2013年3月29日金曜日

“ジュリー” ―全13場― 4


  ジュリー「探偵・・・?お祖父様・・・探偵を雇われたの・・・?」
  レナード「ああ。」
  ジュリー「もう・・・時間の問題ね・・・見つかるのは・・・。それで
       また私は、籠の中に連れ戻されるのよ・・・。」
  レナード「・・・俺が・・・守ってやるよ・・・」
  ジュリー「・・・え・・・?」
  レナード「やっとの思いで、その籠の中から飛び出して来たん
       だろ?」
  ジュリー「・・・でも・・・これ以上あなたに迷惑は・・・」
  レナード「迷惑なんて!!君は偶然ダンス教室の扉を開いた
       ・・・。それは偶然でなく必然だったんだ。俺達が出会
       うのは決まっていた・・・そう考えればいい。」
  ジュリー「レナード・・・」
  レナード「君を守るのが、今の俺に課せられた課題だ・・・。」
  ジュリー「・・・ありがとう・・・」
  レナード「・・・いや・・・。そうだジュリー、どこか遊びに行かな
        いか?」
  ジュリー「・・・え?」
  レナード「デートだよ!」
  ジュリー「デート・・・」
  レナード「ああ。今までデートなんてしたことないんだろ?」
  ジュリー「ええ。」
  レナード「どこに行きたい?君のリクエストに答えるよ。」
  ジュリー「・・・本当?」
  レナード「高級フランス料理なんてのは無理だけど・・・(笑う。)
       」
  ジュリー「(笑う。)じゃあ映画館に行ってみたいわ!」
  レナード「OK!」

         手を取り合う2人。暗転。(カーテン閉まる。)

      ――――― 第 7 場 ―――――

         カーテン前。
         グレイヴィル大統領、秘書レイチェル立つ。
         上手より側近サガット、登場。

  グレイヴィル「探偵から連絡はあったか?」
  レイチェル「いえ、まだ・・・」
  グレイヴィル「一体いつまでかかっているのだ。高い金を払って
          雇っているのに!」
  サガット「そんな直ぐは、無理でしょう。いくら彼らが優秀だと言
       っても・・・。」
  グレイヴィル「早く見つけなければ、もう日がないと言うのに・・・
          。こんなことが先方にバレでもしたら・・・」
  サガット「それはその通りですが・・・」

         その時、下手よりジュリーの妹(エレーナ)
         登場。

  エレーナ「お祖父様。」
  グレイヴィル「(エレーナを認める。)おお、エレーナ。」
  エレーナ「お姉様はまだお戻りにならないの?」
  グレイヴィル「何、直ぐに戻るだろう。おまえは心配しなくていい
          のだよ。」
  エレーナ「お姉様は何故、家出なんてなさったのかしら・・・」
  グレイヴィル「ジュリーは今頃になって、結婚に少々尻込みして
          いるだけなのだ。あまりにも世間知らずに育てて
          しまった為に、未知のものに対して、心の受け入れ
          が未熟だったのだよ。・・・全く困ったものだが・・・」
  エレーナ「・・・そうかしら・・・」
  グレイヴィル「え?」
  エレーナ「お姉様は妹の私から見ても、とても世間のことはよく
        ご存知でしたわ。自分のお考えもちゃんとお持ちだっ
        たし・・・。きっと自分のことは自分で決めたかったの
        ね・・・。お祖父様に決めてもらうのではなくて・・・。」
  グレイヴィル「エレーナ・・・」
  エレーナ「(微笑んで。)私は大丈夫。何も考えなどありません
        から・・・。」
  グレイヴィル「(少し考えて。)・・・少々・・・自由にさせてやるこ
          とも、必要だったのかも知れないな・・・。」

         4人、ゆっくり出て行く。暗転。

      ――――― 第 8 場 ―――――

         カーテン開く。と公園。静かな音楽流れる。
         月灯りの中、時々、人々が行き交う。
         奥よりジュリー、嬉しそうに出る。
         その後をゆっくり、レナード続く。

  ジュリー「(思い出すように。)素敵な映画だったわね!!」
  レナード「映画も初めて・・・?」
  ジュリー「ええ・・・。(溜め息を吐いて。)今までの私の生活は、
       私のものであって、私のものではなかったの・・・。あれ
       も駄目・・・これも駄目・・・。一人で外を歩くなんてとん
       でもないこと・・・。況してや映画館なんて・・・」
  レナード「自由になった感想は・・・?」
  ジュリー「最高・・・何もかもが今までと違って新鮮で・・・。丸で
       夢を見ているみたい・・・。」
  レナード「(嬉しそうに。)よかった・・・」
  ジュリー「あなたのお陰よ・・・」
        
