2012年9月1日土曜日
“ダスティン” ―全4場―
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〈主な登場人物〉
ダスティン ・・・ 新聞記者の男。
ケビン ・・・ ダスティンの後輩。(カメラマン。)
クリストファー
マーガレット ・・・ クリストファーの妹。
フランク ・・・ 執事。元、クリストファー兄妹の教育係。
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客電落ちる。
開演アナウンス。
――――― 第 1 場 ――――― A
静かな音楽で、幕が上がる。
風雨が激しく吹き荒れ、雷が轟く、大嵐の様子。
客席後方より、雨を避けるように身を屈め、
2人の男(ダスティン、ケビン。)走りながら登場。
ケビン「先輩!!待って下さいよー!!」
ダスティン「馬鹿!!早く走れ!!カメラが壊れちまうぞ!!」
ケビン「だって、重くって・・・!!」
2人、下手方舞台前へ。雨宿りするように。
(上を見ながら、服を払ったりしている。)
ダスティン「全く・・・急にこの大嵐・・・参ったなぁ・・・。」
ケビン「天気予報じゃ、今日は雨なんか降る筈なかったのに・・・
。」
ダスティン「天気予報なんか当てになるもんか・・・。山の天気は
女と一緒で、気紛れなんだよ・・・。」
ケビン「へぇ・・・、そう言うもんなんだ・・・。でもこれからどうすん
ですか・・・?車は山の麓に置いたままだし、こんな大嵐
の中、とてもじゃないけど、あそこまで戻れないですよ
・・・。カメラだって重いし・・・。」
ダスティン「(何かに気付いたように、舞台上を見る。)丁度いい
具合に、屋敷があるじゃないか・・・。・・・ここ・・・誰か
住んでんのかな・・・?」
ケビン「え?(舞台上を見て。)本当だ・・・。全然、気が付かなか
ったですね。こんなに大きな家なのに・・・。」
ダスティン「(ゆっくり舞台上へ。)・・・すみませーん・・・。」
ケビン「(ダスティンに続いて、回りを見回しながら舞台上へ。)
黙って入っちゃ不味いですよ、先輩!!」
舞台上、薄明るくなる。と、古びた屋敷内の様子。
ダスティン「どなたかいらっしゃいませんか・・・。」
ケビン「なんか薄気味悪い屋敷だなぁ・・・。丸で幽霊でも住ん
でそうな・・・。」
ダスティン「何言ってんだ。この文明社会の世の中に、幽霊な
んてものが存在する訳ないだろ、全く・・・。」
ケビン「だけど・・・このカビ臭い臭い・・・。屹度、長い間空き家
だったんじゃないかな・・・?」
再び、大きな雷の音が響く。
ケビン「わあっ!!」
ダスティン「(その声に驚いたように。)わっ!!ビックリするだろ
!!」
ケビン「・・・ごめんなさい・・・。」
その時、上手より一人の執事(フランク。)手に
ランプを持ち、ゆっくり登場。
フランク「どなたですかな・・・?」
ダスティン、ケビン驚いて、上手方を一斉に見る。
ケビン「ひっ!!」
ダスティン「・・・あ・・・すみません、黙って入って・・・。ただの
空き家かと思ったもので・・・。」
フランク「(笑って。)こんな山の中の古びた一軒家・・・、確かに
人が住めるような所ではありませんが・・・。」
ダスティン「いや・・・。そうだ、私達はNT新聞社の者で、今、取
材の帰りなのですが、この突然の大嵐で、立ち往生
してしまって・・・。」
ケビン「車を山の麓に置いたままだし・・・」
ダスティン「暫く、この嵐が治まるまで、凌がせてもらえないで
しょうか。」
フランク「・・・しかし・・・」
ダスティン「雨さえ避けられれば、この玄関先でもどこでも・・・。」
