2013年7月28日日曜日
“みりとポン吉” ―全9場― 4
7月28日(日)
いつも使っているパソコンが、ここ数日全くの
アウト状態に陥っていました(>_<)
この今使っているパソコンも、古い以前使用していた
物を、修正し直して使っているので、またいつどうなるか
・・・と思うと、ドキドキです(ーー;)
またお休みが続いたなら、パソコンがアウトになったか
・・・とお考え下さいませm(_ _)m
ー ♪ ー ♪ ー ♪ ー ♪ ー ♪ ー ♪ ー ♪ ー ♪ ー ♪ ー ♪
ーーーーー 第 8 場 ーーーーー
舞台後方、カーテン後ろに大木と、みり、ポン吉
のシルエットが浮かび上がる。
2人、上方を見上げながら。
みり「この木の上ね・・・」
ポン吉「うん・・・。みり・・・僕は自分の星へ帰っても、この地球
から君があの月を見てる時、僕も反対側の星から同じ
月を見てる・・・必ず・・・心はつながっているから・・・」
みり「・・・ポン吉・・・」
ポン吉「行って来るよ!!」
みり「(頷く。)気を付けて、ポン吉!!」
ポン吉、大木に登って行く。
ポン吉の声「(一時置いて。)・・・あった・・・あった!!みり!!
あったよ!!僕の体だ!!」
みり「やったわね!!」
ポン吉の声「ありが・・・(声が途切れる。)」
みり「・・・ポン吉・・・?ポン吉!?どうしたの!?」
その時、木の上からポン吉(ぬいぐるみ)が
落ちて来る。
みり「(ポン吉を抱き上げる。)・・・ポン吉・・・?ポン吉!!そん
な突然に帰っちゃうなんて・・・!!嫌・・・嫌よ、ポン吉ー
!!(声を上げて泣く。)」
紗幕閉まる。暗転。
――――― 第 9 場 ―――――― A
紗幕前。下手よりパーティドレスに着飾った
メアリ、ヒューイ、トンリー登場。
ヒューイ「ありゃ屹度、クマ鍋なんて言った、崇りだぜ。」
メアリ「もう嫌なこと思い出させないでよ!!今日は待ちに待っ
た卒業パーティなのよ!!それよりどう?今日の私!」
トンリー「凄い綺麗だよ、メアリ。」
ヒューイ「勿論。」
メアリ「ありがとう。」
ヒューイ「ラストダンスは是非、僕と!」
メアリ「そうねぇ・・・」
トンリー「あ・・・ずるいぞ!!」
3人、話しながら上手へ(一旦)去る。
―――――第 9 場 ――――― B
紗幕開く。と、卒業パーティ会場。明るい音楽
流れ、ドレスアップした生徒達、其々楽しそうに
踊っている。メアリ、ヒューイ、トンリー上手より
登場。
メアリ「ヒューイ!(手を出す。)」
ヒューイ「喜んで・・・(メアリの手を取り、踊りに加わる。)」
トンリー「あ!!抜け駆け・・・(溜め息を吐き、違う女の子を誘っ
て踊る。)」
その時、上手よりドレス姿のみり、一人で登場。
みんなの様子を見て、溜め息を吐き、踊りの輪
から離れた壁に凭れる。曲が終わり、其々バラ
バラに離れる。
そこへ下手より、一際目を惹くハンサムな少年
登場。誰かを捜しているように。みりを認め、
ゆっくり近付く。
生徒1「(コソコソと。)・・・誰?」
ヒューイ「あんな奴、うちの学校にいたか?」
メアリ「知らないわよ!!」
生徒1「あんなカッコいい男の子いたら、即アタックするわよね
。」
生徒2「見て・・・!!みりの方へ寄って行くわ!!」
メアリ「嘘・・・」
少年、ゆっくりみりの前へ。
少年「みり・・・僕と踊ってくれませんか?(手を出し、微笑む。)」
みり「・・・王子様・・・」
少年、みりの手を取り、舞台中央へ。
音楽流れ、2人スポットに浮かび上がる。
少年「お礼が中途半端になってごめんね。みり・・・ありがとう・・・
」
みり「・・・誰・・・?」
少年「(微笑む。)」
みり「・・・ポン吉・・・?」
少年「うん・・・君のポン吉だよ。」
みり「嘘・・・(呆然と少年を見詰める。)」
少年「本当さ。(ポケットから四つ葉のクローバーを取り出す。)
ほら・・・君に貰った、この四つ葉のクローバーのお陰で、
僕は体を見つけることが出来たんだ・・・。」
みり「ポン吉・・・(思わず涙が溢れる。)ポン吉!!(少年に抱
きつく。)」
音楽大きくなり、2人、ダンスを踊る。
(いつしか回りのみんなも踊りに加わる。)
一頻り踊った後、見詰め合うみりとポン吉
残し、場面変わる。
みり「もう、お別れなのね・・・」
少年「うん・・・。」
みり「ポン吉・・・(泣く。)」
少年「泣かないで、みり。(微笑む。)僕の星と、この地球は随分
離れているけれど・・・言っただろ?僕の星は科学の進歩
が目覚ましいって・・・。会いたくなったら、君が僕の心に
話し掛けてくれさえすれば、僕は直ぐに宇宙船に乗って、
また、みりに会いに飛んで来るよ・・・。」
みり「・・・本当に・・・?」
少年「うん!!」
みり「(嬉しそうに。)ポン吉!!」
少年「また、会おう!!」
みり、ポン吉歌う。
“2人で力を合わせて
何かを成し遂げる
それがたとえどんな些細なことでも
力を合わせることに意味がある
1人じゃどうしようもなかったこと
2人なら大丈夫(願いは叶う)
あなたと2人
共に手を取り叶えた思い
いつも心は側に・・・”
音楽盛り上がり
――――― 幕 ―――――
2013年7月18日木曜日
“みりとポン吉” ―全9場― 3
ママ、溜め息を吐きながら、ベットに座り込み
歌う。(ベットの上のガラクタや、木の破片、
ピストルの玩具などを手に取り見る。)
“丸であの娘は鉄砲玉
女の子だって言うのに
こんな物ばかり集めて
丸で正義のヒーロー気取り
決死の救出大作戦決行・・・?
一体あの娘は何を考えてるのかしら・・・
もう直ぐ卒業パーティだと言うのに
ラストダンスの相手もいないわ・・・”
ママ、下手へ去る。暗転。
――――― 第 6 場 ―――――
舞台前方、紗幕前、ヒューイ、トンリー
インディアン調の調べに乗り、上手より
歌いながら登場。 ※
“やっほっほ やっほっほ
今夜は祭だ
卒業パーティの前祝いだ
みんなで一晩中騒ぎまくろう
飛びっきりのご馳走で
飛びっきりの前夜祭
今夜はみんなで盛り上がろう!!”
紗幕開く。と、舞台中央、木が一本立っている。
その木に、ポン吉縛られている。
ヒューイ「今夜は滅多にお目にかかれないクマ鍋パーティだ!
!」
トンリー「おいおい・・・クマ鍋って、クマなんか何処にも・・・」
ヒューイ「馬鹿、そこに縛り付けてあるだろ!」
トンリー「あのぬいぐるみ?」
ポン吉、ビクッとする。
トンリー「(笑って。)あんなの食べれないよ。」
ヒューイ「いいんだよ!!大鍋に放り込んで、グツグツ煮出して
スープを・・・。何より、それを見たみりの顔が楽しみだ
ぜ。」
ヒューイ、トンリー再び歌う。
“やっほっほ やっほっほ
今夜は祭だ
今夜は愉快だ
みんなで騒ぎまくろうぜ!!”
ヒューイ、トンリー、歌いながら下手へ去る。
ポン吉「(2人が去ったのを確認して。)クマ鍋だって・・・。どうし
よう・・・僕の体、食べられちゃうのかな・・・。」
ポン吉、静かに歌う。
“僕が何故・・・
飛ばされること知ってたのに
ボタンを押したと思ってるんだい・・・
見たことのない・・・
君の面影を求めて
僕は遥々遠く彼方
この地球まで来た・・・”
舞台、薄暗くなり、後方カーテン後ろにポン吉
のシルエット、浮かび上がる。
ポン吉「本当は、未来ツアーの途中で、単独行動はしちゃいけ
ないんだけど・・・僕は未来の僕の部屋に、どうしても
入ってみたかったんだ・・・。(扉を開ける。)わあ・・・ここ
が3年後の僕の部屋・・・?今と、あんまり変わらないな
ぁ・・・。そりゃそうか・・・たった3年じゃ、やっぱ、あんまり
変わらないか・・・。今度はパパにもっとお願いして、30
年後未来ツアーにでも行かせてもらおうっと・・・。あれ
・・・これは僕の日記・・・へぇ・・・面白そうだ。何々・・・え
-っ!?明日、僕がパパの宇宙船を悪戯して、何処か
へ飛ばされちゃうって!?冗談じゃないよ・・・ああ、助
かった・・・。そのことが分かってりゃ、悪戯なんてするも
んか!!・・・え・・・?次に書いてるのは・・・一週間後の
日付になってるぞ・・・。“・・・飛ばされて、不時着した地
球と言う星で、僕は・・・素敵な女の子と出会った・・・。
名前は“みり”・・・”みり・・・?」
シルエット、フェード・アウトし、舞台明るくなる。
ポン吉「みり・・・」
その時、上手より、木を隠れ蓑にして、みり
登場。ゆっくりポン吉の側へ。
みり「ポン吉・・・!!ポン吉・・・!!(小声で。)もう・・・こんな時
ポン吉みたいに、心に直接話し掛けることが出来たらいい
のに・・・!!ポン吉・・・!!」
みりの心の声「ポン吉・・・」
ポン吉「(項垂れていたが、その声にハッとする。)みり・・・?(み
りに気付く。)みり!!」
みり「しっ!!」
ポン吉「(みりの格好に、思わず吹き出す。)みり・・・なんて格好
・・・」
みり「助けに来たわ!!(ポン吉に駆け寄り、ロープを解こうと
する。)」
ポン吉「・・・僕の為に来てくれたんだ・・・(独り言のように。)」
みり「・・・え?」
ポン吉「う・・・ううん・・・」
みり「解けないなぁ・・・。一体どんな結び方してるのよ・・・(ブツ
ブツと。)」
その時、下手よりメアリ、ヒューイ、トンリー
登場。
ポン吉「みり!!メアリ達だ!!」
みり「やばい・・・(木の陰に隠れる。)」
ヒューイ「そろそろ、鍋のお湯が沸騰してきた頃だから、こいつ
を連れて行って、クマ鍋作ろうぜ。」
メアリ「私、クマ鍋なんかいらないわ。」
ヒューイ「そんなこと言うなよ。それを見た、みりがどんなに驚く
かって、考えただけで面白いだろ?」
メアリ「まぁね。」
トンリー「みりの奴、来るかなぁ・・・。」
ヒューイ「来るさ。あいつ、変に正義感が強いんだ。」
ヒューイ、トンリー、ポン吉のロープを解いて、
連れて行こうとする。
その時、木陰からみり登場。
みり「待ちなさい!!」
トンリー「みり!!」
ヒューイ「来たな!!」
みり「ポン吉を返してもらうわ!!この泥棒達!!」
ヒューイ「そう、易々と取り返せると思ってるのか!!」
みり「思ってなくても・・・ポン吉は渡さない!!(木の棒を構え
る。)」
音楽流れ、みり、ポン吉を取り返す為に、
メアリ、ヒューイ、トンリーに掛かって行く。
一時、戦いの踊り。
みり、3人に遣られそうになりながら、奮闘する。
ポン吉「(思わず。)みり!!」
メアリ「ヒューイ、トンリー!!早く遣っ付けちゃってよ!!」
トンリー「分かってるよ!!」
メアリ「キャッ!!痛い!!ヒューイ、トンリー何遣ってるのよ!
!」
トンリー「あ、ごめん!!」
ヒューイ「くそう!!」
とうとうメアリ、ヒューイ、トンリー、みりが手に
したロープで、ポン吉が縛られていた木に、
縛り付けられる。
メアリ「ヒューイ!!トンリー!!」
ヒューイ「この野郎!!」
トンリー「放せ!!放せよ!!」
みり、ポン吉の方へ。今までジッとしていた
ポン吉、自分で立ち上がる。
ポン吉「(服を払いながら。)あああ、ジッとしてるのって肩が凝
るなぁ。」
みり、ポン吉、顔を見合わせ微笑む。
メアリ、ヒューイ、トンリー呆然とその様子を
見ている。
みり、ポン吉「(3人の方を見て。)べーっ!!」
みり、ポン吉、笑いながら下手へ走り去る。
トンリー「(呆然と。)・・・あれ・・・」
メアリ「・・・クマの・・・」
ヒューイ「・・・ぬいぐるみ・・・だったよなぁ・・・」
3人「お化けだー!!」
音楽、大きくなり暗転。
――――― 第 7 場 ―――――
紗幕前。
下手より、みり、ポン吉登場。
みり「(客席方を見て。)さぁ、ポン吉!この小高い丘の上から
なら、屹度あなたの体を見つけられるわ!!」
ポン吉「(首を振る。)・・・駄目だ・・・みり・・・。(見上げて指差す
。)雲が掛かってて、お月様が見えないよ・・・。月の光
がないと、僕のペンダントは光らないんだ。」
みり「もう、そろそろお月様が真上に昇る頃よ・・・!!どうしよう
・・・!!」
ポン吉「もう・・・帰れないんだ・・・。」
みり「ポン吉・・・何、気弱なことを言ってるの!?そんなんじゃ、
たとえペンダントが光ったって、あなたの体を捜し当てるこ
となんて出来っこないわ!!」
ポン吉「みり・・・」
みり「四つ葉のクローバーだって見つけたのよ!!あなたの体
だって、屹度見つかるわ!!」
ポン吉「・・・うん・・・うん、そうだね!!」 ※2
みり「(空を仰ぐように。)お月様、お願い!!ポン吉の為に、そ
の姿をほんの一瞬だけ私達の前に現わして!!」
ポン吉「お月様!!僕に力を貸して!!」
その時、雲が切れるように、舞台が明るくなる。
みり「見て!!雲が切れるわ!!」
ポン吉「本当だ!!」
みり「さぁ、あなたの体は何処!?」
2人、客席方を捜すように。
その時、客席後方、輝く。
ポン吉「あ・・・あった!!あれだ!!(客席後方を指差す。)あ
そこに僕の体があるんだ!!」
みり「あれは・・・家の裏庭に生えてる大木だわ!!」
ポン吉「本当!?」
みり「こんな近くにあったのね!!」
音楽流れ、2人歌う。
ポン吉“やっと見つけた僕の体”
みり“やっと見つかった本当のあなた”
2人“2人で力を合わせて
何かを成し遂げる
それがたとえどんな些細なことでも
力を合わせることに意味がある”
ポン吉“1人じゃどうしようもなかったこと”
みり“2人なら大丈夫”
2人“あなたと2人
共に手を取り叶えた思い”
ポン吉「やっと帰れるんだ・・・」
みり「ポン吉・・・(淋しそうに。)」
ポン吉「みり・・・?」
みり「体が見つかったら・・・帰っちゃうのね・・・自分の星に・・・。」
ポン吉「みり・・・」
みり「何だか・・・淋しいな・・・なんて・・・(無理に微笑む。)」
ポン吉「・・・みり・・・僕の星からも、あの今見てるのと同じお月
様が見えるんだ。(指差す。)」
みり「ポン吉・・・」
ポン吉「僕の星とこの地球は、あのお月様を挟んでつながって
いるんだよ・・・。」
みり「つながっている・・・。そうね・・・私・・・淋しいなんて変ね・・・
。(涙を隠すように。)さ!!早く体を見つけに行きましょう!
