――――― 第 8 場 ――――― A
(カーテン前。)
モア「・・・いやだ・・・」
ザック「モア・・・?」
モア「いやだ・・・いやだ、あたい・・・兄ちゃんがいなくなるのは
いやだ!!」
ザック「モア・・・」
モア「(泣き声で。)いやだ!!いやだ・・・いやだ・・・(耳を塞い
で、大きく首を振る。)」
ザック「俺だって、せっかく増えた家族と離れ離れになるのは淋
しいさ・・・」
モア「だったら・・・!!」
ザック「だけど人は自分の感情は二の次に、やらなければいけ
ない事柄にぶち当たった時・・・思いと反する行いでも、そ
れが正しい道だと気付いたなら、それを遂行しなければ
ならない義務が発生するんだ。」
モア「・・・よく分からないよ・・・」
ザック「なぁ、モア・・・俺はおまえに出会って、色んなことを学ん
だんだ・・・。今まで少しの疑問も持たずに来た・・・と言え
ば嘘になるかも知れない・・・。けど、そんな感情に知らず
知らずのうちに蓋をし・・・見て見ぬ振りしてきた自分の過
ちに、おまえは気付かせてくれたんだよ・・・。」
モア「じゃあ・・・あたいがいた方がいいってことでしょ!?だった
らあたいも一緒に行く!!兄ちゃんと一緒に・・・!!そこで
兄ちゃんの手伝いしながら勉強する・・・だから!!」
ザック「モア・・・」
モア「祖母ちゃんは兄ちゃん家の側に置いてもらえるなら、心配
ないだろ?だから、あたい・・・!!」
ザック「モア!おまえはここでちゃんとした暮らしをして、皆と同
じように正しい教育を受けるんだ。」
モア「なんで・・・なんであたいは兄ちゃんと一緒に行っちゃ駄目
なんだよ!!あたいだって、誰かの為になることをする!!
兄ちゃんと一緒に、貧しい人の為に一杯働くよ!!だから
・・・!!」
ザック「モア・・・よく聞くんだ・・・。おまえはまだ子どもだ・・・。自
分の為の勉強をしなければいけないんだよ・・・。そうして
得た沢山の知識を、大人になった時に初めて、人々の役
に立つように使うことができるんだ・・・。今のまだ・・・幼い
おまえじゃ・・・人々の役に立つ行いだと理解する前に、そ
れが正しいのかどうか、まず考えなければいけないだろう
・・・。」
モア「・・・それじゃ駄目なの・・・?」
ザック「そうだよモア・・・。だからおまえは学校へ行って、勉強す
るんだ。善悪の判断を自分自身でつけることが出来る大
人になる為に・・・」
モア「兄ちゃん・・・」
ザック「そんな顔するな。(微笑む。)次に会う時は・・・うんと素敵
なレディになってろよ・・・楽しみにしてるから・・・」
モア「・・・分かった・・・あたい・・・沢山勉強する・・・。次に兄ちゃ
んに会った時に・・・兄ちゃんが驚いて腰抜かすくらい・・・素
敵な女の子に・・・(泣く。)」
ザック「モア・・・おまえに出会うことが出来て本当によかったよ
・・・おまえのお陰で・・・俺が本当にやらなければならない
事柄が何なのか・・・やっと分かったんだ・・・。ありがとう、
モア・・・俺の前に現れてくれて・・・」
モア「兄ちゃん・・・」
音楽流れ、カーテン開く。
――――― 第 8 場 ――――― B
舞台は陽の差し込む丘の上。
ザック、歌う。
“陽が昇る・・・
今この時・・・
これまで目を逸らして
見ようとしなかった真実の道・・・
導いた小さなレディは
偶然に・・・
僕の前へと舞い降りた
丸で神から遣わされた
天使のように・・・
明るい微笑み湛えたレディ・・・
Thank you・・・ Thank you・・・
リトルレディ・・・
出会えた喜びに思い溢れる
ありがとう・・・”
モア、歌う。
“陽が昇る・・・
今この時・・・
ただ必死に生きてきた・・・
見付けてくれた温かい思い・・・
私の手をひき
受け入れてくれた・・・
初めて感じたこんな思い・・・
見付けてくれて
ありがとう・・・”
ザック「次に会う時は・・・本物のレディになってるんだぞ・・・。じ
ゃあな!(モアの頭に手を置き、上手後方へ去る。)」
モア「・・・兄ちゃん・・・兄ちゃーん!!ありがとーっ!!きっと
あたい・・・兄ちゃんとの約束、守るからねーっ!!」
音楽盛り上がる。
――――― 幕 ―――――
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