――――― 第 4 場 ―――――
カーテン前。音楽流れる。
下手よりドン、急いで登場。続いてデン、
ドンを追い掛けるように登場。
ドン「急げ!!デン!!時間がないんだ!!」
デン「待ってよーっ!!兄貴ー!!そんなに急いで・・・時間が
ないって、何の時間だよ・・・!!(息を切らせて。)兄貴っ
てば・・・一体どうして急に行方不明の子どもを捜すだなん
て・・・こんな広い街の中から、どうやって捜すんだよ・・・」
ドン「煩い!グズグズ言ってないで、兎に角捜せばいいんだよ
!!」
ドン、デン、歌う。
ドン“助けを求められたのは
この俺だ
サンタクロースだと信じて
疑うこともしなかった”
デン“兄貴の話しはよく分からない
突然沢山の
ジンジャーキャンディと共に
戻ったかと思えば
街中子どもを捜し回る”
ドン“希望を叶えて夢を与える
それがサンタの努め!”
デン「兄貴・・・いつから本物のサンタクロースに目覚めたの・・・
?一人で入ったあの家の中で何があったんだよ。しかも何
故か・・・(恐々、下手方を見て、コソッと。)喋るトナカイも一
緒だなんて・・・」
ドン「さぁ!捜すぞ!!」
デン「・・・うん・・・」
ドン、デン、通りすがりの街の人達に、
何かを聞いて回るように。
その時、上手方の人達の間に、マックス
の顔を見つけたドン、慌ててその方へ
走り寄る。
ドン「あ!!おい!!待ってくれ!!どこにいるんだ、少年!?
おい!!おまえは一体どこにいるんだ!!」
その時、上手より走り登場した、一人の
子ども(ラリー)が、ドンにぶつかる。
ラリー「あっ!!(尻餅をついて泣く。)えーん・・・!!」
ドン「あ・・・悪い!!怪我しなかったか?(泣いているラリーを立
たせ、服を払う。)ほら、こいつをやるからもう泣くな・・・(ポ
ケットからジンジャーキャンディを一つ取り出し、ラリーへ差
し出す。)」
ラリー「(泣き止み、ドンを見る。)」
ドン「ほら・・・」
ラリー「(キャンディを受け取り、微笑む。)ありがとう、サンタさん
!!」
そこへ上手より、慌てた様子のシスター
登場。
シスター「ラリー!!(ラリーを認め。)ラリー!!」
ラリー「(振り返り、シスターを認める。)あ!先生!」
シスター「(ラリーに走り寄り。)急に走り出すから驚いたわ・・・(
ドンを認め。)あ・・・ラリーが何かしたんじゃありません
か?」
ドン「いや、別に・・・。じゃあな、坊主・・・(ラリーの頭に手を置き
、他の人の方へ行く。)」
ラリー「キャンディをありがとう、サンタさん!!(手を振る。)」
シスター「どうしたの、ラリー。血相を変えて走って行ったけれど
・・・」
ラリー「だって先生!沢山の人の中に、マックス兄ちゃんがいた
んだ!!」
シスター「え・・・?」
ラリー「あれは確かにマックス兄ちゃんだったよ!!本当さ!!
」
シスター「でもマックスがこんな街の中にいる筈は・・・」
ラリー「だって・・・!!」
シスター「・・・マックスは森へ入って行って、行方不明になった
のよ・・・」
ドン「(耳に入ったその言葉に顔色を変え、シスターを見る。)今
なんて・・・!?」
シスター「え・・・?」
ドン「今、何て言ったんだ、シスター!!」
シスター「あの・・・」
ドン「森で行方不明とか何とか・・・!!」
シスター「・・・ええ・・・」
ドン「教えてくれ、シスター!!その話しを詳しく!!」
シスター「(頷く。)・・・1週間程前・・・となり村のセント・ジョセフ
孤児院で暮らすマックスが、森で行方不明になったの
です・・・」
ドン「本当に!?」
シスター「はい・・・」
ラリー「マックス兄ちゃんは、クリスマスツリーが欲しいって言う
皆の為に、モミの木の変わりになる木を探して来るって言
って、森に入ったんだ・・・」
シスター「始めは村の人達が捜しに、森へ行ってくれたんですけ
れど・・・ここ数日の冬の訪れと共に・・・これ以上は危
険だからと、捜査を打ち切ってしまわれて・・・」
ラリー「もしかしたら、どこかで見かけた人がいるかも知れない
からって、こうやってホームの皆で兄ちゃんの似顔絵を書
いて、街の掲示板に貼ってもらいに来たんだ!!(似顔
絵の書いた紙を、ドンの方へ差し出す。)」
ドン「(ラリーから紙を受け取り、食い入るように見詰める。)」
シスター「この寒さです・・・もうきっとマックスは・・・」
ドン「・・・生きてる・・・」
シスター「え・・・?」
ドン「マックスは生きてる!!」
ラリー「・・・本当に!?」
ドン「ああ!!」
ラリー「先生!!サンタさんは嘘を吐かないよ!!やっぱりマッ
クス兄ちゃんは、どこかで助けを待っているんだ!!」
シスター「マックスが生きてるって・・・(涙声で。)」
ドン「ああ、間違いない!!マックスが俺に助けを求めてるんだ
!!マックスが行方不明になった、その森へ案内してくれ
!!この俺がマックスを助けに行く!!」
ラリー「サンタさん・・・!!」
デン「兄貴・・・」
音楽流れ、ドン、スポットに浮かび上がり
歌う。
“待ってろ今直ぐ
駆け付けるそれまで
消すな命の灯
どこかで待ってる
誰にも気付かれず
ただ一人サンタが来るのを
そんな奴がいることを
知らずにいた俺
曲がりなりにもサンタの真似を
してきたこの俺!”
