〈 主な登場人物 〉
キューイ ・・・ 海の国に住むイルカ。アリアの友達。
アリア ・・・ 海の国のお姫様。
ルディ ・・・ 人間の島に住む少年。アリアの友達。
村長 ・・・ 人間の島の村長。
海の国の王様。
ウオレット ・・・ アリアの爺や。
ドーン ・・・ 海の国に住む魔法使いの老婆。
島の婆さん ・・・ 島に住む老婆。
ラダン ・・・ 島の住人。
その他。
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音楽流れ、幕が開く。
――――― 第 1 場 ―――――
舞台は海の中。
海の国のお姫様(アリア)髪をとかして
出掛ける準備をしている。
アリア、歌う。
“さぁ 髪をとかしましょ
さぁ 何着ましょ
今日も行くわ海の外
これまで遠慮がちに
コソッと覗いた世界だけれど
今は違うわ友達がいる
お父様の許可もおりた
温かく迎え入れてくれるわ
今まで知り得なかった場所”
アリア「さぁ、仕度が出来た!早くルディのところへ行きましょう
!今日は年に一度の収穫祭だって言ってたわ。楽しみね
ぇ・・・人間の人達のお祭りって、どんなのかしら!初めて
よ、私!」
そこへ上手よりイルカのキューイ、登場。
キューイ「アリア!キューイ・・・」
アリア「キューイ!私どう?」
キューイ「え・・・?」
アリア「可愛く見える?」
キューイ「うん・・・どうして?キューイ・・・」
アリア「私、今日初めて人間のお祭りに行くの!」
キューイ「人間の・・・?キューイ・・・」
アリア「そうよ!ルディが誘ってくれたの!」
キューイ「・・・ルディが・・・?」
アリア「ああ、楽しみだわ!そうだキューイ、私に何か用事?」
キューイ「え・・・?あ・・・ううん・・・別に・・・キューイ・・・」
アリア「そう?じゃあ私、行くわね!!」
アリア、上手へ走り去る。
キューイ「アリア・・・!僕・・・アリアと遊ぼうと・・・キューイ・・・」
キューイ、歌う。
“僕は海に住むもの・・・
陸には上がれない・・・キューイ・・・
青い空 心地良い風
温かい砂地の感触
そんなものとは無縁の生き物・・・
僕はずっとこの場所で
友達が帰るのをただ待つよ・・・
僕には海から出る術がない
だから君の背中を見送り続けるよ・・・
僕のところへ戻るまで・・・キューイ・・・”
その時、ウオレットの声が聞こえる。
ウオレットの声「姫様ー!!姫様ー!!」
そこへ下手より、ウオレット登場。
ウオレット「姫様ー!!(キューイを認める。)あ、キューイ!姫
様を見なかったか?」
キューイ「ウオレットさん・・・アリアなら、今ルディのところへ行っ
たよ・・・キューイ・・・」
ウオレット「何?また姫様は人間の島へ遊びに行かれたのか?
」
キューイ「うん・・・キューイ・・・」
ウオレット「全く・・・最近の姫様ときたら、いくら王様が人間と付
き合うことを許されたからと言って、毎日毎日、朝から
晩まで・・・」
ウオレット、歌う。
“生まれてから今日まで
ずっとお側に仕えてきたが・・・”
魚達(コーラス)“いたずら姫様
おてんば姫様”
“だが近頃 目に余る
その行動の数々・・・”
魚達(コーラス)“いたずら姫様
おてんば姫様”
“はてさて困った
その内エライことにならぬがいいが・・・”
ウオレット「はぁ・・・」
ウオレット、下手方へ行きかける。
キューイ「ウオレットさん!!キューイ・・・」
ウオレット「どうした、キューイ?」
キューイ「あの・・・ずっと前・・・海流の先の洞窟に・・・魔法使い
のお婆さん魚が住んでるって、言ってなかった・・・?
