2013年1月9日水曜日
“アル・ロー” ―全16場― 4
その時、遠くからリリを呼ぶ声がする。
リリ「(そっと涙を拭う素振りをして。)行かなくちゃ。ティボー!
舞台の片付けなら後で私がするから、無理しちゃ駄目よ!」
リリ、下手へ駆けて行く。
アル、ティボーの側へ。
アル「彼女はあなたには心を開くんですね・・・」
ティボー「(振り返り、アルを認める。)アル殿・・・」
アル「あなたの前だと、あのキラキラした笑顔を惜しみなく振り
撒いている・・・。羨ましいですよ。」
ティボー「リリお嬢様は、私が心からお仕えしていた方の一人
娘でいらっしゃいますから・・・。」
アル「その・・・あなたが仕えていた方と言うのは・・・?」
ティボー「はい・・・昔はちょっとは名の知れた踊り子で、マルテ
ィーヌ様とおっしゃいました・・・」
アル「マルティーヌ・・・どこかで聞いたことがある・・・」
ティボー「え・・・?」
アル「(暫く考えて。)そうだ!!ずっと以前、私の師と仰ぐ人が
、ヨーロッパ中を騒がせる程の名踊り子に夢中になって、
写真を捨ててまでその踊り子と一緒になったのです・・・。
その踊り子の名がマルティーヌ・・・」
ティボー「マルティーヌ様をご存知で・・・?」
アル「写真で見たことが・・・もしかしてリリの父親と言うのは・・・
?」
ティボー「はい・・・有名な写真家のお方でした。アル殿のお知り
合いの方で?」
アル「小さい時に・・・私に写真を教えてくれた人物です・・・。まだ
年端もいかない私に・・・熱心に、写真を撮るは何たるかを
教えてくれた・・・。あの人がいなければ、今の私は有り得な
と言っても過言ではありません。リリがその人の・・・」
ティボー「だがお父上の方は、リリお嬢様がお生まれになって直
ぐ・・・お亡くなりになられました・・・」
アル「・・・ええ・・・亡くなったことは聞いています・・・」
ティボー「その後、暫くしてマルティーヌ様もお亡くなりになり・・・
身寄りのなくなったリリお嬢様を連れて、この年寄りが
出来ることと言えば・・・雨露の凌げる環境を見つけて
差し上げることくらいしか出来ず・・・今まで来たと言う
訳で御座います・・・。」
アル「そうでしたか・・・両親が生きていれば・・・きっとリリも今頃
は、屹度どこかで踊り子のスターになっていたに違いない
・・・」
ティボー「勿論で御座います!」 ※
アル「リリの踊りは母親譲りだったのですね。」
ティボー「はい!!・・・え?リリお嬢様の踊りをご覧になったん
で御座いますか・・・?」
アル「初めてこの村に着いた時に、森の中で楽しそうに踊って
いたリリを見かけたのです。私はもう一度あの踊りが見た
くて・・・それでこの一座に押しかけたと言う訳です・・・」
ティボー「そうでしたか・・・。リリお嬢様はマハルさんよりずっと
上手くお踊りになられるのに・・・ここでは丸で使用人の
ような扱いで・・・私が不甲斐ないばかりに・・・(思わず
涙ぐむ。)」
ティボー、下手へ出て行く。
アル、その方を見ている。
その時、俄に上手方が騒がしくなる。
アル、振り返ると、ルダリ、ガロに
抱かえられてマハル出る。
後ろから、他の仲間達続く。
ルダリ「(慌てた様子で。)おい、誰がマーゴさんを呼んで来い
!!」
リー、それを聞いて駆けて行く。
ルダリ、ガロ、マハルをソファーに
掛けさせる。
他の者達、マハルに近寄り、口々に
心配そうに声を掛けるが、マハルは
痛みを訴える声を上げている。
アル、驚いて駆け寄る。
アル「どうしたんだ、一体!!」
マハル「アル!!(アルの手を握る。)」
ルダリ「(打切棒に。)関係ないだろ!!」
ガロ「ルダリ!!そんな言い方ないだろ!!俺達、よく分から
ないんだけど、踊りの練習中に足を挫いたようなんです。」
マハル「アル!!痛いわ!!アル!!」
アル「大丈夫かい?」
そこへマーゴ、駆け込んで来る。
リー続く。
マーゴ「(慌てて。)マハルが怪我したって!?何処!?」
ルイーゼ「あ!!マーゴさん、早く!!」
エレーナ「足、挫いたみたいで!!」
マーゴ、マハルの傍らへ膝をついて、
足を見る。(他の者、心配そうに覗き込む。)
マーゴ「(暫く見て。)大丈夫!ただの捻挫よ。どってことないわ
。」
マハル「こんなに痛いのに、どってことないはないでしょ!!」
マーゴ「自分でやったんでしょ?少しくらい我慢しなさい!誰か
湿布しといてやって!」
サミー「OK!(一旦、薬箱を取りに出て行く。)」
マーゴ「たいしたことはないけど、舞台は当分無理ね・・・。困っ
たねぇ・・・」
サミー、薬箱を持って入って来る。
(マハルの足首の手当をする。)
そこへロバン、入って来る。
ロバン「(驚いた様子で。)マハルが怪我したって!?」
マーゴ「あ、あんた。ただの捻挫だけどね。」
ロバン「舞台は?」
マーゴ「駄目ね、当分・・・」
ロバン「畜生・・・!他に踊れる奴はいねぇし・・・なんてこった!