ケビン「カメラぶっ壊しちゃったら、大目玉食っちゃうし。(笑う。)」
フランク「・・・いや・・・だが・・・この屋敷は・・・」
ケビン「カビ臭いのを除けば、結構手入れの行き届いた快適そ
うな屋敷・・・。部屋だって、沢山ありそうだし・・・ね?」
フランク「それは・・・その・・・」
ダスティン「・・・何か不味いことでも・・・?」
フランク「・・・いえ・・・」
その時、クリストファーの声が聞こえる。
クリストファーの声「・・・どうぞ・・・構いませんよ・・・」
ダスティン、ケビン、一瞬その声に体が強張った
ように。回りをゆっくり見回す。
上手後方に置いてあった、一つの大きな回転椅子
に座っていたクリストファー、こちらを向き、ゆっくり
と立ち上がる。
フランク「クリストファー様・・・!」
クリストファー「この嵐だ・・・、今、外へ出ても無事に山を下りる
ことが出来るかどうか・・・。こんな古びたカビ臭
い所でよければ、ゆっくりして行って下さい。(微
笑む。)」
ケビン「あ・・・!カビ臭いって言ったのは・・・あれは・・・!」
クリストファー「いいんですよ・・・。この屋敷は、湿気が多くて
いつもジメジメしている・・・。あなたが言ったよう
に本当にカビ臭いんですから・・・。」
ダスティン「(ケビンの方を向いて、声を出さずに。)馬鹿・・・!
すみません・・・まさか、そこに人がいるなんて気付き
もしなくて・・・。」
クリストファー「フランクに部屋を用意させましょう・・・。」
フランク「クリストファー様・・・」
ダスティン「いや・・・本当にもうここで十分です。」
クリストファー「駄目ですよ。こんな居間で、お客様をお泊めする
なんて・・・。空いている部屋は山のようにあります
。どうぞ風雨が治まるまで、一晩でも二晩でも・・・
。」
ダスティン「・・・さっきは・・・(フランクをチラッと見て。)何か不味
いことがあるような口振りだったが・・・」
クリストファー「フランクは歳のせいで、何事にも慎重なだけです
。見ず知らずのあなた方を、この家の中に招くの
はどうかと・・・。」
フランク「申し訳ありません・・・。」
クリストファー「さぁ、フランク・・・お二人の為に、部屋を用意して
差し上げなさい。」
フランク「はい、分かりました。ただ今直ぐに・・・。」
フランク、上手へ去る。
クリストファー「(上手を示して。)どうぞ・・・。身の回りの世話を
する者は、この屋敷にはフランクしかいないので、
行き届かない所があるでしょうが・・・。いつまでも
ゆっくりと・・・。」
ダスティン、不審気にクリストファーを見ながら、
ゆっくり上手方へ。ケビン、嬉しそうに続く。
ダスティン「この屋敷に住んでいるのは・・・あなたとフランク・・・
?」
クリストファー「・・・もう一人・・・僕の妹がいます・・・。後で、お茶
の時にでも紹介しますよ・・・。何分、世間知らず
な娘なもので、あなた達にも失礼があるかと思い
ますが、お許しを・・・。(再び、上手方を示す。)」
ダスティン、ケビン、ゆっくり上手へ去る。
微笑んで見ていたクリストファー、2人が去ると、
打って変って真顔になり、上手方を見据える。
その時、娘の楽しそうな笑い声が聞こえる。と、
下手方よりマーガレット、嬉しそうに走り登場。
マーガレット「久しぶりね!!久しぶりのお客様ね、お兄様!!
」
クリストファー「マーガレット!そんな風に、あからさまに喜ぶの
は、はしたないよ。」
マーガレット「だって嬉しいんですもの!!もうお腹がペコペコ
・・・。お兄様はいいわ!いつだって好きなように、
麓の町まで行って、お腹一杯ご馳走にあり付ける
んだもの。いつもいつも兄様に分けてもらう食事だ
けでなく、もっと違ったものが私は欲しかったの!
