2012年11月22日木曜日
“フランドル” ―全17場― 4
その時、マルコ入って来る。
マルコ「隊長!!(驚いたように。)あ・・・お邪魔でしたか?」
フランドル「馬鹿野郎・・・(マルコを見て。)何だ?」
アリアナ「じゃあ私はこれで・・・(出て行こうとする。)」
マルコ「最近、隊長の機嫌がいいのは、こう言うことだったん
ですね。」
フランドル「馬鹿者!!何がこう言うことだ!」
マルコ「皇女様と婚約中だと言うのに、角に置けませんね!」
フランドル「マルコ!!」
マルコ「あ・・・すみません・・・」
アリアナ「(それを聞いて、悲しそうな微笑みを残して出て行く
。)」
フランドル「アリアナ!!畜生!!」
音楽でフェード・アウト。カーテン閉まる。
――――― 第 9 場 ―――――
カーテン前。村の娘(アンナ)と、ロドリーゴ。
アンナ「へぇ、じゃああの人は、行く行くは全ヨーロッパ皇帝っ
てことね?」
ロドリーゴ「違うよ!皇帝はもういるんだ。皇帝一の勇将さ!」
アンナ「あら、今あなた言ったじゃない。あの人は皇帝になる
器の人物だって。」
ロドリーゴ「そうさ!頭は切れるし行動力もある。隊長には怖い
ものなしなんだ!(自慢気に話す。)」
アンナ「じゃあ皇帝になるんでしょ?」
ロドリーゴ「そんなこと、迂闊に口走ってみろ!命がないぜ!!
今のところは皇帝の腹心の部下で通ってるんだ。だ
けど隊長は必ずやる!!俺たちはあの人の部下で
あることが誇りなんだ!!」
アンナ「ふうん・・・よく分からないけど、凄い人なんだ・・・」
ロドリーゴ「その通り!!それよりさっき会ったあの婆さん、何
者だ?隊長のことを頻りに死神呼ばわりしてたけど
・・・。」
アンナ「あの人は昔はこの村の守り神みたいな人だったの。
占うことは全て当たるし。それでこの島は独占者の侵略
を免れてこれたようなものだから・・・。でもここ数年は、
もう惚けちゃって、誰か余所者が来ると必ず決まって、
ああ言って追い出そうとするのよ。尤も最近じゃ誰もあの
お婆さんの言うことを聞かなくなって・・・相手にもしなく
なったんだけど。だからあなた達もすんなり村に入れた
って訳。」
ロドリーゴ「へぇ・・・占い師なのか。」
アンナ「当たらなくなった証拠に、あなた達がこの村に来て、
もう大分経つけど、誰も死んだりしないじゃない。」
ロドリーゴ「そうだな・・・もう隊長の傷も殆ど良くなったし、後
は迎えが来て戦線復帰するだけだ。」
アンナ「・・・そう・・・もう帰ってしまうのね・・・(悲しそうな面持
ちになる。)」
ロドリーゴ「そんな顔するなよ。明日は祭りだろ!おまえの
歌、楽しみにしてるよ。」
2人、腕を組んで出て行く。
――――― 第 10 場 ―――――
激しい音楽でカーテン開く。
舞台は森。年に一度の村の祭り。
村人たち、太鼓のリズムに乗り踊っている。
途中からアンナ出て歌う。
その歌に乗り、男女踊る。
フランドル、上手より足を引き摺り加減に
出、誰かを捜しているよう。
その時アリアナ、下手より出、森の中へ。
(舞台回転。)
祭りのざわめきが少しずつ遠くなり、静か
な音楽が流れる。
フランドル、アリアナを認めて、慌てて
歩き難そうに後を追う。
アリアナ、一人ゆっくり憂鬱そうな面持ちで。
フランドル「アリアナ!!」
アリアナ「(振り返り、驚いて逃げようとする。)」
フランドル「待ってくれ!!」
アリアナ「(その声に立ち止まり、フランドルを認める。)」
フランドル「(ホッとした面持ちで。)やっと会えた・・・。あれから
一度も来てくれなかったね・・・どうしてだい?」
アリアナ「・・・(言葉に困って。)・・・母がいるし・・・私より母の
方が、医者としての腕は確かよ・・・」
フランドル「そんなことを言ってるんじゃない。俺はおまえに会
いたかったんだ、ずっと・・・」
アリアナ「フランドル・・・」
フランドル「あの時、マルコが言っていたように、確かに俺には
婚約者がいる。だがそれは今まで俺の夢の実現の
為に、どうしても必要なことだったからだ。ヨーロッパ
世界を手中に収めること・・・それが俺の夢だった。
だが、おまえが来なくなってから、俺には何が必要
だったのか・・・何を為るべきなのか、おまえの言っ
ていた言葉の意味をずっと考えていた・・・。そして
俺はここに来て、心の安らぎを初めて与えられたよ
うな気がする・・・。それはおまえがいてくれたから
だ・・・!!アリアナ・・・愛しているんだ・・・」
アリアナ「フランドル・・・」
その時、ジュリオ入って来る。
(フランドルとは、アリアナを挟んで反対側。)
ジュリオ「アリアナ!!そんな奴の言うことを信じるんじゃない
!!そいつはもう帰ってしまう奴なんだ!!」
アリアナ「(振り返ってジュリオを見る。)ジュリオ・・・」
ジュリオ「(フランドルに突っ掛るように。)あんたにはあんたの
