――――― 第 3 場 ―――――
紗幕開く。と、小高い丘の草むら。
(辺りは夕暮れ時の様子。)
チュー介、佇み静かに歌う。
“僕は何をしているんだろう・・・
こんなところで一人ぼっちに・・・
仲間もいない
味方もいない
大草原に一人放り出された
ちっぽけな僕・・・
誰も僕のことなど知らない・・・”
チュー介「父さん・・・」
チュー介、立ち尽くす。
その時、上手よりチュー吉、重そうに食料の
入った、買い物カゴを手に登場。
チュー吉「もう母さんは一体どれだけお使いを頼むんだよ・・・。
重いったらありゃしない・・・。よっ・・・。あれ・・・(チュー
介に気付く。)チュー介じゃないか。」
チュー介、チュー吉に気付くが、知らん顔して
下手へ行きかける。
チュー吉「おい!知らん顔して行くなよ!何してたんだよ、こん
なとこで。ひょっとして夕焼けを見てた?ここから見る
夕焼けって、綺麗だよなぁ・・・。僕も、この場所が大好
きなんだ!」
チュー介「・・・煩いんだよ・・・」
チュー吉「え?」
チュー介「煩いってんだよ!!僕は一人になりたいんだ!!」
チュー吉「何だよ!そんな言い方しなくてもいいだろ!折角、友
達になろうと思って・・・」
チュー介「友達なんていらないんだよ!!」
チュー吉「ああ、そうかい!!ふん!!何だよ!!そんな風に
突っ張った態度取ってると、その内学校で誰からも相
手にされなくなるぞ!!ふん!!ホントに・・・全く!!
」
チュー吉、下手方へ行きかけるが、何か
気になったように振り返る。
チュー吉「・・・おい・・・何でおまえ・・・そんな風に突っ張ってるん
だよ・・・」
チュー介「・・・突っ張ってなんか・・・いるもんか・・・」
音楽流れ、チュー介歌う。
“僕は突っ張ってる訳じゃない・・・
意気がってる訳でもない・・・
僕は僕なんだ
だから構うな
放っておいてくれ・・・”
チュー吉歌う。
“同じ仲間じゃないか
そんな風に壁を作って
他を寄せ付けない
そんな態度
放っとけない・・・”
チュー介歌う。
“勝手じゃないかそんなこと
僕がどうでも
関係ない・・・”
チュー吉「折角同じ学校に転校して来たんじゃないか。友達に
なろうよ!」
チュー介「友達・・・?ふざけるな!!」
チュー吉「ふざけてなんかないさ!だって折角知り合えたんじゃ
ないか。友達にならないと、勿体ないよ!」
チュー介「・・・勿体ない・・・?馬鹿じゃないか。」
チュー吉「馬鹿・・・?友達に向かって“馬鹿”って言ったら駄目
なんだぞ!!先生に教わらなかったのかい!?」
チュー介「・・・先生なんて知るもんか。」
チュー吉「知らない・・・って、学校の先生だよ!前の学校でも
いただろう?」
チュー介「・・・学校なんて行ったことない・・・」
チュー吉「・・・え?ホントに・・・?友達は・・・?」
チュー介「そんなのいるもんか!!」
チュー吉「じゃあ絶対、友達になろうよ!!」
チュー介「嫌だ!!」
チュー吉「そんなこと言わないでさ!折角、学校に来ることにな
ったんだから・・・。でも・・・如何して行き成り学校に・・・
?」
チュー介「・・・ばあちゃんが行けって言うから・・・」
チュー吉「ばあちゃん・・・?」
チュー介「・・・ばあちゃんが、僕ん家に来ることになって・・・」
チュー吉「ふうん・・・そうなんだ。君ん家は何処?」
チュー介「・・・学校の隣の赤い屋根・・・」
チュー吉「ジ―クん家!?」
チュー介「・・・ジ―ク・・・?」
チュー吉「うん!!僕ん家は、ジ―クん家の屋根裏なんだ!!
君は?」
チュー介「地下・・・」
チュー吉「同じ建物だなんて、近所じゃないか!!今まで全然
知らなかったなぁ。じゃあジ―クのこと、知ってる?」
チュー介「ジ―クって・・・」
チュー吉「とっても優しくって、毎日僕にビスケットを分けてくれ
るんだよ。」
チュー介「・・・ビスケット・・・?それ・・・何だよ・・・。」
チュー吉「ビスケットを知らないの!?」
チュー介「知らない・・・。」
チュー吉「ほら・・・これだよ・・・。(ポケットからひとかけのビスケ
ットを取り出し、チュー介へ差し出す。)」
チュー介「(ビスケットを受け取る。)」
チュー吉「食べてごらんよ!!とっても美味しいから!!」
チュー介「う・・・うん・・・(口へ放り込む。)」
チュー吉「ね!?美味しいだろ?」
チュー介「本当だ・・・。こんな美味しい食べ物があるなんて・・・」
チュー吉「だって、ジ―クは人間・・・」
チュー介「人間!?これ、人間の食べ物なの!?」
チュー吉「あ・・・うん。」
チュー介「こんなのいるもんか!!(手に残っていたビスケットを
放り投げ、口に残っていたビスケットを吐き出すように
。)」
チュー吉「ど・・・どうしたんだよ・・・。」
チュー介「僕、人間なんて大っ嫌いだ!!」
チュー吉「大っ嫌いって・・・ジ―クはすごくいい人間なんだよ。」
チュー介「人間に“いい奴”なんているもんか!!」
チュー吉「そんなことないよ!!」
音楽流れ、チュー介歌う。
“自分勝手に
好き放題生きる
恐ろしい生き物
それが人間” ※
チュー吉歌う。
“そんなことない人間だって
思い遣りに溢れて
僕達に優しく接する
食べ物を分けて
いつも気にかけてくれる
恐ろしい訳ない”
チュー介歌う。
“人間なんて 人間なんて
ただ恐ろしいだけ
人間なんて 人間なんて
みんながいなくなればいい!!”
