マーガレット「どうして?とんでもないことって?可笑しなこと言
うのね。(笑う。)」
ダスティン「俺が誰か知らないから、そんな呑気に笑っていられ
るんだ・・・。」
マーガレット「ただの旅の方ではないの?・・・何かとっても有名
な人?ね?何をする人なの?どうしてこの村に、
立ち寄ったの?」
ダスティン「そんなことを聞いて、おまえは命が惜しくないのか
・・・。」
マーガレット「何故?(クスッと笑って。)まさか悪魔とか・・・?」
ダスティン「・・・悪魔・・・か・・・。そうだな・・・悪魔よりもっと質が
悪いかもな・・・。おまえのような小娘・・・俺にかかれ
ば一捻り・・・」
音楽流れ、ダスティン歌う。
“気をつけろ・・・
命が惜しくば触らぬように
自分が可愛きゃ見て見ぬ振り
脅しじゃないぜ 忠告だ・・・
この俺が親切で言ってやる
さっさと俺の前から消え失せろ!!”
マーガレット「よく分からないわ、あなたの言うこと・・・。私には
あなたが、悪魔にも死神にも見えないもの。」
ダスティン「・・・じゃあ、いいものをやろう・・・。(ポケットから、
何かを取り出し、マーガレットの方へ差し出す。)」
マーガレット「何?(受け取る。)キャンディ?綺麗な赤い色・・・。
いちご味かしら?」
ダスティン「俺のことを、いい人間だと思うなら、それを食べる
がいい・・・。」
マーガレット「ありがとう!(手に持っていたものを口へ放り込む
。)いちご・・・じゃないみたい・・・何の味かしら・・・」
ダスティン「教えてやろうか・・・」
マーガレット「ええ!」
ダスティン「その赤は、人間の血の色さ!!(笑う。)」
マーガレット「・・・そんな冗談・・・」
マーガレット、突然倒れ込む。
ダスティン「それは俺の食事用だ・・・。美味いだろう?普通の
人間が食べると、死んでしまうがな・・・」
ダスティン、マーガレットを見詰める。
その時、ケビン下手より登場。
ケビン「(回りを見回して。)・・・ここ・・・どこだろ・・・。俺・・・確か
あの屋敷の居間で、童話を読んでて・・・(倒れている
マーガレットを認め、驚いて駆け寄る。)どうしたの!?
君!!確りして!!君!!」
ダスティン「・・・馬鹿な奴だ・・・。(フッと笑う。)だからあれ程言っ
たのに・・・。俺に近寄ると、碌なことがないと・・・。」
ケビン「一体どうし・・・(ダスティンの顔を見て、驚いたように。)
・・・せ・・・先輩・・・?先輩じゃないですか!?先輩、どう
してこんなとこに・・・(ダスティンの格好を見て。)いやに
古臭い服・・・。まぁ、いいや。それよりここはどこなんです
?この子、どうして!?」
ダスティン「(ケビンのことは見えていないように、冷たい視線で
倒れているマーガレットを見詰めてる。)ふん・・・。」
ケビン「先輩!!先輩ったら!!・・・俺のこと・・・見えないの・・・
?(自分で自分のその様子に、驚いたように、自分の体
を見回したり、そこにいる者達の様子を見たりする。)
どうして・・・?」
その時、上手よりクリストファー登場。
クリストファー「マーガレット?どこにいるんだい、マーガレット?
もう直ぐ、夕食の・・・(マーガレットを認め、その驚
きに体を強張らせる。)マーガレット・・・?どうした
の!?マーガレット・・・(マーガレットに駆け寄り、
抱き起こす。)マーガレット!!」
ケビン「・・・クリストファー・・・(呆然と、その様子を見詰めながら
。)」
ダスティン、声を上げて笑う。
クリストファー「何が可笑しいんだ!!マーガレット!!マーガ
レット、確りして!!」
ダスティン「・・・そいつは死の実を食べたんだ・・・。」
クリストファー「・・・え・・・?」
ダスティン「後、数分もしないうちに、その実の毒が体中に回っ
て、そいつの息も止まる・・・。」
クリストファー「・・・死の実・・・?死の実って一体・・・!?」
ダスティン「おまえにもやろうか・・・?」
クリストファー「・・・じゃあ・・・おまえが妹をこんな目に・・・!?
」
ダスティン「ああ・・・。そいつが煩く俺の回りを、ウロチョロして
余計な詮索をするから、ちょっとばかり静かにして
おいてもらおうと思ってな・・・。」
クリストファー「どうしてそんな酷いこと!!マーガレット!!
