2012年9月7日金曜日
“未来への扉” ―全9場― 2
ジョーイ「あ・・・ご免・・・。何も深い意味があって言ったんじゃ
ないんだ・・・。」
クリスティーン「・・・分かってる・・・。でも、誰に反対されたって、
私は彼を愛しているから・・・。」
ジョーイ「・・・クリスティーン・・・。そうだな・・・。あいつも、その内
気付くさ。一生のうちで、夢よりも大切な者が、必ず必
要になる時がくることが・・・。」
クリスティーン「ええ・・・。あ・・・ここよ!!(手で舞台奥を、差し
示す。)」
ジョーイ「(少し驚いた面持ちで。)ここは・・・」
音楽で紗幕開く。
と、中央に一組のテーブルと椅子。(紗幕で
店幅調整。)一人のウエイトレス(トレイシー)、
テーブルの上を拭きながら、近寄って来た
ジョーイとクリスティーンを認める。
トレイシー「いらっしゃい、ジョーイ。」
ジョーイ「やぁ、トレイシー。」
クリスティーン「こんにちは。」
トレイシー「いらっしゃいませ。」
ジョーイ、クリスティーン其々椅子へ腰を下ろす。
ジョーイ「ビール2つ。」
トレイシー「はい、畏まりました。」
ジョーイ「それとアレックス、ここで働いてるんだって?来てる
かな?」
トレイシー「ええ。呼びましょうか?」
ジョーイ「(クリスティーンをチラッと見て。)ああ、頼むよ。」
トレイシー「はい。(下手へ去る。)」
クリスティーン「ジョーイ!今、彼仕事中よ・・・。」
ジョーイ「(回りを見回す。)今、暇そうだし、構やしないさ。折角
会いに来たんだろう?」
クリスティーン「そうだけど・・・。なるべく邪魔になるようなことは、
したくないの・・・。」
ジョーイ「君はどうもアレックスに気を遣いすぎな所があるようだ
ね。もっと、自分を主張しなければ、何時までも奴は、
君に甘え続けるよ。たとえば危ないことは止めてくれ
と、ハッキリ言うとかね。」
クリスティーン「私には・・・そんなこと言えないわ・・・。」
ジョーイ「違うな。言えないんじゃなくて、君だから言えるんだよ、
クリスティーン。」
ジョーイ、クリスティーンを励ますように歌う。
“愛しているなら
たとえば相手が我が儘言っても
愛しているから
その相手にとって本当に大切なことを
言えるのは愛する者だけ
心の奥で感付いて
自分で分かっていることも
ただ何時もそこにいるのは当たり前だと
思い違えてしまう程
愛し合う2人なら
屹度分かり合える筈・・・”
ジョーイ「・・・そうだろ?」
クリスティーン「ええ、そうね・・・。ありがとう・・・。何時もジョーイ
には、どれだけ励まされるかしら・・・。」
ジョーイ「そんなことないさ。君達2人が上手くいけば、俺だって
嬉しいんだ。」
そこへ、下手よりアレックス、ビールを2本と
グラスを2つ両手に持って登場。
2人のテーブルへ近付く。
アレックス「よぉ、2人揃って御出座しか。(ビールとグラスを
テーブルの上へ置いて、空いている椅子に腰を下ろ
す。)」
クリスティーン「(アレックスを認め、嬉しそうに。)アレックス・・・!
