2012年9月12日水曜日
“アンソニー” ―全16場―
〈主な登場人物〉
アンソニー ・・・ 吸血鬼ドラキュラ伯爵。本編の主人公。
リーザ ・・・ シャンドール家の前妻の娘。
エドワード ・・・ お供として、アンソニーに付いている。
ルイ ・・・ アンソニー、エドワードと一緒に旅している。
ミシェル ・・・ シャンドール家の後妻と主人の息子。
ジェラール ・・・ 吸血鬼達を、執拗に追う男。老医者。
ミハエル ・・・ ジェラールの助手。
エリザベート ・・・ 後妻の娘。長女。
その他
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――――― 第 1 場 ―――――
音楽で幕が上がる。と、木々が茂り、小鳥達の
囀り、木漏れ日溢れる、見るからに爽やかな
奥深い森の風景。
若い男女が左右より登場、楽し気に手を取り合
いながら、歌い踊る。
男女が左右へ去ると、中央より長髪のアンソニー
ゆっくり登場。森の中を楽しむように踊る。
その面影は、黒い髪に透き通るような白い肌を
持ち、何故か赤い唇だけが一際目を引く。
その容姿は俗世の者と思われないよう。
と、その時、数発の銃声が辺りに響き渡り、一瞬
顔を強張らせたアンソニー、誰のものとも分から
ない“当たったぞー!!”の叫び声を残して、森
の奥へと消える。
紗幕閉まる。
――――― 第 2 場 ―――――
紗幕前。
上手より、慌てた感じのミハエル、ルドルフ走り
登場。続いてジェラール、銃を片手に幾分落ち
着いて登場。
ミハエル「一体何処へ行ったんだ!?」
ルドルフ「確かに、弾が当りましたよね!!」
ミハエル「当たり前だ!!あれだけ血痕が残ってるんだ、可なり
の傷を負ってるに違いない!!」
ジェラール「あいつらを、普通の人間と同じように考えるんじゃな
いぞ。」
ミハエル「先生・・・」
ジェラール「多分、あのくらいの傷、明日になれば跡形もなく、治
っている筈だ。」
ルドルフ「(笑う。)そんな・・・」
ミハエル「じゃあ一体・・・?」
ジェラール「本当にあいつらを殺そうとするなら、銀の杭を、その
胸に深く・・・深く突き刺すしかない。」
ミハエル「・・・銀の杭を・・・?」
ジェラール「そして、その杭を突き刺すのは・・・この私だ!!」
ルドルフ「でも・・・何で先生はそんなに・・・」
ジェラール「あいつとは、100年来の因縁の間柄だ・・・。」
ルドルフ「100年って・・・俺がまだ生まれるずっと前から・・・(
ハッとして。)あれ・・・?先生だって生まれていない・・・
」
ミハエル「そんなに昔から?けど先生、さっき言ってた、普通の
人間と思うだなんて一体・・・」
その時、数羽の鳥の飛び立つ音が
響き渡る。
ルドルフ「(思わず身を屈めて。)わぁっ!!コウモリだ!!」
ジェラール「(顔を強張らせて、空を見上げる。)また捜し直しだ
・・・。今日は・・・満月だな・・・。さぁ、行くぞ!!」
ジェラール、下手へ去る。ミハエル、ルドルフ、
ジェラールに続く。
――――― 第 3 場 ―――――
楽し気な音楽が流れる中、紗幕開く。
舞台は屋敷の中。手に其々洋服を持った
シャンドール家の娘達。長女エリザベート、
次女で双子のステラ、クレナ姉妹、陽気に
歌い踊る。
“見て見て何て素敵な色かしら
見て見て何て可愛い仕上がりかしら
屹度みんなが目を奪われるわ
屹度みんなが私に注目する
誰よりも一番綺麗で
誰よりも一番素晴らしい
見て頂戴
今度のお茶会では私が主役”