キューイ・・・」
ウオレット「魔法使い・・・おお・・・ドーン婆さんのことか・・・?」
キューイ「・・・ドーン婆さん・・・?」
ウオレット「今はその洞窟で、占いをして暮らしておるようじゃが
・・・」
キューイ「占い・・・」
ウオレット「そうじゃ。だが、あの婆さんには近寄らん方がいいぞ
。」
キューイ「・・・何故・・・?キューイ・・・」
ウオレット「あの婆さんは昔、ゴーザと共に悪いことをして、王様
にこの海の城を追い出された、年寄り魚じゃ・・・。その
占いにしても、あまりいい評判は聞かんからな・・・。な
んでも願いを叶えてやるとかなんとか言って、海の魚
を集めては何やら良からぬことを、企んでおるようじゃ
・・・」
キューイ「そうなんだ・・・ありがとう、ウオレットさん!!キューイ
!!」
キューイ、上手へ去る。
ウオレット「あ・・・これ、キューイ!!急にどうしたんじゃ・・・ドー
ンのことを聞いてくるなんて・・・。」
紗幕、閉まる。
――――― 第 2 場 ――――― A
紗幕前。
音楽流れ、上手より島に住む人間の
少年(ルディ)、下手よりアリア登場。
アリア「ルディー!!」
ルディ「あ、アリア!!早く!!早く!!祭が始まっちゃうよ!!
」
アリア「ええ!!」
アリア、ルディ歌う。
“今日は年に一度のお祭りだ
誰もが楽しみ待ちに待った日だ
さぁ出かけよう皆で手をつなぎ
足踏み鳴らして踊り明かそう
祭の日は長いんだ
だから存分に楽しむんだ
今日だけは!!”
ルディ「さぁ、行こう!!」
アリア「うん!!」
ルディ、アリア、手をつないで上手へ
走り去る。
――――― 第 2 場 ――――― B
紗幕開く。と、島の祭会場。
村人達、楽し気に歌い踊る。
村人達“祭だ祭だ楽しもう!!
誰でもおいで今日だけは!!
仕事も休みだ楽しもう!!
年に一度の楽しい日!!”
そこへ上手よりルディ、アリア、嬉しそうに
走り登場。
アリア「わぁーっ!!皆、楽しそう!!」
ルディ「うん!!」
2人、手拍子して皆の様子を楽しそうに
見ている。
その時、踊りの輪から外れたルディの姉
(ラナ)、村長、2人の側へ。
ラナ「ルディ!」
ルディ「姉さん!」
アリア「こんにちは!」
ラナ「アリア!いらっしゃい!」
村長「おお、アリア。よく来たな。」
アリア「村長さん!」
村長「さぁ、今日は年に一度の祭だ。こうやって皆、一日中浮か
れ、騒いで過ごすんじゃよ。アリアもたっぷり楽しんでおい
で。」
アリア「ありがとうございます、村長さん!」
ラナ「ルディ!今日はちゃんと水筒を持って来たでしょうね?」
ルディ「姉さん、勿論だよ!」
ラナ「前のように、アリアの体に蓄えてある水が、なくなると大変
よ。」
ルディ「分かってるさ!」
アリア「ルディ・・・」
ルディ「さぁ、アリア!!踊ろう!!」
アリア「ええ!!」
ルディ、アリアの手を取り、踊りの輪に
加わる。
その時、上手より村人(ラダン)、慌てた
様子で走り登場。
ラダン「村長ー!!村長ー!!あ・・・村長!!」
村長「ラダン、どうした?」
ラダン「大変なんだ・・・!!」
村長「大変・・・?」
ラナ「ラダン、どうしたの?そんなに慌てて・・・」
ラダン「あ・・・ラナ・・・いや・・・何・・・皆には関係ないことなんだ
。すまない、驚かせて・・・」
ラナ「そう・・・」
ラダン「ああ・・・(作り笑いする。村長をチラッと見て。)村長・・・」
村長「さぁ、ラナも楽しんで来なさい。」
ラナ「はい、村長さん!」
ラナ、踊りの輪に入る。
ラダン、一寸下手端に寄る。村長、ラダンに
続いて端へ寄る。
(踊りの音楽小さくなる。人々、変わらず
楽しそうに踊っている。)
村長「どうしたんだ・・・ラダン・・・?」
ラダン「村長・・・それが海が荒れて・・・嵐が来そうなんだ・・・」
村長「嵐・・・?島の婆さんの話しじゃ、ここ暫くは天気の崩れは
なく、穏やかな日々が続くと言っていたが・・・?」
ラダン「そうなんだが・・・実は・・・」
村長「どうした・・・?」
ラダン「南の丘の祠の鎖が・・・」
村長「鎖がどうしたんだ・・・!?」