ご免なさい、お仕事中に。」
アレックス「(微笑む。)」
ジョーイ「アレックス・・・。クリスティーンが心配してたぞ。急に今
まで住んでたアパートを引き払って、住み込みで仕事
を始めたって。」
アレックス「別に心配するようなことじゃないさ。(笑う。)ただ、住
み込みの方が家賃だって助かるし、食事だって・・・。」
ジョーイ「けど、クリスティーンにしたら、おまえを訪ねにくくなるだ
ろ?」
クリスティーン「いいのよ、ジョーイ。」
ジョーイ「よくないだろ!?」
アレックス「何、向きになってるんだよ、おまえ。(笑う。)」
ジョーイ「(焦ったように。)・・・べ・・・別に、向きになんて、なって
やしないさ。俺はおまえ達のキューピットのようなもの
だから・・・。」
アレックス「(笑って。)まぁ、彼女と知り合えたのは、おまえのお
陰なのは分かってるが、キューピットはよしてくれよ。
(真面目な顔付になって。)俺は、クリスティーンのこと
は大切に思ってる。それじゃあ駄目なのか・・・?」
クリスティーン「アレックス・・・」
ジョーイ「(溜め息を吐いて。)・・・そうだったな・・・。俺にとって、
クリスティーンは今までずっと側にいて、妹みたいなも
のだったから・・・。その彼女の不安な顔を見ると、つい
心配になって・・・。」
アレックス「(ジョーイを見詰める。)そうか・・・。また3人で、クル
ージングにでも行こうぜ。」
ジョーイ「なんで俺まで・・・。俺はいいよ。クリスティーンを連れて
行ってやってくれよ。」
アレックス「(ジョーイの肩に手を掛けて微笑む。)何言ってんだ。
俺達のキューピットなんだろ?それに、俺とおまえだっ
て、もう何年来の親友だったんじゃなかったか?今
じゃ、おまえの考えていることは何だって・・・」
ジョーイ「え・・・?」
アレックス「いや・・・。さぁて、仕事に戻らないと、マネージャーに
どやされるから。(笑う。)ま、ゆっくりしていけよ。(立ち
上がる。)クリスティーン、今晩電話するよ。」
クリスティーン「ええ、待ってる・・・。」
アレックス「(ジョーイに向かって。)送り狼になるなよ!(笑う。)」
ジョーイ「送り・・・!?アレックス!!(思わず立ち上がる。)」
アレックス、笑いながら下手へ去る。
ジョーイ「あいつ!!(溜め息を吐いて。)・・・全く、何時もふざけ
た野郎だな・・・!クリスティーンに奴を会わせたことを、
後悔するよ・・・。(紗幕前へ。)」
クリスティーン「(微笑んで、ジョーイに続く。)心からそんなこと、
思ってないくせに・・・。アレックスの優しさは、あ
なただって知ってる筈だもの・・・ね?」
紗幕閉まる。
ジョーイ「・・・ま・・・ね・・・。だから、あいつを君に紹介したんだ
から・・・。(独り言のように。)その後に、まさか自分の
気持ちに気付くとはね・・・。」
クリスティーン「何?」
ジョーイ「いや・・・何でもないよ。今・・・幸せかい?」
クリスティーン「決まってるじゃない・・・。ジョーイには感謝してる
のよ、とっても・・・。だって、アレックスと知り合え
たのは、ジョーイのお陰なんだもの・・・。」
ジョーイ「・・・俺の・・・お陰・・・ね・・・。さぁ、遅くならないうちに帰
らないと・・・。アレックスの大切な預かり者だ・・・。」
クリスティーン「まぁ、預かり者だなんて!」
ジョーイ「冗談さ。(笑う。)」
ジョーイ、クリスティーンの背中を軽く押し、
エスコートするように、2人上手へ去る。
暗転。
――――― 第 3 場 ―――――
下手スポットに、エンゼル浮かび上がり、
幸せそうに歌う。ゆっくり中央へ。
“夢を見たの
暖かな大きな心に包まれて
安らかに眠る
夢を見たの
そこはとても心地好くて
ずっと離れたくないような
何時までもそうしていたいと思う程・・・
夢の中でも夢見てた
現実とは丸で違う安らぎを・・・”
波の音が静かに、カモメの鳴き声が遠くに
聞こえる。紗幕開き、フェード・インする。
と、1場の島。中央、座り込んだアレックス、
砂を弄ぶように。
アレックスを認めたエンゼル、嬉しそうに
アレックスの横に腰を下ろし、膝を抱え、
アレックスの顔を見詰める。
アレックス「(砂を見詰めたまま。)俺の顔に何か付いてるか・・・
?」
エンゼル「何を考えているの?」
アレックス「・・・別に・・・」