!」
みり、上手へ走り去る。
ポン吉「・・・地球で・・・素敵な女の子と出会った・・・(呟く。)」
暗転。
――――― “みりとポン吉”4へつづく ―――――
※ 彼らは一体、何歳くらいなんでしょうね・・・(^_^;)
※2、この台詞、今現在の作品でもよく登場する台詞です。
屹度、好きなんでしょうね~・・・こんな風に、同じ言葉
を繰り返すのが・・・^^;余談ですが・・・
同じように、よく登場するな~・・・と思っているのが、
皆様お気付きでしょうか・・・(^_^;) 「え・・・」と言う
台詞です(^.^)しかも主人公がよく使うので、毎作品
一体私は何回「え・・・」を言っているのでしょうか・・・?
と、問題が作れそうです~^^;
2013年7月15日月曜日
“みりとポン吉” ―全9場― 2
ポン吉「分からないんだ・・・」
みり「分からないって・・・」
ポン吉「昨日も言ったけど・・・墜落した時の衝撃で、僕の体は
この宇宙船から飛び出して、どっか行っちゃったんだよ
・・・。」
みり「どっかって・・・じゃあどうするの!?体がなけりゃ、帰れな
いんでしょ?」
ポン吉「うん・・・。一体、僕の体・・・何処にあるんだろう・・・。」
みり「・・・ポン吉・・・」
明るい音楽流れ、みり、元気よく歌う。
“大丈夫よポン吉
捜し物なんて直ぐに見つかるわ
大丈夫よポン吉
あなたには心強い味方がいるもの
独りぼっちじゃないわ
あなたと私2人なら
無くした物は直ぐに見つかるわ
だから大丈夫よ
2人で捜しに行きましょう!!”
ポン吉「みり・・・うん!!」
ポン吉歌う。
“捜し物は直ぐに見つかるよ
平気な筈さ
一人じゃないから
君と2人なら勇気も湧いてくる
だから力を貸してね みり!!”
みり「勿論よ!!」
ポン吉「でも・・・どうやって捜せばいいんだろう。こんな広い場所
から、ちっぽけな僕の体を見つけることなんて、本当に
出来るのかな・・・。」
みり「何、気弱なこと言ってるの!?2人で捜せば、何とかなる
わ!!宇宙船だって、この通り見つかったじゃない!!」
ポン吉「・・・うん・・・そうだね!!」
みり「・・・それより、あなたの体、何か目印になるような物は着け
てないの!?」
ポン吉「・・・目印?」
みり「例えば、大きな鞄をぶら下げてるとか・・・光る服を着てる
とか・・・携帯電話を持ってるとか!!」
ポン吉「携帯・・・電話・・・?」
みり「あら、知らないの?(ポケットから、携帯電話を取り出し。)
ほら、これよ!!これがあれば、とっても便利なのよ!!
何たって、遠くの人と話しが出来るんだから!!」
ポン吉「ふうん・・・。僕らの星の、テレパシーみたいなものかな
・・・?そんな物、使わなくたって、僕らは話したい相手
の頭の中に、直接話しかけるんだよ。」
みり「直接ですって!?(何かに反応するように。)分かってるわ
よ!!だからこうやって一生懸命捜して・・・(分かったよう
に溜め息を吐き、ポン吉を見る。)今のがテレパシー・・・?」
ポン吉「まあね・・・。」
みり「凄いのね・・・あなたの声が心の中に聞こえたわ。(ハッと
して。)そんなことより、何か目印よ!!捜す為に、手掛かり
になるようなもの・・・。」
ポン吉「(一時考えて。)そうだ!!光る服は着てないけど・・・僕
が首から提げてたペンダントが、満月の夜、月が真上に
来た時、その明かりに反応して光るんだ。」
みり「それよ!!満月って言えば・・・丁度、今夜だわ!!これで
見つかるわね、あなたの体!!」
ポン吉「うん!!」
音楽で暗転。
――――― 第 4 場 ――――― A
舞台明るくなる。と、紗幕前。
上手より、メアリ登場。続いてヒューイ、
大きな箱を重そうに抱えたトンリー登場。
ヒューイ「あああ、退屈だなぁ・・・。今日は学校も冴えなかったし
・・・。何で、みりの奴、休んでんだよ。」
メアリ「知らないわよ、そんなこと!!それよりその箱、落とさな
いでよ!!」
トンリー「分かってるよ・・・。」
ヒューイ「よかったな、メアリ。卒業パーティ用のドレス、買っても
らえて。」
メアリ「これで明日の卒業パーティで、皆の視線は私のものよ!
」 ※
トンリー「あああ・・・重いなぁ・・・(ボソッと独り言のように。)」
ヒューイ「何だ?しっかり持てよ!落とすんじゃないぜ。」
トンリー「はいはい。」
メアリ「今日はみりが学校休んでて、苛める相手がいないから
ムシャクシャしてたけど、素敵なドレスを買ってもらった
お陰で、スッキリしたわ。次はこのドレスに合う、鞄と靴を
パパにおねだりしなくちゃ。」
メアリ、歌う。
ヒューイ、トンリー、メアリの回りを踊る。
“素敵なドレスに可愛い鞄
大人びたヒールに光輝く宝石類
誰が見ても一番目を引く
飛びっきりのレディ
誰もが私と踊りたがるわ
誰もが私にダンスを申し込むの
ラストダンスの相手に選ばれた者は
最高の栄誉に酔い痴れるわ”
3人、下手へ去る。
――――― 第 4 場 ――――― B
上手方スポットに、みりのママ、受話器を
持って電話しているように。
ママ「はい・・・はい・・・え?みりが、今日学校をお休みしたんで
すか!?まぁ、本当にあの子ったら何処ほっつき歩いて・・・
。朝は元気に“行って来ます”なんて出て行ったんですけど
・・・。はい・・・はい、帰ったらきつく言い聞かせますから・・・
本当にすみません・・・。」
ママ、フェード・アウト。
――――― 第 5 場 ――――― A
舞台明るくなる。と、舞台中央、みりとポン吉
座り込んで話している。
みり「ね!あなたの星ってどんな感じ?この地球に似てるのか
しら?」
ポン吉「顔形や姿は、似てるかな・・・」
みり「あら・・・あなたタヌキじゃないの?」
ポン吉「酷いな・・・。これは地球での仮の姿だよ。」
みり「そうなの。」
ポン吉「でも、科学の進歩はこの地球とは、比べ物にならない
くらい、格段に進んでるよ。」
みり「そうね・・・。宇宙船だなんて、聞いたことがないもの。」
ポン吉「宇宙船だけじゃないさ。僕らの星には、タイムマシン
だってあるんだよ。」
みり「タイムマシン・・・?」
ポン吉「そう!自由に昔に行ったり、未来に行ったり出来るんだ
。タイムマシンで行く、未来ツアーなんてのもあるんだ
から。」
みり「へぇ・・・凄いのね。何でも未来のこと、分かっちゃうのね。
じゃあ、ひょっとして・・・宇宙船を悪戯して、飛ばされちゃう
ってことも知ってたりして。(笑う。)」
ポン吉「(笑う。)・・・うん・・・」
みり「・・・うん?うんって、知ってたの!?知ってたのに何故?」
ポン吉「・・・つい・・・(笑って誤魔化す。)」
みり「もう、仕様がないポン吉ねぇ!!」
ポン吉「何故・・・僕が宇宙船を悪戯して、飛ばされることを知っ
てたのに、発射ボタンを押したと思ってる・・・?」
みり「そんなの、どうせあなたが忘れてたからでしょ?(笑う。)
・・・今・・・何か言った?」
ポン吉「う・・・ううん!」
みり「(何かを見つけたように。)見て、ポン吉!!四つ葉のクロ
ーバーよ!!」
ポン吉「本当だ!!地球でも四つ葉のクローバーって、何か特
別な意味があるの?」
みり「地球でも・・・って」
ポン吉「僕達の住む星では、近代化が進んで、今じゃ土のある
場所なんて、極僅かなんだ。その中で四つ葉のクロー
バーを見つけるって、凄いことなんだよ。四つ葉のクロ
ーバーを手に入れた者は、何でも願いが叶うって言わ
れてるんだ・・・。」
みり「へぇ・・・。はい!(四つ葉のクローバーを、ポン吉の方へ
差し出す。)あなたにあげるわ!」
ポン吉「え・・・?」
みり「この地球でも、四つ葉のクローバーは幸せのお守りよ!
屹度あなたの体、見つかるわ!!」
ポン吉「みり・・・(クローバーを受け取り、見詰め呟くように歌う
。)」
“四つ葉のクローバーは
幸せを運んで来る・・・
僕の願いを叶える為に・・・”
その時、下手よりメアリ、ヒューイ、トンリー
話しながら登場。みりを認め、顔を見合わせ
ゆっくり近付く。
メアリ「あら・・・みりじゃない。」
みり「メアリ・・・」
ポン吉、じっとして動かなくなる。
メアリ「学校サボって何してるの?こんな所で・・・」
みり「何だっていいじゃない・・・。あなたに関係ないでしょ・・・」
メアリ「ふうん・・・。私、今日ママに町の洋服屋さんで、とっても
素敵なパーティドレスを買って貰ったのよ!ね!(ヒュー
イとトンリーに。)」
ヒューイ「ああ。」
トンリー「とってもメアリに似合ってる。」
メアリ「あなたは何を着て行くの?折角の卒業パーティだもの、
その格好じゃあねぇ・・・。でも、あなたなんか卒業パー
ティに相手してくれる男の子もいなかったわね。ドレスな
んて関係ないわね。一番メインのラストダンスは誰とも
踊らないで、一人で壁の花なんて可哀相。(笑う。)」
ポン吉(心の声)「みりは誰かさんみたいに、気飾らなくても十分
綺麗なんだ。」
メアリ「何ですって!?」
トンリー「どうしたんだい、メアリ?」
メアリ「ヒューイ!!トンリー!!今、私に変なこと囁いたでしょ
!?」
ヒューイ「俺達、何も言わないさ!!なぁ、トンリー!!」
トンリー「うん・・・」
ポン吉(心の声)「おまえ達も我が儘お嬢様相手に大変だな。(
笑う。)」
ヒューイ「そうなんだよ・・・」
トンリー「うん・・・」
メアリ「どう言うこと!?」
トンリー「え・・・?いや・・・」
ヒューイ「俺達、何も・・・」
メアリ「“我が儘お嬢様”ってどう言うことよ!!」
みり「(小声で。)・・・ポン吉?」
ポン吉「(みりに囁くように。)だって、みりに言いたい放題言い
やがって、頭にきたんだ。」
みり「駄目よ!!バレたらどうするの?でも・・・ありがとう・・・。
(笑う。)」
メアリ「何が可笑しいの!?」
みり「(首を振る。)」
ヒューイ「(ポン吉に気付いて。)おい、メアリ!!こいつ、変わっ
た人形持ってるぜ。」
トンリー「本当だ・・・。なんだ、このぬいぐるみ。(足で突いてみ
る。)」
みり「やめてよ!!」
メアリ「何?みりってば、こんな大きなぬいぐるみ持って、ウロウ
ロしてるの?」
みり「いいでしょ!!ほっといてよ!!」
みり、ポン吉を抱き抱えて行こうとする。
メアリ「待ちなさいよ。何、そんなに大切そうに抱えてるの?ちょ
っと見せてよ。ヒューイ!!トンリー!!」
ヒューイ、トンリー、ポン吉を取ろうとする。
みり「嫌よ!!止めて!!ポン吉!!」
ヒューイ、トンリー、ポン吉を取り上げる。
メアリ「ポン吉?」
みり「ポン吉を返して!!」
メアリ「(笑って。)ポン吉だなんて、変な名前。(ポン吉をマジマ
ジ見て。)ポン吉っぽい顔・・・。汚いぬいぐるみねぇ・・・。」
みり「そんなこと、どうだっていいでしょ!?早く返してよ!!」
メアリ「向きになっちゃって可笑しい・・・。(ニヤリと笑う。)ちょっ
とこのぬいぐるみ借りて行くわ。」
みり「駄目よ!!」
メアリ「ヒューイ!!トンリー!!」
ヒューイ「じゃあ、みり、ちょっと借りてくぜ。」
みり「ポン吉を返して!!」
みり、ヒューイ、トンリーに掴みかかるが、
押し退けられる。
みり「キャッ!!(倒れる。)」
ポン吉(心の声)「みり!!」
ヒューイ、トンリー、ポン吉を抱えて上手へ
去る。メアリ、笑いながら続いて去る。
みり「ポン吉!!ポン吉ー!!・・・屹度助け出すわ・・・屹度、
助けに行くからねー!!」
――――― 第 5 場 ――――― B
みり、スポットに浮かび上がり歌う。
“大切な私の友達
遥か彼方
宇宙の何処からか
突然私の前に現れたあなただけど
出会ったばかりの私達
でも私にはとても大切な友達だわ
姿形はただのぬいぐるみでも
心はちゃんと通い合う
生まれて初めて見つけた大切な友達”
みり「ポン吉、待ってて!!」
舞台明るくなる。と、みりの部屋。
みり「(ベットの脇の木箱を探るように。)えっと・・・何処に仕舞っ
たかしら・・・。あった!!これこれ・・・っと・・・」
みり、木箱から取り出したヘルメットを被り、
木の棒を掲げる。ベットの上に立ち上がり。
みり「待ってなさい、メアリ、ヒューイ、トンリー!!私の大切な
ポン吉を奪っといて、ただで済むと思ったら大間違いよ!!
」
その時、下手よりみりのママ登場。
ママ「みり!!“ただいま”も言わないで、ドタバタ部屋に駆け込
んだと思ったら、何て格好・・・(呆れたように。)それにあな
た、今日学校どうしたの!?朝“行って来ます”って出て行
ったっきり、こんな時間まで、どこほっつき歩いて・・・」
みり「ママ!!お説教なら後でいくらでも聞くわ!!私、忙しい
の!!今から決死の救出大作戦決行よ!!」
みり、上手へ走り去る。
ママ「あ・・・みり!!みり、待ちなさい!!みり・・・。決死の救出
大作戦・・・って・・・」
――――― “みりとポン吉”3へつづく ―――――
※ 何の卒業パーティか・・・は、あまり深く考えないで
ください^^;
みり「分からないって・・・」
ポン吉「昨日も言ったけど・・・墜落した時の衝撃で、僕の体は
この宇宙船から飛び出して、どっか行っちゃったんだよ
・・・。」
みり「どっかって・・・じゃあどうするの!?体がなけりゃ、帰れな
いんでしょ?」
ポン吉「うん・・・。一体、僕の体・・・何処にあるんだろう・・・。」
みり「・・・ポン吉・・・」
明るい音楽流れ、みり、元気よく歌う。
“大丈夫よポン吉
捜し物なんて直ぐに見つかるわ
大丈夫よポン吉
あなたには心強い味方がいるもの
独りぼっちじゃないわ
あなたと私2人なら
無くした物は直ぐに見つかるわ
だから大丈夫よ
2人で捜しに行きましょう!!”
ポン吉「みり・・・うん!!」
ポン吉歌う。
“捜し物は直ぐに見つかるよ
平気な筈さ
一人じゃないから
君と2人なら勇気も湧いてくる
だから力を貸してね みり!!”
