2013年8月18日日曜日

“チュー吉くんの君は友だち・・・” ―全7場― 3

 カークの声「これから僕がのこ部屋で飼うんだ!」


  ジ―クの声「飼うだって?父さんに見つかったら、大目玉だよ。」

  カークの声「見つからないように、コッソリ飼うよ!」

  ジ―クの声「でも・・・こんな狭いカゴに閉じ込めてちゃ、可哀相

          じゃないか?」

  カークの声「いいんだ!!だから、兄ちゃんも父さんには内緒だ

          からね!!僕達の秘密だよ!!」



         その時、ジ―ク達の父親の声が聞こえる。



  父親の声「おーい、ジ―ク!!カーク!!どこにいるんだ!?

         母さんと買い物に行って来るから、ルークとルータ

         の面倒を見といてくれ。」

  ジ―クの声「はーい!!直ぐ行くよ!!」

  カークの声「ねぇ、兄ちゃん!!絶対に内緒だよ!!」

  ジ―クの声「うん、分かったよ。」



         2人の人間の足音、段々遠ざかる。

         大人ネズミ、再び歌う。



         “こんな風にいつまで怯えて

         生きて行くんだろう俺は・・・”



         カゴに入った大人ネズミ下がる。

         紗幕開く。



    ――――― 第 5 場 ――――― A

 

         人間の家の中。(壁の裏。)

         下手よりチュー吉、チュー介、回りを見回し

         ながら、恐る恐る一歩一歩確かめるように

         登場。



  チュー吉「ジ―クん家は、隅々まで知り尽くしているつもりだった

        けど・・・さすがに壁の裏なんて、あんまり来たことがな

        いよなぁ・・・。」

  チュー介「僕は地下の自分家から、出たことなんて殆どないか

        ら・・・」

  チュー吉「本当に?」

  チュー介「う・・・うん・・・。」



         その時、見知らぬ声が聞こえる。



  声「あーら、お2人さん・・・」



  チュー吉「え・・・?」



  声「こんな壁の裏へ、一体何のご用かしら?」



  チュー吉「誰?」



         そこへ、後方の物陰から、一匹のイタチ(ネリー)

