2013年5月23日木曜日

“古びた洋館の隠れた住人・・・” ―全6場― 2

             ――――― 第 2 場 ――――― C

         舞台、フェード・インする。(紗幕開く。)と、
         Aの場面。

  ラララ「つまらない話し・・・」
  ルルル「ラララ・・・」
  ラララ「大体、あんな汚らしいカエルが、どうして魔法使いのお
      婆さんだった訳?その水晶玉の話しだって本当かどうか
      分からないわ。だって私に一度も見せてくれたことがない
      じゃない。そんなの屹度、全部ルルルの作り話よ!」
  ルルル「違うわ!!嘘なんかじゃない!!そう・・・マーサなら
       ・・・マーサに一度だけ、話したことがあるのよ!!マー
       サ・・・マーサ!!」

         そこへ上手より、摺り足で一人の召使
         (マーサ)、ゆっくり登場。

  マーサ「お2人共・・・こんなところにいらしたのですか・・・?さっ
       きからご夕食の用意が整いましたと申し上げております
       のに・・・」
  ラララ「マーサ・・・私たちは食事などいらないの。」
  マーサ「またそんなことを言って・・・私のことを困らさないで下さ
       いな・・・」
  ルルル「ねぇ、マーサ!!私の水晶玉をどこかで見なかった!
       ?」
  マーサ「水晶玉・・・?」
  ルルル「私、マーサに見せたことがあるでしょう?過去に起こっ
       た真実だけを見ることの出来る水晶玉!!」
  マーサ「またそのお話しですの・・・?」
  ルルル「懐かしいお父様やお母様と、幸せそうに暮らす私たち
       が見えたでしょう?」
  マーサ「ルルルお嬢様・・・そんな水晶玉のことなど、私は知りま
       せん・・・。」
  ルルル「マーサ・・・」
  マーサ「水晶玉など、お嬢様の病からくる、ただの幻覚なのです
       わ・・・。いい加減、水晶玉のことなどお忘れ下さい・・・。
       それに丸いものなら、ほら・・・(上手方のタンスを開く。
       と、ボールのような丸いものが、沢山転がり出る。)」
  ラララ「あははははは・・・。まぁ、お姉様・・・本当に沢山集めたこ
      と・・・」
  ルルル「これらは全部、私の水晶玉ではないわ!!私の水晶
       玉は・・・」
  マーサ「お医者様が仰ってましたでしょ?ルルルお嬢様は、水
       晶玉でなくても、丸いものを見るとなんでも欲しくなる、
       精神の病だと・・・。早く、あんな水晶玉のことは忘れて
       ・・・3人であちらの国へ参りましょう・・・。」
  ルルル「でも・・・!!」
  ラララ「水晶玉を通さなくても、あちらの国へ行けば、直接お父
      様やお母様に会えるじゃない。(笑う。)」
  マーサ「そうですよ・・・。さぁ、お2人共、我が儘ばかり申さない
       で、お夕食に致しましょう・・・。(摺り足で上手へ去る。)」
  ラララ「はい・・・」

         ラララ、摺り足でマーサについて上手へ去る。

  ルルル「でも・・・どうしてもあの水晶玉を見つけなければいけな
       いような気がするの・・・。何故だか分からないけれど・・・
       どうしても探し出して・・・」

         フェード・アウト。
         紗幕閉まる。

    ――――― 第 3 場 ――――― A

         紗幕前。音楽流れ下手より、抜き足差し足で
         ドン、デン登場。歌う。

       デン“不気味だやっぱり・・・
          怖いぞなんだか・・・”

       ドン“2人いるから大丈夫・・・”

       デン“2人いても不安だ少し・・・
          1歩踏み出し立ち止まる
          1歩踏み出し振り返る
          誰かが見ているその陰だ・・・”

       ドン“思い過ごしだ馬鹿野郎・・・”

