2013年7月13日土曜日
“みりとポン吉” ―全9場―
〈主な登場人物〉
みり ・・・ 明るい女の子。
ポン吉 ・・・ みりのぬいぐるみ。
メアリ ・・・ みりのクラスメイト。
ヒューイ ・・・ メアリの友達。
トンリー ・・・ メアリの友達。
みりのママ
その他
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客電落ちる。
轟音は響く。(“ゴオーッ”)
声「わあーっ!!操縦管が利かない!!」
コンピューター音が鳴り響く。(“ピーピーピー”)
コンピューターの声「墜落します。墜落します。直ちに脱出して
下さい。墜落します。墜落します。地球圏
突入・・・」
声「わあーっ!!(段々小さく。)」
――――― 第 1 場 ―――――
明るい音楽流れ、舞台明るくなる。
と、中央に一つのベットが置かれ、その上に
パジャマ姿の少女(みり)、楽し気に歌い踊る。
“素敵な時間
自由な時間
町の灯りは消えて
静けさが私を取り巻く
宿題は終わったわ
ご飯も済んだ
歯も磨いてお風呂も入った
パジャマに着替えて
後は私の大切な時間”
ママの声「みり!!いつまでも起きてないで、早く寝なさい!!」
みり「はーい、ママ!!(肩を竦める。)」
その時、“ビューッ!!”“バァーン!”(遠くで
何か墜落した音。)
みり、慌ててベットから飛び降り、窓の方へ
駆け寄る。窓の外を見て。
みり「今の音、何かしら!?林の辺りに何か墜落したような・・・
(暫く、外の様子を窺う。)ま、いっか。折角の大切な時間、
余計なことに煩わされずに・・・(窓を閉めて、ベットの方へ
。)今夜は何をして過ごそうかしら・・・。読み掛けの小説を
読んで仕舞おうかしら・・・。でも結末は、まだ知りたくない
わ!!姫には屹度、素敵な王子様が現れる筈だもの。夜
の暗闇を、白馬に乗った王子様が、剣を翳しながら・・・(
ポーズを取る。)囚われの姫の許へ駆けつけるの!!“
姫!!助けに参りましたぞ!!”」
その時、笑い声が聞こえる。
みり、驚いたように回りを見回し。
みり「誰!?」
声「そんな王子様なんて、いる訳ないさ!!一体君は何時の
時代の話しを読んでいるの?」
みり「いいでしょ、そんなこと!!出て来なさい!!誰なの!?
私の部屋へ無断で入り込んで、私の素敵な時間にケチ付
ける奴は!!」
声「そんなに怒らないでよ。怖いなぁ。(笑う。)」
その時、今まで棚の上に並んでいた
ぬいぐるみの中の一つ、たぬきの“ポン吉”
が動き出し、ぎこちない動き方で、みりの
側へ。 ※
ポン吉「まだ、この体に慣れてなくって・・・動き難いなぁ・・・。(自
分の手足を動かしてみる。首をコキコキ動かして。)まぁ
いいや、その内、慣れるだろ。(驚いて呆然と、その様子
を見ていたみりに向かって。)こんにちは!僕は・・・」
みり「ポン吉・・・」
ポン吉「え?」
みり「な・・・何で、ポン吉が喋るの!?だってポン吉は、ただの
ぬいぐるみよ!!私が幼稚園の頃に、パパがクリスマス
プレゼントに買ってくれた、あのショーウインドーに飾られて
たポン吉が話しをするなんて・・・(ポン吉から目を逸らせ、
首を振る。)夢よ・・・夢を見てるのよ!!だってポン吉が喋
る訳ないもの!!まして自分の力で動くなんて!!電池で
動く訳でもない、ただのぬいぐるみのポン吉がそんな・・・(
自分の頬を抓る。)痛っ!!・・・ほら・・・痛い!!痛いわ!