みり「勿論よ!!」
ポン吉「でも・・・どうやって捜せばいいんだろう。こんな広い場所
から、ちっぽけな僕の体を見つけることなんて、本当に
出来るのかな・・・。」
みり「何、気弱なこと言ってるの!?2人で捜せば、何とかなる
わ!!宇宙船だって、この通り見つかったじゃない!!」
ポン吉「・・・うん・・・そうだね!!」
みり「・・・それより、あなたの体、何か目印になるような物は着け
てないの!?」
ポン吉「・・・目印?」
みり「例えば、大きな鞄をぶら下げてるとか・・・光る服を着てる
とか・・・携帯電話を持ってるとか!!」
ポン吉「携帯・・・電話・・・?」
みり「あら、知らないの?(ポケットから、携帯電話を取り出し。)
ほら、これよ!!これがあれば、とっても便利なのよ!!
何たって、遠くの人と話しが出来るんだから!!」
ポン吉「ふうん・・・。僕らの星の、テレパシーみたいなものかな
・・・?そんな物、使わなくたって、僕らは話したい相手
の頭の中に、直接話しかけるんだよ。」
みり「直接ですって!?(何かに反応するように。)分かってるわ
よ!!だからこうやって一生懸命捜して・・・(分かったよう
に溜め息を吐き、ポン吉を見る。)今のがテレパシー・・・?」
ポン吉「まあね・・・。」
みり「凄いのね・・・あなたの声が心の中に聞こえたわ。(ハッと
して。)そんなことより、何か目印よ!!捜す為に、手掛かり
になるようなもの・・・。」
ポン吉「(一時考えて。)そうだ!!光る服は着てないけど・・・僕
が首から提げてたペンダントが、満月の夜、月が真上に
来た時、その明かりに反応して光るんだ。」
みり「それよ!!満月って言えば・・・丁度、今夜だわ!!これで
見つかるわね、あなたの体!!」
ポン吉「うん!!」
音楽で暗転。
――――― 第 4 場 ――――― A
舞台明るくなる。と、紗幕前。
上手より、メアリ登場。続いてヒューイ、
大きな箱を重そうに抱えたトンリー登場。
ヒューイ「あああ、退屈だなぁ・・・。今日は学校も冴えなかったし
・・・。何で、みりの奴、休んでんだよ。」
メアリ「知らないわよ、そんなこと!!それよりその箱、落とさな
いでよ!!」
トンリー「分かってるよ・・・。」
ヒューイ「よかったな、メアリ。卒業パーティ用のドレス、買っても
らえて。」
メアリ「これで明日の卒業パーティで、皆の視線は私のものよ!
」 ※
トンリー「あああ・・・重いなぁ・・・(ボソッと独り言のように。)」
ヒューイ「何だ?しっかり持てよ!落とすんじゃないぜ。」
トンリー「はいはい。」
メアリ「今日はみりが学校休んでて、苛める相手がいないから
ムシャクシャしてたけど、素敵なドレスを買ってもらった
お陰で、スッキリしたわ。次はこのドレスに合う、鞄と靴を
パパにおねだりしなくちゃ。」
メアリ、歌う。
ヒューイ、トンリー、メアリの回りを踊る。
“素敵なドレスに可愛い鞄
大人びたヒールに光輝く宝石類
誰が見ても一番目を引く
飛びっきりのレディ
誰もが私と踊りたがるわ
誰もが私にダンスを申し込むの
ラストダンスの相手に選ばれた者は
最高の栄誉に酔い痴れるわ”
3人、下手へ去る。
――――― 第 4 場 ――――― B
上手方スポットに、みりのママ、受話器を
持って電話しているように。
ママ「はい・・・はい・・・え?みりが、今日学校をお休みしたんで
すか!?まぁ、本当にあの子ったら何処ほっつき歩いて・・・
。朝は元気に“行って来ます”なんて出て行ったんですけど
・・・。はい・・・はい、帰ったらきつく言い聞かせますから・・・
本当にすみません・・・。」
ママ、フェード・アウト。
――――― 第 5 場 ――――― A
舞台明るくなる。と、舞台中央、みりとポン吉
座り込んで話している。
みり「ね!あなたの星ってどんな感じ?この地球に似てるのか
しら?」
ポン吉「顔形や姿は、似てるかな・・・」
みり「あら・・・あなたタヌキじゃないの?」
ポン吉「酷いな・・・。これは地球での仮の姿だよ。」
みり「そうなの。」
ポン吉「でも、科学の進歩はこの地球とは、比べ物にならない
くらい、格段に進んでるよ。」
みり「そうね・・・。宇宙船だなんて、聞いたことがないもの。」
ポン吉「宇宙船だけじゃないさ。僕らの星には、タイムマシン
だってあるんだよ。」
みり「タイムマシン・・・?」
ポン吉「そう!自由に昔に行ったり、未来に行ったり出来るんだ
。タイムマシンで行く、未来ツアーなんてのもあるんだ
から。」
みり「へぇ・・・凄いのね。何でも未来のこと、分かっちゃうのね。
じゃあ、ひょっとして・・・宇宙船を悪戯して、飛ばされちゃう
ってことも知ってたりして。(笑う。)」
ポン吉「(笑う。)・・・うん・・・」
みり「・・・うん?うんって、知ってたの!?知ってたのに何故?」
ポン吉「・・・つい・・・(笑って誤魔化す。)」
みり「もう、仕様がないポン吉ねぇ!!」
ポン吉「何故・・・僕が宇宙船を悪戯して、飛ばされることを知っ
てたのに、発射ボタンを押したと思ってる・・・?」
みり「そんなの、どうせあなたが忘れてたからでしょ?(笑う。)
・・・今・・・何か言った?」
ポン吉「う・・・ううん!」
みり「(何かを見つけたように。)見て、ポン吉!!四つ葉のクロ
ーバーよ!!」
ポン吉「本当だ!!地球でも四つ葉のクローバーって、何か特
別な意味があるの?」
みり「地球でも・・・って」
ポン吉「僕達の住む星では、近代化が進んで、今じゃ土のある
場所なんて、極僅かなんだ。その中で四つ葉のクロー
バーを見つけるって、凄いことなんだよ。四つ葉のクロ
ーバーを手に入れた者は、何でも願いが叶うって言わ
れてるんだ・・・。」
みり「へぇ・・・。はい!(四つ葉のクローバーを、ポン吉の方へ
差し出す。)あなたにあげるわ!」
ポン吉「え・・・?」
みり「この地球でも、四つ葉のクローバーは幸せのお守りよ!
屹度あなたの体、見つかるわ!!」
ポン吉「みり・・・(クローバーを受け取り、見詰め呟くように歌う
。)」
“四つ葉のクローバーは
幸せを運んで来る・・・
僕の願いを叶える為に・・・”
その時、下手よりメアリ、ヒューイ、トンリー
話しながら登場。みりを認め、顔を見合わせ
ゆっくり近付く。
メアリ「あら・・・みりじゃない。」
みり「メアリ・・・」
ポン吉、じっとして動かなくなる。
メアリ「学校サボって何してるの?こんな所で・・・」
みり「何だっていいじゃない・・・。あなたに関係ないでしょ・・・」
メアリ「ふうん・・・。私、今日ママに町の洋服屋さんで、とっても
素敵なパーティドレスを買って貰ったのよ!ね!(ヒュー
イとトンリーに。)」
ヒューイ「ああ。」
トンリー「とってもメアリに似合ってる。」
メアリ「あなたは何を着て行くの?折角の卒業パーティだもの、
その格好じゃあねぇ・・・。でも、あなたなんか卒業パー
ティに相手してくれる男の子もいなかったわね。ドレスな
んて関係ないわね。一番メインのラストダンスは誰とも
踊らないで、一人で壁の花なんて可哀相。(笑う。)」
ポン吉(心の声)「みりは誰かさんみたいに、気飾らなくても十分
綺麗なんだ。」
メアリ「何ですって!?」
トンリー「どうしたんだい、メアリ?」
メアリ「ヒューイ!!トンリー!!今、私に変なこと囁いたでしょ
!?」
ヒューイ「俺達、何も言わないさ!!なぁ、トンリー!!」
トンリー「うん・・・」
ポン吉(心の声)「おまえ達も我が儘お嬢様相手に大変だな。(
笑う。)」
ヒューイ「そうなんだよ・・・」
トンリー「うん・・・」
メアリ「どう言うこと!?」
トンリー「え・・・?いや・・・」
ヒューイ「俺達、何も・・・」
メアリ「“我が儘お嬢様”ってどう言うことよ!!」
みり「(小声で。)・・・ポン吉?」
ポン吉「(みりに囁くように。)だって、みりに言いたい放題言い
やがって、頭にきたんだ。」
みり「駄目よ!!バレたらどうするの?でも・・・ありがとう・・・。
(笑う。)」
メアリ「何が可笑しいの!?」
みり「(首を振る。)」
ヒューイ「(ポン吉に気付いて。)おい、メアリ!!こいつ、変わっ
た人形持ってるぜ。」
トンリー「本当だ・・・。なんだ、このぬいぐるみ。(足で突いてみ
る。)」
みり「やめてよ!!」
メアリ「何?みりってば、こんな大きなぬいぐるみ持って、ウロウ
ロしてるの?」
みり「いいでしょ!!ほっといてよ!!」
みり、ポン吉を抱き抱えて行こうとする。
メアリ「待ちなさいよ。何、そんなに大切そうに抱えてるの?ちょ
っと見せてよ。ヒューイ!!トンリー!!」
ヒューイ、トンリー、ポン吉を取ろうとする。
みり「嫌よ!!止めて!!ポン吉!!」
ヒューイ、トンリー、ポン吉を取り上げる。
メアリ「ポン吉?」
みり「ポン吉を返して!!」
メアリ「(笑って。)ポン吉だなんて、変な名前。(ポン吉をマジマ
ジ見て。)ポン吉っぽい顔・・・。汚いぬいぐるみねぇ・・・。」
みり「そんなこと、どうだっていいでしょ!?早く返してよ!!」
メアリ「向きになっちゃって可笑しい・・・。(ニヤリと笑う。)ちょっ
とこのぬいぐるみ借りて行くわ。」
みり「駄目よ!!」
メアリ「ヒューイ!!トンリー!!」
ヒューイ「じゃあ、みり、ちょっと借りてくぜ。」
みり「ポン吉を返して!!」
みり、ヒューイ、トンリーに掴みかかるが、
押し退けられる。
みり「キャッ!!(倒れる。)」
ポン吉(心の声)「みり!!」
ヒューイ、トンリー、ポン吉を抱えて上手へ
去る。メアリ、笑いながら続いて去る。
みり「ポン吉!!ポン吉ー!!・・・屹度助け出すわ・・・屹度、
助けに行くからねー!!」
――――― 第 5 場 ――――― B
みり、スポットに浮かび上がり歌う。
“大切な私の友達
遥か彼方
宇宙の何処からか
突然私の前に現れたあなただけど
出会ったばかりの私達
でも私にはとても大切な友達だわ
姿形はただのぬいぐるみでも
心はちゃんと通い合う
生まれて初めて見つけた大切な友達”
みり「ポン吉、待ってて!!」
舞台明るくなる。と、みりの部屋。
みり「(ベットの脇の木箱を探るように。)えっと・・・何処に仕舞っ
たかしら・・・。あった!!これこれ・・・っと・・・」
みり、木箱から取り出したヘルメットを被り、
木の棒を掲げる。ベットの上に立ち上がり。
みり「待ってなさい、メアリ、ヒューイ、トンリー!!私の大切な
ポン吉を奪っといて、ただで済むと思ったら大間違いよ!!
」
その時、下手よりみりのママ登場。
ママ「みり!!“ただいま”も言わないで、ドタバタ部屋に駆け込
んだと思ったら、何て格好・・・(呆れたように。)それにあな
た、今日学校どうしたの!?朝“行って来ます”って出て行
ったっきり、こんな時間まで、どこほっつき歩いて・・・」
みり「ママ!!お説教なら後でいくらでも聞くわ!!私、忙しい
の!!今から決死の救出大作戦決行よ!!」
みり、上手へ走り去る。
ママ「あ・・・みり!!みり、待ちなさい!!みり・・・。決死の救出
大作戦・・・って・・・」
――――― “みりとポン吉”3へつづく ―――――
※ 何の卒業パーティか・・・は、あまり深く考えないで
ください^^;
2013年7月13日土曜日
“みりとポン吉” ―全9場―
〈主な登場人物〉
みり ・・・ 明るい女の子。
ポン吉 ・・・ みりのぬいぐるみ。
メアリ ・・・ みりのクラスメイト。
ヒューイ ・・・ メアリの友達。
トンリー ・・・ メアリの友達。
みりのママ
その他
― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪
客電落ちる。
轟音は響く。(“ゴオーッ”)
声「わあーっ!!操縦管が利かない!!」
コンピューター音が鳴り響く。(“ピーピーピー”)
コンピューターの声「墜落します。墜落します。直ちに脱出して
下さい。墜落します。墜落します。地球圏
突入・・・」
声「わあーっ!!(段々小さく。)」
――――― 第 1 場 ―――――
明るい音楽流れ、舞台明るくなる。
と、中央に一つのベットが置かれ、その上に
パジャマ姿の少女(みり)、楽し気に歌い踊る。
“素敵な時間
自由な時間
町の灯りは消えて
静けさが私を取り巻く
宿題は終わったわ
ご飯も済んだ
歯も磨いてお風呂も入った
パジャマに着替えて
後は私の大切な時間”
ママの声「みり!!いつまでも起きてないで、早く寝なさい!!」
みり「はーい、ママ!!(肩を竦める。)」
その時、“ビューッ!!”“バァーン!”(遠くで
何か墜落した音。)
みり、慌ててベットから飛び降り、窓の方へ
駆け寄る。窓の外を見て。
みり「今の音、何かしら!?林の辺りに何か墜落したような・・・
(暫く、外の様子を窺う。)ま、いっか。折角の大切な時間、
余計なことに煩わされずに・・・(窓を閉めて、ベットの方へ
。)今夜は何をして過ごそうかしら・・・。読み掛けの小説を
読んで仕舞おうかしら・・・。でも結末は、まだ知りたくない
わ!!姫には屹度、素敵な王子様が現れる筈だもの。夜
の暗闇を、白馬に乗った王子様が、剣を翳しながら・・・(
ポーズを取る。)囚われの姫の許へ駆けつけるの!!“
姫!!助けに参りましたぞ!!”」
その時、笑い声が聞こえる。
みり、驚いたように回りを見回し。
みり「誰!?」
声「そんな王子様なんて、いる訳ないさ!!一体君は何時の
時代の話しを読んでいるの?」
みり「いいでしょ、そんなこと!!出て来なさい!!誰なの!?
私の部屋へ無断で入り込んで、私の素敵な時間にケチ付
ける奴は!!」
声「そんなに怒らないでよ。怖いなぁ。(笑う。)」
その時、今まで棚の上に並んでいた
ぬいぐるみの中の一つ、たぬきの“ポン吉”
が動き出し、ぎこちない動き方で、みりの
側へ。 ※
ポン吉「まだ、この体に慣れてなくって・・・動き難いなぁ・・・。(自
分の手足を動かしてみる。首をコキコキ動かして。)まぁ
いいや、その内、慣れるだろ。(驚いて呆然と、その様子
を見ていたみりに向かって。)こんにちは!僕は・・・」
みり「ポン吉・・・」
ポン吉「え?」
みり「な・・・何で、ポン吉が喋るの!?だってポン吉は、ただの
ぬいぐるみよ!!私が幼稚園の頃に、パパがクリスマス
プレゼントに買ってくれた、あのショーウインドーに飾られて
たポン吉が話しをするなんて・・・(ポン吉から目を逸らせ、
首を振る。)夢よ・・・夢を見てるのよ!!だってポン吉が喋
る訳ないもの!!まして自分の力で動くなんて!!電池で
動く訳でもない、ただのぬいぐるみのポン吉がそんな・・・(
自分の頬を抓る。)痛っ!!・・・ほら・・・痛い!!痛いわ!