ドン「さあ、急がねぇと、隣り村まで歩いて行くとなれば・・・こりゃ
あ時間がかかるぞ・・・!!でも・・・そんなこと言ってる場合
じゃねぇな!!」
ドン、下手方へ行こうとする。
その時、下手スポットにトナ、登場。
トナ「偽サンタさん!」
ドン「誰が偽だ!!・・・あ・・・おまえは・・・」
トナ「僕のソリに乗って行きなよ!」
ドン「え・・・?(下手奥を見て。)」
トナ「サンタクロースはトナカイの引くソリに乗って、子ども達の
元へ駆け付けるんだぜ!」
ドン「おまえ・・・」
トナ「このトナカイのトナ様が、隣り村まで連れてってあげるよ!
!」
ドン「・・・いいのか・・・?」
トナ「さぁ、早く!あなたのことを信じて待っている子がいるんだ
。」
ドン「ああ・・!!ありがとう・・・トナ!!」
暗転。
――――― 第 5 場 ―――――
カーテン開く。と舞台は森の様子。
(中央に2本の分かれ道がある。)
音楽流れ、中央奥よりマックス登場。
歌う。
“僕はここだよ・・・
ここにいる・・・
ずっと待っているんだ
サンタさん・・・
時間がないんだ
もう僕には・・・
サンタさんが来るまで
待てないよ・・・僕・・・”
マックス、再び森の奥へ去る。
一時置いて、下手よりドン、手に持った
紙を見ながら登場。
ドン「シスターに聞いた話しだと・・・そろそろ分かれ道が・・・(顔
を上げ2本道を認める。)あった!!ここだここ・・・よーし、
後はマックス坊やが右へ行ったか左へ行ったか・・・(左右
の道を交互に見て。)ん・・・ん・・・んーっ・・・?全く、分かん
ねぇ!!一体どっちへ行きゃあいいんだよ!!畜生・・・トナ
の野郎も“僕はここで待ってるからね”なーんて言いやがっ
て、温々、孤児院で子ども達と遊んでいるなんて・・・!“あ
りがとう”の言い損じゃねぇか、全く!!トナカイはサンタク
ロースを乗せて、子どもの待つ場所まで行くのが役目なん
じゃねぇのかよー!!(中央にあった立て看板に気付く。)
ん・・・?何々・・・(下手を見て。)こっちは恐ろしい道・・・(上
手を見て。)こっちは楽しい道・・・なぁんだ、ちゃーんと書い
てるじゃねぇか!左は恐ろしい道なんだろ?そんな道に行
くわきゃねぇよな!きっと、マックスは右の楽しい道っての
に行ったんだ!!(勢いで立て看板を叩く。と、看板倒れる
。)あ・・・れ・・・?(立て看板を拾って。)えっ・・・えーっ!?
何だよ、この看板!根元が腐って折れてたんじゃねぇか!
