2012年7月27日金曜日
“ジェイ・スペンサー” ―全13場― 2
――――― 第 3 場 ―――――
下手よりハリー登場。続いてハリーを
追い掛けるようにマックス、ダニエル登場。
マックス「編集長!!来週の特集記事の原稿、届いてますか!
?」
ハリー「ああ、今さっきファックスが届いてた。」
ダニエル「マックスさん、よかったじゃないですか!」
マックス「全く、あの爺さんときたら、いつも締め切り後だ!!
締め切り日の意味、知らないんじゃないか!?」
ハリー「しかしその先生の尻を叩いて、締め切り前にあげさせ
るのが、担当者であるおまえの役目なんじゃないか?」
マックス「しかしですよ、編集長!!あの爺さんがノラリクラリや
って、俺達が困ってるのを見るのを楽しんでるような、
陰険爺だってことは、編集長だってよく知ってるじゃない
ですか!!」
3人話しながら舞台上へ。カーテン開く。
(絵紗前。)騒然としている編集室。
ハリー「まぁ、兎に角だマックス。おまえの手腕の見せどころ・・・
ってことだ。」
マックス「そんなぁ・・・」
ハリー、自分のデスクの前へ立って、書類
の一杯乗った机の上から、探すように一枚
取って、マックスの方へ差し出す。
ハリー「ほら、おまえのお待ちかねだ。」
マックス「(紙を受け取って見る。)ねぇ・・・編集長・・・そろそろ、
この企画も終わりじゃないっすか?今度はこう・・・もっと
若者受けのする先生にお願いして・・・」
ハリー「(デスクの上を整理していた手を止めて、マックスを見る。
)確かに、あの先生のコーナーの人気は下火になってき
てるんだが。今度、編集会議にかけて、他の奴の意見も
聞いてみな。」
マックス「やった!!」
ダニエル「今度は締め切り日のちゃんと守ってくれる先生がいい
なぁ。」
マックス「そうそう!それで出来れば、若くて美人の先生なんか
にお願いできたら、担当者の俺としたら俄然やる気が
出るんだよなぁ・・・。」
ハリー「(溜め息を吐いて。)マックス・・・何時までも無駄口たた
いてないで仕事しろ・・・。」
マックス「了解!」
マックス、ダニエル、脇へ避ける。
ハリー「(書類を掲げて呼ぶ。)チャーリー!!」
チャーリー「何すか?(ハリーのデスクに近寄る。)」
ハリー「何すか・・・じゃないだろ!!何だこの原稿は!!(持っ
ていた書類で、チャーリーの頭を叩く。)」
チャーリー「いてっ!(原稿を受け取って。)何だって言われても
・・・」
ハリー「書き直しだ!!こんなんじゃ来週からおまえのコーナー
には、どっかの宣伝が入ることになるからな!!」
チャーリー「そんな・・・!!そりゃないっすよ!!(ブツブツ言い
ながら、書類を持って自分の机の方へ歩いて行く。)」
ハリー、椅子に腰を下ろして仕事を始める。
入り口からエイシー、興奮して入って来る。
デスクで原稿書きをしていたアンナに、足早
に近寄る。
エイシー「ねぇ、ねぇ!!今度の新入社員、全く驚きよね!!」
アンナ「(手を止めて、顔を上げる。)ああ、あの・・・キャロルっ
て子・・・」
チャーリー「(話しに割り込むように。)そうそう!!ありゃ丸で、
ジェシーの生まれ変わりだぜ!!」
ダニー「(可笑しそうに。)でも性格は全くの正反対だぜ。」
ジョーイ「ジェシーは仕事も出来たし、頭も切れたもんな。」
エイシー「ジェイは、もう知ってるのかしら?」
ダニー「さぁ・・・」
マックス、ダニエル、出て行こうとすると、
入り口からジェイ入って来る。
マックス、擦れ違い様に声を掛ける。
チャーリー達も気付いて。
マックス「よぉ、ジェイ!おまえベンバ共和国に行くんだって?」
ダニエル「えーっ!!本当っすか?」 ※
マックス「(ダニエルに向かって。)おまえは煩いんだよ!」
ジェイ「ああ。」
マックス「何だって、また、そんな辺鄙なところへ・・・。今度は何
撮りに行くんだよ。」
ジェイ「さぁな・・・」
アンナ「でも今、ベンバって言ったら、あんまり治安がよくないっ
て・・・」
ジョーイ「そうそう・・・」
ジェイ「そう言うところが、俺には合ってるのさ・・・。」
ジェイ、ハリーの側へ寄って行く。
マックス、ジェイの背中を見て、溜め息を
吐いてダニエルと共に出て行く。
他の者も顔を見合わせて、其々仕事に
戻る。
ジェイ「編集長!俺、来週発ちますから。」
ハリー「(ジェイに気付いて。)ジェイ。どうしても行くのか?」
ジェイ「はい。」
ハリー「おまえが何をしたいのか、俺にはよく分からんが・・・
好い加減、以前のおまえらしさを取り戻してもいい頃だ