         デン、ドンにベタベタ引っ付く。

  ドン「お・・・おい!!押すなよ・・・!!」
  デン「だって・・・」
  ドン「そんなに引っ付いたら、上手く歩けないだろ!!」

    ――――― 第 3 場 ――――― B

         紗幕開く。と、洋館の中。
         ドン、デン、恐々回りを見回す。
         その時、時計の音(“ボーン”)が響く。

  ドン、デン「わあーっ!!ごめんなさい!!ごめんなさい!!」

         ドン、デン、耳を塞いでしゃがみ込む。

  ドン「(恐る恐る目を開け、回りを見回す。)馬鹿・・・!!時計の
     音じゃないか!!」
  デン「(溜め息を吐いて。)・・・なんだ・・・」
  ドン「何驚いてんだよ!!」
  デン「あ・・・兄貴だって・・・」
  ドン「おまえがビクビクするから、俺まで伝染するんだろ!!」
  デン「そんなー・・・」
  ドン「もっと落ち着け!!」
  デン「う・・・うん・・・それより外で見るより、中はもっと不気味だ
     なぁ・・・」
  ドン「そんなことより見てみろ!!(壁に掛かる大きな肖像画を
     指し示す。)こんな大きな肖像画、今まで見たことあるか!
     ?このお屋敷に住んでた貴族って、相当金持ちだったんだ
     ぜ!!屹度探せば金銀財宝ザックザク・・・!!海賊船も
     真っ青ってな!!」
  デン「・・・海賊船が何・・・?」
  ドン「・・・あ・・・いや・・・兎に角こんな大きな屋敷・・・今まで入っ
     たどんな邸宅より一番だ!!早いとこ、そのお宝の山を拝
     見したいぜ。」
  
         デン、横のタンスを見ている。

  デン「(引き出しを開ける。)わぁーっ・・・!!」
  ドン「(デンの声に驚いたように。)どうした!!宝の山を見つけ
     たか!!」
  デン「いや・・・これみんな・・・丸いけどボール・・・?」
  ドン「ボール?そんなもんで遊んでないで、早く金目のもんを見
     つけろ!!」
  デン「(引き出しの中の物を取り出し見る。)・・・ビー玉・・・風船
     ・・・スーパーボールに丸い石・・・丸く形作った・・・なんだろ
     ・・・消しゴム・・・?兎に角この引き出しの中は、全部丸い
     ものだ・・・」
  ドン「丸いもんなんかいらないぞ!!」
  デン「う・・・うん・・・」

         デン、膝を付き、下を見たりしている。
         ドン、壁をトントン叩いている。と、壁に
         穴が開く。

  ドン「(驚いて。)やっべぇ・・・!!」
  デン「何?(頭を上げる。)」
  ドン「あ・・・いや何でもない・・・!!」
  デン「そう・・・(再び、下を探す。)」
  ドン「(穴を見て。)ありゃりゃ・・・(何かに気付いたように。)あれ
     ・・・?(穴に手を入れ、中を探るように。何かを取り出し。)
     何だこれ・・・(取り出したものを見て、何か思い付いたよう
     に。)おい、デン!」
  デン「何?(立ち上がる。)」
  ドン「ほら!!(手にしていたものを、デンの方へ投げる。)」
  デン「え?あっ・・・おっと・・・!!(ドンが投げたものを受け取る。
     )なんだよ、兄貴・・・(受け取ったものを見る。)」
  ドン「おまえの好きな丸いもんだ!(笑う。)」
  デン「えー・・・そんなこと・・・」
  ドン「多分、水晶玉だろ。ダイヤモンドとはいかないが、そいつ
     を使って占いの館かなんかやったらどうだ?(笑う。)」
  デン「えーっ・・・嫌だよ・・・!(暫く水晶玉を見て、ポケットに仕舞
     う。)」
  ドン「けど、なんだってこんな壁の裏っ側みたいなとこに、水晶玉
     が・・・?ひょっとして壁の中にお宝の山が、埋められてん
     のかなぁ・・・(穴を覗き、手を入れて探ってみる。)」

         その時、冷たい風が吹き抜ける。

  デン「寒・・・」
  ドン「おい、デン!!おまえ入って来る時、ちゃんと扉閉めたか!
     ?どっかから隙間風が入ってくるぜ!」
  デン「ろ・・・廊下の窓ガラスが割れてたし・・・古いお屋敷だから
     仕方が・・・(何かに気付いたように、上手方を注視する。)」
  ドン「扉が閉まってるか見てこいよ!!」
  デン「あ・・・兄貴・・・」
  ドン「何だよ!!早く閉めてこないと、寒いだろ!!」
  デン「あ・・・兄貴・・・そこ・・・そこに、だ・・・誰かいる・・・!!」
  ドン「誰かいるだって?何、可笑しなこと・・・(顔を上げて、上手
     方を注視する。)」

         冷風が静かに音を立て吹き抜け、
         上手より摺り足でルルル、ゆっくり
         登場。

  デン「あ・・・あ・・・お・・・おば・・・お化け・・・お化けだ・・・!!本
     物の・・・兄貴・・・お化けだ・・・(震える手で、ドンに縋るよう
     に。)」
  ドン「・・・お・・・おい・・・デン・・・あれは・・・幻覚だ・・・俺たち・・・
    同じ幻覚を見ているのさ・・・ハハハ・・・(作り笑いする。)で
    ・・・でなきゃ・・・あんな青白い顔の・・・病人だ・・・!!屹度
    この屋敷に住む・・・病気の娘・・・」
  デン「あ・・・兄貴・・・!!この屋敷は空き家なんだろ・・・?」
  
