2013年3月4日月曜日

“ジュリー” ―全13場― 2



  ジュリー「(グラスを持って、中を覗く。)これは・・・何?」
  レナード「ただのビールさ。ひょっとして・・・ビールも初めて・・・
       ?」
  ジュリー「ええ!」
  レナード「待ってろ!ジュースもらって来るから・・・(立ち上がる
       。)」
  ジュリー「大丈夫よ!(一気に飲み干す。)」
  レナード「(驚いて。)おい!!」
  ジュリー「(変な顔をして。)あまり美味しくないのね・・・」
  レナード「(腰を下ろして。)酔っ払っても知らないぞ!!全く・・・
       (呆れたように。)おまえ、今までどんな暮らししてきた
       んだ?(笑って。)丸で囲われの生活でもしてきたみた
       いだ。」
  ジュリー「(微笑んで。)ねぇ、いつから踊ってるの?」
  レナード「え?ああ・・・高校の頃、冗談半分で受けた、舞台の
       オーディションにたまたま合格してね。そのまま高校
       中退して・・・それ以来、踊り一本今日まで来た・・・っ
       て訳さ。」
  ジュリー「いつも舞台に立ってるの?」
  レナード「(笑って。)そりゃあ、役がつかない時もあるさ。今は
       まだ小さい舞台の主役がつけばいい方だが・・・その
       内必ず、ブロードウェイミュージカルの真ん中に立つ
       ・・・。それが俺の夢なんだ・・・」
  ジュリー「あなたなら出来るわ・・・きっと・・・!!」
  レナード「ジュリー・・・」

         その時、入口からジャックとボビー入って
         来る。ジャック、写真を取り出して誰かを
         捜しているように、店の中を見回す。
         ジャック、ジュリーを認め、写真と見比べ
         る。写真を仕舞ってボビーと、レナード達
         のテーブルから少し離れたテーブルに
         つく。
         ジャック、ボビー、耳打ちし合いながら、
         目線はジュリーに送ったまま。

  ジュリー「だって、あなたの踊り、本当に素晴らしかったんです
       もの!」
  レナード「そんな風に面と向かって褒められると、照れるな・・・」
  ジュリー「ごめんなさい・・・」
  レナード「(微笑んで。)ありがとう・・・(少し身を乗り出して。)今
       度は君の話しを聞かせてくれよ。何故教室に入って来
       たんだい?」
         
  ジュリー「ただ行くところもなくてブラブラしてたら、中から楽しそ
       うな音楽が聞こえて・・・だから・・・あの・・・ごめんなさい
       ・・・何だか気分が悪い・・・(具合が悪そうに。)」
  レナード「馬鹿だな!飲んだことのないビールを一気に飲んだ
       りするからだ!水貰ってきてやるから待ってな!」

         レナード、立ち上がりカウンターの方へ。
         入れ替わるように、ジャック、ボビー、
         ジュリーの側へ。

  ジャック「ジュリー・グレイヴィルさんですね?」
  ジュリー「(ジャックを見上げる。)・・・あなたは・・・?」
  ジャック「お祖父様がお捜しです。」
  ジュリー「(驚いて立ち上がり、逃げようとする。)」
  ジャック「(ジュリーの腕を掴んで。)一緒に帰って頂きます。」
  ジュリー「離して!!私は帰らないわ!!」

         レナード、その様子に気付き、驚いて
         駆け寄り、ジャックの腕を掴む。

  レナード「彼女から手を離せ!!」
  ジュリー「レナード!!」
  ジャック「邪魔しないで頂きたい。さぁ、お嬢さん。」
  ジュリー「離して!!」
  レナード「この野郎・・・!!」

         レナード、ジャックに殴りかかる。

  ジュリー「レナード!!」
  ボビー「ジャックさん!!」
  ジャック「こいつ・・・!!」

        
         レナード、ジャック、殴り合いになる。
         店にいる客達、レナードに声援を送る。
         ジャック、レナードの一撃を受け、腰を
         つく。ボビー、慌ててジャックに駆け寄る。
         ボビー、レナードに殴りかかる。
         その時、店の中にダンス教室の生徒達
         入って来、その様子に驚いて駆け寄り、
         レナードに加勢する。

  マイケル「レナード!!」

         ジャック、ボビー、マイケル達にやられ、
         罵倒を吐いて走り去る。
         ジュリー、レナードに駆け寄る。

  ジュリー「ごめんなさい!!私の為に・・・」
  レナード「大丈夫だったか?」
  ジュリー「ええ・・・」
  レナード「(微笑んで。)よかった・・・」
  ジュリー「(涙声で。)ありがとう・・・」
  マイケル「どうしたんだ、一体・・・」
  マシュー「(笑って。)レナード、これからは店の外で頼むぜ。で
       ないと、店がいくつあっても足りない・・・」

         店にいる者、倒れた椅子などを立てて
         いる。
         思い思いに飲み直したり、談笑したり。

  レナード「悪い・・・」
  マシュー「(嬉しそうに。)おまえも昔はよくやったけどな。今日
       は久しぶりに暴れたな。」

         ジュリー、持っていたハンカチでレナードの
         頬を拭く。

  レナード「いてっ・・・」
  ジュリー「ごめんなさい!」
  レナード「ありがとう・・・。でもさっきの連中、一体誰なんだ?
       何故おまえを連れて行こうとしたんだ・・・」
  ジュリー「(首を振る。)・・・分からない・・・」
  レナード「本当に・・・?」
  ジュリー「(頷く。)」
  レナード「そうか・・・。だが兎に角、もう帰った方がよさそうだな
       。(立ち上がる。)送って行ってやるよ。さぁ・・・(ジュリ
       ーに手を差し出す。)」
  ジュリー「(下を向いて。)・・・私・・・」
  レナード「どうした?」
  ジュリー「・・・帰るところなんて・・・ないわ・・・」
  レナード「(驚いて。)・・・帰るところがない・・・って・・・?」
  ジュリー「お願い!!私を追い返さないで!!」
 