!それを誰かが適当に突っ込んでたんだな!!なんでぇ
!これじゃあ、役に立たないぜ、こんな看板!・・・って・・・
待てよ・・・と、言うことは・・・本当はどっち向いて立ってたか
分からないってことじゃねぇか!!(看板を裏表、逆にした
り戻したりして立てて見る。)えーっ・・・どっちが正解なんだ
よーっ!!あっ、そうか・・・(下手方を指差して。)こっちか
ら来たんだから、こっち側から見えるように・・・(看板を表向
きで立てる。)こうか!!よしっ!!俺って頭いい!!」
その時、上手方から声が聞こえる。
声「じゃあ、こっち側から来た人はどうなるの・・・?」
ドン「あ・・・そうか・・・(上手方を指差して。)こっちから来た奴ら
には看板は・・・こうでなくちゃ・・・(看板を裏向きに立てて
みる。)よし!これで見やすくなった・・・って違うだろ!!こ
れじゃあ、あっちから来た奴とこっちから来た奴・・・来る方
向が違えば、恐ろしい道と楽しい道も逆になるってことじゃ
ねぇか!!頭悪いぜ、全く!!」
声「あはははは・・・」
ドン「何、笑ってんだ、馬鹿!!・・・ん・・・?(回りを見回す。)え
・・・?だ・・・誰だ・・・?」
その時、上手方から雪の精、登場。
雪の精「こんにちは。」
ドン「あ・・・ああ・・・」
雪の精「あなた、さっきから面白いわね。(笑う。)」
ドン「う・・・うるせぇ・・・だ・・・誰だよ、おまえ・・・」
雪の精「私は雪の精!!」
ドン「雪の精・・・?」
雪の精「ええ。今、順番に村や街を回って雪を降らせ、ホワイト
クリスマスを迎える準備をしているの。」
ドン「・・・ホワイトクリスマスだと・・・?」
雪の精「ええ!雪を沢山降らせて、辺り一面の銀世界・・・なん
て素敵なクリスマスなの・・・!あなたもそう思うでしょ?
」
ドン「ま・・・待ってくれ!!」
雪の精「・・・え・・・?」
ドン「もう一日!!いや・・・もう半日でいい!!俺がマックスを
見つけ出すまで、雪を降らせないでくれ・・・!!」
雪の精「マックス・・・?」
ドン「でないとあいつ・・・こんな山ン中で雪に埋もれて、それで
なくても今にも命の灯が消えそうな時に、雪なんて降って
きやがったら、あいつ、真っ先に死んじまうだろ!?頼む・・・
頼むよ!!」
雪の精「駄目よ。こんな場所で道草を食ってる時間はないのよ
。早く雪を降らせて回らなきゃ、全部の街がホワイトクリ
スマスにならないわ。皆が楽しみに待っているって言う
のに。」
ドン「分かる!!分かるぜ、その気持ち!!だけどこちとら、一
人の少年の命がかかってるんだ!!だから頼む!!お願
いだ!!(土下座する。)」
音楽流れ、ドン、正座したまま歌う。
“お願いだ・・・
今まで人に頼みごと
したことなんて一度もねぇ・・・
そんな俺が一生に
一度きりのお願いを
頭を下げて頼むんだ・・・”
ドン「なぁ!!皆が幸せになるクリスマスなんじゃねぇのか!?
そんなクリスマスに一人の少年の命が消えていい訳ねぇだ
ろ!?」
雪の精「・・・そうねぇ・・・分かったわ。あなたの必死さに免じて
・・・じゃあ後、3時間だけ待ってあげてもいいわ。」
ドン「3時間・・・あ・・・ああ、それでも構わねぇ!!恩に着るぜ
!!3時間待ってくれて、ありがとうよ!!(行きかけて左
右に迷う。左右を見比べて。)えっと・・・」
雪の精「どっちへ行くのかしら・・・?そのマックスを捜しに・・・。」
ドン「あ・・・えっと・・・そうだな・・・こっちだ!!(左方を指差す。)
」
雪の精「本当に・・・?」
ドン「迷ってる暇はねぇ!!(行きかける。)」
雪の精「でも間違った道に行ってしまったら、3時間では戻って
これないわね。」
ドン「そんなこと言ったって・・・じゃあ、どうすれば・・・!!」
雪の精「右の道と左の道・・・少し進めば大人のあなたなら、簡
単に分かると思うけれど・・・明らかにどちらが正しい道
なのか・・・。」
ドン「あ・・・そうか!(左右の道、少しずつ進んでみる。)お!!
ホントだ!!左っ側はあの角を曲がると、明らかに道が険
しくなってるみてぇだ!!それに比べて右っ側は・・・よーし
!!分かったぞ!!危うく間違った方へ行くところだったぜ
!!マックス少年は右の楽しい道へ行ったんだ!!な!?
そうだろ?」
雪の精「・・・馬鹿ねぇ・・・」
ドン「ば・・・馬鹿だと!?何で俺が馬鹿なんだよ!!ちゃんと、
立て看板の向きを当てたんだぞ!!」
雪の精「もう・・・世話が焼けるわねぇ・・・。いいことを教えてあげ
ましょうか・・・?」
ドン「いいこと・・・?あ・・・ああ、教えてくれ、いいことなら何だっ
て!!」
――――― “ドンのハッピーサンタクロース”
4へつづく ―――――
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