ソファーに腰を下ろして、3人の歌を聞いて
いた、3人の兄クリス、立ち上がる。
クリス「(首を傾げて。)そんなに一番がいいのかね。」
エリザベート「お兄様には分からなくってよ!!」
クリス「しかし、こんな小さな村の中じゃ、一番だろうが二番だろ
うが、たいして変わりはないと思うがね。(笑う。)」
クレナ「(溜め息を吐いて。)これだから男って・・・」
エリザベート「(ドレスを胸に抱いて。)何時もみんなの目を惹く
私は、その内国中の知れるところとなって、ある日
その噂を聞いた素敵な王子様が、私を尋ねて来て
くれるのよ!」
クリス「(笑う。)本気にそんなことを考えているのかい?」
エリザベート意地悪ね!」
その時、2階より末弟ミシェル、本を片手に
ゆっくり下りて来る。
ステラ「(ミシェルに気付いて。)あらミシェル、また読書してたの
?」
ミシェル「うん・・・」
クレナ「偶には私達と一緒に、お茶でもどう?」
エリザベート「お兄様は偶には読書でもなさったら?」
クリス「煩いな!(ミシェルに近寄って。)おまえ、この頃はあの
部屋へ行ってないだろうな?」
ステラ「・・・あの部屋って・・・?」
エリザベート「・・・まさか・・・黒い扉の・・・!?ミシェル、あなた
・・・」
ミシェル「行ってないよ・・・」
クリス「ならいいんだ。ちょっと聞いてみただけさ。」
ミシェル、上手へ去る。4人、暫くその方を
見ている。
クレナ「何だって、あの子・・・」
クリス「よく知らないが、以前、偶々あの部屋から出て来たミシェ
ルを見かけてね・・・。どうもみんなに隠れて、ちょくちょく
顔を出してたようなんだ。」
エリザベート「それで!?」
クリス「勿論、それからは決して近寄るなと、念押しはしておい
たんだが・・・」
ステラ「ならいいじゃない。本人も行ってないって言ってたんだし
・・・」
エリザベート「あなたって呑気でいいわね。お母様に知れたら事
よ!」
ステラ「私は来週のお茶会のことで、頭が一杯なの!」
その時、ドアの呼び鈴の音。
執事のヨハン、奥より登場し扉の方へ。
何時の間にか奥よりメイド、クララ登場、
娘達のドレスを仕舞ったり、用事をしている。
ヨハン「はい、どなたで?(扉を開ける。一時置いて。)あの・・・、
しかし・・・」
ルイの声「頼む!!怪我人がいるんだ!!一晩だけ・・・一晩
だけ休ませてくれれば、明日には出て行く!!」
ヨハン「・・・事情は分かりますが・・・何分、ご主人様はご旅行中
でして・・・」
ルイの声「頼む!!」
エリザベート、ヨハンの様子に気付いて
近寄る。
エリザベート「ヨハン、どなた?」
ヨハン「あ・・・お嬢様、それが・・・」
エリザベート「(扉の外を覗いて。)どちら様ですか?」
ルイの声「あ・・・突然すまない。旅行中に友人が怪我をして・・・
一晩だけでいいんだ、宿を!!」
エリザベート「そう言うことならどうぞ。お友達の方も。」
ルイの声「ありがとう!!」
ヨハン「お嬢様!!」
エリザベート「一晩くらい、いいじゃない。」
ルイ登場。続いてエドワードに抱かえられ、
ぐったりとしたアンソニー登場。
アンソニー「・・・すまない・・・」
エリザベート、クレナ、ステラ、思わずぼうっと
アンソニーに見惚れる。
ルイ「あの・・・何処へ・・」
エリザベート「(ハッとして。)あ・・・お2階へどうぞ!!お友達の
方、大分お悪いようですし、一晩だけと言わず、傷
が治るまで養生していらして下さいな。」
ヨハン「お嬢様!!」
エリザベート「お父様がお帰りになったら、私からお話しするわ!