マーガレット!!」
ケビン「先輩・・・酷いよ・・・。」
クリストファー「助ける方法は・・・?(マーガレットを下に下ろし、
立ち上がる。)あるんでしょ・・・?知ってるんで
しょ!?僕に教えろよ!!」
ダスティン「・・・そうだなぁ・・・。解毒剤が・・・あるにはあるが・・・
。」
クリストファー「それを僕に頂戴!!」
ダスティン「・・・やってもいいが・・・ただと言う訳には・・・」
クリストファー「もとはと言えば、おまえがマーガレットをこんな目
に遭わせたんじゃないか!!」
ダスティン「違う!!そいつが煩くするからだ!!」
クリストファー「・・・頼むよ・・・。マーガレットは、僕にとって掛け
替えのない妹なんだ・・・。マーガレットがいなくな
れば僕も生きていけない・・・」
ダスティン「へぇ・・・」
クリストファー「あなたにも兄弟がいるなら分かるだろ!?」
ダスティン「・・・そんなことは忘れたな・・・。」
クリストファー「お願いだ・・・。」
ダスティン「生きていけないのなら、一緒に死ねばいいのさ!!
(笑う。)」
クリストファー「・・・なんて奴なんだ・・・!!」
ダスティン「(ポケットから、小さな袋を取り出し、クリストファーの
足元へ投げる。)その中に入っている液体・・・」
クリストファー「解毒剤!?(思わず袋を拾い、中から小さな小
瓶を取り出す。)」
ダスティン「そんなに欲しけりゃ、おまえにやろう・・・。」
クリストファー「本当!?」
ダスティン「但し・・・それは・・・不老不死の薬だ・・・」
クリストファー「・・・不老不死・・・?」
ダスティン「ああ・・・。今、助かるかわり・・・一生・・・永遠にそい
つは、死ぬことの出来ない体になる・・・。」
クリストファー「・・・どう・・・言うこと・・・?」
ダスティン「しかも・・・人間として生きていくのではなく・・・人の
世からはこれからこの先・・・ずっと隠れて生きていく
しかない・・・バンパイアとして生まれ変わるのだ!!
」
クリストファー「・・・バンパイア・・・バンパイア・・・って・・・」
ダスティン「人の生き血を啜ってしか生きることの出来ない・・・
不老不死の吸血鬼としてな!!(声を上げて笑う。)
」
ケビン「・・・吸血鬼・・・!?」
クリストファー「・・・そんな・・・そんな!!マーガレットをそんな
化け物に出来ないよ!!」
ダスティン「・・・化け物・・・?ああ・・・そうかもな・・・。じゃあ大人
しく、死のお迎えを待つがいいさ・・・。俺には関係な
い・・・。そいつが死ぬも生きるも・・・おまえ次第さ・・・。
(フッと鼻で笑う。)」
ダスティン、ゆっくり下手へ去る。
クリストファー「あ・・・!!待って!!・・・畜生・・・どうすればい
いんだ・・・。これを飲めば、マーガレットは助かる
・・・。だが・・・これから一生・・・罪の十字架を背負
って・・・生きて行くことになるんだ・・・。飲まなけれ
ば・・・マーガレットは確実に死ぬ・・・。そんな・・・
僕に決められる筈ないじゃないか・・・!!」
音楽流れ、クリストファー静かに噛み締めるように
歌う。
“どうしたらいい・・・
こんな選択・・・
自分が生きるか死ぬかなら
なんの躊躇いも迷いもない筈・・・
どうすればいい・・・
非情な選択・・・”
クリストファー「そうだ・・・僕も一緒に・・・生まれ変わればいいん
だ・・・。何も・・・マーガレット一人で辛い思いをさ
せなくても・・・僕も一緒に・・・マーガレットと行けば
いい・・・」
クリストファー、マーガレットを抱き起こし、薬を
飲ませる。そして自分もその薬を、恐る恐る飲む。
マーガレットをゆっくり下ろし、自分の変化を確認
するように、自分を見る。
クリストファー「何かが・・・変わったのか・・・?もう・・・さっきまで
の僕とは・・・違うのか・・・。(一本の指を見詰め。)
あ・・・指の怪我が・・・治っている・・・。では・・・もう
・・・」
その時、上手より若い姿のフランク、登場する。
フランク「クリストファー様、捜しましたよ。(マーガレットに気付き
。)マーガレット様!?どうされたのです!?(驚いて
駆け寄る。)」
クリストファー「大丈夫・・・直ぐ、気が付くよ・・・。それより・・・フラ
ンク・・・」
ケビン「・・・フランク・・・?あの若いのが・・・?」
クリストファー「お別れだ・・・」