  レナード「違うよ・・・俺はほんの少し、協力しただけさ。」
  ジュリー「レナード・・・」
  レナード「そうだ、実は俺の長年の夢が叶いそうなんだ。」
  ジュリー「え・・・?」
  レナード「ずっとやりたかった舞台のオーディションがある・・・」
  ジュリー「本当に?」
  レナード「ああ・・・。まだオーディションがあると分かっただけで
       、役を手にした訳じゃあないけど・・・。」
  ジュリー「あなたなら大丈夫よ!オーディションはいつ?」
  レナード「来週の日曜日なんだ。」
  ジュリー「・・・来週の・・・?」
  レナード「急だろ?・・・ジュリー?そうか・・・来週の日曜日は
       ・・・」
  ジュリー「(微笑んで。)私も行ってみたいわ。」
  レナード「一緒に行こう。」
  ジュリー「本当?」
  レナード「ああ。」
  ジュリー「嬉しい・・・。それよりあまり日がないのに、映画なん
       かに付き合わせてしまって・・・。練習しなきゃいけない
       でしょう?」
  レナード「1日くらいどってことないさ。今までこの日の為に練習
       を積み重ねて来たんだ。」
  ジュリー「そうね・・・」
  レナード「そんなに心配なら、今ここで踊って見せようか?」
  ジュリー「レナードったら・・・(笑う。)でも何だか自分のことのよ
       うに、胸がドキドキするわ!!」
  レナード「ジュリー・・・」
  ジュリー「応援してるわ!!」
  レナード「・・・どうしてそんなに他人のことを自分のことのように
       喜べるんだ・・・?」
  ジュリー「私・・・あなたは私の夢のような気がするの・・・。今ま
       で夢見てた生き方をしてる人・・・。だからあなたの夢は
       私の夢・・・。私、あなたに出会えてよかった・・・。勇気
       を出して、家を飛び出して最初はどうしていいのか分
       からなくて途方に暮れてた時に、楽しそうな音楽が聞
       こえてきた・・・それに惹かれるように扉を開けたの・・・
       。それは私にとって、自由への扉だったのね・・・。その
       向こうにあなたがいた・・・。」
  レナード「(思わずジュリーを抱き締める。)」
  ジュリー「(驚いて。)レナード・・・」
  レナード「ここにいればいい・・・。これからずっと・・・。」
       

         その時、ジャックとボビー、その部下達
         ゆっくり出る。

  ジャック「残念だが・・・それは無理な話しだ・・・」
  レナード「(驚いて。)おまえら・・・!!(ジュリーを背後へ隠す
       ように。)」
  ジュリー「(不安な面持ちで。)レナード・・・」
  ジャック「彼女を渡してもらおう・・・」
  レナード「・・・いやだ・・・と言ったら・・・」
  ジャック「その選択肢は、残念ながらない・・・」

         ジャック、目で合図をすると、後ろに控えて
         いた部下達、前へ進み出る。
         (緊迫感のある、激しい音楽流れる。)
         レナード、ジャックの部下達、構える。
         一時置いて、殴り合いの喧嘩が始まる。

  ジュリー「レナード!!」

         暫く、互角に闘っているが、段々とレナード
         が劣勢に追いやられる。

  ジュリー「もう、やめて!!(叫ぶ。)」

         その声に、部下達の手が止まる。

  レナード「ジュリー・・・」

         ジュリー、レナードに駆け寄る。

  ジュリー「(涙声で。)ごめんなさい・・・私の為に・・・。もういいの
       ・・・ありがとう・・・(立ち上がり、ジャックの方を向いて。
       )一緒に帰ります・・・。だから彼に手を出さないで・・・」
  レナード「ジュリー!!駄目だ・・・!!(腕を押さえながら立ち
       上がる。)」

         ジュリー、ジャック達の方へ。

  レナード「(足を引き摺りながら、後を追うように。)ジュリー!!
       」

         
         ジュリー、一度だけ振り返り、淋しげな
         微笑みをレナードに投げかけ、ジャックと
         共に出て行く。
         追おうとするレナードの前に、ジャックの
         部下達、立ち塞がる。

  レナード「ジュリー!!(叫ぶ。)」

         
         
         暗転。

      ――――― 第 9 場 ―――――

         フェード・インする。と、カフェバー。
         (サラ、歌っている。)
         店内、賑やかに沸き返っている。
         そこへ生徒達入って来て、それぞれ
         思い思いの場所へ散らばる。
         サラ、歌い終わると、明るい音楽流れる。
         マイケル、カウンターへ。

