〈 主な登場人物 〉
ドン ・・・ 2人組泥棒の兄貴分。
デン ・・・ 2人組泥棒の弟分。
グン ・・・ 少年。
ポー ・・・ グンの友達。
ルルル ・・・ 洋館の住人。
ラララ ・・・ ルルルの双子の妹。
マーサ ・・・ ルルルとラララ付きの召使。
その他
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――――― 第 1 場 ―――――
静かな音楽流れ、幕が開く。
舞台中央後方に、怪しげな風貌の大きな
屋敷が聳え立つ。
(カラスの鳴き声、時折、冷たい風が吹き抜ける。)
そこへ上手より、黒スーツに身を包んだ
2人組の男(ドン、デン。)登場。
デン「あ・・・兄貴・・・こんな恐ろし気な屋敷止めて・・・とっとと帰
りましょうよ・・・」
ドン「馬鹿!何、ビクビクしてんだよ!町で噂話を聞いただろ!
?山の麓に建つ洋館のこと・・・」
ドン、歌う。
“山の麓に淋し気に
建つは立派で素晴らしい
広大な敷地に目を見張る
大きな大きなお屋敷さ
絢爛豪華な装飾品
見れば誰もが歓待の
声を上げるに違いない・・・
昔々の貴族様
持てる限りの贅を尽くし
建てた自慢のお屋敷さ”
デン「知ってるよ・・・。オイラだって兄貴と一緒に聞いてたんだ
から・・・」
ドン「おお、そうか!」
デン「でもその歌には続きがあるだろ!!」
デン、歌う。
“だけどある時忽然と
姿を消した貴族様・・・”
ドン、歌う。
“後に残るは莫大な
金銀財宝お宝さ!”
2人、歌う。
“盗みに入ったお屋敷は
この世のものとは思えない・・・”
ドン“世にも稀な黄金の屋敷!!”
デン“世にも恐ろしい幽霊屋敷!!”
2人、驚いた面持ちで顔を見合わせる。
ドン「馬鹿!!何が幽霊屋敷だ!!」
デン「兄貴こそ、そこんとこ間違ってるよ!!黄金の屋敷の訳な
いじゃないか!!見てくれよ、この草ボウボウで荒れ果て
た土地に建つ・・・見るからに幽霊屋敷・・・。屹度、中に入
ればウジャウジャいるんだ・・・」
ドン「何がウジャウジャいるんだよ!!」
デン「しっ!!(小声で。)お化けだよ・・・お化けに決まってるだ
ろ・・・!!」
ドン「お化けって・・・おまえ、ホント怖がりだなぁ・・・。ウジャウジ
ャ転がってるのはお宝さ!!」
ドン、歌う。
“なんて怖がりなんだ
呆れた奴だ
この世に幽霊なんているもんか
この世にあるのは目に見える
現実に存在するもののみだ!”
デン「そんなことないよ・・・!!」
ドン、歌う。
“暗い闇に光るのは幽霊の足跡?”
デン「えー・・・」
ドン「(首を振る。)」
ドン、歌う。
“違うねそれは俺様に
富をもたらす輝きさ!”
デン「(安堵の溜め息を吐く。)」
ドン、歌う。
“頬を過ぎる冷たい風は魂の通り道?”
デン「う・・・嘘だ・・・」
ドン「(ニヤリと笑う。)」
ドン、歌う。
“それは宝の在り処へ導く道標
だから
見えないものにビクビクするな!
何かを感じるなんてそんなの嘘だ
怖いと思えば何でも怖い
この世で一番怖いもの
それはおまえの目の前にある!!”
デン「え・・・?」
ドン「この俺だ!!」
デン「えーっ・・・兄貴ー・・・!!」
ドン「お宝の山を、こんな目の前にして尻込みするな!!さぁ、
愚図愚図言ってないで行くぞ!!(下手へ走り去る。)」
デン「あ・・・兄貴ー!!(ドンを追い駆けようとして転ぶ。)あっ!
!いってぇ・・・なんだよ・・・(躓いた方を見ると、そこにボー
ルが落ちている。ボールを拾う。)なんだ・・・?ボール・・・?
誰だよ、こんなところにボールを置いとくなんて・・・。足取ら
れちゃったじゃないか・・・あ・・・!!そうだ!!兄貴ー!!
