2012年9月18日火曜日
“バーナード” ―全16場― 5
――――― 第 9 場 ―――――
カーテン開く。
舞台はカフェ・バー。明るく楽し気な雰囲気が
漂っている。
歌手サミー、軽快なジャズを歌っている。
そこへシェイラをエスコートしてバーナード
入って来る。お互い顔を見合わせ微笑む。
2人、空いているテーブルへ進み寄り、
バーナード、椅子を引きシェイラに勧め、
自分も座る。
バーナード、手を上げてボーイを呼び、
何かを注文する。シェイラ、落ち着きなく
珍しそうに周りを見回している。
サミーの歌が終わり、静かな音楽流れる。
バーナード「どうしたんだい?」
シェイラ「何だか・・・何もかもが新鮮で・・・」
バーナード「こう言うところは初めて?」
シェイラ「ええ・・・。仕事が終わると毎日家へ直行・・・寄り道な
んて・・・」
バーナード「(笑う。)面白いことを言うな。」
シェイラ「本当よ。」
ボーイ、飲み物を2つ運んで来る。
ボーイ「お待たせしました。(テーブルへ飲み物を置く。)」
バーナード「ありがとう。」
ボーイ、下がる。
バーナード「(グラスを持って。)素敵な夜に乾杯!(グラスに
口を付ける。)」
シェイラ「頂きます・・・(グラスに少し口を付ける。)」
サミー、嬉しそうに2人のテーブルに
近寄る。
サミー「お久しぶり!バーナードさん!(横から椅子を取り、反
対向きに置いて座る。)どうしてたんすか?」
バーナード「よぉ、元気か?相変わらずいい声してるな。」
サミー「ありがとう!(チラッとシェイラの顔を見る。)彼女?」
バーナード「(シェイラに微笑みかけて。)ああ・・・同じ会社の
シェイラ・ハミルトン・・・」
シェイラ「初めまして・・・」
サミー「どうも!じゃあ君もNYイン・・・」
バーナード「(慌てて。)サミー!!プリンセス・コーポレーション
だ!!」
サミー「おっと・・・そりゃ、どっちも大手だ。(笑う。)」
シェイラ「(不思議そうに。)・・・どっちも・・・?」
バーナード「(シェイラに笑いかけて。)何でもないよ。サミー!
!おまえいい加減にしろよ!!」
サミー「ごめん、ごめん!!でも、羨ましいよなぁ・・・。バーナ
ードさんはこんな美人の彼女がいて!!(立ち上がって
。)綺麗な彼女!!ごゆっくり!!」 ※
サミー、カウンターの方へ行く。
シェイラ「綺麗だなんて・・・冗談ばっかり・・・(下を向く。)
」
バーナード「(微笑んで、シェイラを見詰める。)あいつは、嘘
を吐くような奴じゃないよ。心からそう言ったんだ
。」
シェイラ「(顔を上げて。)バーナード・・・」
バーナード「俺も奴とは同意見だな。」
シェイラ「・・・私が何故・・・この会社を選んだか分かる・・・
?笑われるかも知れないけれど・・・名前がね・・・気
に入ったの・・・。プリンセスだなんて、とっても素敵
じゃない?私には一生縁のない言葉だもの・・・。せめ
て毎日、働きに行く場所は、こんな素敵な名前の会社で
もいいかな・・・って・・・。可笑しいでしょ・・・?