  マシュー「やぁ、マイケル。今日、レナードは?」
  マイケル「ああ、あいつ今日はデート。(椅子に座りながら。)」
  マシュー「へぇ・・・。この間の彼女と?(マイケルにグラスを差
       し出す。)」
  マイケル「当たり。(出された飲み物を飲む。)」
  マシュー「相変わらずモテる奴だな。(笑う。)」
  マイケル「全く、羨ましい話しだよ。だけど今回は、ちょっと様子
       が違うんだ・・・」
  マシュー「違うって何が・・・?」
  マイケル「いや・・・何て言うか・・・真剣なんだよな、あいつ・・・。
       いつもは遊び半分って感じのところがあるんだけど、
       今回は・・・どうやら本気らしいんだ。」
  マシュー「いいことじゃないか。大人になったんだよ。」
  マイケル「うん・・・まぁ、そうなんだが・・・」

         サラ、近寄る。

  サラ「何の話し?」
  マイケル「よぉ、いつもいい歌声だな。」
  サラ「ありがとう。(マイケルの隣に腰を下ろしながら。マイケル
     に向かって。)私にもご馳走してくれる?」
  マイケル「ああ。マシュー!」
  マシュー「OK。(サラにビールを注いだグラスを渡す。)」
  サラ「(マイケルに向かって、グラスを上げる。)頂きます!(飲
     む。)はぁ・・・歌の後の1杯は最高!ところで今日はレナ
     ードの姿が見えないけど?」
  マイケル「あいつは野暮用。」
  サラ「デート?」
  マイケル「そう言うこと。(ビールを飲む。)」
  サラ「昨日の怪しい男たちに絡まれてた娘と?」
  マイケル「ああ。」
  サラ「あの娘、どこかで見たことあるのよねぇ・・・」
  マイケル「グレイヴィル大統領の孫娘。」
  サラ・マシュー「(声を揃えて。)えーっ!?」
  サラ「本当?」
  マイケル「ああ。」
  マシュー「どうりで何だか品が感じられた訳だ。」
  サラ「そんな娘とレナードがどうして・・・?」
  マイケル「さぁ・・・」
  マシュー「レナードの奴が夢中になってるって言う娘がその娘
       かい・・・?」
  マイケル「ああ。」
  マシュー「(溜め息を吐いて。)・・・そうか・・・」

         その時、暗い面持ちでレナード入って来る。
         空いているテーブルに腰を下ろし、ボーイ
         を呼ぶ。

  ラリー「いらっしゃい、レナードさん!」
  レナード「テキーラ・・・瓶ごと頼む・・・」
  ラリー「え・・・本当に?」
  レナード「ああ・・・」
  ラリー「いいんですか?強いですよ。」
  レナード「いいから早く持って来てくれ!(机に伏せる。)」

         ラリー、肩を窄めてカウンターの方へ。

  ラリー「マスター、テキーラ1本。」
  マシュー「OK。(瓶を取って、ラリーにコップと共に渡しながら。)
       誰だ?こんなの瓶ごと頼む奴は・・・」
  ラリー「レナードさん。」
  マイケル・サラ「(声を揃えて。)えーっ!?」
  マイケル「(振り返って、レナードを捜すように。)来てるのか?
       あいつ・・・」
  ラリー「たった今ね。」
  マイケル「で、彼女は?」
  ラリー「一人だったけど・・・」
  マイケル「(ラリーの持っていた盆の上から、瓶をコップを取って
        。)俺が持って行くよ。」
  










       ――――― “ジュリー”5へつづく ―――――












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   (どら余談^_^;)

   夏に公演する7回公演の、2作品目が書き終わりました♥
   “仕上がりました”と言うには、まだ曲がついていないので、
   嘘になりますが、今回は台詞もしっかり書き込んだ、長編
   になっているので、ここまで出来れば完成は間もなく・・・
   だといいんですけどね・・・(^_^;)

   夏公演、お楽しみに♪



































2013年3月16日土曜日

“ジュリー” ―全13場― 3

     
          少し薄いですが・・・(^^;

    ↓ の5場前に走り書きしていた舞台セット
      想像図です(^O^)




 
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     ――――― 第 5 場 ―――――

         カーテン開く。と、ダンス教室。
         生徒達、其々練習している。
         入口から新聞を手に、ダニー走り登場。

  ダニー「(慌てて。)大変だー!!大変なんだよ!!」
  ルイーズ「どうしたの?慌てて・・・」
  ダニー「(嬉しそうに。)見てくれよ、これ!!月末の日曜日に
      オーディションがあるんだ!!」