!これは夢の中の出来事よ!!」
みり歌う。
“そうでしょ
ただの人形が動く筈ないもの
決まってるわ
ただの目の錯覚だって・・・”
みり「ね・・・!?(振り返って、ポン吉を見る。)」
ポン吉「本当だよ。」
みり「(再び目を逸らせ、頬を抓る。)・・・痛い・・・痛い?・・・痛い
ってどう言うこと!?」
ポン吉「だから、これは夢でも何でもなくって・・・」
みり「嘘よ!!ポン吉はだって・・・ただのぬいぐるみ・・・勝手に
動くなんて!!」
ポン吉「ねぇ、君!!ちゃんと僕の説明を聞いてよ!!僕は君
から見ればポン吉かも知れないけど、中身はポン吉じゃ
ないんだ!!ポン吉の姿をしてるけれど、ポン吉でなく
って・・・ポン吉はただのぬいぐるみで・・・えっと・・・だか
ら僕はポン吉じゃなくって・・・本当に生きて動いてる訳
で・・・」
みり「・・・何言ってるの・・・?あなたはどこから見たって、私の
ポン吉じゃない・・・。」
ポン吉「だからそれは!!(思わず溜め息を吐く。)どう言えば
いいのかな・・・。(窓の方へ行き、遠くの星を指差す。)
僕は、あの辺りから来たんだ。」
みり「・・・どう言うこと・・・?」
ポン吉「僕の星は、この地球からじゃ豆粒程も見えない、遥か
彼方にあるんだ。それが何故、今こんな遠くの星にいる
かって・・・馬鹿馬鹿しくて話す気にもなれないや・・・(
独り言のように。)」
みり「何故ここにいるの?」
ポン吉「(肩を竦めて。)パパの宇宙船で遊んでいるうちに、つ
い発射ボタンを・・・」
みり「押しちゃったの?」
ポン吉「(頷く。)・・・帰ったら大目玉だよ・・・。おまけに宇宙船を
ぶっ壊して墜落させちゃったうえに、体まで無くしただな
んて・・・」
みり「体を無くした・・・って?」
ポン吉「うん・・・。この通り、今は心が君のぬいぐるみのポン吉
に入り込んだから、君にはポン吉に見えているかも知れ
ないけど、僕の体は、本当はこんなぬいぐるみの玩具
じゃないんだ。」
みり「・・・なんとなく分かってきたわ・・・。つまりこうね?あなたは
遥か彼方に住む宇宙人で、この地球にやって来たのは、
単なる偶然。今は体は私のポン吉だけど、本当は生きた
タヌキだってこと!!」
ポン吉「・・・え?狸・・・って・・・」
音楽流れ、みり歌う。
みり“少し分かった あなたのこと”
ポン吉「あ・・・ありがとう・・・」
みり“最初は驚いたけれど”
ポン吉「ごめん・・・」
ミリ“でも直ぐに理解できたわ
あなたが異星人だってこと
姿形はポン吉でも
中身は生きた誰かだってこと”
ポン吉「本当に?」
みり「ええ、本当よ!!」
ポン吉歌う。
ポン吉“僕は僕だけど今は僕じゃない
この体は単なるここでの借り物
本当の僕を捜さなきゃ・・・”
ポン吉「それで君!!お願いがあるんだ!!僕の体を一緒に
捜して欲しいんだ!!」
みり「え?捜すって、一体どこを・・・」
ポン吉「墜落した時の衝撃で宇宙船から飛び出したんだ。だか
ら屹度、この近くにある筈なんだよ。体が見つからない
と、僕は一生この体のまま、自分の星にも帰れない・・・
。」
みり「・・・分かったわ!!明日、学校をサボって林に行ってみ
ましょう!!私、あの林に何かが落ちるのを見たのよ。」
ポン吉「本当に?」
みり「ええ!!」
ポン吉「ありがとう、君!!」
みり「私はみり!」
ポン吉「(思わず。)知ってるよ・・・!」
みり「え?」
ポン吉「あ・・・ううん!僕は・・・」
みり「ポン吉!!」
ポン吉「え・・・違うよ。僕の本当の名前は・・・」
みり「だって、あなたの姿形は、どこから見たって私のポン吉だ
もの。違う名前を言われたって、そんな風に呼べないわ。」
ポン吉「・・・ま、いっか・・・」
みり「さ、そうと決まったら早く寝ましょう、ポン吉!!」
ポン吉「(溜め息を吐く。)」
音楽で暗転。
――――― 第 2 場 ――――― A
舞台後方、カーテン後ろ、2人のシルエット
浮かび上がる。(ポン吉父、母。)
ポン吉母「あの子が宇宙船に乗って、宇宙へ飛び出して行った
ですって!?」
ポン吉父「何てことだ、全く・・・。自動操縦で、どこかの星には
着くようにはなっているが・・・。その星に着陸する時
に、宇宙船に何かあったら、戻ってくることが出来なく
なるかも知れないんだぞ。」
ポン吉母「あなた・・・」
ポン吉父「まぁ・・・しっかりしたあの子のことだ・・・。無事に帰っ
て来るとは思うが・・・。待つことにしよう・・・。万が一
の時には、私が捜しに行くことにするよ。本当に・・・
あの子の好奇心旺盛と言うか・・・度を越した悪戯に
は、今までも何度も頭を痛めてきたが・・・。(溜め息
を吐く。)」
カーテン後ろ、フェード・アウト。
――――― 第 2 場 ――――― B
小鳥達の囀りが聞こえる。
舞台明るくなる。と、上手前方、エプロン姿の
みりのママ、フライパンを持って何か料理して
いるように。
ママ「みりー!!早く起きなさい!!学校に遅れるわよ!!
みりー!!」
その時、上手よりみり、ポン吉のぬいぐるみを
背負い、鞄を提げ登場。下手方へ。
みり「私、朝ご飯いらない!!」
ママ「みり!!スクランブルエッグだけでも食べて行きなさい!
(みりの背負っているポン吉に気付いて。)みり!!学校へ
ポン吉なんか連れて行かないの!!これ、みり!!人形
を置いて行きなさい!!」
みり「行って来まーす!!」
みり、足早に下手へ去る。
ママ「みり!!(溜め息を吐く。)」
ママ、呆れたように歌う。
“全くあの子は
丸で羽根の生えた鳥のように
ちっともじっとしてやしない
全くあの子は
いつも自由奔放で
自分の思いのままに飛び回る”
ママ、上手へ去る。
小鳥の囀り残したまま、暗転。
――――― 第 3 場 ―――――
舞台明るくなると、林の風景。
一時置いて、下手後方より、回りをキョロキョロ
見回しながら、みり登場。続いてポン吉登場。
みり「確か、ここら辺に落ちたような・・・」
ポン吉「本当?何処?何処にあるの!?」
みり「煩いなぁ・・・。黙ってて!!今、捜してるんだから・・・」
2人、暫くの間、回りを捜しているように。
その時、みり、木の葉の下に隠れていた
宇宙船を見つける。
みり「あった・・・あった!!あったわよ、ポン吉!!」
ポン吉「本当に、みり!!」
みり「(木の葉を払い除ける。)これでしょ!?」
ポン吉「あった・・・これだ!!・・・よかった・・・。(安堵で、腰が
抜けたように。)」
みり「動くの!?」
ポン吉「あ・・・今見てみないと・・・。ちょっと待って・・・」
ポン吉、宇宙船をゴソゴソ触ってみる。と、
機械音がして電気が点く。
みり「わぁ!!・・・動いた・・・本物なんだ、これ・・・」
ポン吉「やった!!大丈夫みたいだよ、みり!!ありがとう!!
」
みり「それで?あなたの体は?この宇宙船の中にあるの?(宇
宙船の中を覗き込む。)どこかしら・・・(独り言のように。)」
ポン吉「この中にはないよ・・・」
みり「じゃあ一体何処にあるの?」
――――― “みりとポン吉”2へつづく ―――――
※ 以前、ご紹介した作品での“ポン吉”くんは、確か・・・
クマのぬいぐるみだったかと・・・(^.^)今回は“たぬき”
くんみたいです^^;
2013年7月9日火曜日
“Thank you!B・J” ―全8場― エンディング
音楽流れ、ジム歌う。
“一番大切なことを見落とした
俺を許して欲しい・・・”
B・J「兄ちゃん・・・」
“よく見れば直ぐに分かる
そんな観察を怠った・・・”
B・J「(首を振る。)」
ジム「知らなかったことだとは言え・・・おまえを傷付けて悪かっ
たな・・・。ごめんよ・・・」
B・J「ううん・・・兄ちゃん・・・」
B・J、歌う。
“いつも泥だらけ
ホームの厄介者の俺・・・”
ジム「B・J・・・」
“誰も相手にしてくれない
今までずっと一人ぼっちで・・・”
B・J「俺・・・今までずっとホームの食み出しっ子だったんだ・・・。
里親になりたいって、ホームにやって来る大人達は皆・・・
俺を見ると、同情と哀れみの入り混じった目をしてこう言う
んだ・・・“まぁ・・・苦労したのね・・・可哀想に・・・”。そして必
ず決まって“でもあなたには、私達よりもっと素敵な引き取
り手が現れるわ・・・”。そう言って身形の綺麗な可愛い子を
里子に選んで帰って行くんだ・・・。誰も俺みたいな汚らしい
格好の、乱暴者を引き取りたいって言う大人はいないって
・・・皆にそう言われてた・・・。だから俺は一生一人で生きて
いく・・・そう心に誓って生きてきたんだ・・・ずっと・・・」
ジム「B・J・・・」
B・J「そんな時、兄ちゃんと出会ったんだ・・・」
ジム「・・・え・・・」
B・J「最初は公園のベンチで寝っ転がってる兄ちゃんのこと、怪
しんだけど・・・俺・・・兄ちゃんが言ったこと、すごく・・・本当
はすごく嬉しかったんだ・・・。だって、そうだろ?夏休みの
間だけでもホームにいなくていいんだ。誰も引取り手がなく
て、いっつも皆の食み出しものだった俺を、馬鹿にするホー
ムの奴らと、夏休みの間だけでも一緒にいなくていいなん
て・・・俺には夢のような話しだったから・・・。でも・・・それが
男として・・・だと分かって・・・俺・・・一度は諦めたけど、男
と間違われたんなら、男のフリをすればいいんだって・・・そ
う考えたんだ・・・。けど・・・いつも不安だったのも本当さ・・・
」
ジム「不安・・・?」
B・J「うん・・・だってもし女だとバレて・・・この束の間の幸せが
崩れたらと思うと・・・俺・・・」
ジム「(フッと笑う。)」
B・J「何笑ってんだよ!」
ジム「あ・・・悪い・・・。見事だったよ、俺は全く疑うことなく、おま
えを少年だと信じてたからさ・・・。」
B・J「俺・・・楽しかったぜ、兄ちゃん!男のフリすんの!だって
いっつもホームでは“お行儀良くしなさい!女の子らしくす
るんですよ、B・J!”ってさ・・・。それが、お行儀良くは言わ
れても、女の子らしく・・・とは言われないんだ。それって・・・
俺は俺でいいってことだろ?俺は生まれてから、女の子ら
しく・・・なんてもんとは縁がなかったんだ、一度も・・・。だか
ら・・・女の子らしくがどんなだか・・・分からなかった・・・。回
りの女の子達が興味あるような、お喋りやお洒落だって・・・
俺にはサッパリ・・・。それにもし俺が・・・女の子らしい身形
をしてたら、兄ちゃん、俺に声かけたか?」
ジム「イヤ・・・」
B・J「だろ?だからあんな格好してたことも、少しは役に立った
のかなって・・・。あ・・・兄ちゃんに嘘吐いたのは・・・悪かっ
たけど・・・」
ジム「・・・じゃあ愛顧だな・・・」
B・J「愛顧・・・うん!」
ジム「B・J・・・本当の名前は・・・?」
B・J「・・・ベティ・・・ジョー・・・」
ジム「ベティ・・・そうか・・・女の子らしい、いい名前があったんだ
な・・・」
B・J「女の子・・・らしい・・・」
ジム「さてベティ・・・、じゃあここからは女の子としてのおまえに
話しがある。」
B・J「え・・・?」
ジム「(B・Jの持っていた鞄を見て。)そうやって荷物をまとめて
折角出てきたようなんだが・・・もう一度戻る気はないか?」
B・J「戻る・・・って・・・」
ジム「ミセスアダムスのところへさ。」
B・J「・・・婆ちゃんの・・・?」
ジム「ああ。」
B・J「けど・・・だって俺・・・本当は男じゃ・・・」
ジム「(微笑んで。)おまえを養女として迎え入れたいそうだ。」
B・J「嘘だ・・・だって婆ちゃんは・・・元気な男の子が・・・」
ミセスアダムスの声「本当ですよ。」
B・J「え・・・?(回りを見回す。)」
ミセスアダムス、下手より登場。
続いてマーク登場。
ミセスアダムス「私はあなたがいいの・・・」
B・J「(ミセスアダムスを認める。)・・・婆ちゃん・・・」
ミセスアダムス「元気な男の子でなくても・・・私はB・J本人を私
の子として、我が家へ迎え入れたいのよ・・・」
B・J「・・・婆ちゃん・・・本当に・・・?」
ミセスアダムス「誰が嘘なんて言うものですか・・・。あなたがい
なくなってしまったら私・・・また以前のように歩く
ことも出来なくなって、ベッドの中へ逆戻りの生
活になってしまうわ、きっと・・・」
B・J「駄目だよ、そんなの・・・!」
ミセスアダムス「じゃあ・・・戻って来てくれるわね・・・?」
B・J「(ジムを見る。)」
ジム「(頷く。)」
B・J「婆ちゃん!!(ミセスアダムスの腕の中へ飛び込む。)」
ミセスアダムス「さぁ、またこれから忙しくなるわね。なんせ、今
度はB・Jをレディ教育し直さなければならない
んですもの。」
B・J「婆ちゃん・・・」
ミセスアダムス「可愛いドレスを作らせましょう。髪飾りもね。あ
らあら、今まで以上に楽しみが増えたこと。(笑
う。)」
ジム「ミセスアダムス、B・Jのことを宜しくお願いします。」
ミセスアダムス「グレイ先生、勿論ですとも・・・」
ジム、ミセスアダムス、一寸脇へ寄る。
(話しているように。)
マーク「(B・Jの側へ。)おめでとう、B・J。」
B・J「(マークを認め。)マーク・・・。おまえ・・・いつから気付いて
たんだよ・・・俺が・・・その・・・」
マーク「そんなこと、最初からに決まってるじゃないか。(笑う。)」
B・J「最初から・・・?」
マーク「ああ。」
B・J「最初から知ってておまえ・・・マグリットを紹介してやるとか
なんとか・・・!」
マーク「いいじゃないか。君がどうして男のフリをしてるのかは知
らなかったけれど、男のフリをしてるってことは、男として
扱われたいんだって解釈してたからね。」
B・J「・・・お・・・男男言うな!」
マーク「(笑う。)・・・君が女の子で良かったな。」
B・J「・・・え・・・?」
マーク「何、紅くなってんだよ。」
B・J「あ・・・紅くなんてなってないさ!!何、巫山戯てんだ馬鹿
野郎・・・!!」
ミセスアダムス「B・J、先ずはその言葉遣いをもう一度直さなけ
ればいけませんよ。」
音楽流れる。(歌う。)
ミセスアダムス“女の子は
馬鹿野郎なんて言いません”
マーク“女の子なら女の子らしく”
ジム“だけど君は君のままでいい”
B・J「兄ちゃん・・・」
ミセスアダムス“女の子でも男の子でも”
マーク“言葉遣いが悪くても”
ジム“君がいればそれでいい”
B・J「俺が・・・」
B・J“やっと見つけたオレ・・・(首を振る。)
私の道・・・
今まで自分が誰なのか
分からないまま歩いて来たけれど
ほんの小さな切っ掛けが
私の足元を照らし始めた
何も特別なことをした訳じゃない
私は私のままでいただけ
そこから始まった新しい希望
そこから知った私の道
私は私のままでいいのね!!”