         しなやかな足取りで登場。



  チュー吉「あなたは・・・」

  ネリー「私はこの壁の裏で、ひっそり暮らすイタチのネリー・・・。

      お2人さんは・・・(チュー吉、チュー介を舐めるように見る

      。)子ネズミだね?(ニヤリと微笑む。)」

  チュー吉「うん。僕らもこの家に住んでるんだ。」

  ネリー「へぇ・・・同じ家の中に、こんなに美味しそうな子ネズミ

      が、2匹もいたなんて・・・(小声で。)」

  チュー吉「え・・・?」

  ネリー「(笑う。)何でもないわよ。ところであなた達は、何処へ行

      こうとしているのかしら?」

  チュー吉「僕達はこの壁の向こうに・・・」

  ネリー「壁の向こう!?この壁の向こうは、人間達の住む恐ろし

      い場所だよ!」

  チュー吉「その人間に用があるんだ、僕達。」

  ネリー「人間に用があるって・・・。向こうは私達にあるかも知れ

      ないけど、こっちから人間に用があるだなんて、変な奴ら

      だねぇ・・・。」

  チュー吉「ねぇ、ネリーさん!ネリーさんは、ずっとここに住んで

        るの?」

  ネリー「ああ、そうさ。」

  チュー吉「じゃあ、この家の人間のことは、よく知ってる?」

  ネリー「そりゃあ、人間とは壁一枚挟んだお隣さんだ。人間のこ

      とは、よおく知ってるるよ。」

  チュー吉「そしたら、少し前に僕らと同じネズミが、この家の人間

        に捕まって、連れて来られたと思うんだ。ネリーさんな

        らそのネズミのこと、知ってるんじゃないの?」

  ネリー「ああ・・・あのネズミ捕りに捕まった、ドン臭い奴のことな

      ら知ってるよ。」

  チュー介「本当!?」

  ネリー「(小声で。)何もあんなとこに入って、態々捕まらなくても

      、私の食事になってくれりゃあいいものを・・・。」

  チュー吉「今、そのネズミは何処で如何しているか分かる!?」

  ネリー「さぁ・・・。でも、ネズミ捕りに捕まったんだから、とっくの昔

      に殺されて・・・」

  チュー介「殺され・・・父ちゃん・・・」

  チュー吉「そんなことないよ!!屹度この家の何処かで生きて

        いる筈なんだ!!ねぇ、ネリーさん!!ネリーさんは

        この家の中のことに詳しいんでしょ!?僕らの仲間が

        何処に捕まっているか、捕まっていそうな場所を、一

        緒に考えてよ!!」

  ネリー「(チュー介を見て。)あんたの父さんなのかい?そのドン

      臭いネズミは・・・。」

  チュー介「・・・うん・・・」

  ネリー「ふうん・・・。」

  チュー吉「ねぇ、何か思い出さない?」

  ネリー「そんなこと言われたってねぇ・・・。そうそう、ここん家には

      子どもが4人いるんだけれど・・・」

  チュー吉「4人・・・?」

  ネリー「下の2人は、まだ赤ん坊だから悪戯なんて出来っこない

      けど・・・上のジ―クとカークは・・・」

  チュー吉「・・・ジ―ク?」

  ネリー「ええ。一番上の子どもの名前が、確かジ―ク・・・」

  チュー吉「・・・へぇ・・・ビスケットのジ―クが・・・一番上のお兄さ

        ん・・・」

  ネリー「ジ―クは兎も角、その二番目のカークが曲者だわね。」

  チュー吉「曲者・・・?」 

  ネリー「ええ、まだ学校も行かない小さな餓鬼の癖して、好奇心

      旺盛で怖いもの知らず、私は危うく尻尾をちょん切られそ

      うになったことがあるのよ!!」

  チュー吉「へぇ・・・」

  ネリー「もしまだ、あんた達の捜してるそのお父さんが、生かされ

      てるとしたら、そのカークが咬んでんじゃないかねぇ・・・。」

  チュー介「・・・カーク・・・」

  ネリー「あの悪餓鬼なら、カゴの中に閉じ込めたネズミを、玩具

      にしてたって不思議じゃないからさ。」

  チュー吉「ねぇ、ネリーさん!!僕達をそのカークのいる所へ案

        内してくれない!?」

  ネリー「え!?いやよ!!何で私が、態々そんな危険な所へ、

      何処の誰とも分からないあなた達の為に、行かなきゃな

      らないのよ!!」

  チュー吉「お願いだよ!!僕達だけでウロウロ人間の前へ出て

        行ったって、屹度チュー介の父さんみたいに、捕まって

        しまうのが目に見えてるよ!!」

  ネリー「・・・お礼は・・・?」

  チュー吉「え・・・?」

  ネリー「お礼はちゃんとしてくれるんだろうねぇ・・・」

  チュー吉「お礼・・・?」

  ネリー「ええ。」

  チュー吉「何をすればいいの・・・?」

  ネリー「ううんと・・・そうねぇ・・・。私も危険を承知で道案内する

      んだから、あんた達にもそれなりのことを頼むわ・・・。」

  チュー吉「それなりのこと・・・?」

  ネリー「そう・・・それなりの・・・。さ、そんなことは後で構わないか

      ら、行くならさっさと行きましょう!!」

  チュー吉「う・・・うん!!」

  ネリー「(小声で。)・・・お楽しみは後にとっとかなくっちゃ・・・。

      (舌舐めずりして、コッソリと笑う。)」



         (紗幕閉まる。)



    ――――― 第 5 場 ――――― B



         音楽流れ、3人歌う。



         “行ってみよう

         大切なものを捜しに

         ほんの少しでも

         望みがあるなら

         それを見逃す手はないさ

         だから行こう

         危険があっても3人なら

         屹度抜け出せる

         どんなピンチも

         ただの想像で

         色々よくない思いに溢れて

         下を向く

         そんなの何の意味もないだろ

         顔を上げるんだ!!”