         生徒達、ダニーの回りに集まる。

  アルバート「(汗を拭きながら。)何のオーディションがあるって
         ?」
  ダニー「だから“ダンサー”だよ!!あの昔やって一世を風靡し
      た“ダンサー”だよ!!それの主役オーディションがある
      んだ!!」
  マイケル「本当に!?」
  ダニー「ああ!新聞に書いてあるんだ、間違いないよ!!」

         皆、口々に驚きの声を上げている。
         その時、奥からレナード入って来る。

  レナード「おいおい、練習はどうした?」
  マイケル「レナード!(駆け寄る。)」
  レナード「どうしたんだ、そんなに興奮して・・・」
  マイケル「おまえがずっとやりたがってた“ダンサー”の主役オ
        ーディションがあるんだ!!」
  レナード「え・・・?」
  マイケル「おまえが長い間待ってた時が、とうとう来たんだよ!
        !」

         レナード、呆然と。

  マイケル「おい!!嬉しくないのかよ!!チャンスがやっと巡
        って来たんだよ!!おまえなら必ずこの役をものに
        することが出来る筈だ!!」
  レナード「遂に・・・?(ダニーの差し出した新聞を手に取る。)」
  マイケル「そうだよ!!」
  レナード「(興奮して。)やったぞ!!このチャンスをものにでき
       たら、いよいよ夢が叶うんだ!!」
  マイケル「やったな!」
  レナード「ああ。だがチャンスが巡ってきただけで、まだ手にし
       た訳じゃない。後2週間か・・・」
  アルバート「レナードなら大丈夫さ!!」
  ルイーズ「そうよ!!」

         皆、口々に興奮した様子で談笑している。
         その時、2階の入口からジャックとボビー
         入って来て下を見下ろしながら、ゆっくり
         階段を下りて来る。
         生徒達、2人を認め怪訝そうに見詰める。
         レナード、2人に近寄る。

  レナード「なんだ・・・またおまえ達か・・・。何か用か?」
  ジャック「昨日の女はどうした?」
  レナード「知らないね・・・。あの後、彼女は直ぐに出て行ったん
       だ・・・」
  ジャック「隠し立てすると為にならないぜ。」
  レナード「(探るような眼差しを向ける。)・・・何故・・・おまえ達
       は彼女を捜してるんだ・・・?」
  ジャック「何故・・・そんなことを・・・?」
  レナード「いや・・・何、えらく熱心に彼女を捜しているみたいな
       んで・・・何か協力できるんじゃないかと思っただけさ
       ・・・」
  ジャック「・・・我々が何故・・・彼女を捜しているか知りたいか・・・
       ?」
  ボビー「(小声で。)ジャックさん・・・守秘義務が・・・」
  ジャック「・・・構わない・・・」
  レナード「・・・何故・・・捜している・・・?」
  ジャック「・・・彼女の名前は・・・ジュリー・グレイヴィル・・・」
  レナード「・・・グレイヴィル・・・?」
  アルバート「グレイヴィルって言えば、大統領もグレイヴィル・・・
         (笑う。)」
  ドロシー「あら、そうなの?(笑う。)」
  マイケル「馬鹿だな・・・」
  レナード「・・・もしかしてジュリーは・・・」
  ジャック「・・・そう・・・彼女はグレイヴィル大統領の孫娘だ。」

         笑っていた生徒達、笑いを止める。

  レナード「その彼女が・・・何故一人、こんなところに・・・?」
  ジャック「彼女は大統領が決めた結婚に反発して家出した。
       我々は式までに彼女を連れ戻す為に雇われた探偵
       だ・・・。」
  マイケル「探偵・・・?」
  レナード「・・・結婚・・・」
  トレイシー「お嬢様なんじゃない・・・。」
  レナード「独り言のように。)囲われてた訳か・・・」
  ジャック「それで・・・彼女をどこへやった・・・?」
  レナード「知らない。マイケル!アルバート!探偵さんがお帰
       りだ!お送りしろ!」

         マイケル、アルバート、ジャック達の前へ。
         階段方を指し示す。

  ボビー「協力すると言ったんじゃないのか?」
  ジャック「ボビー、構わないさ。今日のところはこれで帰るとす
       る。だが、いいか?彼女を隠し立てすると、おまえ達
       全員が誘拐罪で訴えられることになるんだ。そのこと
       を忘れるな。」

         ジャック、ボビー出て行く。

  ドロシー「誘拐だって・・・」
  ダニー「何か、ヤバくない・・・?」
  マイケル「おい、どうするんだレナード・・・」
  レナード「心配するな。皆は練習に戻るんだ。」