ミセスアダムス、B・Jの側へ。
(4人、彼方を見遣る。)
音楽盛り上がり。
――――― 幕 ―――――
“一番大切なことを見落とした
俺を許して欲しい・・・”
B・J「兄ちゃん・・・」
“よく見れば直ぐに分かる
そんな観察を怠った・・・”
B・J「(首を振る。)」
ジム「知らなかったことだとは言え・・・おまえを傷付けて悪かっ
たな・・・。ごめんよ・・・」
B・J「ううん・・・兄ちゃん・・・」
B・J、歌う。
“いつも泥だらけ
ホームの厄介者の俺・・・”
ジム「B・J・・・」
“誰も相手にしてくれない
今までずっと一人ぼっちで・・・”
B・J「俺・・・今までずっとホームの食み出しっ子だったんだ・・・。
里親になりたいって、ホームにやって来る大人達は皆・・・
俺を見ると、同情と哀れみの入り混じった目をしてこう言う
んだ・・・“まぁ・・・苦労したのね・・・可哀想に・・・”。そして必
ず決まって“でもあなたには、私達よりもっと素敵な引き取
り手が現れるわ・・・”。そう言って身形の綺麗な可愛い子を
里子に選んで帰って行くんだ・・・。誰も俺みたいな汚らしい
格好の、乱暴者を引き取りたいって言う大人はいないって
・・・皆にそう言われてた・・・。だから俺は一生一人で生きて
いく・・・そう心に誓って生きてきたんだ・・・ずっと・・・」
ジム「B・J・・・」
B・J「そんな時、兄ちゃんと出会ったんだ・・・」
ジム「・・・え・・・」
B・J「最初は公園のベンチで寝っ転がってる兄ちゃんのこと、怪
しんだけど・・・俺・・・兄ちゃんが言ったこと、すごく・・・本当
はすごく嬉しかったんだ・・・。だって、そうだろ?夏休みの
間だけでもホームにいなくていいんだ。誰も引取り手がなく
て、いっつも皆の食み出しものだった俺を、馬鹿にするホー
ムの奴らと、夏休みの間だけでも一緒にいなくていいなん
て・・・俺には夢のような話しだったから・・・。でも・・・それが
男として・・・だと分かって・・・俺・・・一度は諦めたけど、男
と間違われたんなら、男のフリをすればいいんだって・・・そ
う考えたんだ・・・。けど・・・いつも不安だったのも本当さ・・・
」
ジム「不安・・・?」
B・J「うん・・・だってもし女だとバレて・・・この束の間の幸せが
崩れたらと思うと・・・俺・・・」
ジム「(フッと笑う。)」
B・J「何笑ってんだよ!」
ジム「あ・・・悪い・・・。見事だったよ、俺は全く疑うことなく、おま
えを少年だと信じてたからさ・・・。」
B・J「俺・・・楽しかったぜ、兄ちゃん!男のフリすんの!だって
いっつもホームでは“お行儀良くしなさい!女の子らしくす
るんですよ、B・J!”ってさ・・・。それが、お行儀良くは言わ
れても、女の子らしく・・・とは言われないんだ。それって・・・
俺は俺でいいってことだろ?俺は生まれてから、女の子ら
しく・・・なんてもんとは縁がなかったんだ、一度も・・・。だか
ら・・・女の子らしくがどんなだか・・・分からなかった・・・。回
りの女の子達が興味あるような、お喋りやお洒落だって・・・
俺にはサッパリ・・・。それにもし俺が・・・女の子らしい身形
をしてたら、兄ちゃん、俺に声かけたか?」
ジム「イヤ・・・」
B・J「だろ?だからあんな格好してたことも、少しは役に立った
のかなって・・・。あ・・・兄ちゃんに嘘吐いたのは・・・悪かっ
たけど・・・」
ジム「・・・じゃあ愛顧だな・・・」
B・J「愛顧・・・うん!」
ジム「B・J・・・本当の名前は・・・?」
B・J「・・・ベティ・・・ジョー・・・」
ジム「ベティ・・・そうか・・・女の子らしい、いい名前があったんだ
な・・・」
B・J「女の子・・・らしい・・・」
ジム「さてベティ・・・、じゃあここからは女の子としてのおまえに
話しがある。」
B・J「え・・・?」
ジム「(B・Jの持っていた鞄を見て。)そうやって荷物をまとめて
折角出てきたようなんだが・・・もう一度戻る気はないか?」
B・J「戻る・・・って・・・」
ジム「ミセスアダムスのところへさ。」
B・J「・・・婆ちゃんの・・・?」
ジム「ああ。」
B・J「けど・・・だって俺・・・本当は男じゃ・・・」
ジム「(微笑んで。)おまえを養女として迎え入れたいそうだ。」
B・J「嘘だ・・・だって婆ちゃんは・・・元気な男の子が・・・」
ミセスアダムスの声「本当ですよ。」
B・J「え・・・?(回りを見回す。)」
ミセスアダムス、下手より登場。
続いてマーク登場。
ミセスアダムス「私はあなたがいいの・・・」
B・J「(ミセスアダムスを認める。)・・・婆ちゃん・・・」
ミセスアダムス「元気な男の子でなくても・・・私はB・J本人を私
の子として、我が家へ迎え入れたいのよ・・・」
B・J「・・・婆ちゃん・・・本当に・・・?」
ミセスアダムス「誰が嘘なんて言うものですか・・・。あなたがい
なくなってしまったら私・・・また以前のように歩く
ことも出来なくなって、ベッドの中へ逆戻りの生
活になってしまうわ、きっと・・・」
B・J「駄目だよ、そんなの・・・!」
ミセスアダムス「じゃあ・・・戻って来てくれるわね・・・?」
B・J「(ジムを見る。)」
ジム「(頷く。)」
B・J「婆ちゃん!!(ミセスアダムスの腕の中へ飛び込む。)」
ミセスアダムス「さぁ、またこれから忙しくなるわね。なんせ、今
度はB・Jをレディ教育し直さなければならない
んですもの。」
B・J「婆ちゃん・・・」
ミセスアダムス「可愛いドレスを作らせましょう。髪飾りもね。あ
らあら、今まで以上に楽しみが増えたこと。(笑
う。)」
ジム「ミセスアダムス、B・Jのことを宜しくお願いします。」
ミセスアダムス「グレイ先生、勿論ですとも・・・」
ジム、ミセスアダムス、一寸脇へ寄る。
(話しているように。)
マーク「(B・Jの側へ。)おめでとう、B・J。」
B・J「(マークを認め。)マーク・・・。おまえ・・・いつから気付いて
たんだよ・・・俺が・・・その・・・」
マーク「そんなこと、最初からに決まってるじゃないか。(笑う。)」
B・J「最初から・・・?」
マーク「ああ。」
B・J「最初から知ってておまえ・・・マグリットを紹介してやるとか
なんとか・・・!」
マーク「いいじゃないか。君がどうして男のフリをしてるのかは知
らなかったけれど、男のフリをしてるってことは、男として
扱われたいんだって解釈してたからね。」
B・J「・・・お・・・男男言うな!」
マーク「(笑う。)・・・君が女の子で良かったな。」
B・J「・・・え・・・?」
マーク「何、紅くなってんだよ。」
B・J「あ・・・紅くなんてなってないさ!!何、巫山戯てんだ馬鹿
野郎・・・!!」
ミセスアダムス「B・J、先ずはその言葉遣いをもう一度直さなけ
ればいけませんよ。」
音楽流れる。(歌う。)
ミセスアダムス“女の子は
馬鹿野郎なんて言いません”
マーク“女の子なら女の子らしく”
ジム“だけど君は君のままでいい”
B・J「兄ちゃん・・・」
ミセスアダムス“女の子でも男の子でも”
マーク“言葉遣いが悪くても”
ジム“君がいればそれでいい”
B・J「俺が・・・」
B・J“やっと見つけたオレ・・・(首を振る。)
私の道・・・
今まで自分が誰なのか
分からないまま歩いて来たけれど
ほんの小さな切っ掛けが
私の足元を照らし始めた
何も特別なことをした訳じゃない
私は私のままでいただけ
そこから始まった新しい希望
そこから知った私の道
私は私のままでいいのね!!”
ミセスアダムス、B・Jの側へ。
(4人、彼方を見遣る。)
音楽盛り上がり。
――――― 幕 ―――――
2013年7月5日金曜日
“Thank you!B・J” ―全8場― 5
ミセスアダムス、ゆっくり立ち上がる。
(俄に人々騒つく。)
ルーシー「奥様!」
ミセスアダムス「大丈夫よ。」
ミセスアダムス、ゆっくり階段を下りて来る。
ミセスアダムス「数ヶ月前の私は、起き上がることもままならな
かったのが、ご覧の通り・・・今ではこのように、
しっかりと自分の足で大地を踏み締め、歩くこと
が出来る程に回復致しましたの。さて・・・今日
はもう一つ、皆様にご報告をしなければいけな
いことがあります。B・J、こっちへいらっしゃい。」
B・J「・・・え?」
B・J、ゆっくりミセスアダムスの側へ。
ジム「報告とは・・・?」
ミセスアダムス「ええ・・・少し前よりずっと考えていたことですけ
れども・・・さっきから申し上げている通り、数ヶ月
前までの私は、息子夫婦が仕事の関係で遠くへ
行ってしまって、それまでの賑やかだった生活が
一変し、毎日が張り合いなく、とても淋しい思い
をしておりましたの。それがこのB・Jを我が家で
預かることになり、そのことによって生活に張り
を取り戻した私は、それまでとは打って変わって
生き生きと過ごすことが出来るようになりました。
それは全て、このB・Jのお陰なのです・・・。あり
がとう、B・J・・・」
B・J「・・・そんな・・・」
ミセスアダムス「そこで私は考えたのです。グレイ先生とのお約
束では、夏のバカンスの間だけと言うことでした
けれど・・・このB・Jを正式に私の養子に迎えよ
うと思いますの。」
ジム「本当ですか?ミセスアダムス。」
バート「B・Jお坊ちゃん!」
ミセスアダムス「ええ、本当ですとも。どう?B・J・・・」
B・J「婆ちゃん・・・」
ミセスアダムス「我が家の跡取り息子として・・・来てくれるかし
ら・・・?」
B・J「跡取り・・・息子・・・俺・・・俺、無理だ・・・」
ミセスアダムス「B・J?」
B・J「俺・・・そんな・・・跡取り息子だなんて・・・無理だ・・・無理
だ!!」
B・J、上手へ走り去る。(人々騒めく。)
ジム「B・J!!」
ミセスアダムス、ジム、マーク残して
カーテン閉まる。
ミセスアダムス「(心配そうに、上手を見る。)どうしたのかしら、
B・J・・・」
ジム「僕が見て来ます!(上手方へ行きかける。)」
マーク「待って下さい、先生!!」
ジム「(立ち止まり、マークを見る。)どうしたんだい、マーク?」
マーク「先生はお気付きじゃあないかも知れませんが・・・」
ジム「・・・気付く・・・?一体何を・・・」
マーク「・・・B・Jは・・・彼女は自分を偽り続けることに、限界を感
じたのだと思います・・・。」
ジム「偽る・・・?偽るって・・・え・・・?今・・・彼女・・・って・・・」
マーク「・・・はい・・・。B・Jは・・・正真正銘、女の子ですよ。」
ジム「女・・・の子・・・?」
ミセスアダムス「・・・まぁ・・・」
ジム「女の子って・・・」
マーク「そうです。」
ジム「でも・・・!?」
マーク「きっと何か理由があって、本当のことを言い出せずに今
日まできたのでしょう。」
ジム「まさか・・・でも・・・どう見ても・・・」
ミセスアダムス「私、そんなことは知らずに跡取り息子だなんて
・・・酷いことを・・・」
マーク「お祖母様、そのことに関してお祖母様がそこまで気に病
むことはありませんよ。このグレイ先生ですら見抜けなか
ったんですからね。男だからと偽って連れて来られたB・J
を、少年だと信じても・・・」
ジム「でも、どうしてそれを・・・?」
マーク「彼女と一度、握手した手ですよ。あれは紛れもない女の
子の手でしたから。」
ジム「手・・・」
マーク「けど可笑しいなぁ・・・先生ともあろうお方が、人の性別を
見間違えるなんて・・・」
ジム「俺だって万能じゃないんだ。見間違いくらいするさ・・・。け
ど・・・あのB・Jが少女だったなんて・・・。俺はてっきり少年
だと・・・。あの公園で見かけた状況も状況だったが、あんな
格好で泥だらけの姿を見たら・・・(首を傾げ、フッと笑う。)
やれやれ・・・これはまんまと引っかかったな・・・」
ミセスアダムス「先生、私もですよ・・・」
マーク「当のB・Jには引っかけるつもりなんてなかったでしょう
けどね。」
ジム「そうだな・・・俺のせいだな・・・きっと・・・」
ミセスアダムス「いいえ、気付いてあげられなかった私こそ、い
けなかったのです・・・。」
ジム「さて・・・ミセスアダムス・・・、僕の勘違いから起こったこと
とは言え・・・“跡取り息子”になりえないB・Jのことですが
・・・」
ミセスアダムス「あら・・・そんなことは決まってるじゃあありませ
んか。跡取り息子でも、跡取り娘でも構いません
。私はB・J本人が大好きになりましたのよ。性
別なんて関係ありませんわ、先生。」
ジム「ミセスアダムス・・・では・・・」
ミセスアダムス「勿論、B・Jは私の養女として迎え入れましょう
。」
マーク「お祖母様・・・」
その時、上手よりバート、慌てた様子で登場。
バート「奥様!B・Jお坊ちゃんがお屋敷の外へ!!荷物をまと
めて出て行っておしまいに!!」
ミセスアダムス「まぁ、大変だわ!早く連れ戻しに行きましょう!