!」
エドワード「いや・・・今晩だけで・・・」
エリザベート「いいえ。お見かけしたところ、一晩やそこらで良く
なるような傷とは思われませんし、そんな怪我人を
放り出すような真似はできませんわ。」
エドワードとルイ、そっと顔を見合わせる。
エドワード「・・・それじゃあ・・・」
エリザベート「(思わず嬉しそうに。)よかった!!ロベール!!」
奥より使用人ロベール登場。
ロベール「(エリザベートに近寄って。)はい!」
エリザベート「大切なお客様よ!2階の一番上等の客間に、ご
案内してさしあげて!!」
ロベール「分かりました。(エドワード達の方へ向いて。)こちらへ
どうぞ。」
エドワード、ルイ、アンソニー、ロベールに
付いて2階の方へ。
エリザベート「(思い出したように。)あ・・・!!先生をお呼びしま
しょうか?」
エドワード「いや!!・・・結構だ・・・」
エリザベート「(頷く。)それと!!2階の一番奥の・・・突き当たり
に見える黒い扉の部屋だけは、決して開けないで
下さい。(微笑んで。)後は、何処の部屋へ入られて
も構いませんわ。」
3人、ロベールに付いて、2階へ上がる。
ステラ「(4人が出て行くのを見計らって、エリザベートに駆け寄
る。)お姉様!!あの黒髪の怪我人、素敵なお方ね!!
(溜め息を吐く。)」
クレナ「本当ね!!この世の者とは思われない・・・。見た!?
あの透き通るような肌!!」
エリザベート「いいこと!?抜け駆けはなしよ!!」
クリス「(肩を窄めて。)やれやれ・・・」
暗転。
――――― 第 4 場 ―――――
音楽でフェード・インする。と、アンソニー達が
通された客間。
アンソニー、ベットの上に横になっている。
エドワード、窓を開けると、もう暗くなっている
空には、満月が昇っているのが、窓の向こう
に見える。
エドワード「全く、今日のアンソニーは、彼には珍しく不用心だっ
たな・・・。」
ルイ「あんなに沢山、無駄な血を流してしまって勿体ない。(笑う
。)」
エドワード「笑いごとじゃないだろ?」
ルイ「それにしても、本当にしつこい奴らだな。何でジェラール
は、あんなにも俺達のことを?」
エドワード「・・・さぁ・・・」
ルイ「俺が君達の仲間に入った時には、もう何時も後ろにはあ
いつがいた・・・」
アンソニー「どうでもいいんじゃないか、そんなことは・・・」
エドワード「アンソニー!!」
アンソニー、ベットの上へ起き上がる。
ルイ「アンソニー!!」
エドワード、ルイ、アンソニーの側へ近寄る。
アンソニー「奴らが何処の誰で、何故俺達を執拗に追い回すの
か・・・別にどうでもいいことさ・・・。」
エドワード「・・・アンソニー・・・」
ルイ「そうだな。(笑う。)」
エドワード「ところで、もう体はいいのか?」
アンソニー「ああ。(ベットから立ち上がって、両腕を高く上げ、
元気だと言う風に見せる。)この通り!!もう今直ぐ
にでも立てるぞ。」
エドワード「(笑う。)そうか。だが、そう言う訳にもいかなくてな。」
アンソニー「ああ・・・俺の傷が治るまで、客人としてこの屋敷に
留まることにしたんだっけ・・・?」
ルイ「その通り!よく分かったな。」
アンソニー「朦朧としながらも、気は張ってたからね・・・。傷の酷
さも知られてしまったことだし、2週間くらいは大人し
くしてなけりゃいけないかもな?」
エドワード「そうだな・・・。大分逃げて来たから、そのくらいなら
平気だろう。だが、くれぐれも気を付けてくれよ。さっ
きまで死にそうな顔をしてた奴が、もうピンピンしてる
と分かったら、それこそ大騒ぎだ。」
アンソニー「(笑う。)OK。だが、俺にはちょっとばかり辛い忠告
だな。」
――――― “アンソニー”2へつづく ―――――
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(どら余談^^;)
そんなに直ぐに治るんなら、ちょっと木陰でも休んでいれば
いいのに・・・などと、色々と思うところがおありでしょうが・・・
“物語”の不思議・・・と言うことで、あまり深く考えずにお楽し
み頂ければいいかな・・・と思います(^_^;)
「入るべからず・・・」と言ったお話しも、昔から色んなお話し
に登場する、ありがちなキーワードとしてお読み下さい^^;
http://milky.geocities.jp/little_pine2012/index.html
http://blog.goo.ne.jp/ritorupain2005
http://blogs.yahoo.co.jp/dorapontaaponta
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