         生徒達、練習に戻る。

  マイケル「彼女、オードリーの家にいるんだろ?」
  レナード「ああ・・・」
  マイケル「あまり係わらない方がいいんじゃないか?」
  レナード「・・・ジュリーは真剣だったんだ・・・。彼女は彼女なり
       に考えて・・・その思いが真剣だったからこそ・・・勇気
       を出して家を出たんだ・・・。そんな彼女を・・・俺は見
       捨てることは出来ない・・・。」
  マイケル「おまえ・・・本当に刑務所送りになるぜ。」
  レナード「たとえ・・・俺が刑務所送りになってもだ・・・。」
  マイケル「レナード・・・」

         暗転。

      ――――― 第 6 場 ―――――

         絵紗前。オードリーの家。
         ジュリー、ソファーに腰を下ろし、考えて
         いるよう。(手には雑誌。)
         オードリー、奥からカップを2つ持って
         出て来る。

  オードリー「(1つのカップをジュリーに手渡す。)はい、コーヒー
        。」
  ジュリー「・・・ありがとう・・・。」
  オードリー「(ソファーに腰を下ろして。)で、ジュリーはいつレナ
        ードと知り合ったの?」
  ジュリー「私がたまたま彼のダンス教室に立ち寄って・・・」
  オードリー「ダンサー志望なの?」
  ジュリー「(首を振る。)私、踊れないですから・・・」
  オードリー「ふうん・・・。付き合ってるの?」
  ジュリー「(驚いて。)え?そんなまだ昨日出会ったばかりで・・・」
  オードリー「そんなの関係ないわよ。私ね、昔、彼と付き合って
         たんだ。」
  ジュリー「え・・・?」
  オードリー「まだ私がダンサーだった頃の話し。あ、でも安心し
        て。今はただの友達だから!(笑う。)彼、結構モテる
        からね。レナード目当てで教室に通って来る女、多い
        のよ。だから気をつけた方がいいわよ!取られないよ
        うにね。」
  ジュリー「そんな・・・」
  オードリー「(笑って。)冗談、冗談!」
  ジュリー「でも・・・彼の踊りって本当に素敵・・・だから、そう言う
       女性が沢山いるのも分かります。」
  オードリー「だから冗談だって!彼、モテるけど結構堅いからね
        ・・・。でも・・・あなたって何だか変わってるわね・・・。」
  ジュリー「・・・え・・・?」
  オードリー「何か、私達と違うって言うか・・・(不思議そうに。)
        どこか上品そうな・・・」

         その時、呼び鈴の音。

  オードリー「はぁい!(立ち上がって、入口の方へ。)」

         オードリー、扉を開けると、マーティン。

  オードリー「あら、珍しく早いじゃない。」
  マーティン「(中に入りながら。)たまにはね。」
  オードリー「(ジュリーに。)今の私の彼氏!」
  ジュリー「こんにちは・・・」
  マーティン「やぁ!彼女は?」
  オードリー「レナードから頼まれたの!」
  マーティン「ふうん・・・。」
  オードリー「ちょっと待ってて!仕度してくるから。」
  ジュリー「(立ち上がって。)あの・・・お出掛けですか?」
  オードリー「仕事なの。あ、ジュリーはゆっくりしてていいから
         ね。(奥へ入る。)」
  マーティン「君、レナードの彼女?」
  ジュリー「いいえ・・・」
  マーティン「ふうん・・・(マジマジ、ジュリーを見詰めて。)どっか
         で会ったことある?」
  ジュリー「(首を振る。)」
  マーティン「俺、君のこと見たことあるような気がするんだ・・・。
        どこでだろう・・・」

         オードリー、上着を羽織って登場。

  オードリー「ジュリー!彼の言うこと、真剣に聞いちゃ駄目よ!
         女を口説く時の手なの!(笑う。)」
  マーティン「オードリー!俺は真面目に言ってるんだぜ!」

         その時、再び呼び鈴の音。

  オードリー「はーい!!誰かしら・・・(扉の方へ。)」

         オードリー、扉を開けると、レナード。

  オードリー「あら・・・。ジュリー!お待ちかねが来たわよ。」
  ジュリー「え?」

         レナード、入って来る。

  マーティン「やぁ、レナード!」
  レナード「よぉ・・・(手を上げる。)」
  オードリー「じゃあ私、仕事に行くけど、後はごゆっくり!マー
        ティン、行きましょう!」

         オードリー、マーティン、扉の方へ。
         レナード、ゆっくりジュリーの側へ。
         マーティン、扉の近くで思い出したように
         立ち止まり、振り返ってジュリーの顔を
         見る。