待ってくれよー!!(ボールを持ったまま、慌ててドンを追
い駆け、下手へ走り去る。)」
そこへ上手より、2人組の少年(グン、ポー。)
何かを探すように回りを見回しながら登場。
グン、歌う。
“どこにあるんだ僕の宝物
確かこの辺りに飛んできた
見つからないよ宝物”
グン「もっとよく探せよ!」
ポー「うん・・・」
グン「おっかしいなぁ・・・確かこっちに・・・」
ポー、後ろに佇む洋館に気付き、
グンの肩を叩く。
グン「なんだよ、ポー!!僕は今探し物を・・・(下を向いて何か
を探し続ける)」
ポー、歌う。
“あるのは古びた洋館の
カビた臭いの立ち込める
村で評判恐ろしい
誰もが恐れるお化け屋敷”
グン「お化け屋敷!?(顔を上げ、屋敷を認める。)ここは・・・」
ポー「村の人たちが噂してるお化け屋敷って・・・このお屋敷の
ことだよ・・・。屹度・・・ボールはこの中だよ・・・!!」
グン「えー・・・!!おい、ポー!!おまえが取りに行って来いよ
・・・!!ボールはこのお屋敷の中って、ポーが言ったんだ
から・・・!!」
ポー「そんな・・・嫌だよ・・・。グンが投げたんだ・・・グンが行けよ
・・・!」
グン「そんなこと言うなら、その投げたボールを受け取らなかっ
たポーが悪いんだ!!ポーが一人で探しに行って来いよ
!!」
ポー「グン!!」
グン「僕、ここで待っててやるから早く行って来いよ!!(ポーの
背中を押す。)」
ポー「えー・・・!!グン、一緒に行ってくれよ!!僕、一人でお
化け屋敷に入るなんて無理だ・・・!!」
グン「あのボールは、誕生日にパパが買ってくれた大切なボー
ルなんだぞ!!」
ポー「分かってるよ!!分かってるから2人で行こうよ!!その
方が屹度早く見つかるから・・・!!お願いだよ!!」
グン「・・・もう!!仕方ないなぁ・・・!!」
音楽流れ、2人歌う。(紗幕閉まる。)
“行こう足を忍ばせて・・・
屹度見つかる探し物
怖くはないさ2人なら
手をつないで一歩ずつ・・・
早く行こう 日のあるうちに
尻込みしないで勇気を出して
だけどやっぱり・・・恐ろしい・・・”
グン「嫌だなぁ・・・」
ポー「怖いよ・・・」
その時、カラスの鳴き声が聞こえる。
グン「わあっ!!(耳を塞ぐ。)」
ポー「グン!!(グンに抱き付く。)」
2人、手を取り合い、回りを見回しながら
恐る恐る下手へ去る。
暗転。
――――― 第 2 場 ――――― A
舞台、薄明るくなると、古びた洋館の中。
(紗幕開く。)
中央、後ろ向きに一つの大きな椅子。
そこへ上手よりドレス姿の一人の女性(ルルル。)
摺り足で慌てた様子で登場。
ルルル「ああ・・・本当にどこにいったのかしら・・・ああ・・・私の
大切な宝物・・・」
ルルル、歌う。
“どこにあるの私の探し物・・・
ずっとずっと探してる・・・
屹度ある筈 私の宝
心から大切にしてたわ
いつも肌身離さず
なのにある日 忽然と・・・
影も形もなくなった・・・”
ルルル「ああ・・・一体どこにあるの・・・?ああ・・・困ったわ・・・」
ラララの声「もう・・・いつもいつも煩いわね・・・」
中央椅子、回転して前方を向くと、ルルルと
瓜二つの双子の妹(ラララ。)座っている。
ラララ「お姉様、少しくらい落ち着いて座られたらどう?」
ルルル「ラララ!!そんなこと言ったって、あの水晶玉がないと、
私、いつまでもこの屋敷から離れられないわ!!」
ラララ「そうだったわね。けれど・・・水晶玉、水晶玉・・・お姉様の
頭の中は、いつだって水晶玉のことで一杯・・・。お陰で、
何故か私まで、いつまでもこの屋敷に縛られたまま・・・双
子だって言ったって、個人個人、別人の筈なのに・・・。私
はそろそろ向こうの国へ行きたいわ・・・」
ルルル「ごめんなさい・・・けど、あの水晶玉は私の宝物なの!!