!これは夢の中の出来事よ!!」
みり歌う。
“そうでしょ
ただの人形が動く筈ないもの
決まってるわ
ただの目の錯覚だって・・・”
みり「ね・・・!?(振り返って、ポン吉を見る。)」
ポン吉「本当だよ。」
みり「(再び目を逸らせ、頬を抓る。)・・・痛い・・・痛い?・・・痛い
ってどう言うこと!?」
ポン吉「だから、これは夢でも何でもなくって・・・」
みり「嘘よ!!ポン吉はだって・・・ただのぬいぐるみ・・・勝手に
動くなんて!!」
ポン吉「ねぇ、君!!ちゃんと僕の説明を聞いてよ!!僕は君
から見ればポン吉かも知れないけど、中身はポン吉じゃ
ないんだ!!ポン吉の姿をしてるけれど、ポン吉でなく
って・・・ポン吉はただのぬいぐるみで・・・えっと・・・だか
ら僕はポン吉じゃなくって・・・本当に生きて動いてる訳
で・・・」
みり「・・・何言ってるの・・・?あなたはどこから見たって、私の
ポン吉じゃない・・・。」
ポン吉「だからそれは!!(思わず溜め息を吐く。)どう言えば
いいのかな・・・。(窓の方へ行き、遠くの星を指差す。)
僕は、あの辺りから来たんだ。」
みり「・・・どう言うこと・・・?」
ポン吉「僕の星は、この地球からじゃ豆粒程も見えない、遥か
彼方にあるんだ。それが何故、今こんな遠くの星にいる
かって・・・馬鹿馬鹿しくて話す気にもなれないや・・・(
独り言のように。)」
みり「何故ここにいるの?」
ポン吉「(肩を竦めて。)パパの宇宙船で遊んでいるうちに、つ
い発射ボタンを・・・」
みり「押しちゃったの?」
ポン吉「(頷く。)・・・帰ったら大目玉だよ・・・。おまけに宇宙船を
ぶっ壊して墜落させちゃったうえに、体まで無くしただな
んて・・・」
みり「体を無くした・・・って?」
ポン吉「うん・・・。この通り、今は心が君のぬいぐるみのポン吉
に入り込んだから、君にはポン吉に見えているかも知れ
ないけど、僕の体は、本当はこんなぬいぐるみの玩具
じゃないんだ。」
みり「・・・なんとなく分かってきたわ・・・。つまりこうね?あなたは
遥か彼方に住む宇宙人で、この地球にやって来たのは、
単なる偶然。今は体は私のポン吉だけど、本当は生きた
タヌキだってこと!!」
ポン吉「・・・え?狸・・・って・・・」
音楽流れ、みり歌う。
みり“少し分かった あなたのこと”
ポン吉「あ・・・ありがとう・・・」
みり“最初は驚いたけれど”
ポン吉「ごめん・・・」
ミリ“でも直ぐに理解できたわ
あなたが異星人だってこと
姿形はポン吉でも
中身は生きた誰かだってこと”
ポン吉「本当に?」
みり「ええ、本当よ!!」
ポン吉歌う。
ポン吉“僕は僕だけど今は僕じゃない
この体は単なるここでの借り物
本当の僕を捜さなきゃ・・・”
ポン吉「それで君!!お願いがあるんだ!!僕の体を一緒に
捜して欲しいんだ!!」
みり「え?捜すって、一体どこを・・・」
ポン吉「墜落した時の衝撃で宇宙船から飛び出したんだ。だか
ら屹度、この近くにある筈なんだよ。体が見つからない
と、僕は一生この体のまま、自分の星にも帰れない・・・
。」
みり「・・・分かったわ!!明日、学校をサボって林に行ってみ
ましょう!!私、あの林に何かが落ちるのを見たのよ。」
ポン吉「本当に?」
みり「ええ!!」
ポン吉「ありがとう、君!!」
みり「私はみり!」
ポン吉「(思わず。)知ってるよ・・・!」
みり「え?」
ポン吉「あ・・・ううん!僕は・・・」
みり「ポン吉!!」
ポン吉「え・・・違うよ。僕の本当の名前は・・・」
みり「だって、あなたの姿形は、どこから見たって私のポン吉だ
もの。違う名前を言われたって、そんな風に呼べないわ。」
