2012年9月24日月曜日
“バーナード” ―全16場― 6
サミーと入れ代わるようにバーナード、
テーブルへ戻って来る。
バーナード「・・・お待たせ・・・(椅子に腰を下ろす。)」
シェイラ「お帰りなさい!(嬉しそうに、バーナードを見詰める。
)・・・どうかした・・・?」
バーナード「え・・・?」
シェイラ「何だか顔色が・・・」
バーナード「あ・・・そんなことないよ。(微笑む。)サミーと何の
話ししてたんだい?楽しそうな笑い声が、電話の
ところまで聞こえてきたよ。」
シェイラ「(微笑んで。)秘密!」
バーナード「何だよ、それ。あいつまた俺の悪口でも言い触ら
してたんだろ、全く・・・」
シェイラ「悪口なんかじゃないわよ!(真面目な顔付きになっ
て。)・・・私・・・もっとあなたのことが知りたい・・・(自分
の言った言葉に焦ったように。)・・・あ・・・ごめんなさ
い・・・変なこと言って・・・(笑って誤魔化す。)」
バーナード「(シェイラを見詰める。)シェイラ・・・俺は・・・」
バーナード、立ち上がって歌う。
(いつの間にかバーナードとシェイラ、
スポットに浮かび上がる。)
“いつからだろう こんな気持ち・・・
長く忘れていた心のときめき・・・
おまえが側にいるだけで
全てが違って見える・・・
全てが輝き
全てが素晴らしい!!”
バーナード「シェイラ・・・(シェイラの手を取って、立ち上がらせ
る。)・・・愛している・・・本当に・・・愛しているんだ
・・・(シェイラの手に口付ける。)」
シェイラ「・・・バーナード・・・」
バーナード、シェイラの手を取って前方へ。
カーテン閉まる。バーナード、再び歌う。
シェイラ、嬉しそうにバーナードを見詰める。
“いつ気付いたんだろう この感動に・・・
おまえが側にいるだけで
こんなにも世界が違って見える・・・
今まで気付こうとしなかった
全てのものが愛しくて
おまえが側にいるからだと・・・
ああシェイラ・・・いつまでも・・・
抱きしめたい・・・”
バーナード、シェイラを強く抱きしめる。
暗転。
――――― 第 10 場 ―――――
カーテン開く。絵紗前。(事務室。)
アルバート、ジェイムス、ソファーに座り、
話し込んでいる。
ジェイムス「しかし、あの女の言っていることを、全て信用する
のはどうかと・・・」
アルバート「私もそれは分かっている。」
ジェーン、お茶を運んで来る。其々の前に
2人の話しを聞くように、ゆっくりコップを
置く。
ジェーン「どうぞ。」
アルバート「しかし、今は少しでも疑いのある者は、全て調べて
おかなければ、敵の尻尾は掴めまい・・・」
ジェイムス「だが、営業課の超エリート社員であるバーナードが
まさか・・・」
ジェーン、お茶を配り終え、強張った面持ちで
出て行く。
アルバート「守衛の証言からも、バーナードがあの日、社内に
残っていたのは確かなのだ。だが、彼は猛烈社員
の異名を持つ者・・・残業届けなどどうでもいいのだ
よ。」
ジェイムス「そうですね・・・まぁ、聞いてみるくらいはいいでしょ
う。ただ、このことはシェイラ・ハミルトンに聞いたこ
とにし、態々バーナードの耳に入れて欲しいと言った
ダイアナは一体何を考えているのでしょうか・・・」
アルバート「さぁ・・・社員のプライベートには興味はないが・・・
美しく変身したシェイラに嫉妬でもしたのだろう。」
ジェイムス「美しく・・・ですか・・・?(不思議そうな顔をする。)」
アルバート「何だ、君はまだ美しく変身したシェイラに会ってい
ないのかね?」
ジェイムス「変身・・・?」
アルバート「あれは変身と言うより、別人だな・・・。まぁ、彼女
のことはどうでもいい・・・」
ジェイムス「はぁ・・・」
その時、扉をノックする音。
アルバート「入りたまえ・・・」
ジェイムス、立ち上がる。
扉を開けて、バーナード入る。
バーナード「お呼びですか・・・?」
アルバート「・・・まぁ、掛けたまえ・・・」
バーナード「失礼します・・・。(ソファーに腰を下ろす。)」
ジェイムス、再び腰を下ろす。
アルバート「どうかね?仕事の方は・・・。君にもう慣れたかね
?と聞くのは、愚問だな。もう今や君は、我が社の
期待の星・・・。(笑う。)」
バーナード「そんなことはありません。」
アルバート「君程の人材が今まで・・・(机の上の書類を手に取
り、ペラペラと捲くって見る。)名前も聞いたことの
ないような・・・失礼・・・」
バーナード「・・・いえ・・・」
アルバート「中小企業に埋もれていたとは・・・全く不思議なこ
とだな。ところで・・・(真面目な顔付きになる。)こ
れから君に聞くことは我が社にとって、とても大事
なことなのだが・・・(ジェイムスに話すように、目で
促す。)」
ジェイムス「(咳払いをして姿勢を正す。)実は・・・今月の6日
の金曜日に・・・レジャー産業部門の金庫から、ある
重要書類が何者かによって、盗み出されたのだ・・・
」
バーナード「・・・盗み出された・・・?」
アルバート「そう・・・。それで我々は犯人捜しに躍起になって
いると言う訳なのだが・・・」
バーナード「・・・それで・・・私に何か・・・?」
ジェイムス「あの日、君は残業していたようだね・・・?」
アルバート「・・・だが残業届けは出ていなかった・・・」
バーナード「残業届けなしで残っていたから、私が怪しいと・・・
・?」
アルバート「いや・・・ただあの日の君の行動に、不審なところ
があったと・・・ある女子社員からの報告を聞いて
ね・・・」
バーナード「・・・女子社員・・・?」
アルバート「何もその報告を信じている訳ではないのだが・・・
一応・・・」
ジェイムス「(紙をバーナードの前へ置く。)これにサインを頂け
ますか・・・?」
バーナード「(紙を手に取って。)・・・身辺調査の同意書・・・?」
ジェイムス「これは君だけに頼んでいるのではないのだ。あの
日、社内にいたもの全てにサインをもらっているの
だ。」
アルバート「書類の中身は言えないが・・・あの書類が他社に
流出したことによって、我が社の損害は計り知れな
い・・・。その責任の追及先を定めたいと言うことな
のだよ。」
ジェイムス、ペンをバーナードへ差し出す。
バーナード、それに目を遣るが、自分の
スーツの内ポケットからペンを出し、紙に
黙ってサインをする。
バーナード「・・・これでよろしいですか?」
アルバート「・・・あ・・・ああ・・・それではもう仕事に戻りたまえ
。」
バーナード「失礼します。(立ち上がって出て行こうとし、入り口
のところで振り返る。)一つだけ・・・いいでしょうか・・・
」
アルバート「ああ、何かね?」
バーナード「さっき、仰ってた・・・女子社員とは・・・?」
アルバート「(ジェイムスと顔を見合わせる。)・・・庶務課の・・・
シェイラ・ハミルトンだ・・・。君は知っているかどうか
・・・」
バーナード、アルバートの話しを最後まで
聞かずに顔を強張らせて出て行く。
アルバート「(溜め息を吐く。)・・・猛烈社員の異名を取るだけ
あって・・・中々難しい男だな・・・」
ジェイムス「はぁ・・・」
暗転。カーテン閉まる。
――――― “バーナード”7へつづく ―――――
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