  レナード「(困ったような面持ちになる。)一体・・・おまえは誰な
       んだ?」
  ジュリー「(涙声で。)お願い・・・」
  レナード「(溜め息を吐いて。)・・・分かったよ・・・だからもう泣
       くな・・・。だが俺のアパートに泊めてやる訳にはいか
       ないから・・・(暫く考えて、回りを見回す。)オードリー
       !」
  オードリー「何?レナード・・・(近寄る。)」
  レナード「悪いけど、暫く彼女を(ジュリーを指し示す。)、おま
       えのとこに泊めてやってくれないか?」
  オードリー「それは構わないけど・・・」

         近くにいたマイケル、話しに加わる。

  マイケル「何?彼女、泊まるとこがないんだったら、俺ン家に
        泊まる?」
  レナード「馬鹿野郎!!おまえンとこなら、俺ン家の方がずっ
       とマシだ!!」
  マイケル「失礼だな!俺は紳士だぜ。」
  レナード「(呆れたように。)おまえが紳士なら、世の中紳士だ
       らけだよ。」
  マイケル「(肩を窄めて離れる。)」
  オードリー「(ジュリーに手を差し出す。)私はオードリー!ヨロ
        シクね!」
  ジュリー「あ・・・私はジュリー・・・。迷惑かけてごめんなさい・・・
       。(オードリーと握手する。)」
  オードリー「いいのよ、そんなこと。それより部屋は狭いわよ。」
  レナード「悪いな、オードリー。」
  オードリー「ううん。(2人から離れる。)」
  レナード「また会いに行くから・・・。あいつのところなら安心だ。
       何があって、今おまえがこう言う状態でいるのか、俺
       には分からないが・・・暫く落ち着いて考えるといい・・・
       。」
  ジュリー「(頷く。)」

         フェード・アウト。(カーテン閉まる。)

      ――――― 第 4 場 ―――――

         カーテン前。下手よりジャック、ボビー
         其々頬や腕を押さえながら登場。

  ジャック「全く・・・今回は珍しく簡単に捜索人が見つかったと思
       ったらあれだ・・・」
  ボビー「俺、初めてですよ・・・ジャックさんが本気になってると
      ころを見たの。いつもはヒョイヒョイ・・・(相手を投げ飛ば
      す素振りをする。)なのに・・・。」
  ジャック「馬鹿野郎!!あんなに大勢でかかってこられたら、
       ヒョイヒョイで済む訳ないだろ!!(少し考えて。)しかし
       ・・・最後に暴言を吐いて逃げ出したのは・・・ハッキリ
       言って・・・少し格好が悪かったな・・・俺としたことが・・・
       」
  ボビー「そうですねぇ・・・だけど居場所が大体掴めたから、楽勝
      ですね。」
  ジャック「確かにそうだが・・・あの男があのままジュリー・グレイ
       ヴィルを側に置いておくとも考えられない・・・。兎に角
       明日、あの男の仕事場の、ダンス教室に行ってみると
       しよう。」

         2人、上手へ出て行く。
         入れ替わって上手より、振付師(ダンテス)、
         その助手(カロリーナ)、演出家(リチャード)
         登場。
         2組、お互い擦れ違い様、少しだけ気にする
         ように。

  カロリーナ「じゃあ先生の中では、もう主役は決まってるんです
        か?」
  リチャード「その通りだよ、カロリーナ。オーディションの日程は
        飽く迄形式的なこと・・・」
  カロリーナ「日程の公表は?」
  リチャード「明日だ。今度の作品は有名なリバイバル作品で、
        成功は目に見えている。例え主役の踊りが少々不味
        くてもな。だから今回の主役は知名度のある人気者
        ・・・と決まっているのだ。」
  カロリーナ「人気スターを配して作品を不動のものとする・・・」
  リチャード「ああ。」
  ダンテス「だが・・・」
  リチャード「何かね?ダンテス君。」
  ダンテス「私は矢張り・・・初演の成功に乗ってリバイバルする
       のではなく・・・新たに一から新作を作るつもりで挑ん
       だ方が・・・」
  リチャード「(笑って。)君は相変わらず甘いな・・・。新作を作る
        つもりでどうするのだ。私の舞台に空席を作るつもり
        かね。それに私も何も手抜きをしようとしている訳で
        はない。より確実な成功を手にしたいだけだ。」
  ダンテス「私はこの作品の主役に相応しい人物を知っていま
       す!彼ならオーディションを突破し、見事この役を手
       に入れる筈です!是非彼にもチャンスを!!」
  リチャード「無名ダンサーを主役にだと・・・?(笑う。)」
  ダンテス「彼は今まで当たり役こそないが、それは作品に恵ま
       れなかった為・・・!!彼の責任ではないのです!!
       だから有名なこの作品と先生の力があれば、彼は必
       ず、この作品を初演以上の出来に導くことでしょう!!
       」
  リチャード「(少し興味を持ったように。)・・・その男の名は・・・
        ?」
  ダンテス「ハンドフォードダンス教室のインストラクター・・・レナ
        ード・ダルシム・・・」
  リチャード「レナード・・・ダルシム・・・名前は聞いたことがある
        ・・・」
  ダンテス「彼なら必ず・・・!」
  リチャード「・・・ほう・・・」
  ダンテス「必ず・・・」

         暗転。
  







      ――――― “ジュリー”3へつづく ―――――

    




























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