2012年10月21日日曜日

“大和晃” ―全11場― 2

         ――――― 第 2 場 ―――――

         音楽流れ、舞台明るくなる。
         下手に一人のオフィスレディ(暮原 静)、書類を
         手に持ち登場。歌う。
         途中、上手より一人のインテリっぽいオフィスマン
         (近藤春彦)、鞄を手に登場。歌う。

      静“仕事 仕事 ああ忙しい
        何時も 何時も 休む間もない
        悲しいかな働く女性の定め”

      春彦“仕事 仕事 さあ働こう
         毎日 毎日 休んでなんかいられない
         負けられないんだあいつには”

      2人“働こう 何かの為に
         見つけよう 何か大切なもの
         直ぐ見つからなくても
         屹度見つかる 必ず見つかる
         自分の道が!!”

      静、上手方へ。春彦、下手方へ。
  
  静「(春彦を認め。)あら、近藤さん、出掛けるの?」
  春彦「ええ・・・。今週中に如何してもまとめたい、大口契約がある
      もので。」
  静「大変ねぇ、営業マンは・・・。」
  春彦「まぁ・・・。(時計を見て。)あ、そろそろ行かないと・・・。じゃあ
      ・・・。(下手方へ行く。)」
  静「そうだ!ねぇ、近藤さん!晃、戻ってたかしら?」
  春彦「な・・・何で私が、大和君が帰って来たかどうか、知ってるん
      ですか、全く・・・。」
  静「そう・・・。頑張るなぁ、晃・・・。」
  春彦「暮原さん・・・それは嫌味でしょうか・・・。」
  静「あら、そんな風に聞こえたらご免なさい。」
  春彦「(溜め息を吐いて。)じゃあ・・・。」

         春彦、下手方へ行くと、下手よりスーツ姿の
         晃、尚斗、話しながら登場。

  尚斗「だから、それは契約をまとめる為に・・・」
  晃「接待なんて、馬鹿げてるよ・・・。(笑う。春彦を認めて。)あれ
    ?近藤、今頃から外?」
  春彦「悪かったですね!!」

         春彦、下手へ去る。

  晃「如何したんだ、あいつ・・・」
  尚斗「さぁ・・・」
  静「(晃を認めて、駆け寄る。)おかえりなさい、晃!!」
  晃「また、おまえか・・・」
  静「何よ、その言い方!折角、お迎えしてあげてるのに!」
  尚斗「そうだよ、晃・・・。」
  晃「悪いな。俺はおまえみたいに、女に優しい言葉をかけてやる
    甘い口は、持ち合わせてないんだ。」
  静「でも、晃が及川君みたいだと、気持ち悪いかも・・・」
  晃「静・・・態々こんな所まで出迎え・・・寒かっただろ・・・?(静の
    手を取る。)」
  静「いやだ!(笑う。)」
  尚斗「俺はそんなこと言わないよ!」
  晃「じゃあ、気付かずに言ってるのか?怖いよなぁ・・・(笑う。)」
  尚斗「そ・・・それより晃、今度の連休、何か予定があるのか?」
  晃「いや、別に・・・」
  静「何処か行くの!?(嬉しそうに。)」
  尚斗「久しぶりに、俺達の恋人に会いに行かないか?」
  静「恋人ですって!?」
  晃「ああ!!丁度、俺も会いたいと思ってたんだ!!」
  静「誰よ、恋人って!!何処の女なの!?」
  晃「おまえには関係ないよ。(笑う。)さぁ、彼女の為にどんなプレ
    ゼントを買って行くとするかな。」
  
         晃、上手へ去る。

  静「嘘・・・」
  尚斗「大丈夫!山のことだよ!じゃあ!(手を上げて、晃の後を
      追うように上手方へ。)

         尚斗、上手へ去る。

  静「山ですって!?久しぶりどころか、しょっちゅう行ってるじゃ
    ないのよ!!・・・それにしても好きよねぇ、あの2人・・・。
    (溜め息を吐く。)女に興味ないのかしら・・・。」

         音楽で暗転。

    ――――― 第 3 場 ―――――

         明るくなると、野原の風景。
         下手より、看護師の腕に摑まりながら、一人の
         目の見えない少女(及川優美)登場。
         話しながら、ゆっくり中央へ。

  優美「ねぇ、看護師さん・・・。看護師さんは好きな人いる?」
  看護師「そうねぇ・・・、いるわよ、沢山。」
  優美「違うわよ!恋人いるの?」
  看護師「恋人かぁ・・・。残念ながら・・・。(肩を窄める。)優美ちゃん
       は?」
  優美「私は駄目・・・。だって、目が見えないんですもの・・・。いくら
      私が好きになったって、相手が私のことを、好きになってく
      れる筈ないもの・・・。」
  看護師「そんなことないわ!(後方を見て。)座りましょうか・・・。」
  
         看護師、優美、(八百屋舞台上に)腰を下ろす。

  看護師「いくら目が見えなくても、優美ちゃんには、それをカバー
       するだけの取り柄が沢山あるわ。例えば優しくて思い遣り
       のある所だとか・・・。頑張り屋さんな所だとか・・・。それに
       とっても美人よ。」
  優美「看護師さんったら!」
  看護師「・・・誰か好きな人、いるの?」
  優美「私はお兄ちゃんが好きよ!」
  看護師「そうね、優美ちゃんはお兄さんっ子よね。」
  優美「パパやママは、私が小さい時に事故で亡くなって、2人っ
      きりの兄妹だもの・・・。他にはね・・・晃さん!私が小学生
      の時、初めてお兄ちゃんがうちへ連れて来たの。最初は
      余り話さないし、どんな人か分からなかったわ。お兄ちゃん
      とは、とても仲良さそうだったけど・・・。でも、しょっちゅう   
      うちに来るようになって、そのうち3人で遊びに行くように
      なったの。晃さん、目の見えない私のこと、可哀相とか、
      そんな風にちっとも思わないのよ!道路を歩いてても、手も
      貸してくれないの。でも、危ない場所があると、必ず安全な
      方へちゃんと導いてくれた・・・。打切棒にね。(笑う。)だから
      私も、晃さんの前では目が見えないことに、引け目を感じな
      くていいの。」
  看護師「そうなの・・・。」

         その時、晃、上手より花束を持って登場。
         優美を認め、ゆっくり側へ。看護師、晃を認める。

  看護師「あら、大和さん。」
  優美「晃さん?(嬉しそうに。)」
  晃「こんにちは・・・。受付で、ここだと聞いたんでね。今日は日向
    ぼっこするには最適な陽気だね。」
  優美「日向ぼっこだなんて!」
  晃「ご免、ご免。そうだ、203号室の患者さんが、ウロウロあなた
    のことを捜してましたよ。」
  看護師「本当?あのお婆さん、私の姿が見えなくなると、直ぐああ
       なの・・・。仕方ないわね・・・。優美ちゃんのことは、大和さ
       んにお任せしていいかしら?」
  晃「どうぞ。」
  看護師「じゃあ、後はよろしくね。(立ち上がる。)」

         看護師、上手へ去る。





         ――――― “大和晃”3へつづく ―――――






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