ポン吉「・・・ま、いっか・・・」
みり「さ、そうと決まったら早く寝ましょう、ポン吉!!」
ポン吉「(溜め息を吐く。)」
音楽で暗転。
――――― 第 2 場 ――――― A
舞台後方、カーテン後ろ、2人のシルエット
浮かび上がる。(ポン吉父、母。)
ポン吉母「あの子が宇宙船に乗って、宇宙へ飛び出して行った
ですって!?」
ポン吉父「何てことだ、全く・・・。自動操縦で、どこかの星には
着くようにはなっているが・・・。その星に着陸する時
に、宇宙船に何かあったら、戻ってくることが出来なく
なるかも知れないんだぞ。」
ポン吉母「あなた・・・」
ポン吉父「まぁ・・・しっかりしたあの子のことだ・・・。無事に帰っ
て来るとは思うが・・・。待つことにしよう・・・。万が一
の時には、私が捜しに行くことにするよ。本当に・・・
あの子の好奇心旺盛と言うか・・・度を越した悪戯に
は、今までも何度も頭を痛めてきたが・・・。(溜め息
を吐く。)」
カーテン後ろ、フェード・アウト。
――――― 第 2 場 ――――― B
小鳥達の囀りが聞こえる。
舞台明るくなる。と、上手前方、エプロン姿の
みりのママ、フライパンを持って何か料理して
いるように。
ママ「みりー!!早く起きなさい!!学校に遅れるわよ!!
みりー!!」
その時、上手よりみり、ポン吉のぬいぐるみを
背負い、鞄を提げ登場。下手方へ。
みり「私、朝ご飯いらない!!」
ママ「みり!!スクランブルエッグだけでも食べて行きなさい!
(みりの背負っているポン吉に気付いて。)みり!!学校へ
ポン吉なんか連れて行かないの!!これ、みり!!人形
を置いて行きなさい!!」
みり「行って来まーす!!」
みり、足早に下手へ去る。
ママ「みり!!(溜め息を吐く。)」
ママ、呆れたように歌う。
“全くあの子は
丸で羽根の生えた鳥のように
ちっともじっとしてやしない
全くあの子は
いつも自由奔放で
自分の思いのままに飛び回る”
ママ、上手へ去る。
小鳥の囀り残したまま、暗転。
――――― 第 3 場 ―――――
舞台明るくなると、林の風景。
一時置いて、下手後方より、回りをキョロキョロ
見回しながら、みり登場。続いてポン吉登場。
みり「確か、ここら辺に落ちたような・・・」
ポン吉「本当?何処?何処にあるの!?」
みり「煩いなぁ・・・。黙ってて!!今、捜してるんだから・・・」
2人、暫くの間、回りを捜しているように。
その時、みり、木の葉の下に隠れていた
宇宙船を見つける。
みり「あった・・・あった!!あったわよ、ポン吉!!」
ポン吉「本当に、みり!!」
みり「(木の葉を払い除ける。)これでしょ!?」
ポン吉「あった・・・これだ!!・・・よかった・・・。(安堵で、腰が
抜けたように。)」
みり「動くの!?」
ポン吉「あ・・・今見てみないと・・・。ちょっと待って・・・」
ポン吉、宇宙船をゴソゴソ触ってみる。と、
機械音がして電気が点く。
みり「わぁ!!・・・動いた・・・本物なんだ、これ・・・」
ポン吉「やった!!大丈夫みたいだよ、みり!!ありがとう!!
」
みり「それで?あなたの体は?この宇宙船の中にあるの?(宇
宙船の中を覗き込む。)どこかしら・・・(独り言のように。)」
ポン吉「この中にはないよ・・・」
みり「じゃあ一体何処にあるの?」
――――― “みりとポン吉”2へつづく ―――――
※ 以前、ご紹介した作品での“ポン吉”くんは、確か・・・
クマのぬいぐるみだったかと・・・(^.^)今回は“たぬき”
くんみたいです^^;
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