」
バーナード「そんな風に思っていたのかい?シェイラは今まで、自
分の魅力に気付かなかったんだな、きっと・・・」
シェイラ「魅力・・・?」
バーナード「そう。今まで君はダイヤモンドの原石のようなものだ
ったんだ。磨けば磨く程、美しく輝いていく・・・。本当
に気付かなかった・・・?」
シェイラ「(首を強く振る。)・・・私は今まで劣等感が強くて・・・姉
がね・・・一人いるんだけれど・・・」
バーナード「ああ・・・」
シェイラ「姉は昔から頭が良くて、美人で、両親自慢の娘だった
の・・・。反対に私は、姉みたいに優等生じゃなかったか
ら、その頃から私は劣等性のお墨付きだったの・・・。姉
のようになりたいと思って頑張れば頑張る程、自分が
自分でなくなっていくような気がして・・・それでも私も両
親自慢まではいかなくても、少しでも姉に近付きたいと
思ったわ・・・。でもね、ある日突然思ったの・・・いくら頑
張って姉のようになれたとしても、それは嘘の私であっ
て、本当の私ではないんだ・・・って・・・。それからは優
等生でなくても、私は・・・私らしく生きよう!って・・・そう
思ったの。ごめんなさい・・・変な話しして・・・」
バーナード「(微笑んで。)いや、構わないよ。」
シェイラ「私、今こうしてあなたに出会えて、私の中にあった劣等
感が少し軽くなった気がする・・・あなたのお陰で・・・」
バーナード「俺は単なる、加工職人みたいなものだよ。君は君の
力で輝き出したんだ・・・シェイラ・・・」
シェイラ「・・・私が・・・私の力で・・・?」
バーナード「そう・・・」
バーナード、シェイラを見詰めたまま、
テーブルの上を滑るように手を延ばし、
シェイラの手を握る。
シェイラ「(驚いて思わず手を引っ込めようとする。)バーナード
・・・」
バーナード「(シェイラの手を強く握ったまま、シェイラを見詰め
る。)」
その時、サミー再び近寄る。
サミー「(2人を見て肩を窄めながら。)やれやれ、いいムード
のところ、お邪魔様!」
バーナード「(シェイラの手を放して、溜め息を吐きながらサミ
ーを見上げる。)野暮な奴だな。」
サミー「仕方ないよ。バーナードさんに電話だもの。(電話の
方を指差す。)」
バーナード「電話・・・?可笑しいな・・・(独り言のように。)ここ
に来てることを知ってる奴なんかいない筈なのに
・・・(立ち上がりながら。)シェイラ、少し待ってて
くれ。」
シェイラ「ええ。」
サミー「バーナードさん、俺が彼女の相手しててやるから、ごゆ
っくり!」
バーナード「余計なこと、喋るなよ!!」
サミー「OK!」
バーナード、電話の方へ歩いて行く。
サミー、さっきと同じように椅子を反対向け、
腰を下ろし、シェイラと楽し気に会話し始める。
バーナード「(電話を取って。)はい・・・(受話器を見て。)可笑
しいな・・・」
バーナード、受話器を置くと、背後に
人の気配を感じ振り向く。
(ジャック、立っている。)
店の音楽、少し静かになる。
バーナード「おまえは・・・」
ジャック「矢張り彼女は美しい人でしたね。(サングラスを取り、
ニヤリと笑う。)」
バーナード「また俺達を付けていたのか・・・」
ジャック「・・・シェイラ・ハミルトンをね。さっきはいいムードの
ところ、邪魔して申し訳ありません。」
バーナード「じゃあ、この電話はおまえが・・・?」
ジャック「まぁ・・・ね。一言忠告して差し上げようと思いまして
・・・」
バーナード「何だ・・・」
ジャック「彼女に本気にならないことですよ・・・。彼女の命は
私の手の中にあるのですからね・・・。」
バーナード「待ってくれ!!彼女はあの日、俺の顔は見てい
ないんだ!!重度の近眼で、あの日はメガネを掛
けていなかった・・・!!」
ジャック「・・・それで・・・?」
バーナード「だから彼女を殺す必要はないんだ!!」
ジャック「それは困りましたねぇ・・・。しかし私は、一度引き受け
た仕事は、如何なる事情があろうと、必ず遂行する人間で
す。残念ですが・・・」
バーナード「金なら常務が約束した分も俺が払う!!それなら文句は
ないだろう!?」
ジャック「・・・やれやれ・・・私の忠告は遅過ぎたようですね・・
・」
バーナード「・・・何・・・?」
ジャック「あなたは彼女にどうやら・・・本気で惚れてしまったよう
だ・・・。しかし、あなたには私を止めることは出来ない
。(サングラスを掛け、出て行く。)」
バーナード「・・・おい!!」
バーナード、暫くジャックが出て行った方を
呆然と見ている。
再び、音楽大きくなる。
サミー「・・・で、バーナードさんったら、柄にもなく向きになって
怒るんだ。いつもみたいに“サミー!!いい加減にしろ
!!”ってね。」
シェイラ、サミーの話しに、可笑しそうに
声を上げて笑う。
サミー「(そんなシェイラの様子に嬉しそうに。)あんた、美人な
のに全然気取ったとこないね。」
シェイラ「・・・え?」
サミー「普通、あんたみたいに綺麗な人は、俺らみたいな野郎
と話して、ゲラゲラ笑ったりしないよ。(楽しそうに。)」
シェイラ「(恥ずかしそうに下を向く。)ごめんなさい・・・あまりに
あなたのお話しが可笑しくて・・・」
サミー「謝ることなんてないさ!俺は褒めたつもりなんだから。
あんたがバーナードさんの彼女でなかったら、俺が申し
込むのに・・・。バーナードさんじゃ敵わないや。(立ち上
がって。)彼氏、戻って来たよ!じゃあ!(手を上げて行
きかけて、振り返る。)またいつでも来いよ!奢ってやる
からさ!」
――――― “バーナード”6へつづく ―――――
※ この“サミー”君のような青年、とても好きなキャラで、
特に昔に書いた趣味的な作品には、よく登場します^^;
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