まる。)
――――― 第 2 場 ―――――
カーテン前。
音楽流れ下手より、何かを探しているように
マックス登場。歌う。
“どこにあるの・・・
僕の探し物・・・
一体いつになれば
見つかるの・・・”
そこへ上手より、仲良さそうな親子(父、母
子ども“マリィ”。)登場。話しながら下手方へ。
(マックス、淋しそうな面持ちで、その様子を
見詰めている。)
マリィ「ねぇ、パパ、ママ!今年はサンタさん、どんなプレゼント
を持って来てくれるかしら!」
母「そうねぇ・・・マリィはいい子にしてたから、きっとどんなプレ
ゼントでも持って来てくれるんじゃないかしら・・・。」
父「そうだな・・・。マリィは何が一番欲しいんだったかな?きっと
それがサンタさんのプレゼントだと思うな。」
マリィ「本当?クリスマスイブは早くベッドに入るわ、私!」
父「それはいいアイデアだ、マリィ。」
マリィ「フフフ・・・(笑う。)ママ!クリスマスには、こんな大きなケ
ーキを焼いてね!」
母「ええ、分かってるわ。それにとびきりのご馳走も、用意しまし
ょうね。」
マリィ「わあーっ!!パパ!ママ!早くお家へ帰りましょう!!
(下手方へ走り出す。)」
父「こら、そんなに走ると危ないぞ!」
母「マリィ!待って頂戴!」
3人、笑い合いながら下手へ去る。
マックス、歌う。
“僕には来ないのサンタさん・・・
どこにいるの待っているのに
こんなに待ちわびて
昼も夜もただひたすら待って・・・
早く来てお願いだサンタさん
僕にはどうしても・・・
見つけて欲しいものがあるんだから・・・”
マックス、上手前方(舞台縁。)へ、腰を
下ろす。
そこへ下手より、ドン、デン、重そうに袋
を抱え、登場。
ドン「楽勝、楽勝!(笑う。)」
デン「本当だね、兄貴!(笑う。)見てくれよ、この袋!!この宝
の山を売り捌けば、一体いくらになるんだろう・・・!」
ドン「ああ!」
ドン、デン、上手方へ行きかける。
ドン、舞台縁に座るマックスを認める。
ドン「ん・・・?あ・・・あいつはさっきの餓鬼・・・」
デン「・・・ガキ・・・?」
ドン「ああ!なんか矢鱈とサンタのプレゼントを欲しがる、やや
こしい餓鬼なんだ!見つかると厄介だぞ!気付かれない
うちに・・・(抜き足差し足で、マックスの後ろを通り、ゆっくり
上手方へ。)」
デン「(マックスの方を見て。)・・・ガキなんてどこに・・・可笑しな
こと言うんだな、兄貴。(笑う。)さぁ、お次はあそこに見える
豪邸だ!!(上手方を指差し、ドンのことは気にせず、上
手へ走り去る。)」
ドン「あ・・・おい!!デン!!待て・・・待てよ・・・」
マックス、振り返りドンを認める。
ドン「あ・・・しまった・・・」
マックス「サンタさん!!やっと会えた!!(嬉しそうに立ち上
がり、ドンに抱き付く。)」
ドン「は・・・離せよ!!離せってば、餓鬼!!畜生・・・!!なん
で俺なんだよ!!離せ・・・」
マックス「サンタさん!!僕、ずっと待ってるんだよ!!早く来て
よ!!」
ドン「あああ、もう煩い餓鬼だなぁ・・・。来て来てって、おまえン
家、一体どこなんだよ。そんな風に闇雲に言われたって、
サンタって言うのは順番通りに皆の家を平等に渡り歩いて
んだ!おまえン家も順番が来りゃあ、行ってやるさ!」
マックス「それじゃあ駄目なんだ!!僕には時間がないから・・・
」
ドン「それそれ、その時間ってのもだぜ?大体サンタのプレゼン
トってのは、クリスマスの朝に届くもんなんだ。こんなクリス
マスイブイブに、誰よりも真っ先にプレゼントを欲しがるな
んざ、それが“いい子”の取る行動か?サンタはいい子の
家にしか行かねぇんだぜ!(自分で自分の言ったことに感
心するように。)うん・・・我ながらいい説明だ・・・(笑う。)」
マックス「僕・・・僕ね、“心の種”が欲しいんだ!」
ドン「・・・え・・・?“心の種”・・・?なんだ、そりゃ。そんなの聞い
たことが・・・」
マックス「僕、うっかり“心の種”をなくしちゃって・・・それがない
と僕!!」
ドン「種なんか、そこら辺の花屋に行きゃあ、いくらでも売ってる
だろ?」
マックス「そんな種じゃないんだ!!僕の心の種でなきゃ、僕・・・
!!」
ドン「(溜め息を吐く。)はいはい・・・分かった分かった。おまえの
希望のプレゼントは、このサンタ・・・然と聞き受けた!!」
マックス「本当!?」
ドン「ああ、だからさっさと家へ帰って、ベッドへ入るんだ!!」
マックス「本当の本当だね、サンタさん!!」
ドン「ああ・・・」
マックス「僕、待ってるからね!!(消えるように、カーテン後ろ
へ去る。)」
ドン「(溜め息を吐く。)・・・はいはい・・・(マックスがいないことに
気付いて。)・・・あれ・・・?おい・・・少年・・・?(回りを捜す
ように。首を傾げて。)・・・心の・・・種・・・って・・・」
暗転。(カーテン開く。)
――――― 第 3 場 ―――――
占いの家。
中央テーブルに占い師(サンタ。)、大きな
虫眼鏡を覗き込み、前に座る夫婦をマジマジ
と見ている。
サンタ「ふむふむ・・・それであんた方は、何故こんな状況に陥っ
てしまったのか・・・それが知りたいと・・・?」
夫「はい・・・」
妻「私達はどうもここのところ、ついていなくて・・・」
夫「仕事は上手くいかず・・・母は病に倒れ、息子は学校にも行
かずブラブラと・・・一体、何が原因でこんな良くないことが続
くのか・・・一度、街で評判の、よく当たると噂される占い師さ
んに、見立てをして頂こうと・・・」
サンタ「ふむ・・・成程・・・分かりました・・・。それでは見て差し上
げましょう。その前に、先ず見立て代のご相談を・・・」
夫「見立て代・・・そ・・・それはもう・・・いくらだって、街で評判の
占い師さんだ・・・あなた様の言い値で構やしませんよ。」
サンタ「いや・・・うちの支払いは金ではない・・・」
――――― “ドンのハッピーサンタクロース”
2へつづく ―――――
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