ラダン「・・・誰かに切られた・・・」
村長「何だと!?あの海からの悪者を寄せ付けない為に、島の
婆さんが島に張った結界の鎖がか・・・!?」
ラダン「(頷く。)」
村長「何てことだ・・・。まぁ・・・今は海の国の者と我々人間は、
また昔のように仲良く共存するようになったのだから・・・海
からの悪者と言っても、そんな者はおらんとは思うが・・・」
ラダン「けど・・・ゴーザのこともあったし・・・」
村長「そうだな・・・まぁ少しの間、用心して海に見張りの者を立
ててくれ。(舞台の方を見て。)今日のところは年に一度の
祭で、島民達も浮かれておる・・・。そっとして、存分に楽し
ませてやることにしよう。」
ラダン「はい・・・」
村長、ラダン、下手へ去る。
入れ代わるように一人の少年(キューイ)、
楽しそうな人々の様子を見ながら、ゆっくり
登場。
アリア残して、いつの間にか踊っていた
人々、上手下手へ其々去る。
キューイ、アリアを見詰める。
アリア、自分を見詰めるキューイに気付き、
近寄る。
アリア「こんにちは・・・私はアリア!あなた・・・誰?この島の人
・・・?どこかで・・・会った?」
キューイ「う・・・うん・・・ね・・・ねぇ、アリア・・・!僕・・・キ・・・」
アリア「・・・何?」
その時、下手よりルディの声が聞こえる。
ルディの声「アリアー!!」
アリア「ルディ・・・?」
そこへ下手よりルディ、走り登場。
(ルディの登場と共に、キューイ消える
ように去る。)
ルディ「アリアー!どうしたんだい?」
アリア「あ、ルディ!この子、島の・・・(振り返る。)」
ルディ「この子・・・?」
アリア「・・・あら・・・今、ここに男の子が・・・変ね・・・」
ルディ「男の子って・・・」
アリア「今までここにいたのよ!この島で見かけたことがない子
だったわ・・・」
ルディ「ふうん・・・誰だろう・・・。それよりアリア!向こうで食事が
始まるよ!」
アリア「本当?」
ルディ「うん!」
アリア「私、人間の食べ物って、どんなのか凄く興味があったの
!(笑う。)」
ルディ「早く行こう!」
アリア「ええ!」
アリア、ルディ下手へ走り去る。
入れ代わるように上手よりキューイ、
下手方を見詰めながら、ゆっくり登場。
キューイ「アリア・・・」
音楽流れ、キューイ歌う。(紗幕閉まる。)
“僕は・・・海に住む者・・・
陸には上がれない・・・
だけど・・・どうしても僕は・・・
君の側へ来たかったんだ・・・
だから・・・”
キューイ「アリア・・・キューイ・・・」
暗転。
――――― 第 3 場 ―――――
紗幕開く。と、海の中。
(魔法使い“ドーン”の住む洞窟。)
音楽流れ、ドーン歌う。
“ああ何故こんな場所にいる
ああ何故私は動けない
誰も悪くはない筈さ
本能のまま行動しただけ
誰も私を責められはしない
なのにあいつは偉そうに
私の自由を奪いやがった
そんな馬鹿な話しはないさ
いつか必ず仕返ししてやる
この手でおまえの
息の根止めてやる!!”
ドーン「ああ、本当に忌々しい・・・!!海の王め・・・ゴーザと一
緒に私まで海の城を追放するなんて!!おまけにこんな
洞穴から出るなだなんて!!一体私が何をしたって言う
んだ!!本当に・・・」
そこへ一匹の召使クラゲ、上手より
登場。
クラゲ「ドーン様・・・」
ドーン「なんだ?」
クラゲ「お客様です。」
ドーン「客?魚か?」
クラゲ「いえ・・・イルカです。」
ドーン「イルカ・・・?イルカとはまた珍しい・・・。まぁいい、呼んで
来い・・・。」
クラゲ「はい。」
召使クラゲ、一旦上手へ去る。
ドーン「(大きな団扇を取り出し。)いよいよ、この魚のヒレをもぎ
取って作ったヒレ団扇も、今来たイルカの一ヒレを貼り付
ければ、いよいよ完成だ。(笑う。)このヒレ団扇が出来上
がれば、大風を起こし海を嵐とし、海の世界を海の城共
々目茶苦茶に壊してやる!!(笑う。)」
――――― “イルカのキューイ”2へつづく ―――――
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