マハル!おまえは一座のスターだって自覚がねぇんじゃ
ないか!!舞台に穴開けられないのは、おまえもよく知
ってるだろ!!」
マハル「・・・ごめんなさい・・・」
ロバン「レニエの歌だけじゃ話しにならねぇ。金も貰えないぜ・・・
。」
マーゴ「困ったねぇ・・・」
ロバン「(マハルに。)手当が済んだら奥で休んでろ!!(怒っ
たように。)」
マハル、仲間に抱かえられ出て行く。
他の者達、それに続く。
ロバン、マーゴ、出て行こうとするのを
認めたアル、慌てて声をかける。
アル「あの!!」
ロバン「(不機嫌そうに振り返って。)あ!?何だ。」
アル「あの・・・リリに踊らせて下さい!!」
ロバン、マーゴ、一時置いて顔を見合わせ、
大笑いする。
ロバン「・・・リリだと・・・?何、寝惚けたこと言ってんだ!あいつ
に舞台が勤まる訳ねぇだろ!!」
アル「いや・・・僕は見たんです!!彼女が素晴らしい踊りを踊
るところを!!彼女ならマハルの代わりに必ず、舞台を勤
めることができますよ!!だから彼女に是非・・・」
ロバン「駄目だ、駄目だ!!冗談はそのくらいにしといてくれ!
ちゃんと出来る保証もないのに、あいつを出す訳にはい
かねぇ!!」
アル「どうして彼女の踊りを見たこともないのに、そんなことが
言えるんです!!」
ロバン「煩い煩い!!どうしてもこうしても、あいつは踊りなん
て踊れねぇに決まってる!!放っといてくれ!!」
アル「リリを舞台に立たせて下さい!!」
ロバン「駄目だ!!」
マーゴ「(口を挟むように。)待って!!でも・・・あの子の母親
って、昔は名の通った名踊り子だったんでしょう?ひょ
っとして、その血を引いてたらリリも少しくらい踊れたっ
て不思議はないわよね。」
ロバン「何言ってんだ!!」
マーゴ「舞台に穴を開けることも出来ないし・・・出してみたら
・・・?」
ロバン「おまえ、それで失敗したら・・・」
マーゴ「失敗したら・・・(アルの方を向いて。)あなたが責任取
ってくれるんでしょう?(ニヤリと笑う。)」
アル「・・・分かりました・・・マハルが休んでいる間の稼ぎ分は、
私が出しましょう・・・。それでリリを舞台に立たせてもらえ
ますね?」
マーゴ「いいわ。今夜から早速よ!」
アル「ありがとう!!(嬉しそうに走り去る。)」
ロバン、マーゴ残してカーテン閉まる。
ロバン「いいのか?リリなんか出しても。舞台に穴どころか傷
がつかなきゃいいがな。」
マーゴ「平気よ!もしリリがそんなことになったら、あの男に
リリを買い取ってもらうだけよ!(顎でアルが出て行っ
た方を指す。)」
ロバン「え・・・?」
マーゴ「あの男、金持ちみたいだし、リリのこともお気に入りの
ようだから、高く買ってもらうわ!」
ロバン「おいおい、それじゃあ丸で失敗してもらうのが狙いの
ようだぜ。」
マーゴ「あら、そう?私は一座が大事なだけよ。」
2人、笑いながら出て行く。
音楽で暗転。
――――― 第 9 場 ―――――
絵紗前。(リリの部屋。)
リリ、窓の外を眺めている。
その時、扉をノックする音。
リリ「(その音に慌てて。)ごめんなさい!!今、行きます!!」
アル「(扉を開けて、入って来る。)俺だよ!」
リリ、驚いた様子で立ち尽くす。
アル、嬉しそうにリリに駆け寄る。
アル「(リリの手を取り。)リリ、舞台に立つんだ!!今夜から!
!」
リリ「え・・・?」
――――― “アル・ロー”5へつづく ―――――
※ この辺り・・・書き直しつつ書いている為、少々時間
がかかっております・・・(^^;
― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪
(どら余談^^;)
今日の“グーグル”文字のミニゲーム・・・
面白いですね(^-^)
思わず頑張って氷を綺麗にしてしまいました(^_^;)
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