音楽流れ、ジム歌う。
“一番大切なことを見落とした
俺を許して欲しい・・・”
B・J「兄ちゃん・・・」
“よく見れば直ぐに分かる
そんな観察を怠った・・・”
B・J「(首を振る。)」
ジム「知らなかったことだとは言え・・・おまえを傷付けて悪かっ
たな・・・。ごめんよ・・・」
B・J「ううん・・・兄ちゃん・・・」
B・J、歌う。
“いつも泥だらけ
ホームの厄介者の俺・・・”
ジム「B・J・・・」
“誰も相手にしてくれない
今までずっと一人ぼっちで・・・”
B・J「俺・・・今までずっとホームの食み出しっ子だったんだ・・・。
里親になりたいって、ホームにやって来る大人達は皆・・・
俺を見ると、同情と哀れみの入り混じった目をしてこう言う
んだ・・・“まぁ・・・苦労したのね・・・可哀想に・・・”。そして必
ず決まって“でもあなたには、私達よりもっと素敵な引き取
り手が現れるわ・・・”。そう言って身形の綺麗な可愛い子を
里子に選んで帰って行くんだ・・・。誰も俺みたいな汚らしい
格好の、乱暴者を引き取りたいって言う大人はいないって
・・・皆にそう言われてた・・・。だから俺は一生一人で生きて
いく・・・そう心に誓って生きてきたんだ・・・ずっと・・・」
ジム「B・J・・・」
B・J「そんな時、兄ちゃんと出会ったんだ・・・」
ジム「・・・え・・・」
B・J「最初は公園のベンチで寝っ転がってる兄ちゃんのこと、怪
しんだけど・・・俺・・・兄ちゃんが言ったこと、すごく・・・本当
はすごく嬉しかったんだ・・・。だって、そうだろ?夏休みの
間だけでもホームにいなくていいんだ。誰も引取り手がなく
て、いっつも皆の食み出しものだった俺を、馬鹿にするホー
ムの奴らと、夏休みの間だけでも一緒にいなくていいなん
て・・・俺には夢のような話しだったから・・・。でも・・・それが
男として・・・だと分かって・・・俺・・・一度は諦めたけど、男
と間違われたんなら、男のフリをすればいいんだって・・・そ
う考えたんだ・・・。けど・・・いつも不安だったのも本当さ・・・
」
ジム「不安・・・?」
B・J「うん・・・だってもし女だとバレて・・・この束の間の幸せが
崩れたらと思うと・・・俺・・・」
ジム「(フッと笑う。)」
B・J「何笑ってんだよ!」
ジム「あ・・・悪い・・・。見事だったよ、俺は全く疑うことなく、おま
えを少年だと信じてたからさ・・・。」
B・J「俺・・・楽しかったぜ、兄ちゃん!男のフリすんの!だって
いっつもホームでは“お行儀良くしなさい!女の子らしくす
るんですよ、B・J!”ってさ・・・。それが、お行儀良くは言わ
れても、女の子らしく・・・とは言われないんだ。それって・・・
俺は俺でいいってことだろ?俺は生まれてから、女の子ら
しく・・・なんてもんとは縁がなかったんだ、一度も・・・。だか
ら・・・女の子らしくがどんなだか・・・分からなかった・・・。回
りの女の子達が興味あるような、お喋りやお洒落だって・・・
俺にはサッパリ・・・。それにもし俺が・・・女の子らしい身形
をしてたら、兄ちゃん、俺に声かけたか?」
ジム「イヤ・・・」
B・J「だろ?だからあんな格好してたことも、少しは役に立った
のかなって・・・。あ・・・兄ちゃんに嘘吐いたのは・・・悪かっ
たけど・・・」
ジム「・・・じゃあ愛顧だな・・・」
B・J「愛顧・・・うん!」
ジム「B・J・・・本当の名前は・・・?」
B・J「・・・ベティ・・・ジョー・・・」
ジム「ベティ・・・そうか・・・女の子らしい、いい名前があったんだ
な・・・」
B・J「女の子・・・らしい・・・」
ジム「さてベティ・・・、じゃあここからは女の子としてのおまえに
話しがある。」
B・J「え・・・?」
ジム「(B・Jの持っていた鞄を見て。)そうやって荷物をまとめて