フランク「え・・・?」
クリストファー「・・・僕達は、これから2人で生きていかなければ
ならないんだ・・・。父様・・・母様のことを・・・よろ
しく頼むよ・・・。」
フランク「(笑って。)何を仰るのです・・・。さあ、お家に戻りましょ
う・・・。もう間もなく夕食の時間です。」
クリストファー「・・・駄目なんだ・・・」
フランク「どうしてそんな我が儘を・・・。」
クリストファー「これから話すこと・・・誰にも言わないで、自分の
胸の中だけに仕舞っておいてくれる・・・?」
フランク「それは聞いてみないことには分かりませんね・・・。」
クリストファー「・・・うん・・・。けど、誰かに話しても、決して・・・誰
も信じてくれはしないだろうから・・・。」
フランク「・・・どんな・・・話しですか・・・?」
クリストファー「・・・僕達は・・・(黙る。)」
フランク「・・・クリストファー様・・・?」
クリストファー「・・・僕達は・・・もう人間じゃないんだ・・・。」
フランク「・・・人間ではない・・・?言っている意味が分かりませ
んが・・・。一体どう言う・・・」
クリストファー「・・・もうパンも食べない・・・スープも飲まない・・・
それでも死ぬことの出来ない体・・・そんな体に
なってしまったんだ・・・。」
フランク「一体何を可笑しなことを言っているのです・・・?」
クリストファー「・・・僕達は・・・吸血鬼になってしまったんだ・・・。
」
フランク「(笑って。)また、そんな作り話しを・・・。」
クリストファー「・・・いいんだ、信じてくれなくて・・・。だから、これ
から僕達は、永遠に人の世からは身を隠して、
ひっそりと生きていかなければならないんだ・・・」
マーガレット「(目覚め、ゆっくり起き上がる。)・・・お兄様・・・」
クリストファー「マーガレット!!もう・・・大丈夫かい?」
マーガレット「ええ・・・。私、どうしていたのかしら・・・。」
クリストファー「よかった・・・。これからは、何があっても2人きり
だ・・・。」
マーガレット「・・・2人きり・・・?」
フランク「クリストファー様・・・」
クリストファー「心配はいらないよ・・・。僕がいるからね・・・。」
マーガレット「分からないわ、お兄様の言ってること・・・。」
クリストファー「うん、そうだね・・・。でも・・・行こう、マーガレット
・・・。さようなら・・・フランク・・・。」
フランク「クリストファー様!!」
クリストファー「(マーガレットに。)歩けるかい?」
マーガレット「・・・ええ、お兄様・・・平気よ・・・。どこへ行くの・・・
?」
クリストファー「いい所さ・・・」
マーガレット「お母様達が心配するわ・・・。」
クリストファー「・・・うん、そうだね。でも、父様や母様の為にも、
こうするのが一番なんだ・・・。」
マーガレット「・・・そうなの・・・。分かったわ。私、お兄様と行く
・・・。」
クリストファー、マーガレット、ゆっくり下手方へ
行きかける。
フランク「クリストファー様!!・・・お待ち下さい!!お2人を黙
って行かせる訳にはいきません!!(2人の前へ、立
ち塞がる。)」
2人、フランクを避けて歩き続ける。
フランク「クリストファー様!!」
クリストファー「僕達を止めることは出来ないんだ・・・。」
フランク「クリストファー様!!・・・分かりました!!・・・分かりま
した・・・。」
2人、立ち止まり、振り返る。
フランク「・・・クリストファー様の言うことを、信用しましょう・・・。
そのかわり・・・まだ学校も卒業していないようなお2人
を、2人っきりで行かせる訳には参りません・・・。私も
お供します・・・。宜しいですね?」
クリストファー「フランク・・・。でも、僕達は歳をとらないんだ・・・。
死なないんだよ・・・?」
フランク「私ばかりが歳を取り・・・やがて土に帰るその時まで・・・
お2人にお仕えするのが、小さい時から、お2人の教
育係としてお側にいた、私の役目です・・・。共に参りま
しょう・・・地獄の果てまでも・・・」
クリストファー「・・・フランク・・・(嬉しそうに微笑む。)・・・うん・・・
。」
――――― “ダスティン”2へつづく ―――――
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