  マーティン「分かった!!」
  オードリー「え?」
  マーティン「(小声で。)グレイヴィル大統領の孫娘だ・・・!!」
  オードリー「嘘・・・!?」
  マーティン「本当だ・・・。前に新聞で見た・・・」
  
         2人、一斉に振り返り、ジュリーを見る。
         驚いた面持ちで顔を見合わせ出て行く。

  ジュリー「昨日は色々とありがとうございました。(頭を下げる。
       )」
  レナード「礼なんかいいよ。よく眠れたかい?」
  ジュリー「ええ!あんなにぐっすり眠ったのは、何だか久しぶり
       ・・・」
  レナード「(嬉しそうに。)それは良かった。ビールが効いたか
       な?」
  ジュリー「(微笑んで。)そうかも知れない。オードリーも、とても
       親切にして下さるんです。何だか申し訳ないくらい・・・」
  レナード「あいつは昔から世話好きな奴だから、気にしなくても
       いいさ。」
  ジュリー「(笑って。)オードリーのこと、よく分かっているのね。」
  レナード「え・・・?いや・・・古い付き合いだからね。」
  ジュリー「(楽しそうに。)レナードとのことも教えてもらったわ。」
  レナード「それは昔のことで、今はもう・・・ほら、さっきいたマー
       ティン、あいつが今のオードリーの恋人さ。」
  ジュリー「知ってる。」
  レナード「参ったな・・・。全く、あいつは黙ってるってことを知ら
       ないのかね・・・」
  ジュリー「(嬉しそうに笑って。)いいなぁ・・・レナードやオードリ
       ーの話しを聞いていると、本当に好きなことを・・・自分
       のしたいことをしてるって感じがして・・・羨ましい・・・」
  レナード「君は・・・出来なかった・・・?」
  ジュリー「ええ・・・何一つ・・・!いつもいつも思い描くだけで・・・
       あ・・・(思わず口を噤む。)」
  レナード「いいよ、もう隠さなくても・・・。君が誰なのか・・・何故
       ここにいるのか、聞いたよ。」
  ジュリー「・・・え・・・?」
  レナード「昨日、君を連れて行こうとした連中は、君のお祖父さ
       んに雇われた探偵だったんだ。」









 

      ――――― “ジュリー”4へつづく ―――――











   




― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪



     (おまけフォト^^;)

    
      

    13日に小学校で公演した時の裏側写真の1枚です♥
    アリアちゃん(奥)、妙に髪の毛が多く、頷いたりする
    と、お顔が髪で隠れてしまうのです・・・(^_^;)

























2013年3月4日月曜日

“ジュリー” ―全13場― 2



  ジュリー「(グラスを持って、中を覗く。)これは・・・何?」
  レナード「ただのビールさ。ひょっとして・・・ビールも初めて・・・
       ?」
  ジュリー「ええ!」
  レナード「待ってろ!ジュースもらって来るから・・・(立ち上がる
       。)」
  ジュリー「大丈夫よ!(一気に飲み干す。)」
  レナード「(驚いて。)おい!!」
  ジュリー「(変な顔をして。)あまり美味しくないのね・・・」
  レナード「(腰を下ろして。)酔っ払っても知らないぞ!!全く・・・
       (呆れたように。)おまえ、今までどんな暮らししてきた
       んだ?(笑って。)丸で囲われの生活でもしてきたみた
       いだ。」
  ジュリー「(微笑んで。)ねぇ、いつから踊ってるの?」
  レナード「え?ああ・・・高校の頃、冗談半分で受けた、舞台の
       オーディションにたまたま合格してね。そのまま高校
       中退して・・・それ以来、踊り一本今日まで来た・・・っ
       て訳さ。」
  ジュリー「いつも舞台に立ってるの?」
  レナード「(笑って。)そりゃあ、役がつかない時もあるさ。今は
       まだ小さい舞台の主役がつけばいい方だが・・・その
       内必ず、ブロードウェイミュージカルの真ん中に立つ
       ・・・。それが俺の夢なんだ・・・」
  ジュリー「あなたなら出来るわ・・・きっと・・・!!」
  レナード「ジュリー・・・」

         その時、入口からジャックとボビー入って
         来る。ジャック、写真を取り出して誰かを
         捜しているように、店の中を見回す。
         ジャック、ジュリーを認め、写真と見比べ
         る。写真を仕舞ってボビーと、レナード達
         のテーブルから少し離れたテーブルに
         つく。
         ジャック、ボビー、耳打ちし合いながら、
         目線はジュリーに送ったまま。