」
ジム「ミセスアダムス!一つ、B・Jの行きそうな場所に心当たり
が・・・」
ミセスアダムス「本当ですの?先生。」
ジム「はい。」
ミセスアダムス「それでは案内して下さいな。」
ジム「分かりました。」
ミセスアダムス「それとバート、B・Jはお坊ちゃんではありませ
んよ。」
バート「・・・は?」
ミセスアダムス「さぁ、参りましょう!」
ミセスアダムス、上手へ去る。首を傾げ
ながらバート、続いて去る。
ジム「マーク、おまえはいい医者になるよ。俺なんかよりずっと
・・・」
マーク「はい!必ずいつか、先生を追い越すことこそ、僕が目指
し行き着く場所だと信じていますから・・・」
ジム、マーク、上手へ去る。
――――― 第 8 場 ―――――
音楽流れ、カーテン開く。と、1場の公園。
上手より鞄を提げたB・J登場。歌う。
“僕は誰だろ・・・
どこの誰だろ・・・
偽りの仮面で覆われた
僕も知らない僕だから・・・
見えかけた足元の道も
今は霧で霞んで見える
もう戻れない・・・
やっと見つけた温かな場所
今日はいつだろ
明日は来るのか
それさえも分からない
不確かな僕だから・・・
やっと踏み出した1歩が
今は不安で揺らぐのが分かる
もう戻らない・・・
僕の居場所はここじゃない・・・”
B・J、中央ベンチへ腰を下ろして、
手に持ったハンカチで顔を覆い隠すように
静かに泣く。
B・J「畜生・・・畜生・・・」
そこへ下手より一人の老人登場。
B・Jを認め、慌てた様子で近寄る。
老婆「いたいた!!やっと戻って来ておくれだね、先生!!あた
しゃ、先生に持病の腰痛を早く診て欲しくて、この公園診療
所が開くのを、今か今かとずっと待ってたんだよ!!」
B・J「・・・え・・・?(顔を上げる。)」
老婆「・・・あっれ・・・子どもじゃねぇか・・・先生は・・・?先生はど
うしたんだい?坊主・・・」
B・J「先生・・・?」
老婆「ああ。ここは先生の診療所なんだよ。単なる休憩の為の
ベンチとは訳が違うんだ。さ、どいたどいた!ここは先生の
ベンチなんだから!(B・Jを無理矢理退かすように。)」
B・J「いいじゃんか、ケチ!!」
老婆「いかんいかん!!(椅子の上を、持っていたハンカチで、
払うように。)この椅子は先生のもんだ。」
B・J「なんでぇ・・・あ・・・先生って・・・兄ちゃんのことだ・・・」
老婆「先生は我々貧しいもんの味方の、素晴らしい先生なんじ
ゃ・・・。せめて先生の座る場所くらい・・・(鞄の中から、毛
糸の座布団を取り出し、ベンチへ置く。)よし、ピッタリじゃ。
どうじゃ、坊主!わしの腕もまだまだ捨てたもんじゃなかろ
う。(笑う。)」
B・J「(座布団を見て。)へぇ・・・この座布団、婆ちゃんの手作り
かい?」
老婆「ああ、そうじゃよ。わしら貧乏人は先生に何もお礼が出来
んからの・・・せめて先生のお尻くらい温めさせてもらおうと
思ってな・・・」
B・J「ふうん・・・」
老婆「それにしても先生は一体どこへ行ってしまわれたんじゃろ
うか・・・。ここ数日、ずっとこの診療所は閉まったまんま・・・
こんな何日もいないなんて、ここが始まって以来じゃ・・・。
まさかどこか違う場所へ移転などしたんじゃああるまいな
・・・」
B・J「・・・大丈夫だよ、婆ちゃん・・・」
老婆「え・・・?」
B・J「兄ちゃん・・・あ・・・ジム先生は直ぐに戻って来るさ・・・」
老婆「本当か?」
B・J「(頷く。)今は大学病院の手伝いで忙しくしてるけど、ここの
医者を辞めるつもりはない・・・そう言ってたぜ。」
老婆「そりゃあ・・・よかったことじゃ。しかし坊主、どこでそんな
話しを・・・?」
B・J「・・・うん・・・ちょっと・・・ね・・・」
老婆「そうか・・・それじゃあまあ理由は聞かんでおくとしよう・・・
。ありがとうよ、朗報を聞かせてくれて・・・。先生の帰りを待
ち侘びておる、他の年寄り達にも知らせてやるとしようかの
・・・。」
老婆、下手へ行きかける。
老婆「そうじゃ坊主、先生に会ったらよろしく伝えておくれ。皆が
先生の帰りを、首を長くして待っておるとな・・・。」
B・J「うん・・・言っとくよ・・・!・・・もし・・・また会えたら・・・きっと
・・・」
老婆、下手へ去る。
B・J、鞄を提げ、上手方へ行きかける。
と、上手よりジム登場。
ジム「やっぱりここか・・・」
B・J「・・・兄ちゃん・・・(慌てて下手方へ向き直り、行こうとする。
)」
ジム「どこ行くんだ?」
B・J「(立ち止まる。)い・・・いいだろ・・・どこだって・・・」
ジム「また孤児院へ戻るつもりか?」
B・J「だって・・・だって俺・・・だって・・・!!」
ジム「(微笑んで、B・Jの頭に手を乗せる。)ごめんよ・・・」
B・J「・・・え・・・?」
ジム「柔らかい髪だ・・・」
B・J「・・・兄ちゃん・・・」
ジム「もっとよくおまえのことを見ていれば、気付いた筈だな・・・
本当は女の子だったと言うことに・・・」
B・J「・・・俺・・・」
ジム「おまえもおまえだぞ!そんな風に女の子が俺なんて言う
もんだから・・・てっきり・・・あの時は格好も泥だらけだった
し・・・。それにしても・・・マークに言われるまで、気付けなか
った俺は、医者落第だな。(笑う。)」
B・J「・・・マークが・・・?」
ジム「ああ。」
B・J「俺・・・何も兄ちゃんや婆ちゃんのことを、騙そうと思って男
のフリしてたんじゃないんだ・・・。俺・・・俺・・・どうしても言
いだせなくて・・・」
ジム「分かってるよ・・・。俺がいけなかったんだ・・・。」
――――― “Thank you!B・J”
エンディングへつづく ―――――
(俄に人々騒つく。)
ルーシー「奥様!」
ミセスアダムス「大丈夫よ。」
ミセスアダムス、ゆっくり階段を下りて来る。
ミセスアダムス「数ヶ月前の私は、起き上がることもままならな
かったのが、ご覧の通り・・・今ではこのように、
しっかりと自分の足で大地を踏み締め、歩くこと
が出来る程に回復致しましたの。さて・・・今日
はもう一つ、皆様にご報告をしなければいけな
いことがあります。B・J、こっちへいらっしゃい。」
B・J「・・・え?」
B・J、ゆっくりミセスアダムスの側へ。
ジム「報告とは・・・?」
ミセスアダムス「ええ・・・少し前よりずっと考えていたことですけ
れども・・・さっきから申し上げている通り、数ヶ月
前までの私は、息子夫婦が仕事の関係で遠くへ
行ってしまって、それまでの賑やかだった生活が
一変し、毎日が張り合いなく、とても淋しい思い
をしておりましたの。それがこのB・Jを我が家で
預かることになり、そのことによって生活に張り
を取り戻した私は、それまでとは打って変わって
生き生きと過ごすことが出来るようになりました。
それは全て、このB・Jのお陰なのです・・・。あり
がとう、B・J・・・」
B・J「・・・そんな・・・」
ミセスアダムス「そこで私は考えたのです。グレイ先生とのお約
束では、夏のバカンスの間だけと言うことでした
けれど・・・このB・Jを正式に私の養子に迎えよ
うと思いますの。」
ジム「本当ですか?ミセスアダムス。」
バート「B・Jお坊ちゃん!」
ミセスアダムス「ええ、本当ですとも。どう?B・J・・・」
B・J「婆ちゃん・・・」
ミセスアダムス「我が家の跡取り息子として・・・来てくれるかし
ら・・・?」
B・J「跡取り・・・息子・・・俺・・・俺、無理だ・・・」
ミセスアダムス「B・J?」
B・J「俺・・・そんな・・・跡取り息子だなんて・・・無理だ・・・無理
だ!!」
B・J、上手へ走り去る。(人々騒めく。)
ジム「B・J!!」
ミセスアダムス、ジム、マーク残して
カーテン閉まる。
ミセスアダムス「(心配そうに、上手を見る。)どうしたのかしら、
B・J・・・」
ジム「僕が見て来ます!(上手方へ行きかける。)」
マーク「待って下さい、先生!!」
ジム「(立ち止まり、マークを見る。)どうしたんだい、マーク?」
マーク「先生はお気付きじゃあないかも知れませんが・・・」
ジム「・・・気付く・・・?一体何を・・・」
マーク「・・・B・Jは・・・彼女は自分を偽り続けることに、限界を感
じたのだと思います・・・。」
ジム「偽る・・・?偽るって・・・え・・・?今・・・彼女・・・って・・・」
マーク「・・・はい・・・。B・Jは・・・正真正銘、女の子ですよ。」
ジム「女・・・の子・・・?」
ミセスアダムス「・・・まぁ・・・」
ジム「女の子って・・・」
マーク「そうです。」
ジム「でも・・・!?」
マーク「きっと何か理由があって、本当のことを言い出せずに今
日まできたのでしょう。」
ジム「まさか・・・でも・・・どう見ても・・・」
ミセスアダムス「私、そんなことは知らずに跡取り息子だなんて
・・・酷いことを・・・」
マーク「お祖母様、そのことに関してお祖母様がそこまで気に病
むことはありませんよ。このグレイ先生ですら見抜けなか
ったんですからね。男だからと偽って連れて来られたB・J
を、少年だと信じても・・・」
ジム「でも、どうしてそれを・・・?」
マーク「彼女と一度、握手した手ですよ。あれは紛れもない女の
子の手でしたから。」
ジム「手・・・」
マーク「けど可笑しいなぁ・・・先生ともあろうお方が、人の性別を
見間違えるなんて・・・」
ジム「俺だって万能じゃないんだ。見間違いくらいするさ・・・。け
ど・・・あのB・Jが少女だったなんて・・・。俺はてっきり少年
だと・・・。あの公園で見かけた状況も状況だったが、あんな
格好で泥だらけの姿を見たら・・・(首を傾げ、フッと笑う。)
やれやれ・・・これはまんまと引っかかったな・・・」
ミセスアダムス「先生、私もですよ・・・」
マーク「当のB・Jには引っかけるつもりなんてなかったでしょう
けどね。」
ジム「そうだな・・・俺のせいだな・・・きっと・・・」
ミセスアダムス「いいえ、気付いてあげられなかった私こそ、い
けなかったのです・・・。」
ジム「さて・・・ミセスアダムス・・・、僕の勘違いから起こったこと
とは言え・・・“跡取り息子”になりえないB・Jのことですが
・・・」
ミセスアダムス「あら・・・そんなことは決まってるじゃあありませ
んか。跡取り息子でも、跡取り娘でも構いません
。私はB・J本人が大好きになりましたのよ。性
別なんて関係ありませんわ、先生。」
ジム「ミセスアダムス・・・では・・・」
ミセスアダムス「勿論、B・Jは私の養女として迎え入れましょう
。」
マーク「お祖母様・・・」
その時、上手よりバート、慌てた様子で登場。
バート「奥様!B・Jお坊ちゃんがお屋敷の外へ!!荷物をまと
めて出て行っておしまいに!!」
ミセスアダムス「まぁ、大変だわ!早く連れ戻しに行きましょう!
」
ジム「ミセスアダムス!一つ、B・Jの行きそうな場所に心当たり
が・・・」
ミセスアダムス「本当ですの?先生。」
ジム「はい。」
ミセスアダムス「それでは案内して下さいな。」
ジム「分かりました。」
ミセスアダムス「それとバート、B・Jはお坊ちゃんではありませ
んよ。」
バート「・・・は?」
ミセスアダムス「さぁ、参りましょう!」
ミセスアダムス、上手へ去る。首を傾げ
ながらバート、続いて去る。
ジム「マーク、おまえはいい医者になるよ。俺なんかよりずっと
・・・」
マーク「はい!必ずいつか、先生を追い越すことこそ、僕が目指
し行き着く場所だと信じていますから・・・」
ジム、マーク、上手へ去る。
――――― 第 8 場 ―――――
音楽流れ、カーテン開く。と、1場の公園。
上手より鞄を提げたB・J登場。歌う。
“僕は誰だろ・・・
どこの誰だろ・・・
偽りの仮面で覆われた
僕も知らない僕だから・・・
見えかけた足元の道も
今は霧で霞んで見える
もう戻れない・・・
やっと見つけた温かな場所
今日はいつだろ
明日は来るのか
それさえも分からない
不確かな僕だから・・・
やっと踏み出した1歩が
今は不安で揺らぐのが分かる
もう戻らない・・・
僕の居場所はここじゃない・・・”
B・J、中央ベンチへ腰を下ろして、
手に持ったハンカチで顔を覆い隠すように
静かに泣く。
B・J「畜生・・・畜生・・・」
そこへ下手より一人の老人登場。
B・Jを認め、慌てた様子で近寄る。
老婆「いたいた!!やっと戻って来ておくれだね、先生!!あた
しゃ、先生に持病の腰痛を早く診て欲しくて、この公園診療
所が開くのを、今か今かとずっと待ってたんだよ!!」
B・J「・・・え・・・?(顔を上げる。)」
老婆「・・・あっれ・・・子どもじゃねぇか・・・先生は・・・?先生はど
うしたんだい?坊主・・・」
B・J「先生・・・?」
老婆「ああ。ここは先生の診療所なんだよ。単なる休憩の為の
ベンチとは訳が違うんだ。さ、どいたどいた!ここは先生の
ベンチなんだから!(B・Jを無理矢理退かすように。)」
B・J「いいじゃんか、ケチ!!」
老婆「いかんいかん!!(椅子の上を、持っていたハンカチで、
払うように。)この椅子は先生のもんだ。」
B・J「なんでぇ・・・あ・・・先生って・・・兄ちゃんのことだ・・・」
老婆「先生は我々貧しいもんの味方の、素晴らしい先生なんじ
ゃ・・・。せめて先生の座る場所くらい・・・(鞄の中から、毛
糸の座布団を取り出し、ベンチへ置く。)よし、ピッタリじゃ。
どうじゃ、坊主!わしの腕もまだまだ捨てたもんじゃなかろ
う。(笑う。)」
B・J「(座布団を見て。)へぇ・・・この座布団、婆ちゃんの手作り
かい?」
老婆「ああ、そうじゃよ。わしら貧乏人は先生に何もお礼が出来
んからの・・・せめて先生のお尻くらい温めさせてもらおうと
思ってな・・・」
B・J「ふうん・・・」
老婆「それにしても先生は一体どこへ行ってしまわれたんじゃろ
うか・・・。ここ数日、ずっとこの診療所は閉まったまんま・・・
こんな何日もいないなんて、ここが始まって以来じゃ・・・。
まさかどこか違う場所へ移転などしたんじゃああるまいな
・・・」
B・J「・・・大丈夫だよ、婆ちゃん・・・」
老婆「え・・・?」
B・J「兄ちゃん・・・あ・・・ジム先生は直ぐに戻って来るさ・・・」
老婆「本当か?」
B・J「(頷く。)今は大学病院の手伝いで忙しくしてるけど、ここの
医者を辞めるつもりはない・・・そう言ってたぜ。」
老婆「そりゃあ・・・よかったことじゃ。しかし坊主、どこでそんな
話しを・・・?」
B・J「・・・うん・・・ちょっと・・・ね・・・」
老婆「そうか・・・それじゃあまあ理由は聞かんでおくとしよう・・・
。ありがとうよ、朗報を聞かせてくれて・・・。先生の帰りを待
ち侘びておる、他の年寄り達にも知らせてやるとしようかの
・・・。」
老婆、下手へ行きかける。
老婆「そうじゃ坊主、先生に会ったらよろしく伝えておくれ。皆が
先生の帰りを、首を長くして待っておるとな・・・。」
B・J「うん・・・言っとくよ・・・!・・・もし・・・また会えたら・・・きっと
・・・」
老婆、下手へ去る。
B・J、鞄を提げ、上手方へ行きかける。
と、上手よりジム登場。
ジム「やっぱりここか・・・」
B・J「・・・兄ちゃん・・・(慌てて下手方へ向き直り、行こうとする。
)」
ジム「どこ行くんだ?」
B・J「(立ち止まる。)い・・・いいだろ・・・どこだって・・・」
ジム「また孤児院へ戻るつもりか?」
B・J「だって・・・だって俺・・・だって・・・!!」
ジム「(微笑んで、B・Jの頭に手を乗せる。)ごめんよ・・・」
B・J「・・・え・・・?」
ジム「柔らかい髪だ・・・」
B・J「・・・兄ちゃん・・・」
ジム「もっとよくおまえのことを見ていれば、気付いた筈だな・・・
本当は女の子だったと言うことに・・・」
B・J「・・・俺・・・」
ジム「おまえもおまえだぞ!そんな風に女の子が俺なんて言う
もんだから・・・てっきり・・・あの時は格好も泥だらけだった
し・・・。それにしても・・・マークに言われるまで、気付けなか
った俺は、医者落第だな。(笑う。)」
B・J「・・・マークが・・・?」
ジム「ああ。」
B・J「俺・・・何も兄ちゃんや婆ちゃんのことを、騙そうと思って男
のフリしてたんじゃないんだ・・・。俺・・・俺・・・どうしても言
いだせなくて・・・」
ジム「分かってるよ・・・。俺がいけなかったんだ・・・。」
――――― “Thank you!B・J”
エンディングへつづく ―――――
2013年7月2日火曜日
“Thank you!B・J” ―全○場― 4
――――― 第 6 場 ――――― A
前方下手スポットに、バート浮かび上がる。
バート「さて、その日よりアダムス邸には、毎日のようにマーク
様がお見えになり、何やらB・Jお坊ちゃんにちょっかいを
出してはお怒りを買い、それが楽しいご様子でありました
。奥様もそんなご兄弟のように戯れあうお2人を、微笑ま
しく見ておいででしたが、ある日、何かを思いついたよう
にお屋敷で、親しい者達を招いてパーティを開くとお申し
になられたのです。突然のことに我々使用人は、その準
備にてんてこ舞いとなったのは言うまでもございません。
そして無事、準備も整いパーティ当日・・・」
――――― 第 6 場 ――――― B
前方下手スポット、フェード・アウト。
音楽流れ、舞台明るくなる。(紗幕前。)
上手よりB・J登場。歌う。
“博学多才・・・
言葉遣いも丁寧な
凛としたたたずまい
あんな風にこの俺が
なれると言うの いつの日か・・・
誰が見てもいいとこの
お坊ちゃまじゃないか あの野郎・・・
何故か頭にくるあの余裕
なのにいつもまとわりつく
何て野郎だ目障りだ
だけど少し・・・気にかかる・・・”
B・J「畜生、マークの野郎・・・!あれから毎日毎日来ては、俺に
なんやかんや、いちゃもんつけやがる!せっかく今まで婆ち
ゃんの言うことを聞いて、いい子にしてきたってのに・・・あ
いつのせいで、なんか調子狂うんだよな・・・」
その時、下手よりマーク登場。
マーク「B・J!いたいた、こんなとこに!」
B・J「何だよ!また来たのかよ。毎日毎日、余程ヒマなんだな、
おまえ。そんなんで兄ちゃんみたいな立派な医者になれん
のかよ!」
マーク「いいじゃないか。この間まで受験勉強一色だったし、新
学期が始まれば始まったでまた勉強勉強・・・この休みの
間くらい、人間観察に時間を使ってもさ!」
B・J「人間観察・・・?なんだ、それ。誰を観察しに来てんだよ!