  ネリー「さぁ、こっちよ!!」

  チュー吉、チュー介「うん!!」



         3人上手へ去る。



    ――――― 第 6 場 ―――――



         紗幕開く。と、ジ―クの家の子ども部屋。

         上手より、ジ―ク登場。



  ジ―ク「おおい・・・ビスケットを持って来たよ・・・。僕のビスケット

      をいつも取りに来るのは、カークが飼ってるネズミじゃな

      いんだ。だってあれからも、必ず朝には、夜置いた筈の

      ビスケットの欠片がなくなってるから・・・。一体僕のビス

      ケットを持って行くのは、誰なんだろう・・・。」



         音楽流れ、ジ―ク歌う。



         “見たことはないけど

         屹度君は小さな小さな

         この家の住人・・・

         いつもいつもそっと伺い

         誰もいなくなったその時

         見つからないように

         出て来るんだ・・・

         そうして半分こしたビスケット

         そっと手にして帰るんだ・・・”



  ジ―ク「小さな君・・・またビスケットを置いておくよ・・・。(手に持

       っていたビスケットを部屋の隅に置く。)」



         ジ―ク、上手へ去る。

         (と、カゴ、上手前方へ上がる。)



  大人ネズミ「チュー介・・・みんな・・・」



         一時置いて、下手より抜き足差し足で、

         ネリー登場。続いてチュー吉、チュー介

         登場。



  ネリー「さぁ・・・ここが子ども部屋よ。」

  チュー介「ここが!?」

  ネリー「しっ!!見つかったら、あんた達も私も一巻の終わりよ

      !」

  チュー介「うん・・・」

  ネリー「(回りを見回して。)良かった・・・悪餓鬼どもはいないみ

      たいね。」

  チュー介「父さん・・・いるのかな・・・」

  チュー吉「捜してみようよ。」

  チュー介「うん・・・」

  チュー吉「チュー介くんのお父さーん・・・!!」

  チュー介「父さーん・・・!!」



         チュー吉、チュー介、暫く回りをキョロキョロと

         捜すように。(ネリー、下手方に座り込んで、2人

         の様子を見ている。)



  チュー介「父さんーん・・・」

  大人ネズミ「(チュー介の声に気付いたように、ビクッと顔を上げ

         る。)・・・チュー介・・・?チュー介じゃないか!!」

  チュー介「(大人ネズミに気付いて、カゴに駆け寄る。)父さん!

        !」

  大人ネズミ「チュー介!!如何してこんなとこに!!」

  チュー介「父さんを助けに来たんだよ!!」

  大人ネズミ「助け・・・って・・・、おまえ、如何してそんな危険なこ

         とを!!」

  チュー介「だって、父さんがいなくなって僕達・・・(涙声で。)」

  大人ネズミ「チュー介・・・すまない・・・。でも、どうやってここまで

         ・・・」

  チュー介「うん・・・。友達のチュー吉くんが・・・」

  チュー吉「こんにちは・・・」

  大人ネズミ「友達・・・?」

  チュー介「僕・・・ばあちゃんに言われて、学校に行き始めたんだ

        ・・・。そこで出来た友達のチュー吉くんが、父さんは屹

        度生きてるから、一緒に捜しに行こうって・・・。僕も一

        緒に捜してあげるから・・・そう言ってくれて・・・。それで

        僕・・・」

  大人ネズミ「そうか・・・学校に・・・。良かったな、チュー介・・・。友

         達まで出来て・・・。チュー吉くん、チュー介と一緒に

         こんな所まで・・・本当にありがとう・・・。」

  チュー吉「そんなこと・・・」

  ネリー「さぁ、涙の御対面は終わりだよ・・・。」

  チュー介「ネリーさん・・・」

  大人ネズミ「ネリーさん・・・?」



         ネリー、ゆっくりカゴの方へ。





















    ――――― “チュー吉くんの君は友だち・・・”

                           4へつづく ―――――









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