  ルルルの声(エコー)「誰・・・!?私の家に無断で侵入する不逞
                の輩は・・・」

  デン「あ・・・兄貴・・・お・・・俺・・・幻聴までしてきた・・・」
  ドン「ば・・・馬鹿・・・あれは、ほ・・・本物の・・・ゆう・・・幽霊だー
     っ!!」
  デン「えーっ!!兄貴・・・幽霊なんていないって言ったじゃない
     !!」

         2人、抱き合って震える。

  デン「ごめんなさい・・・!!ごめんなさい・・・!!」
  ドン「ゆ・・・許してくれ・・・!!無断で入って壁まで壊しちまって
     ・・・!!俺たちが悪かった!!だから許してくれー・・・!!
     」
  デン「えー・・・兄貴、壁を壊したって・・・!?」

         ルルル、2人の側へ。

  ルルル「私の家の中で、何をしているの?何か探し物・・・?」
  ドン「い・・・いえ・・・もう何もいりません!!だから命だけは・・・
     !!」
  デン「お宝なんてどうでもいいです・・・!!ね!!兄貴!!」
  ドン「あ・・・ああ・・・!!」
  デン「だから助けて下さい・・・!!」
  ルルル「お宝・・・?お宝と言うのは何・・・?」
  デン「え・・・?」
  ドン「・・・お宝をしらない・・・?こ・・・このお屋敷のどこかに眠る
    金銀財宝・・・」
  ルルル「・・・そう・・・あなたたちは、そのお宝を探しているのね
       ・・・?」
  ドン「・・・え・・・あ・・・ああ・・・まぁ・・・」
  デン「あ・・・兄貴・・・!!何、幽霊と会話してんだよ・・・!!」
  ドン「・・・そ・・・そうだった・・・お・・・おまえは幽霊・・・」
  ルルル「そうよ・・・。私は何百年も昔にこのお屋敷で亡くなった
       ・・・今はあなたたちの言うように・・・幽霊として存在する
       もの・・・」
  ドン、デン「キャーッ!!(抱き合う。)」
  ルルル「でも、そんなに驚かなくてもいいわ・・・。あなたたちが、
       何もしなければ、私はあなたたちを許してあげる・・・」
  ドン「はい!!はい!!」
  デン「何も致しません!!俺たちは本当に何も・・・!!ね!!
     兄貴!!」
  ドン「ああ!!だから見逃して下さい・・・見逃して・・・お化け様
     !!」
  ルルル「そうねぇ・・・じゃあ・・・私と取り引きしないこと・・・?」
  ドン「と・・・取り引き・・・?」
  ルルル「・・・ええ・・・私がその・・・金銀財宝の在り処を教えてあ
       げるわ・・・」
  デン「兄貴・・・ゆ・・・幽霊と取り引きって・・・」
  ドン「・・・けど・・・おまえ・・・お宝のことは・・・知らなかったんじゃ
     あ・・・」
  ルルル「馬鹿ね・・・私はこのお屋敷に、何百年も昔から住んで
       いるのよ・・・。金目のものがあるところくらい知ってるわ
       ・・・」
  ドン「ほ・・・本当か・・・?」
  ルルル「ええ・・・」
  ドン「・・・俺たちに、その在り処を教えてくれるのか・・・?」
  ルルル「いいわ・・・教えてあげても・・・その代わり・・・」
  ドン「・・・その代わり・・・?」
  ルルル「私も探しているものがあるの・・・」
  デン「探しているもの・・・」
  ルルル「人間の勘とやらを働かせて、その私の探し物を見つけ
       て頂戴・・・」
  ドン「えっ・・・」
  ルルル「どう?そうすれば、このお屋敷に眠るお宝は、全部あな
       たたちのもの・・・」

         ドン、デン、顔を見合わせる。
         音楽流れ、2人歌う。

         “どうする?信じる?
         こんな話し・・・
         幽霊の言うことなんて
         信じていいのか本当に・・・
         だけど欲しいお宝さ
         だから勇気絞ってやってきた
         どうする?信じる?
         嘘のような話しだけれど・・・
         信じてみよう・・・
         ちょっとだけ・・・!!”

         ドン、デン、顔を見合わせ頷く。










    ――― “古びた洋館の隠れた住人・・・”3へつづく ―――

   







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