  ジュリー「だって、あなたの踊り、本当に素晴らしかったんです
       もの!」
  レナード「そんな風に面と向かって褒められると、照れるな・・・」
  ジュリー「ごめんなさい・・・」
  レナード「(微笑んで。)ありがとう・・・(少し身を乗り出して。)今
       度は君の話しを聞かせてくれよ。何故教室に入って来
       たんだい?」
         
  ジュリー「ただ行くところもなくてブラブラしてたら、中から楽しそ
       うな音楽が聞こえて・・・だから・・・あの・・・ごめんなさい
       ・・・何だか気分が悪い・・・(具合が悪そうに。)」
  レナード「馬鹿だな!飲んだことのないビールを一気に飲んだ
       りするからだ!水貰ってきてやるから待ってな!」

         レナード、立ち上がりカウンターの方へ。
         入れ替わるように、ジャック、ボビー、
         ジュリーの側へ。

  ジャック「ジュリー・グレイヴィルさんですね?」
  ジュリー「(ジャックを見上げる。)・・・あなたは・・・?」
  ジャック「お祖父様がお捜しです。」
  ジュリー「(驚いて立ち上がり、逃げようとする。)」
  ジャック「(ジュリーの腕を掴んで。)一緒に帰って頂きます。」
  ジュリー「離して!!私は帰らないわ!!」

         レナード、その様子に気付き、驚いて
         駆け寄り、ジャックの腕を掴む。

  レナード「彼女から手を離せ!!」
  ジュリー「レナード!!」
  ジャック「邪魔しないで頂きたい。さぁ、お嬢さん。」
  ジュリー「離して!!」
  レナード「この野郎・・・!!」

         レナード、ジャックに殴りかかる。

  ジュリー「レナード!!」
  ボビー「ジャックさん!!」
  ジャック「こいつ・・・!!」

        
         レナード、ジャック、殴り合いになる。
         店にいる客達、レナードに声援を送る。
         ジャック、レナードの一撃を受け、腰を
         つく。ボビー、慌ててジャックに駆け寄る。
         ボビー、レナードに殴りかかる。
         その時、店の中にダンス教室の生徒達
         入って来、その様子に驚いて駆け寄り、
         レナードに加勢する。

  マイケル「レナード!!」

         ジャック、ボビー、マイケル達にやられ、
         罵倒を吐いて走り去る。
         ジュリー、レナードに駆け寄る。

  ジュリー「ごめんなさい!!私の為に・・・」
  レナード「大丈夫だったか?」
  ジュリー「ええ・・・」
  レナード「(微笑んで。)よかった・・・」
  ジュリー「(涙声で。)ありがとう・・・」
  マイケル「どうしたんだ、一体・・・」
  マシュー「(笑って。)レナード、これからは店の外で頼むぜ。で
       ないと、店がいくつあっても足りない・・・」

         店にいる者、倒れた椅子などを立てて
         いる。
         思い思いに飲み直したり、談笑したり。

  レナード「悪い・・・」
  マシュー「(嬉しそうに。)おまえも昔はよくやったけどな。今日
       は久しぶりに暴れたな。」

         ジュリー、持っていたハンカチでレナードの
         頬を拭く。

  レナード「いてっ・・・」
  ジュリー「ごめんなさい!」
  レナード「ありがとう・・・。でもさっきの連中、一体誰なんだ?
       何故おまえを連れて行こうとしたんだ・・・」
  ジュリー「(首を振る。)・・・分からない・・・」
  レナード「本当に・・・?」
  ジュリー「(頷く。)」
  レナード「そうか・・・。だが兎に角、もう帰った方がよさそうだな
       。(立ち上がる。)送って行ってやるよ。さぁ・・・(ジュリ
       ーに手を差し出す。)」
  ジュリー「(下を向いて。)・・・私・・・」
  レナード「どうした?」
  ジュリー「・・・帰るところなんて・・・ないわ・・・」
  レナード「(驚いて。)・・・帰るところがない・・・って・・・?」
  ジュリー「お願い!!私を追い返さないで!!」
 
  レナード「(困ったような面持ちになる。)一体・・・おまえは誰な
       んだ?」
  ジュリー「(涙声で。)お願い・・・」
  レナード「(溜め息を吐いて。)・・・分かったよ・・・だからもう泣
       くな・・・。だが俺のアパートに泊めてやる訳にはいか
       ないから・・・(暫く考えて、回りを見回す。)オードリー
       !」
  オードリー「何?レナード・・・(近寄る。)」
  レナード「悪いけど、暫く彼女を(ジュリーを指し示す。)、おま
       えのとこに泊めてやってくれないか?」
  オードリー「それは構わないけど・・・」