ぜ。今回のベンバ行きにしても、あそこは今、もの凄く
危険なんだ。一旦行けば、生きて帰って来れる保障は
何もない程な・・・。」
ジェイ「分かってますよ。」
ハリー「だが、本当にあそこへ行くことは、今のおまえにとって
必要なことなのか?」
ジェイ「勿論です。編集長が言ってる以前の俺と言うのが、今
の俺と違うんだとすれば・・・俺は辞表を出してもベンバ
へ行きます。」
ハリー「(溜め息を吐いて。)まぁ、おまえがそこまで言うんなら、
俺は何も言わないが・・・そうだ、おまえに紹介したい奴
がいるんだ。おまえもいつまでも写真と原稿書き、二足
の草鞋を履く訳にはいかんだろう。」
ジェイ「編集長・・・」
ハリー「しかし彼女はまだまだ使い物にはならんだろうが、おま
えに付いていれば、その内一人前になるんじゃないかと
思ってな。」
ジェイ「(顔を逸らして。)編集長、いつも言ってるでしょう・・・。俺
は一人がいいんだ・・・。パートナーなんてご免だ・・・!!
」
ハリー「まぁ、そう言うな。(丁度入って来たロバートに向かって、
大きな声で。)ロバート!!キャロルを呼んで来てくれ!!
」
ロバート「OK!!(戸の外を覗いて。)キャロル!」
ジェイ「悪いけど・・・(行こうとする。)」
ハリー「まぁ、待て!(ジェイの肩を掴む。)」
一時置いて、再び後ろにキャロルを連れて、
ロバート入って来る。
ハリー「(側へ来たキャロルの背を押し、ジェイの前へ。)ジェイ、
今日からお前のパートナー、キャロル・タナーだ。」
ジェイ「(背を向けたまま。)俺は!!」
ロバート「ジェイ・・・」
キャロル「こう言うお仕事は初めてで・・・。上手く遣っていけるか
どうか分かりませんけど、頑張りますわ!」
ジェイ「だったら帰るんだな・・・(顔を上げてキャロルを見、驚い
て呆然とする。)・・・ジェシー・・・」
ロバート「そっくりだろ?俺も初めて見た時は驚いたよ。」
ジェイ「(ロバートを見据えて。)どう言うことだ、ロバート・・・。こ
んな奴を連れて来て・・・俺にこいつをジェシーだと思えと
言うのか!!」
ロバート「そんなつもりは・・・」
ハリー「ジェイ、兎に角これは命令だ。(机の上の原稿などをか
き集める。)キャロル・タナー、後はジェイに付いて(ジェイ
の肩に手を置いて。)一日も早く、仕事に慣れるんだ。」
ジョーイ「編集長!!会議が始まりますよ!!」
ハリー「分かった!!直ぐ行く!!」
キャロル「(敬礼して。)キャロル・タナー、了解致しました!!」
ハリー「(一時呆然として笑う。)OK、頑張れよ。(出て行く。)」
ロバート「ジェイ・・・俺は早く以前のおまえに戻って欲しいんだ
・・・。分かってくれ・・・。」
ジェイ「・・・俺のジェシーは死んだんだ・・・。こいつはジェシーじゃ
ない・・・」
ロバート「ジェイ・・・」
キャロル「本当にジェシーのこと、愛していたのね。いいわ、私の
こと、ジェシーだと思って!でも、出来ないことはあるけ
ど。(笑う。)」
ロバート「(微笑んで。)キャロル・・・君は明るいな・・・」
キャロル「それが私ですから!」
ジェイ「兎に角・・・来週から俺はベンバだ。そこへおまえを一緒
に連れて行くことは、どの道出来ない相談だ。暫くロバー
トにでも面倒見てもらうんだな。だが・・・これだけはキッパ
リ言っておく。俺はパートナーなどいらない!!(出て行く
。)」
キャロル「あ、ジェイ!!(ジェイを追おうとする。)」
ロバート「キャロルの肩を掴んで止める。)放っておけ・・・。その
うち、目が覚めるだろ・・・。」
キャロル「でも・・・」
ロバート「だが君には何だか悪いことをしたね・・・」
キャロル「(微笑んで。)私なら平気ですわ。何て言われたって。
」
ロバート「そうだな。暫く俺が面倒見るよ・・・。」
いつの間にか他の社員、集まって来る。
ジョーイ「皆いるさ。」
ロバート「ジョーイ・・・(周りを見回して、他の社員が集まってい
ることに気付く。)皆・・・」
アンナ「でもジェイがどんな反応示すか、私ドキドキしちゃった。
」
エイシー「私も!」
社員達の笑い声で、暗転。
――――― 第 4 場 ―――――
太鼓のリズムが鳴り響き、カーテン開く。
(ライト・イン。)
ベンバのある村。村人達、手に其々籠などを
持ち、愉快に歌い踊っている。
掛け声で決めのポーズ。
其々楽しそうに散らばり、仕事などを始める。
下手よりジェイ、シモン登場。
シモン「でもジェイさんは、何だってこんな辺鄙なとこに、写真な
んか撮りに来たんだい?