魔法使いのお婆さんに貰った・・・ずっと大切にするって
約束したのよ!!」
舞台フェード・アウト。(紗幕閉まる。)
――――― 第 2 場 ――――― B
音楽流れ、紗幕前スポットに、子どもの
姿のルルルとラララ、浮かび上がる。
2人、座り込んで鼻歌を歌いながら、花の
冠作りに夢中になっている。
“綺麗ね お花の冠よ
色取り取り沢山の
花を摘みましょ 作りましょう”
ラララ「見て、ルルル!!出来たわ!!綺麗でしょう!?」
ルルル「私も出来た!!」
ラララ「私の方が綺麗だわ!!」
ルルル「お花はどれも同じに綺麗よ!だからどの冠も、同じくら
い綺麗なの!」
ラララ「そんなことないわ、私のが1番・・・(ふと、視線を落とし。)
キャーッ!!カエルよ、カエル!!醜いわね!!あっち
へ行きなさいよ!!」
ルルル「ラララ!そんな風に酷いこと言わないで!なんだか、こ
のカエルさん・・・少し元気がないみたい・・・(カエルを
手に取る。)」
ラララ「キャーッ!!ルルル!!そんなカエルによく平気で触る
ことが出来るわね!!マーサ!!マーサー!!ルルル
お姉様ったら、とっても不潔なことをしているわー!!マ
ーサー!!(下手方へ。)」
マーサの声「お嬢様ー!!どちらにお出でですかー?」
ラララ「マーサー!!」
ラララ、マーサの名を叫びながら
下手へ去る。
ルルル「(呆れたように下手方を見ているが、ハッとしてカエル
を見る。)どうしたのかしら・・・お腹が空いているの・・・
?」
カエル「・・・違う・・・水・・・」
ルルル「・・・お水・・・?分かったわ、喉が渇いているのね!・・・
え・・・?今・・・あなたが喋ったの・・・?」
カエル「・・・ああ・・・そうさ・・・」
ルルル「まぁ!!あなた喋れるのね、カエルさん!!」
カエル「早く・・・水を・・・水のある場所へ・・・」
ルルル「ああ、そうだったわね・・・!!えっと・・・(上手方に置い
てあったバケツを見て。)あ!!あれだわ!!(急いで
カエルを上手バケツの中へ入れる。)」
その時、バケツの中から白煙が立ち昇る。
ルルル「え・・・?」
“ボンッ”と爆発音と共に、大きな煙が
上がり、そこに老婆が現れる。
ルルル「キャーッ!!(耳を塞いでしゃがみ込む。)」
老婆「やれやれ・・・やっとこさ元の姿に戻れたわ・・・。お嬢ちゃ
ん、ありがとうよ・・・。」
ルルル「・・・え・・・?(恐る恐る、老婆を見る。)・・・お婆さん・・・
誰・・・?」
老婆「わしは、さっきのカエルじゃよ。」
ルルル「・・・カエルさん・・・?」
老婆「訳あって、ひき蛙の姿に変身させられてたのじゃ。危うく
人間の姿に戻る前に、干からびてしまうところじゃったわ。
(笑う。)」 ※
ルルル「・・・変身・・・って・・・」
老婆「さぁて、魔法の国の掟じゃからの、助けてもらった礼をせ
ねばならん。なんでもよいぞ、一つだけそなたの願いを叶
えてやろう・・・。」
ルルル「・・・え・・・?」
老婆「早よう言え・・・」
ルルル「・・・本当に・・・?」
老婆「ああ。」
ルルル「・・・それじゃあ・・・(少し考える。)無理かも知れないけ
れど・・・」
老婆「魔法使いに無理なことなど、ありゃせん。」
ルルル「・・・私が小さい頃になくなった・・・お父様とお母様と過
ごした楽しかった様子を・・・たった一度でいい・・・もう一
度覗いてみたい・・・」
老婆「そんなことでいいのか?」
ルルル「ええ!!勿論だわ!!本当に見ることが出来るなら
・・・!!」
老婆「お安い御用さ・・・(マントの懐の中から袋を取り出し、ル
ルルの方へ差し出す。)ほれ・・・」
ルルル「(恐々受け取る。)・・・何・・・?」
老婆「見てご覧・・・」
ルルル「(袋の中を見て、一つの水晶玉を取り出す。)・・・水晶
玉だわ・・・綺麗・・・」
老婆「その水晶玉の中を覗いて見るがいい・・・。」
ルルル「え・・・」
老婆「ほれ・・・」
ルルル「(水晶を覗き込む。)・・・あ・・・!!お父様とお母様だわ
!!それに小さい頃の私たちもいる!!とっても楽しそ
う・・・」
老婆「それは、おまえさんの望む過去の全てを見せてくれる、魔
法の水晶玉じゃ。おまえさんが見たいと思った時を思えば、
その水晶玉は、おまえさんにその懐かしい思い出をいつで
も・・・見せてくれるじゃろう。」
ルルル「本当にいつでも見れるの・・・?」
老婆「ああ、いつでも・・・何度でも・・・」
ルルル「・・・いつでも会える・・・ありがとう、お婆さん!!私、ず
っとこの水晶玉を大切にするわ!!」
老婆「但し・・・その水晶玉は、おまえさん一人で見て楽しむんじ
ゃぞ・・・。決して人に見せびらかせたり、自慢してはならん。
もしそんなことをすれば、その水晶玉は・・・見なくてもよか
ったものまで、見せようとするじゃろう・・・(笑う。)」
ルルル「・・・分かったわ・・・(頷く。)」
老婆「その水晶に映るものは、いいも悪いも過去に起こった真実
のみ・・・」
魔法使いの笑い声で、フェード・アウト。
――― “古びた洋館の隠れた住人・・・”2へつづく ―――
※ “ひき蛙”に変身・・・どこかで聞いたことがありませんか
・・・^^;?もう少しこのお婆さんが誰か、分かりやすく書
けばよかったのですが・・・実は、クリフくんとジークくんに
“人間をひき蛙に変える薬”を飲まされた、森の薬やさん
だったのでした~・・・へへへ・・・(^_^)v
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