――――― 第 9 場 ―――――
静かな音楽流れる。
スモーク流れ、舞台中央、眠っているような優美、
スポットに浮かび上がる。
八百屋舞台上、尚斗、スポットに浮かび上がる。
優美を認め、優しそうに微笑むとゆっくり側へ。
舞台、薄明るくなる。
尚斗「・・・優美・・・優美・・・」
優美「う・・・ん・・・(ゆっくり目覚める。目が見えているように、
尚斗を認める。)・・・だ・・・れ・・・?」
尚斗「(微笑む。)優美・・・」
優美「・・・お兄ちゃん・・・?お兄ちゃんね!!私には分かる!!
一度も見たことはないけど!!お兄ちゃん!!(尚斗に
抱き縋る。)如何して私を一人ぼっちにいたの!?如何し
て一人で先に行っちゃうの!?私、これから如何すれば
いいの!?私も一緒に連れて行って!!」
尚斗「優美・・・覚えているか・・・?おまえは小さい時から、何時
も泣き虫だった・・・。何時も僕の後ろにひっ付いて・・・」
優美「私はお兄ちゃんが大好きだった・・・!!」
尚斗「そんな優美を、僕は何があっても守ってやろう・・・そう
何時も考えていたんだ・・・」
優美「じゃあ、これからも・・・!!」
尚斗「優美・・・!!あんなに泣き虫だったおまえが、何時の頃
からか、何があっても泣かなくなった・・・。僕の後ろに隠
れてばかりいたおまえが、何時の間にか僕の前を歩くよ
うになったんだ・・・。明るく笑うようになった・・・。僕はその
変化が、とても嬉しかったよ・・・。それだけで、晃と友達
になってよかった・・・と、心から思ったものだ・・・。」
優美「・・・お兄ちゃん・・・」
尚斗「僕には分かる・・・。優美が如何して自分の殻を破って、
外の世界へ出て来たのか・・・。頑張るんだ、優美・・・。
僕は、何時もおまえの側にいるよ・・・。」
優美「私、頑張れない・・・!!(泣く。)お兄ちゃんがいなきゃ、
私頑張れない!!」
尚斗「(首を振る。)そんなことないよ・・・(微笑んで。)優美なら
頑張れる・・・」
尚斗、フェード・アウト。
優美、再びスポットに浮かび上がる。
優美「・・・お兄ちゃん・・・?お兄ちゃん・・・?お兄ちゃん!!私
を一人ぼっちにしないで!!私も一緒に連れて行って!
!(回りを捜す。)」
優美、八百屋舞台上、放心したように後方を
向いたまま立ち尽くす。
舞台、明るくなる。その時、上手より晃、走り登場。
優美を認める。
晃「優美ちゃん!!」
優美「こないで・・・。私は今から、お兄ちゃんの所へ行きます・・・
。」
晃「何を言ってるんだ、君は・・・!!(駆け寄ろうとする。)」
優美「こないでって言ってるでしょ・・・!!来たら、今直ぐここか
ら飛び降りて死ぬわ!!」
晃「そんなことをして如何なるんだ!!」
優美「私・・・今、お兄ちゃんに会ったわ・・・。」
晃「え・・・?」
優美「お兄ちゃんも、私に一緒に行こう・・・って言ってくれた・・・。
だから行かなきゃ・・・」
優しい音楽流れる。
晃「優美ちゃん・・・。尚斗がそんなことを言う筈ないよ・・・。尚斗
は何時も・・・どんな時も、君のことを一番に考えていた・・・。
誰よりも優しく・・・何よりも深い愛情で、何時も君を見守って
いたんだ・・・。あいつが何時も望んで止まなかったもの・・・
それは、君の幸せだよ・・・。」
晃、歌う。
“例え 今が辛くとも
屹度 何時か乗り越えられる
だから生きてみないか・・・”
優美、呼応するように歌う。
“生きる希望を失った
見たいものもなくなったわ
だからそっとして!”
晃、歌う。
“希望ならまた見つかる
見せたいものは山ほどある
力強く生きるんだ!”
優美、歌う。
“嘘よ 全部出鱈目よ
生きてても何の喜びも得られない
大切な者を失った
あなたには分からない”
晃、歌う。
“君の悲しみは僕の悲しみ
君の涙は僕の涙
同じ苦しみを味わってるんだ
君の気持ちは僕の気持ち!!”
晃「一緒にこの苦しみを乗り越えよう・・・。尚斗は、君の死なん
か望んでやしない・・・。もし君が、尚斗に会ったと言うなら・・・
君はもう知ってる筈だよ。あいつが何を君に望んでいるのか
・・・。あいつの本当の心が、見えた筈だ・・・。死ぬことは、
簡単かも知れない・・・。生きることは辛いことが多いだろう
・・・。だけど、ほんの少しだけ、生きる勇気を持てば、今の
辛さは、これからの君の人生の中で、何十倍もの幸せとなっ
てかえってくるんだ・・・。その幸せは、尚斗から君への、最後
の贈り物なんだよ・・・。それを受け取ってやらないで、如何
するんだ!!」
優美「・・・でも・・・私は一人ぼっちだわ・・・」
晃「君は一人なんかじゃない・・・。俺がいる・・・。君が死んだら、
俺は全く今の君と同じ気持ちになるだろう・・・。(笑う。)君は
俺まで殺しちまうことになるんだ・・・。それに、君が生きる限
り、君の心の中には、尚斗が生きるんだよ・・・。」
優美「(涙が溢れる。)・・・晃さん・・・」
その時、優美にだけ聞こえるように、
尚斗の声が響く。
尚斗の声「(優しく。)・・・優美・・・おまえが幸せになれば、僕も
幸せなんだ・・・。分かるだろ・・・?」
優美「(一瞬、声の主を捜すように、頭を上げる。)・・・お兄ちゃ
ん・・・?ご免なさい・・・ご免なさい!!(声を上げて泣く。
)」
晃「(優美に駆け寄り、抱き寄せる。)分かってるよ・・・(微笑む
。)」
盛り上がった音楽で、暗転。
――――― “大和晃”7へつづく ―――――
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