世界がある!!アリアナにはアリアナの生き方がある
んだ!!自分の世界にこいつを引っ張り込むな!!」
フランドル「ジュリオ・・・」
ジュリオ「さっき、あんたの部下があんたを捜していたぜ。明日
いよいよ迎えの艦隊が到着するんだとよ!!さっさと
自分の国に帰って来れ!!(アリアナの方へ手を差し
出す。)アリアナ、こっちへ来い・・・」
アリアナ、ゆっくりジュリオの方へ行きかける。
フランドル「アリアナ!!」
アリアナ「(歩を止める。)」
フランドル「俺は婚約を解消して必ず戻って来る!!俺を信じ
て待っていて欲しい!!」
ジュリオ「アリアナ!!そいつの言うことなんか聞くんじゃない
!!」
フランドル「アリアナ・・・」
アリアナ、振り返ってフランドルを見詰める。
アリアナ「フランドル・・・」
ゆっくりフランドル、両手を広げる。
アリアナ、フランドルの胸に飛び込む。
アリアナ「フランドル!!」
フランドル「アリアナ!!(アリアナを抱き締める。)」
ジュリオ「(呆然と2人を見詰める。)アリアナ・・・」
フランドル「必ず戻って来るから・・・」
アリアナ「待っているわ・・・いつまでも・・・」
フェード・アウト。(カーテン閉まる。)
――――― 第 11 場 ――――― A
カーテン前。アンドレア、ジョルジョ、ホフレ。
ホフレ「よかったですね、何事も起こらないうちに、フランドル殿
が復帰されることになって。」
アンドレア「そうだな・・・丁度、冬期の休戦時期と重なったのが
幸いだった・・・」
ジョルジョ「我々は制服地の統轄さえ行っていれば、よかった
ですからね。」
ホフレ「しかし命に別状がなく何より・・・」
アンドレア「本当のところ、今、あの男がいなくなれば、確かに
我々は困るのだ・・・。自分たちの国を、力づくで奪わ
れた人々の反逆を鎮圧する力を持った将は、残念な
がら今のところ、彼の他には見当たらないからだ・・・
私がもう少し若ければ・・・あの男に任せることなく、
この手で遣り遂げてみせるものを・・・」
ジョルジョ「皇帝陛下・・・」
アンドレア「あの男の行動に、その都度一喜一憂することなく
・・・まぁ、色々言っても仕方あるまい・・・。兎に角、今
はあの男に全てを賭けたのだ。こんなところで死な
れては困る。」
ジョルジョ「いっそのこと、陛下の妹君のご子息、フロリド様に
全てを託されては・・・?」
アンドレア「私も一度はそのことを考えもしたが・・・フロリドの
器では、制服地を増やして統轄していくどころか、こ
の国の統治すらままならなくなることは、目に見えて
明らか・・・それならば、国民からの信望が厚く、武将
としても最長けたフランドルと、エリザベッタを結婚
させ、その子どもに全てを託すことに決めたのだ・・・
。」
ホフレ「成程・・・フランドル殿ではなく、エリザベッタ様のお子
様にとは、考えられましたな・・・。」
その時、家臣入って来る。
家臣「もう間もなくフランドル様が入城されます。」
アンドレア「分かった・・・」
カーテン開く。と、大広間。アンドレアたち、
そのまま舞台へ。
エリザベッタ、召使を伴って入って来る。
エリザベッタ「お父様!もうフランドル様がお戻りになられるの
でしょう?まだですの?」
アンドレア「(エリザベッタを認めて。)これエリザベッタ、はした
ないぞ!」
エリザベッタ「ごめんなさい。でも私、待ちきれなくて・・・。もう長
いこと、お会いしていないんですもの。」
アンドレア「まぁ、おまえの気持ちも分からなくはないが・・・」
家臣「(声高く。)フランドル殿がお戻りになられました!」
アンドレア「そうか・・・」
アンドレア、一段高く設えられた椅子の上に
腰を下ろす。横にはエリザベッタ、ジョルジョ、
ホフレ。
音楽と共に、フランドル、グリエルモ出て来る。
フランドルたち、アンドレアの前に跪く。
フランドル「陛下、只今戻りました!!」
アンドレア「おお、待っておったぞ!怪我はもう良いのか?」
フランドル「はい。島民の手厚い看護のお陰で、もうすっかり
完治しました!陛下にも長い間ご心配をお掛けし、
本当に申し訳ありませんでした!」
アンドレア「それは何よりだ。」
ジョルジョ「いつも勇猛なフランドル殿が、深手を負われると
は・・・と、我々も驚いていたのですぞ。」
フランドル「あれは完全な私のミスです。我々の味方陣の中
に、真逆、敵のスパイが紛れ込んでいたとは、思い
も寄らなかったものですから・・・。本当に迂闊でし
た。」
アンドレア「まぁ、よい。深手を負ったにせよ、またこうして元
気になれたのだから。」
フランドル「ありがとうございます。」
アンドレア「エリザベッタは心から心配しておったのだぞ。」
エリザベッタ「フランドル様のお帰りを、心よりお待ちしており
ました。お怪我が完治されて本当によかった!