ジェイ「おまえだって、ずっとここで歌って来てるんだろ?」
シモン「俺はここが好きだし・・・」
ジェイ「俺も同じさ・・・」
シモン「けど、今この辺はすっごくヤバいんだぜ。」
ジェイ「俺はこう言うところに来て、初めて本当の俺に戻れるん
だ・・・。」
シモン「え?変なこと言うんだな。(笑う。)ほら、見えて来たよ。」
テア、シモンを認め、嬉しそうに駆け寄る。
テア「シモン!!どうしたの?あなたの方から来るなんて珍しい
!!」
シモン「やぁ、テア!今日はホテルのお客の案内で来たんだ。」
テア「(シモンの後ろのジェイに気付いて。)ふうん・・・」
ルチア「(テアに近寄り、ジェイを見詰めながら。)あの人、誰?」
テア「ルチア・・・ホテルのお客だって。」
シモン「(振り返って。)ジェイさん!紹介するよ。」
ジェイ、シモン達の方へ近寄る。
シモン「(テア達の方へ向いて。)こちら雑誌カメラマンのジェイ・
スペンサーさん。(ジェイの方へ向いて。)こっちはこの村
の村長の娘でテア、それとルチア。」
ジェイ「(微笑んで。)よろしく。(手を差し出す。)」
テア「はじめまして。(ジェイと握手する。)」
ルチア「こんにちは。」
テア「そのカメラマンさんが、どうしてこの村に?」
ジェイ「都会の柵から解き放たれた、大自然の写真が撮りたく
なってね。彼に案内して来てもらったんだ。」
近くを通りかかった村長マルティンと、その妻
エルバ、テア達に気付き近寄る。
マルティン「どうかしたか、テア?」
テア「父さん、母さん。」
シモン「村長さん、こんにちは。」
マルティン「(ジェイに気付き。)そちらは?」
テア「シモンのホテルのお客さんで、雑誌カメラマンのジェイ・ス
ペンサーさん。大自然の写真を撮りに来たんだって。」
マルティン「ほう・・・珍しい人もいるものだ。こんな場所へ来ると
は・・・。まぁ、この村には滅多に来ないお客人だ。ゆ
っくりして行きたまえ。」
ジェイ「ありがとうございます。」
エルバ「テア、村の中を案内してあげたら?」
ルチア「私が!」
エルバ「え?」
ルチア「あの・・・よかったら私がご案内致しますわ。テアは、シ
モンと話しがあるでしょうし。」
テア「そうね!ルチア、お願い!行こう、シモン!(楽しそうに、
シモンの腕を取って、何処かへ行く。)」
エルバ「じゃあルチア、頼みますね。あなた・・・」
マルティン、エルバ、ジェイ達から離れる。
ジェイ「この村の人は親切だな。(微笑む。)君を含めて・・・。」
ルチア「そんなこと・・・(恥ずかしそうに。)さぁ、何処をご案内
しましょうか。」
ジェイ「何処でも。君がこの村で一番素晴らしいと思うところへ。」
ルチア「分かったわ!(嬉しそうにジェイの手を取り、駆けて行こ
うとする。)」
そこへルチアの兄ジョテファ、ルチアに想いを
寄せている青年リンゴー登場。ルチア達に
気付き、近寄る。
ジョテファ「おい、ルチア。その野郎はなんだ。」
――――― “ジェイ・スペンサー”3へつづく ―――――
※ 前にも書いたとおり、本当は実在の国名を挙げていま
したが、これを書き上げた頃は、まだアマチュア劇団
ともお付き合いのない、本当に自分だけの楽しみに
書いていたような頃だったので、実在でも何ら差し障り
はなかったのですが、やはり今、こうして沢山の人達の
目に触れるようになる場での発表となると・・・少し、
躊躇いがありましたので、空想の国名を考えてみまし
た(^_^;)
一応、辞書で調べて実在しないのを確認していますが・・・
変な国名ですね^_^;気にしないで下さい~(>_<)
― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪
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