折角出てきたようなんだが・・・もう一度戻る気はないか?」
B・J「戻る・・・って・・・」
ジム「ミセスアダムスのところへさ。」
B・J「・・・婆ちゃんの・・・?」
ジム「ああ。」
B・J「けど・・・だって俺・・・本当は男じゃ・・・」
ジム「(微笑んで。)おまえを養女として迎え入れたいそうだ。」
B・J「嘘だ・・・だって婆ちゃんは・・・元気な男の子が・・・」
ミセスアダムスの声「本当ですよ。」
B・J「え・・・?(回りを見回す。)」
ミセスアダムス、下手より登場。
続いてマーク登場。
ミセスアダムス「私はあなたがいいの・・・」
B・J「(ミセスアダムスを認める。)・・・婆ちゃん・・・」
ミセスアダムス「元気な男の子でなくても・・・私はB・J本人を私
の子として、我が家へ迎え入れたいのよ・・・」
B・J「・・・婆ちゃん・・・本当に・・・?」
ミセスアダムス「誰が嘘なんて言うものですか・・・。あなたがい
なくなってしまったら私・・・また以前のように歩く
ことも出来なくなって、ベッドの中へ逆戻りの生
活になってしまうわ、きっと・・・」
B・J「駄目だよ、そんなの・・・!」
ミセスアダムス「じゃあ・・・戻って来てくれるわね・・・?」
B・J「(ジムを見る。)」
ジム「(頷く。)」
B・J「婆ちゃん!!(ミセスアダムスの腕の中へ飛び込む。)」
ミセスアダムス「さぁ、またこれから忙しくなるわね。なんせ、今
度はB・Jをレディ教育し直さなければならない
んですもの。」
B・J「婆ちゃん・・・」
ミセスアダムス「可愛いドレスを作らせましょう。髪飾りもね。あ
らあら、今まで以上に楽しみが増えたこと。(笑
う。)」
ジム「ミセスアダムス、B・Jのことを宜しくお願いします。」
ミセスアダムス「グレイ先生、勿論ですとも・・・」
ジム、ミセスアダムス、一寸脇へ寄る。
(話しているように。)
マーク「(B・Jの側へ。)おめでとう、B・J。」
B・J「(マークを認め。)マーク・・・。おまえ・・・いつから気付いて
たんだよ・・・俺が・・・その・・・」
マーク「そんなこと、最初からに決まってるじゃないか。(笑う。)」
B・J「最初から・・・?」
マーク「ああ。」
B・J「最初から知ってておまえ・・・マグリットを紹介してやるとか
なんとか・・・!」
マーク「いいじゃないか。君がどうして男のフリをしてるのかは知
らなかったけれど、男のフリをしてるってことは、男として
扱われたいんだって解釈してたからね。」
B・J「・・・お・・・男男言うな!」
マーク「(笑う。)・・・君が女の子で良かったな。」
B・J「・・・え・・・?」
マーク「何、紅くなってんだよ。」
B・J「あ・・・紅くなんてなってないさ!!何、巫山戯てんだ馬鹿
野郎・・・!!」
ミセスアダムス「B・J、先ずはその言葉遣いをもう一度直さなけ
ればいけませんよ。」
音楽流れる。(歌う。)
ミセスアダムス“女の子は
馬鹿野郎なんて言いません”
マーク“女の子なら女の子らしく”
ジム“だけど君は君のままでいい”
B・J「兄ちゃん・・・」
ミセスアダムス“女の子でも男の子でも”
マーク“言葉遣いが悪くても”
ジム“君がいればそれでいい”
B・J「俺が・・・」
B・J“やっと見つけたオレ・・・(首を振る。)
私の道・・・
今まで自分が誰なのか
分からないまま歩いて来たけれど
ほんの小さな切っ掛けが
私の足元を照らし始めた
何も特別なことをした訳じゃない
私は私のままでいただけ
そこから始まった新しい希望
そこから知った私の道
私は私のままでいいのね!!”
ミセスアダムス、B・Jの側へ。
(4人、彼方を見遣る。)
音楽盛り上がり。
――――― 幕 ―――――
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