エンゼル「(微笑んで。)当ててみましょうか・・・?」
アレックス「何も考えてないさ・・・」
エンゼル「・・・別れた恋人のこと!」
アレックス「(少し驚いたように、エンゼルを見る。)」
エンゼル「当たり?」
アレックス、溜め息を吐いて立ち上がり、
手の平を払う。エンゼル、つられるように
立ち上がる。
エンゼル「ね、当たり?」
アレックス「(少しぶっきら棒に。)ああ!」
エンゼル「如何して別れたの?」
アレックス「煩いな。もう済んだことだ、如何でもいいだろ!?」
エンゼル「まだ好きなのね?」
アレックス「いいや!!・・・もう・・・忘れた!」
エンゼル「(クスクス笑って。)強がりばかり・・・。」
アレックス「(エンゼルを見て。)おまえの方は如何なんだ・・・。
その左手首の傷・・・如何したんだ・・・」
エンゼル「(驚いて左手首を隠すように。)」
アレックス「(エンゼルの左手首を掴んで、傷を見る。)」
エンゼル「離してよ!!離してったら!!」
アレックス「(手を離す。)これは如何見たって、無理に傷付けて
できたものだ・・・そうだろ?」
エンゼル「・・・話したくない・・・」
アレックス「ほらみろ・・・。おまえにだって、触れられたくないもの
があるじゃないか・・・。俺は彼女のことを話すのは
ご免だ・・・。分かったか・・・?」
エンゼル「(少し考えるように下を向く。)・・・ご免なさい・・・。私
・・・話し相手ができて・・・嬉しくて・・・(手首の傷を、
もう一方の手で隠すように握って、ゆっくり上手方へ
歩いて行く。)」
アレックス「(エンゼルを見て。)・・・おい・・・待てよ!」
エンゼル、振り返る。
アレックス「・・・悪かった・・・」
エンゼル「(アレックスを見詰める。)」
アレックス「ついカッときて・・・。俺もおまえに酷いことえを言って
しまったな・・・。」
エンゼル「・・・(下を向いて、首を振る。)」
アレックス「・・・おまえの方が、触れられたくなかったかも知れな
いのに・・・。ご免・・・。」
エンゼル「・・・私・・・両親が決めた、結婚相手がいたの・・・」
アレックス「何も、無理に話すことはない・・・。俺が悪かったんだ
・・・。」
エンゼル「(少し淋しそうに微笑む。)聞いてもらいたくなったの
・・・。父の会社の取引先の一人息子で、名前はヘ
ンリー・・・。私が生まれた時から決められていた、私
の旦那様・・・。信じられる?今の世の中でそんな・・・
許嫁だなんて・・・。私は絶対にいやよ・・・!!自分が
結婚する相手くらい、自分で見つけるわ!!私は地位
や身分や家柄や・・・そんなものを結婚する相手に求
めてたんじゃないわ・・・。私が欲しかったもの・・・それ
はただ一つ、愛する自分の心よ・・・。愛される喜びよ
・・・。」
アレックス「はっきり両親に嫌だと訴えれば・・・。」
エンゼル「訴えたからって、私の意見を聞いてもらえるような、
そんな簡単なことじゃないわ・・・。家出だってした・・・。
けど、父が雇った私立探偵に見つかって、無理矢理
連れ帰らされてからは、ボディーガードまで付けられて、
丸で監禁状態・・・。それでいよいよ明日は式だって言
う前の晩・・・手首を切ったの・・・。これが、その時の傷
・・・。(手首を見せる。)」
アレックス「そんな簡単に死を選ぶんじゃない・・・。」
エンゼル「私を救い出してくれるスーパーマンでもいない限り、
私には他に方法がなかったのよ・・・。」
アレックス「命が助かったから、良かったようなものの・・・今度
からは、そんな馬鹿な真似はするんじゃないぞ・・・。」
エンゼル「じゃあ・・・あなたが私を助けてくれるの・・・?あなた
が私を助け出してくれるって言うの!?」
アレックス「・・・エンゼル・・・」
エンゼル「・・・ご免なさい・・・。我が儘だって分かってる・・・。
結婚が嫌なのも・・・単なる私の我が儘だって・・・。けど
・・・生まれてから何一つだって、私が自分の意思でやり
たいと思ったことを、出来たことはなかった・・・。だから
せめて好きな人くらい・・・自分で見つけたかったの・・・。
」
――――― “未来への扉” 3へつづく ―――――
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