あ、そっか!この家はバートさんやルーシー達みたいな人
が沢山いて、人間観察するには持って来いだもんな。」
マーク「そう言うことさ!それにしても君・・・その言葉遣い・・・中
々直らないみたいだね。(笑う。)」
B・J「いいだろ別に。それにおまえの前だけだよ。婆ちゃんの前
ではちゃんと喋れるようになったんだ!なのに何でか、おま
えには敬語が使えねぇんだよなぁ・・・(首を捻る。)」
マーク「面白いな・・・(笑う。)」
B・J「面白がってんじゃねぇよ!それより今日は、婆ちゃんの思
いつきでやることになったパーティだろ?夜始まるパーティ
に、何でこんな早い時間から・・・」
マーク「いいんだよ。ところでB・J、今日のパーティに誘うステデ
ィはいるのかい?」
B・J「ステ・・・い・・・いねぇよ、そんなの・・・」
マーク「じゃあ、いとこのマグリットを紹介するよ。丁度、君と同じ
歳で・・・」
B・J「(マークの言葉を遮るように。)いいよ!!」
マーク「何だよ、ダンス踊れないのか?」
B・J「ダンスなんかしないよ!!」
マーク「(笑う。)そんなムキになるなよ。ダンスくらい、教えてや
るからさ。(B・Jに手を差し出す。)ほら・・・」
B・J「(驚いたように、マークの手を見て。)な・・・なんだよ!!
何でおまえとダンス踊んなきゃなんないんだよ!!」
マーク「何テレてるんだよ。いいじゃないか、ダンスくらい。」
B・J「テ・・・テレてなんかいねぇ!!」
マーク「じゃあいいだろ?男同士だってさ。」
B・J「・・・男同士・・・あ・・・ああ!そりゃあ別に・・・男同士でも・・・
何でも・・・」
マーク「(微笑む。)じゃあほら・・・!(B・Jの手を取る。)」
紗幕前、フェード・アウト。
豪華な音楽、段々大きく。
――――― 第 7 場 ―――――
舞台、明るくなる。と、アダムス邸大広間。
沢山の美しく着飾った人々、談笑したり
ワルツを踊ったりしている。
その時、上手よりジムの押す車椅子に乗った
ミセスアダムス登場。
ジム「ミセスアダムス、久しぶりにパーティの誘いがあって、驚い
ていたのですよ。この間お会いした時に、随分とお加減が
いいご様子だったので安心していたのですが、また行き成
りこんな盛大なパーティを開くだなどと言い出されて、まだ
体調の回復と見合わせ、ご無理ではないかと案じていたの
です。」
ミセスアダムス「先生・・・私、先生にお礼申し上げなくてはなり
ませんわ。」
ジム「お礼・・・?」
ミセスアダムス「ええ。本当に先生には心から感謝していますの
よ。」
ジム「と言いますと・・・?」
ミセスアダムス「孫達が遠く離れた土地へ行ってからと言うもの
、毎日鬱々と過ごしていた私ですけれど、先生
の勧めに従って、新しい風を取り入れることを承
知して本当によかったと・・・」
ジム「・・・B・Jですか?」
ミセスアダムス「ええ・・・。あの子のお陰で、何れ程私が元気を
取り戻すことができたか・・・。先生にはお分かり
でしょう?」
ジム「それはもう、ミセスアダムスのお顔を拝見しているだけで、
その変化は一目瞭然だと感じていました。」
ミセスアダムス「私、最初はそんな得体の知れない子どもを、我
が家に上げていいものかと、それは心配しまし
たけれど、何より私が信頼しているグレイ先生が
治療の一貫と・・・先生が勧める荒療治をダメ元
で受けることにしましたのよ。」
ジム「ダメ元・・・?」
ミセスアダムス「あら、私ったら・・・(フフフと笑う。)ダメ元だなん
て言葉・・・B・Jの影響かしらね。良くも悪くも・・・
今の私にとってあの子は・・・もうなくてはならな
い家族ですの・・・。」
ジム「ミセスアダムス・・・」
そこへ下手より、2人の姉妹(マグリット、
マーサ)、楽しそうにはしゃぎながら登場。
ミセスアダムスを認め、駆け寄る。
マグリット「お祖母様!!」
マーサ「お祖母様!!」
ミセスアダムス「まぁ、マグリット、マーサ、よく来たわね。」
マグリット「今日はお招き頂いてありがとうございます、お祖母様
!」
マーサ「光栄ですわ、お祖母様!」
ミセスアダムス「それは良かったこと。グレイ先生にちゃんとご
挨拶なさい。」
マグリット「はい!グレイ先生、こんにちは!」
マーサ「こんにちは!お久しぶりです、先生!」
ジム「こんにちは。2人共、相変わらず元気そうだね。」
マグリット、マーサ、嬉しそうに顔を
見合わせる。
マグリット「ええ!」
マーサ「とっても!」
マグリット「お祖母様のお家でパーティなんて、いつ以来かしら
・・・」
マーサ「いとこのアラン一家が、遠く離れた場所へ引っ越して以
来でしょ?」
マグリット「あれからのお祖母様は、とてもお加減が悪そうで、パ
ーティどころではなかったから、久しぶりの今日のパー
ティが私、嬉しくて!」
マーサ「私もよ!お祖母様のお家のパーティは、いつも盛大で、
毎回とても楽しみにしていたのよ!」
ミセスアダムス「まぁまぁ2人共、それでは今日はゆっくり楽しん
で行って頂戴。後で皆に、少し報告することもあ
るのよ。」
マグリット「報告?」
マーサ「わぁー・・・何かしら。」
マグリット「いいこと?お祖母様!」
ミセスアダムス「さぁね。それは後のお楽しみよ。」
マーサ「意地悪ね。」
マグリット「本当。」
マグリット、マーサ、笑い合う。
ミセスアダムス「さぁさぁ、美味しいものでもつまんでいらっしゃい
。」
マグリット「はい、お祖母様!」
マーサ「それじゃあグレイ先生!」
ジム「また後で。」
マグリット、マーサ、はしゃいだ様子で
ミセスアダムス達から離れ、一寸後方へ。
ジム「ミセスアダムス・・・さっき仰った報告って一体・・・」
ミセスアダムス「それは先生にもまだ内緒ですわ。後のお楽しみ
に取って置いて下さいな。でも、とても・・・いいこ
とですのよ。さ、先生、私達も何か少し頂きに参
りましょう。私、さっきからお腹がペコペコ・・・(笑
う。)」
ジム「そうですね。」
ジム、ミセスアダムスの乗った車椅子を
押しながら、下手へ去る。
入れ代わるように上手より、正装した
マーク登場。続いて正装したB・J、回りを
キョロキョロ見回しながら登場。
B・J「わぁーっ・・・今日は一段とお屋敷の中が豪華に見える・・・
」
マーク「パーティは?初めてかい?」
B・J「決まってるだろ!俺・・・今までこんなキラキラした洋服だっ
て、着たことないや・・・」
マーク「(笑う。)その割には、よく似合ってるじゃないか。」
B・J「・・・う・・・うるせぇな・・・」
マーク「さて・・・と・・・(回りを見回す。)」
B・J「(呟くように。)・・・嬉しくないや・・・褒められたって・・・」
マーク「(マグリットを認め、手を上げて呼び掛ける。)マグリット!
」
B・J「・・・マグリット・・・?」
マグリット「(マークを認め。)マーク!」
マグリット、マークの側へ。マーサ続く。
マグリット「久しぶりね、マーク!」
マーク「こんにちは、マグリット、マーサ!」
マーサ「こんにちは!」
マーク「今日はまた一段と華やかなパーティだね。お祖母様の
気合の入り具合が分かるようだ。(笑う。)」
マグリット「あら、あなたもそう感じて?私達もさっきから、いつも
以上に盛大なパーティに、圧倒されていたところなの
よ。」
マーサ「(B・Jに気付いて。)マーク、そちらの方は?」
マーク「ああ、僕の友人で、今はこの屋敷でお祖母様と一緒に
暮らしているB・J。B・J、こちらの2人は僕のいとこのマグ
リット、マーサ姉妹だよ。」
マグリット「初めまして、B・J。」
マーサ「こんにちは。」
B・J「・・・こんにちは・・・」
マグリット「あなたもK大附属のハイスクール生なの?」
B・J「(俯いて首を振る。)・・・僕は・・・」
マーサ「どうしてお祖母様と一緒に暮らしていらっしゃるの?」
マグリット「お祖母様とはどう言ったお知り合い?」
マーサ「それにしてもお祖母様、どうして急に元気になられたの
かしら?」
マグリット「そうよね、ついこの間までベッドの中で横になったき
り、起き上がることもままならないご様子だったのに。」
マーサ「あなたと一緒に暮らしていることと、何か関係があるの
かしら・・・」
マグリット「それにしても今日のパーティは盛大よねぇ。」
マーサ「こんなに沢山のお客様をお呼びして・・・」
マグリット「皆さん、とても素敵に着飾っていらっしゃるわ。」
マーサ「本当!私達もこのドレスを選ぶのに、随分時間がかか
ったのよ!」
マグリット「ねぇ!」
マーサ「どう?マーク、私達!」
マーク「(微笑んで。)とても綺麗だよ、2人共・・・。」
マグリット「まぁ・・・」
マグリット・マーサ「ありがとう。」
マーサ「(下手方を見て。)あ、お姉様!アンナ達が来たようよ。
」
マグリット「(下手を見て。)あら、本当。(B・Jの耳元で。)後で私
とワルツを踊って下さいね。」
B・J「え・・・?」
マグリット「じゃあ、マーク!」
マーサ「また後で!」
マーク「じゃあ!」
マグリット、マーサ、下手へ去る。
マーク「何だって?マグリット。」
B・J「べっ・・・別に・・・」
マーク「ふうん・・・」
B・J「ど・・・どうして女って、ああお喋りなんだろうな・・・」
マーク「え?」
B・J「口を開けば、他人がどうとかドレスがどうとか・・・もっと他
に考えることはないのかね・・・」
マーク「(思わず笑う。)B・J・・・」
B・J「何だよ・・・何が可笑しいんだよ・・・」
マーク「いや・・・別に・・・。ごめんよ、何だか君の口から意外な
言葉が飛び出したもんでさ。」
B・J「意外・・・?」
マーク「ああ、ちょっとね・・・」
そこへ下手より登場したジム、B・Jとマーク
を認め、嬉しそうに近寄る。
ジム「やあ!」
B・J「(ジムを認め。)兄ちゃん。」
マーク「グレイ先生、もういらしてたんですか?」
ジム「ああ。ミセスアダムスの診察も兼ねて、少し早めにね。」
マーク「そうですか。」
ジム「そう言うマークも、結構早くから来てたようだけど?」
マーク「ええ・・・」
ジム「何だかんだ言ってB・J!マークと仲良くやってるみたいじ
ゃないか。」
B・J「ち・・・違うよ、兄ちゃん!こいつ、あれからしょっちゅう家来
て、俺にまとわりついて鬱陶しいったらありゃしない・・・」
マーク「それは酷いな。」
B・J「だってそうだろ!」
マーク「僕は休みの間の、自由研究をさせてもらいに通ってるん
ですよ。」
ジム「へぇ・・・」
B・J「自由研究・・・?おまえ、人間観察に来てるんだって言って
なかったか?」
マーク「その通り!その人間観察が、僕の自由研究・・・って訳
さ。」
B・J「何だそれ。」
ジム「人間観察・・・?」
マーク「はい!先生は・・・お気付きでは・・・」
ジム「ん・・・?」
マーク「・・・いえ・・・別に・・・」
B・J「この屋敷には、バートさんやルーシーみたいな人が沢山
いるから、人間観察するのに丁度いいんだってさ。・・・その
割にはおまえ・・・いっつも俺についてウロウロしてんな。何
でだ?」
マーク「B・J、曲りなりにも僕は君より年上なんだぞ。おまえ呼ば
わりはないだろ・・・?」
B・J「あ・・・わりぃ・・・つい・・・」
その時、下手よりバート登場。
バート「皆様、奥様からご挨拶が御座います。しばしの間、お静
かに願います。」
音楽止まり、踊ったり談笑していた人々、
静かに段上を見る。
そこへ、後方段上に、ルーシーの押す
車椅子に乗ったミセスアダムス登場。
ミセスアダムス「皆様、本日はようこそおいで下さいました。暫く
の間、私、加減を悪くしておりましたけれど、漸く
この通り以前同様、元気に過ごすことが出来る
ように回復致しました。本日はご心配頂いた皆
様に、感謝の気持ちを込めて、このパーティを主
催した次第です。」
(一同拍手。)
――――― “Thank you!B・J”5へつづく ―――――
前方下手スポットに、バート浮かび上がる。
バート「さて、その日よりアダムス邸には、毎日のようにマーク
様がお見えになり、何やらB・Jお坊ちゃんにちょっかいを
出してはお怒りを買い、それが楽しいご様子でありました
。奥様もそんなご兄弟のように戯れあうお2人を、微笑ま
しく見ておいででしたが、ある日、何かを思いついたよう
にお屋敷で、親しい者達を招いてパーティを開くとお申し
になられたのです。突然のことに我々使用人は、その準
備にてんてこ舞いとなったのは言うまでもございません。
そして無事、準備も整いパーティ当日・・・」
――――― 第 6 場 ――――― B
前方下手スポット、フェード・アウト。
音楽流れ、舞台明るくなる。(紗幕前。)
上手よりB・J登場。歌う。
“博学多才・・・
言葉遣いも丁寧な
凛としたたたずまい
あんな風にこの俺が
なれると言うの いつの日か・・・
誰が見てもいいとこの
お坊ちゃまじゃないか あの野郎・・・
何故か頭にくるあの余裕
なのにいつもまとわりつく
何て野郎だ目障りだ
だけど少し・・・気にかかる・・・”
B・J「畜生、マークの野郎・・・!あれから毎日毎日来ては、俺に
なんやかんや、いちゃもんつけやがる!せっかく今まで婆ち
ゃんの言うことを聞いて、いい子にしてきたってのに・・・あ
いつのせいで、なんか調子狂うんだよな・・・」
その時、下手よりマーク登場。
マーク「B・J!いたいた、こんなとこに!」
B・J「何だよ!また来たのかよ。毎日毎日、余程ヒマなんだな、
おまえ。そんなんで兄ちゃんみたいな立派な医者になれん
のかよ!」
マーク「いいじゃないか。この間まで受験勉強一色だったし、新
学期が始まれば始まったでまた勉強勉強・・・この休みの
間くらい、人間観察に時間を使ってもさ!」
B・J「人間観察・・・?なんだ、それ。誰を観察しに来てんだよ!