!」
クリストファー「駄目だよ!!自分勝手な行動をしちゃ!!」
マーガレット「・・・お兄様・・・」
クリストファー「後でちゃんと、おまえの望むようにさせてやる
・・・。だから少しの間、普通の娘らしく振舞うん
だ・・・。いいね?」
マーガレット「・・・分かったわ、お兄様・・・。でも、普通の娘らし
く・・・って・・・」
クリストファー「普通だよ・・・。昔を思い出して・・・。だが・・・見
たか・・・マーガレット・・・」
マーガレット「見た・・・って、何を・・・?」
クリストファー「あの男の顔さ・・・。」
マーガレット「顔?顔は暗くて、よく分からなかったわ!だって
顔なんて、私には関係ないもの。」
クリストファー「あの忌々しい奴に、瓜二つのあの人間の顔・・・
。」
マーガレット「忌々しい奴・・・?」
クリストファー「僕達を、こんな体にした張本人さ!!」
雷の音が鳴り響く。
暗く重々しい音楽流れ、クリストファー、スポットに
浮かび上がり歌う。
“この呪われし運命の
定めたるは憎き奴
この世の果てまで付きまとう
永遠の呪縛に苛まれ
心の安らぎは遥か彼方・・・
夜の闇が安息の時
月の輝きが
ただ黒い瞳を映し出す・・・”
暗転。
――――― 第 1 場 ――――― B
舞台、薄明るくなる。(前場の様子。)
一時置いて、上手より一冊の本を手に、
読みながらケビン登場。
ケビン「先輩!!先輩!!どこ行っちゃったのかなぁ・・・?それ
にしても広いお屋敷だなぁ・・・。(回りを見回す。)退屈
凌ぎに部屋で見つけた童話、一緒に読もうと思って、持
って来たのに・・・。童話なんて、子どもっぽいか・・・。」
ケビン、一人で話しながら、上手後方の
回転椅子へ腰を下ろす。
ケビン「けど、昔の童話って何でこう・・・どれもこれも残酷なんだ
ろう・・・。子どもに読ませて聞かせる為のものじゃなくて、
大人のうっぷん晴らしの為に、書かれたとしか思えない
よなぁ・・・。それにしても、これは・・・誰が書いたのかな
・・・?原本がここにあるってことは・・・クリストファー・・・
?(笑って。)まさかね・・・。どう見ても、まだ10代・・・?
結構、何冊もあったし・・・。まぁいいや・・・。・・・その昔・・
・ある小さな村に、とても仲の良い2人の兄妹が住んで
いました・・・。2人はいつも一緒に遊び・・・学び・・・そし
て語り合うのでした・・・。大好きな丘に登り・・・自分達の
将来を・・・」
遠くで明るい音楽流れ、段々大きくなるように。
それと同時にケビン、フェード・アウトする。
――――― 第 2 場 ―――――
音楽大きく、舞台明るくなる。(村の丘の風景。)
下手より、花の冠を被り、花籠を手にした
マーガレット、歌い踊りながら登場する。
マーガレット、舞台中央に腰を下ろし、籠の中
から花を取り出し、花輪を作り始める。
そこへ上手より、ダスティン登場。
回りを見回しながら、マーガレットのことは気にも
止めない風に、ゆっくり下手方へ。
マーガレット「こんにちは。旅の方?」
ダスティン「(チラッとマーガレットを見るが、知らん顔する。)」
マーガレット「この丘、綺麗でしょう?私はここから見る、村の
様子が一番好き。村に立ち寄る旅の人は、この
場所を知ると、必ず決まって、次に訪れた時にも
是非もう一度ここへ来たいものだ!と言われるわ
!(客席方を指差し。)見て!あの赤い屋根の家、
あれが私の家よ!その隣の藁葺きの家が、アン
ディおばあさんの家。おばあさんの焼くスフレは、
とっても美味しいの!・・・それからあの十字架が
・・・」
ダスティン「煩い!!俺の前でベラベラお喋りしていると、とん
でもないことになるぜ・・・。」
――――― “ダスティン”2へつづく ―――――
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