(嬉しそうに。)」
フランドル「(少しすまなさそうな面持ちになる。)皇女・・・」
アンドレア「ところでフランドル。もうそろそろ式の準備を始め
た方がよいのではないか?いつまでもこのまま・・・
と言う訳にもいくまい。」
フランドル「陛下・・・そのことで話しがあります。」
アンドレア「何だ?何でも言うがよいぞ。」
フランドル「本来ならば、こんなところで申し上げる話しではな
いのですが・・・生憎、今まで留守にしていた間の仕
事が山のように溜まっていて、次の機会を待ってい
ると、いつになるか分かりません・・・」
アンドレア「どうした?いつものおまえらしくないぞ。いつもなら
鉄砲玉のように自分の意を申すのに・・・(笑う。)」
フランドル「(アンドレアの目を見据え。)・・・皇女との婚約を、
解消して頂きたい!!」
アンドレア「・・・何・・・?」
グリエルモ「何を言い出すんだ!?」
エリザベッタ「フランドル様・・・」
回りの者も一同に、驚きの声を上げる。
アンドレア「何を馬鹿なことを言い出すのだ。(呆れて笑う。)」
フランドル「私は本気です。陛下にはどうしてもお聞き入れ頂き
ます。」
アンドレア「(思わず立ち上がって。)どうしてなのだ!!何故
また突然にそのようなことを申すのだ!!おまえに
とってもいい話しの筈であろう!?」
フランドル「(チラッとエリザベッタを見る。)皇女には本当に申し
訳ないと思っています・・・。だが、この婚約は飽く迄
政略であったこと・・・愛情なきものであると言うことが
・・・今の私にはその意味を持たないものになってし
まったのです・・・。」
アンドレア「当たり前のことが嫌になったと言うのか。・・・今の
話しは聞かなかったことにしよう・・・。フランドル・・・
皇帝命令だ!!エリザベッタと結婚するのだ!!」
フランドル「(溜め息を吐いて。)・・・分かりました・・・どうしても
駄目だと言われるのであれば・・・私はこの国を出る
しかないようだ・・・。(立ち上がる。)」
アンドレア「フランドル・・・」
フランドル「皇帝配下を脱して、私は私の思う道を突き進むま
で・・・。」
エリザベッタ、駆け出ようとする。
フランドル、慌てて呼び止める。
フランドル「エリザベッタ!!」
エリザベッタ、立ち止まる。
フランドル「あなたには、すまないことをしたと思っています。だ
が、私の一生涯でただ一度の我が儘を許して下さい
!!」
エリザベッタ「(背を向けたまま。)私に何を許せと仰るのでしょ
う・・・。(涙声になる。)私はあなたのことを・・・父
に言われたからではなく・・・心からお慕いしてい
ました・・・!!」
フランドル「皇女・・・」
エリザベッタ「お元気で・・・」
エリザベッタ、走り出る。後ろからエリザベッタ
に付いて召使、走り出る。
フランドル「(暫くエリザベッタの走り去った方を見ているが、ア
ンドレアに向き直り。)それでは皇帝陛下・・・(出て行
こうとする。)」
アンドレア「(渋々。)フランドル・・・!!分かった・・・この婚約
は、おまえの言うとおりなかったことにしよう・・・。但
し・・・正式の婚約解消は、年が明け戦闘開始後・・・
ヨーロッパ一強固な城塞を持つと言われるコンスタン
チノープルを陥落させてからだ・・・。」
フランドル「分かりました・・・必ず約束通りに・・・!!」
グリエルモ「フランドル・・・」
フランドル、グリエルモ、部下たち残して
カーテン閉まる。
――――― “フランドル”5へつづく ―――――
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