2013年2月12日火曜日

“アル・ロー” ―全16場― 完結編



      その時、扉をノックする音。
      リリ、立ち上がる。

  リリ「・・・はい・・・」

      アル、入って来る。

  アル「リリ・・・」
  リリ「アル・・・(慌てて涙を拭うように。)」
  アル「ミシェルの奴に・・・何か聞いたのかい?」
  リリ「(微笑む。)もう・・・帰ってしまうんですってね!」
  アル「長いこと留守にしてたから・・・仕事が立て込んでてね。」
  リリ「私、今まで・・・考えれば当たり前のことなのに・・・アルに
    も自分の生活があるなんて・・・思ってもみなかった・・・馬鹿
    よね・・・いつまでも一緒にいれる筈ないのに・・・私・・・」
  アル「リリ、違うんだ!」
  リリ「・・・え・・・?」
  アル「一緒について来て欲しい・・・」
  リリ「アル・・・」
  アル「俺と一緒に行こう・・・」
  リリ「(嬉しそうに微笑む。が、直ぐに悲しそうな眼差しになり、
    ゆっくり首を振る。)」
  アル「どうして!?」
  リリ「・・・私とあなたは・・・住む世界が違い過ぎるわ・・・。私を
    連れて帰っても・・・あなたが困るだけ・・・」
  アル「そんなことある訳ないだろ!!俺は君を愛しているんだ
     !!ずっと一緒にいたい・・・!!」
  リリ「・・・もう・・・決めたの・・・ロバンさん達と行くって・・・」
  アル「リリ!!(腕を掴む。)」
  リリ「離して・・・(涙声で。)・・・あなたとは行けない・・・」

         リリ、走り去る。
         
  アル「・・・どうして・・・リリ・・・」

         フェード・アウト。

      ――――― 第 15 場 ―――――

         カーテン前。マハル出る。
         続いてリリ出る。

  マハル「あんた、本当にアルについて行かないの?」
  リリ「(頷く。)」
  マハル「彼について行かないでどうするの!?あんた、一生
      こんな芝居一座で過ごすつもり?」
  リリ「・・・私・・・」
  マハル「アルは真剣に、あんたのことを愛してるのよ!!あん
      ただって分かってんでしょ!?」
  リリ「・・・私なんかが一緒に行ったら・・・迷惑なだけですから
    ・・・」
  マハル「あんた、どうして自分にもっと自信を持たないの?アル
      は初めてあんたを認めてくれた人だって言ってたじゃな
      い!!」
  リリ「・・・マハル・・・」
  マハル「第一、この一座のスターは2人もいらないのよ!!こ
       の一座のスターは私!!あんたがいつまでもいたら
       迷惑なのよ!!愚図愚図言っててないで、さっさとアル
       と行っちゃいなよ!!・・・悔しいけど・・・アルにもあん
       たにも・・・お互いが必要なのよ・・・。あんたが行かない
       んなら、私が行っちゃうよ!!」
  リリ「(思わずマハルに抱き付き、涙声で。)マハル!!ありがと
    う・・・ありがとう・・・」
  マハル「分かったら、さっさと行きなよ!!後は私が上手く皆に
      話しとくからさ・・・。ティボーもちゃんと連れてくんだよ。」
  リリ「(頷く。)・・・あなたのことは一生忘れない・・・」

         リリ、走り去る。

  マハル「幸せにならなかったら許さないからねー!!(叫ぶ。)
       」

         マハルの叫び声で、フェード・アウト。

      ――――― 第 16 場 ―――――

         カーテン開く。と、ステーションの雑踏の中、
         汽笛の音が響く。
         人混みの中からダンドラ、ミシェル現れる。
         アル、ゆっくり2人に続く。

  ダンドラ「元気だせよ!彼女が行かないと言ったんだろ?仕方
       ないじゃないか。戻ったら女なんか選り取りみどりだ。」
  アル「軽々しく言うな!!彼女程の素晴らしい女性がそう簡単
     に見つかるものか!!」
  ダンドラ「(呆れたように。)相変わらず短気だな。」
  アル「俺は諦めるものか!!いつか必ずもう一度彼女を捜し出
     してみせる!!」
  ダンドラ「それにしても全く驚いたな。朝になってみると、もう出
       発した後だったなんて。リリをおまえに拐われそうで、
       焦ったんじゃないか、あの親方。(笑う。)」
  アル「畜生!!売れっ子になった途端、手の平返しやがって
     、あの野郎!!」
  ダンドラ「やれやれ・・・ミシェル、チケットを買いに行こう。こい
       つは手に負えないぜ・・・」

         ダンドラ、ミシェル出て行く。
         アル、トランクケースに腰を下ろし、
         物思いに耽る。 
         その時、雑踏に紛れて微かにアルの名
         を呼ぶ声が聞こえる。
         アル、驚いて立ち上がり、辺りを見回す。

  アル「リリ・・・?そんな訳ないか・・・」

         雑踏の中から現れたリリ、アルから
         少し離れて立つ。

  リリ「(嬉しそうに。)アル!!」
  アル「(驚いて。)リリ!?どうして・・・」
  リリ「私も・・・一緒に行っていい・・・?(微笑む。)」

         アル、リリの後ろに立つティボーに気付く。
         ティボー、嬉しそうに頷く。

  アル「(リリに駆け寄り抱き締める。)勿論さ!!」

        
         (音楽流れる。)
         ダンドラ、ミシェル入って来る。
         アルとリリに気付き、2人嬉しそうに
         顔を見合わせる。
         アル、ダンドラに気付き2人、頷き合う。
         ダンドラ、ミシェル、ティボー去る。
         アル、リリの手を取り歌う。

         “いつからだろう・・・
         この手を離したくないと
         心から感じたのは・・・
         今まで一度も触れたことのない
         胸に染み渡るこの温かさに・・・
         いつも側にいて欲しい・・・
         そう感じたのは・・・
         もう離さない決して・・・
         やっと掴んだこの温もりは
         永遠の先へと続いて行く
         終わりのない幸せだから・・・”
         
   

  アル「愛しているよ・・・」
  リリ「(嬉しそうに微笑む。)」

         嬉しそうに手を取り合い、微笑み
         彼方を見遣る2人。








         ――――― 幕 ―――――

  








     それでは次回掲載作品の紹介をしておきたいと思い
    ます(^-^)
    次回は、私作品の中では古い部類の作品ですが、
    私が好きでよく使用していた題材・・・多分・・・(^_^;)
    の、作品をご覧頂こうと思っています♪

    それでは次回”レナード”・・・と言う名前の作品・・・
    以前ありましたっけ・・・?お楽しみに♥













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