チュー介「そしたら僕の父ちゃんも死なずに済んだんだ!!」
チュー吉「え・・・?」
チュー介「父ちゃんが人間に捕まって・・・弟や妹の面倒を見る
人がいなくなったから・・・だから・・・ばあちゃんが家へ
来た・・・!!」
チュー吉「お父さん・・・人間に捕まったの・・・?」
チュー介「・・・そうさ・・・」
チュー吉「ジ―クの家で・・・?」
チュー介「(頷く。)」
チュー吉「(少し考えるように。)・・・捜しに行こう!!」
チュー介「え・・・?」
チュー吉「ジ―クん家に捜しに行こうよ!!僕も一緒に行くから
さ!!」
チュー介「そんな・・・もう屹度、父ちゃんは・・・」
チュー吉「まだ生きてる!!ジ―クは僕達を殺したりしないよ!
!」
チュー介「・・・そんなこと・・・分かるもんか・・・」
チュー吉「分かるよ!!ジ―クはそんなことしない!!」
チュー介「父ちゃんを捕まえたのが・・・そのジ―クじゃないかも
知れないじゃないか・・・。」
チュー吉「でも行ってみようよ!!ちゃんと確かめもしないで、
疑うのはよくないだろ?」
チュー介「それは・・・」
音楽流れ、チュー吉歌う。
“行ってみよう
大切な者を捜しに
ほんの少しでも
望みがあるなら
それを見逃す手はないさ
だから行こう
危険があっても2人なら
屹度抜け出せる
どんなピンチも
ただの想像で
色々良くない思いに溢れて
下を向く
そんなの何の意味もないだろう
顔を上げるんだ!”
チュー介「チュー吉・・・」
チュー介が自分の名前を呼んだことに
少し驚いた面持ちで、でも嬉しそうに
チュー吉頷く。
“行けば分かるさ
何が真実か
今まで見えていなかった
気付かなかった大切なことも
屹度何もかもが見えてくる
だから行かないと
今この時を逃す手はないから!”
チュー介歌う。
“そうだね行こう
君の言う通り
もしかすると僕の思い違い・・・
一人勝手に下を向いて
前を見ないで勿体ない・・・
君がいるんだ
怖くはないさ
臆病を隠して突っ張ったって
屹度何も解決しない”
2人歌う。
“そうさだから行こう!!
2人手をつないで
まだ知らない未知の世界だけれど
屹度光は見えてくる筈!!”
チュー吉「行こう!!」
チュー介「うん!!」
2人、下手へ走り去る。 ※2
紗幕閉まる。
――――― 第 4 場 ―――――
紗幕前。
音楽流れ、大人ネズミが入ったカゴ、
上がる。
大人ネズミ、悲し気に歌う。
“こんな檻に閉じ込められた
惨めな俺・・・
自分の行きたいとこにも行けず
愛しい家族にも会えないなんて・・・
こんな生き地獄
いつまで続くんだろう
それならいっそ・・・”
大人ネズミ「(カゴの中にあったビスケットを、一口かじる。)食べ
るものには困らないが・・・こんなカゴの中で、死ぬま
で暮らすのか・・・」
その時、2人の人間の足音が近付く。
(“トントントン・・・”)
カークの声「ほら・・・ほら見てよ、兄ちゃん!!」
ジ―クの声「わあーっ!!可愛いネズミじゃないか!!」
カークの声「でしょ!?兄ちゃんが言ってた通り、ビスケットを食
べるんだ、このネズミ!」
ジ―クの声「へぇ・・・。こいつなのかなぁ・・・僕がいつも置いてた
ビスケットの欠片を食べてたの・・・。おい・・・おまえ
が、僕の友達かい・・・?」
――――― “チュー吉くんの君は友だち・・・”
3へつづく ―――――
※ “人間”と言うものを、人間でないものから見た時に、
どういったように見えるのか・・・私は人間なので・・・^^;
本当のところはこの表現が正解かどうか分かりません。
が、春公演作品でも、同じような表現の歌詞がある・・・
と言うことは、私自身が、こんな風に見えているんであろう
・・・と自分の中に、固定観念があるんでしょうね(^_^;)
※2、お気付きの通り“人”ではなく“匹”が正解です^^;
が、今回“も”敢えて人間と同じ数え方“人”で書かせて
頂きますm(__)m
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