あ、そっか!この家はバートさんやルーシー達みたいな人
が沢山いて、人間観察するには持って来いだもんな。」
マーク「そう言うことさ!それにしても君・・・その言葉遣い・・・中
々直らないみたいだね。(笑う。)」
B・J「いいだろ別に。それにおまえの前だけだよ。婆ちゃんの前
ではちゃんと喋れるようになったんだ!なのに何でか、おま
えには敬語が使えねぇんだよなぁ・・・(首を捻る。)」
マーク「面白いな・・・(笑う。)」
B・J「面白がってんじゃねぇよ!それより今日は、婆ちゃんの思
いつきでやることになったパーティだろ?夜始まるパーティ
に、何でこんな早い時間から・・・」
マーク「いいんだよ。ところでB・J、今日のパーティに誘うステデ
ィはいるのかい?」
B・J「ステ・・・い・・・いねぇよ、そんなの・・・」
マーク「じゃあ、いとこのマグリットを紹介するよ。丁度、君と同じ
歳で・・・」
B・J「(マークの言葉を遮るように。)いいよ!!」
マーク「何だよ、ダンス踊れないのか?」
B・J「ダンスなんかしないよ!!」
マーク「(笑う。)そんなムキになるなよ。ダンスくらい、教えてや
るからさ。(B・Jに手を差し出す。)ほら・・・」
B・J「(驚いたように、マークの手を見て。)な・・・なんだよ!!
何でおまえとダンス踊んなきゃなんないんだよ!!」
マーク「何テレてるんだよ。いいじゃないか、ダンスくらい。」
B・J「テ・・・テレてなんかいねぇ!!」
マーク「じゃあいいだろ?男同士だってさ。」
B・J「・・・男同士・・・あ・・・ああ!そりゃあ別に・・・男同士でも・・・
何でも・・・」
マーク「(微笑む。)じゃあほら・・・!(B・Jの手を取る。)」
紗幕前、フェード・アウト。
豪華な音楽、段々大きく。
――――― 第 7 場 ―――――
舞台、明るくなる。と、アダムス邸大広間。
沢山の美しく着飾った人々、談笑したり
ワルツを踊ったりしている。
その時、上手よりジムの押す車椅子に乗った
ミセスアダムス登場。
ジム「ミセスアダムス、久しぶりにパーティの誘いがあって、驚い
ていたのですよ。この間お会いした時に、随分とお加減が
いいご様子だったので安心していたのですが、また行き成
りこんな盛大なパーティを開くだなどと言い出されて、まだ
体調の回復と見合わせ、ご無理ではないかと案じていたの
です。」
ミセスアダムス「先生・・・私、先生にお礼申し上げなくてはなり
ませんわ。」
ジム「お礼・・・?」
ミセスアダムス「ええ。本当に先生には心から感謝していますの
よ。」
ジム「と言いますと・・・?」
ミセスアダムス「孫達が遠く離れた土地へ行ってからと言うもの
、毎日鬱々と過ごしていた私ですけれど、先生
の勧めに従って、新しい風を取り入れることを承
知して本当によかったと・・・」
ジム「・・・B・Jですか?」
ミセスアダムス「ええ・・・。あの子のお陰で、何れ程私が元気を
取り戻すことができたか・・・。先生にはお分かり
でしょう?」
ジム「それはもう、ミセスアダムスのお顔を拝見しているだけで、
その変化は一目瞭然だと感じていました。」
ミセスアダムス「私、最初はそんな得体の知れない子どもを、我
が家に上げていいものかと、それは心配しまし
たけれど、何より私が信頼しているグレイ先生が
治療の一貫と・・・先生が勧める荒療治をダメ元
で受けることにしましたのよ。」
ジム「ダメ元・・・?」
ミセスアダムス「あら、私ったら・・・(フフフと笑う。)ダメ元だなん
て言葉・・・B・Jの影響かしらね。良くも悪くも・・・
今の私にとってあの子は・・・もうなくてはならな
い家族ですの・・・。」
ジム「ミセスアダムス・・・」
そこへ下手より、2人の姉妹(マグリット、
マーサ)、楽しそうにはしゃぎながら登場。
ミセスアダムスを認め、駆け寄る。
マグリット「お祖母様!!」
マーサ「お祖母様!!」
ミセスアダムス「まぁ、マグリット、マーサ、よく来たわね。」
マグリット「今日はお招き頂いてありがとうございます、お祖母様
!」
マーサ「光栄ですわ、お祖母様!」
ミセスアダムス「それは良かったこと。グレイ先生にちゃんとご
挨拶なさい。」
マグリット「はい!グレイ先生、こんにちは!」
マーサ「こんにちは!お久しぶりです、先生!」
ジム「こんにちは。2人共、相変わらず元気そうだね。」
マグリット、マーサ、嬉しそうに顔を
見合わせる。
マグリット「ええ!」
マーサ「とっても!」
マグリット「お祖母様のお家でパーティなんて、いつ以来かしら
・・・」
マーサ「いとこのアラン一家が、遠く離れた場所へ引っ越して以
来でしょ?」
マグリット「あれからのお祖母様は、とてもお加減が悪そうで、パ
ーティどころではなかったから、久しぶりの今日のパー
ティが私、嬉しくて!」
マーサ「私もよ!お祖母様のお家のパーティは、いつも盛大で、
毎回とても楽しみにしていたのよ!」
ミセスアダムス「まぁまぁ2人共、それでは今日はゆっくり楽しん
で行って頂戴。後で皆に、少し報告することもあ
るのよ。」
マグリット「報告?」
マーサ「わぁー・・・何かしら。」
マグリット「いいこと?お祖母様!」
ミセスアダムス「さぁね。それは後のお楽しみよ。」
マーサ「意地悪ね。」
マグリット「本当。」
マグリット、マーサ、笑い合う。
ミセスアダムス「さぁさぁ、美味しいものでもつまんでいらっしゃい
。」
マグリット「はい、お祖母様!」
マーサ「それじゃあグレイ先生!」
ジム「また後で。」
マグリット、マーサ、はしゃいだ様子で
ミセスアダムス達から離れ、一寸後方へ。
ジム「ミセスアダムス・・・さっき仰った報告って一体・・・」
ミセスアダムス「それは先生にもまだ内緒ですわ。後のお楽しみ
に取って置いて下さいな。でも、とても・・・いいこ
とですのよ。さ、先生、私達も何か少し頂きに参
りましょう。私、さっきからお腹がペコペコ・・・(笑
う。)」
ジム「そうですね。」
ジム、ミセスアダムスの乗った車椅子を
押しながら、下手へ去る。
入れ代わるように上手より、正装した
マーク登場。続いて正装したB・J、回りを
キョロキョロ見回しながら登場。
B・J「わぁーっ・・・今日は一段とお屋敷の中が豪華に見える・・・
」
マーク「パーティは?初めてかい?」
B・J「決まってるだろ!俺・・・今までこんなキラキラした洋服だっ
て、着たことないや・・・」
マーク「(笑う。)その割には、よく似合ってるじゃないか。」
B・J「・・・う・・・うるせぇな・・・」
マーク「さて・・・と・・・(回りを見回す。)」
B・J「(呟くように。)・・・嬉しくないや・・・褒められたって・・・」
マーク「(マグリットを認め、手を上げて呼び掛ける。)マグリット!
」
B・J「・・・マグリット・・・?」
マグリット「(マークを認め。)マーク!」
マグリット、マークの側へ。マーサ続く。
マグリット「久しぶりね、マーク!」
マーク「こんにちは、マグリット、マーサ!」
マーサ「こんにちは!」
マーク「今日はまた一段と華やかなパーティだね。お祖母様の
気合の入り具合が分かるようだ。(笑う。)」
マグリット「あら、あなたもそう感じて?私達もさっきから、いつも
以上に盛大なパーティに、圧倒されていたところなの
よ。」
マーサ「(B・Jに気付いて。)マーク、そちらの方は?」
マーク「ああ、僕の友人で、今はこの屋敷でお祖母様と一緒に
暮らしているB・J。B・J、こちらの2人は僕のいとこのマグ
リット、マーサ姉妹だよ。」
マグリット「初めまして、B・J。」
マーサ「こんにちは。」
B・J「・・・こんにちは・・・」
マグリット「あなたもK大附属のハイスクール生なの?」
B・J「(俯いて首を振る。)・・・僕は・・・」
マーサ「どうしてお祖母様と一緒に暮らしていらっしゃるの?」
マグリット「お祖母様とはどう言ったお知り合い?」
マーサ「それにしてもお祖母様、どうして急に元気になられたの
かしら?」
マグリット「そうよね、ついこの間までベッドの中で横になったき
り、起き上がることもままならないご様子だったのに。」
マーサ「あなたと一緒に暮らしていることと、何か関係があるの
かしら・・・」
マグリット「それにしても今日のパーティは盛大よねぇ。」
マーサ「こんなに沢山のお客様をお呼びして・・・」
マグリット「皆さん、とても素敵に着飾っていらっしゃるわ。」
マーサ「本当!私達もこのドレスを選ぶのに、随分時間がかか
ったのよ!」
マグリット「ねぇ!」
マーサ「どう?マーク、私達!」
マーク「(微笑んで。)とても綺麗だよ、2人共・・・。」
マグリット「まぁ・・・」
マグリット・マーサ「ありがとう。」
マーサ「(下手方を見て。)あ、お姉様!アンナ達が来たようよ。
」
マグリット「(下手を見て。)あら、本当。(B・Jの耳元で。)後で私
とワルツを踊って下さいね。」
B・J「え・・・?」
マグリット「じゃあ、マーク!」
マーサ「また後で!」
マーク「じゃあ!」
マグリット、マーサ、下手へ去る。
マーク「何だって?マグリット。」
B・J「べっ・・・別に・・・」
マーク「ふうん・・・」
B・J「ど・・・どうして女って、ああお喋りなんだろうな・・・」
マーク「え?」
B・J「口を開けば、他人がどうとかドレスがどうとか・・・もっと他
に考えることはないのかね・・・」
マーク「(思わず笑う。)B・J・・・」
B・J「何だよ・・・何が可笑しいんだよ・・・」
マーク「いや・・・別に・・・。ごめんよ、何だか君の口から意外な
言葉が飛び出したもんでさ。」
B・J「意外・・・?」
マーク「ああ、ちょっとね・・・」
そこへ下手より登場したジム、B・Jとマーク
を認め、嬉しそうに近寄る。
ジム「やあ!」
B・J「(ジムを認め。)兄ちゃん。」
マーク「グレイ先生、もういらしてたんですか?」
ジム「ああ。ミセスアダムスの診察も兼ねて、少し早めにね。」
マーク「そうですか。」
ジム「そう言うマークも、結構早くから来てたようだけど?」
マーク「ええ・・・」
ジム「何だかんだ言ってB・J!マークと仲良くやってるみたいじ
ゃないか。」
B・J「ち・・・違うよ、兄ちゃん!こいつ、あれからしょっちゅう家来
て、俺にまとわりついて鬱陶しいったらありゃしない・・・」
マーク「それは酷いな。」
B・J「だってそうだろ!」
マーク「僕は休みの間の、自由研究をさせてもらいに通ってるん
ですよ。」
ジム「へぇ・・・」
B・J「自由研究・・・?おまえ、人間観察に来てるんだって言って
なかったか?」
マーク「その通り!その人間観察が、僕の自由研究・・・って訳
さ。」
B・J「何だそれ。」
ジム「人間観察・・・?」
マーク「はい!先生は・・・お気付きでは・・・」
ジム「ん・・・?」
マーク「・・・いえ・・・別に・・・」
B・J「この屋敷には、バートさんやルーシーみたいな人が沢山
いるから、人間観察するのに丁度いいんだってさ。・・・その
割にはおまえ・・・いっつも俺についてウロウロしてんな。何
でだ?」
マーク「B・J、曲りなりにも僕は君より年上なんだぞ。おまえ呼ば
わりはないだろ・・・?」
B・J「あ・・・わりぃ・・・つい・・・」
その時、下手よりバート登場。
バート「皆様、奥様からご挨拶が御座います。しばしの間、お静
かに願います。」
音楽止まり、踊ったり談笑していた人々、
静かに段上を見る。
そこへ、後方段上に、ルーシーの押す
車椅子に乗ったミセスアダムス登場。
ミセスアダムス「皆様、本日はようこそおいで下さいました。暫く
の間、私、加減を悪くしておりましたけれど、漸く
この通り以前同様、元気に過ごすことが出来る
ように回復致しました。本日はご心配頂いた皆
様に、感謝の気持ちを込めて、このパーティを主
催した次第です。」
(一同拍手。)
――――― “Thank you!B・J”5へつづく ―――――
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