         近くにいたマイケル、話しに加わる。

  マイケル「何?彼女、泊まるとこがないんだったら、俺ン家に
        泊まる?」
  レナード「馬鹿野郎!!おまえンとこなら、俺ン家の方がずっ
       とマシだ!!」
  マイケル「失礼だな!俺は紳士だぜ。」
  レナード「(呆れたように。)おまえが紳士なら、世の中紳士だ
       らけだよ。」
  マイケル「(肩を窄めて離れる。)」
  オードリー「(ジュリーに手を差し出す。)私はオードリー!ヨロ
        シクね!」
  ジュリー「あ・・・私はジュリー・・・。迷惑かけてごめんなさい・・・
       。(オードリーと握手する。)」
  オードリー「いいのよ、そんなこと。それより部屋は狭いわよ。」
  レナード「悪いな、オードリー。」
  オードリー「ううん。(2人から離れる。)」
  レナード「また会いに行くから・・・。あいつのところなら安心だ。
       何があって、今おまえがこう言う状態でいるのか、俺
       には分からないが・・・暫く落ち着いて考えるといい・・・
       。」
  ジュリー「(頷く。)」

         フェード・アウト。(カーテン閉まる。)

      ――――― 第 4 場 ―――――

         カーテン前。下手よりジャック、ボビー
         其々頬や腕を押さえながら登場。

  ジャック「全く・・・今回は珍しく簡単に捜索人が見つかったと思
       ったらあれだ・・・」
  ボビー「俺、初めてですよ・・・ジャックさんが本気になってると
      ころを見たの。いつもはヒョイヒョイ・・・(相手を投げ飛ば
      す素振りをする。)なのに・・・。」
  ジャック「馬鹿野郎!!あんなに大勢でかかってこられたら、
       ヒョイヒョイで済む訳ないだろ!!(少し考えて。)しかし
       ・・・最後に暴言を吐いて逃げ出したのは・・・ハッキリ
       言って・・・少し格好が悪かったな・・・俺としたことが・・・
       」
  ボビー「そうですねぇ・・・だけど居場所が大体掴めたから、楽勝
      ですね。」
  ジャック「確かにそうだが・・・あの男があのままジュリー・グレイ
       ヴィルを側に置いておくとも考えられない・・・。兎に角
       明日、あの男の仕事場の、ダンス教室に行ってみると
       しよう。」

         2人、上手へ出て行く。
         入れ替わって上手より、振付師(ダンテス)、
         その助手(カロリーナ)、演出家(リチャード)
         登場。
         2組、お互い擦れ違い様、少しだけ気にする
         ように。

  カロリーナ「じゃあ先生の中では、もう主役は決まってるんです
        か?」
  リチャード「その通りだよ、カロリーナ。オーディションの日程は
        飽く迄形式的なこと・・・」
  カロリーナ「日程の公表は?」
  リチャード「明日だ。今度の作品は有名なリバイバル作品で、
        成功は目に見えている。例え主役の踊りが少々不味
        くてもな。だから今回の主役は知名度のある人気者
        ・・・と決まっているのだ。」
  カロリーナ「人気スターを配して作品を不動のものとする・・・」
  リチャード「ああ。」
  ダンテス「だが・・・」
  リチャード「何かね?ダンテス君。」
  ダンテス「私は矢張り・・・初演の成功に乗ってリバイバルする
       のではなく・・・新たに一から新作を作るつもりで挑ん
       だ方が・・・」
  リチャード「(笑って。)君は相変わらず甘いな・・・。新作を作る
        つもりでどうするのだ。私の舞台に空席を作るつもり
        かね。それに私も何も手抜きをしようとしている訳で
        はない。より確実な成功を手にしたいだけだ。」
  ダンテス「私はこの作品の主役に相応しい人物を知っていま
       す!彼ならオーディションを突破し、見事この役を手
       に入れる筈です!是非彼にもチャンスを!!」
  リチャード「無名ダンサーを主役にだと・・・?(笑う。)」
  ダンテス「彼は今まで当たり役こそないが、それは作品に恵ま
       れなかった為・・・!!彼の責任ではないのです!!
       だから有名なこの作品と先生の力があれば、彼は必
       ず、この作品を初演以上の出来に導くことでしょう!!
       」
  リチャード「(少し興味を持ったように。)・・・その男の名は・・・
        ?」
  ダンテス「ハンドフォードダンス教室のインストラクター・・・レナ
        ード・ダルシム・・・」
  リチャード「レナード・・・ダルシム・・・名前は聞いたことがある
        ・・・」
  ダンテス「彼なら必ず・・・!」
  リチャード「・・・ほう・・・」
  ダンテス「必ず・・・」

         暗転。
  







      ――――― “ジュリー”3へつづく ―――――