晃「(優美の隣へ腰を下ろす。花束を差し出して。)はい、プレゼ
ント・・・。」
優美「わぁ・・・ありがとう!(香りを嗅ぐ。)薔薇ね!!しかも私の
好きなピンクかしら?」
晃「ご名答!相変わらずいい勘してるなぁ。」
優美「(クスッと笑って。)見えない分、勘は鋭いのよ!山・・・行く
のね?」
晃「うん。次の休みにね。」
優美「晃さんって、昔っからそう!お兄ちゃんと山へ行く前には、
必ず花束を持って、会いに来てくれるの!」
晃「優美ちゃんに、大事な兄貴を少しの間お借りしますって、ちゃ
んと挨拶しとかなきゃね。」
優美「でも、お兄ちゃんも晃さんも本当に好きよねぇ・・・。中学で
知り合って以来、ずっとでしょ?そんなに2人が魅了されて
る山・・・私も一度でいいから行ってみたいなぁ・・・。」
晃「じゃあ今度、一緒に行こう!」
優美「え・・・?」
晃「大丈夫!俺が手をひいて連れてってやるよ!その鋭い勘で
感じるんだ、山の偉大さを・・・。屹度気に入るさ!!けど、尚
斗の奴に“許さない!!”って言われそうだな。(笑う。)あいつ
は、優美ちゃんのことになると、見境がなくなるから・・・。」
優美「(笑う。)お兄ちゃんも言ってたわ、同じようなこと!“晃は
一人っ子だから、おまえを本当の妹みたいに可愛がって
くれるのはいいんだが、どうも些細なことで見境がなくなる
のは・・・”って・・・。」
晃「なんだ、自分だって同じくせに、偉そうな奴だな。」
優美、声を上げて楽しそうに笑う。顔を空へ向け、
心で何かを感じるように。
優美「・・・行けるといいわね・・・。」
晃、優美を見詰める。
暗転。
――――― 第 4 場 ―――――
上手前方、スポットに春彦、暗い面持ちで
浮かび上がる。独り言を言うように。
春彦「何で、あいつが上手くいって、私が駄目なんだ・・・!!私
の方があいつより、遥かにいい大学だって出てる!!将来
有望と言われて入社したんだ!皆の期待の星だった!!
何で私が休日返上で働いてるのに、あいつは有意義な休
日を過ごし、呑気に山登りなんかしてるんだ!!」
音楽流れ、春彦歌う。
“可笑しい!可笑しい!
何かが違う
可笑しい!可笑しい!
何処かで狂った
私の人生の進む道
あいつには負けられないんだ
如何しても・・・
あんなヘラヘラした調子者
ただ明るいだけの考えなし
皆騙されてる あいつの仮面に
早く気付くんだ あいつの素顔
可笑しい!こんな筈じゃない!!”
静かな怒りに瞳を輝かせ、遠くを見遣る春彦。
暗転。
――――― 第 5 場 ―――――
静かな音楽流れ、薄明るくなると、山の星空の
風景。舞台中央、晃と尚斗、星を見上げ横に
なっている。尚斗、座る。
尚斗「久しぶりだな。おまえとこうやって、一緒にここへ来るのは
・・・。初めてここへ来たのは高校の時だよな・・・。あの時
のおまえ、途中でリュックの・・・(晃が聞いていないことに
気付いて、晃が耳に嵌めていたイヤホンを、取り上げる。
と、一瞬音楽大きく流れる。)」
晃「(起き上がって。)何すんだよ!!」
尚斗「おまえ・・・折角来たのに、それはないだろ?」
晃「・・・悪い、昔から好きなんだ、この曲・・・。(笑う。)」
尚斗「(溜め息を吐いて。)やれやれ・・・。(上を見上げて。)見て
みろよ・・・。綺麗な星空だなぁ・・・。」
晃「ああ・・・。(見上げる。)」
尚斗「こんな美しい夜空を見上げてると、都会の雑踏の中で生活
している自分が、丸で嘘のようだ・・・。」
晃「ああ・・・。」
尚斗「・・・優美にも見せてやりたいな・・・。(立ち上がる。)」
晃「そうだな・・・。」
尚斗「・・・また会いに行ってくれたんだって?」
晃「(立ち上がる。)・・・暇が出来たんでね。」
尚斗「あいつ、喜んで報告してたよ。“私の大好きなピンクの薔薇
を持って、会いに来てくれた・・・”ってさ。(笑う。)女に花な
んか、死んでも贈らないおなえが、優美にだけは昔っから
例外のように接してくれる・・・。これからも、あいつのこと、
見守ってやってくれよな・・・。」
晃「何、変なこと言ってんだよ・・・。(笑う。)当たり前だろ?」
尚斗「それから・・・好い加減、暮原さんの気持ちに応えてやれよ
・・・。」
晃「・・・静の気持ち・・・って何だよ、それ・・・。」
尚斗「分かってるだろ?彼女がおまえに思いを寄せていること・・・
。」
晃「(少し焦ったように。)ばっ・・・如何してあいつが俺に・・・!!」
尚斗「聞けよ!おまえだって彼女と同じ気持ちの筈だ。違うか?」
晃「ちょっ・・・ちょっと待てよ・・・!」
尚斗「おまえね・・・何時までも知り合った頃の、中学生の餓鬼じゃ
ないんだぜ・・・。自分の気持ちを俺に教えられなきゃ、分か
らないようなもんでもないだろ?」
尚斗歌う。
“自分の気持ちに気付くのは簡単
それを認めるのは至難の業
だから見て見ぬ振りする”
晃、呼応するように歌う。
“違う
それは単なるおまえの思い過ごし”
尚斗歌う。
“他人のことは見えるのに
自分のことは 丸で盲目
他人の為なら惜しみなく貸す力
自分の為には使う理由も見つからない”
晃歌う。
“違う
それは単なるおまえの思い込み”
尚斗歌う。
“もっと目の前にある現実に
心開けば自ずと分かる
何も難しいことなんてない
ただ素直になること
それがたった一つの答え・・・”
晃「さぁ、もう寝るぞ!!明日も早いんだ!!おやすみ!!(ゴロ
ンと横になり、毛布を頭から引っ被る。)」
尚斗「(微笑んで晃の横に腰を下ろす。)素直じゃないな・・・、昔
からおまえは・・・。(空を見上げる。)思い出すな・・・。初め
て、おまえと出会った時のこと・・・。」
晃「(毛布を取って。)・・・あの頃、俺は転校したてで、一人も友達
がいなかったんだ・・・。おまけに不良ときたもんだから、誰も
相手にしてくれなかったのに、おまえだけ・・・(思わず吹き出す
。)“俺達、友達になれないかな!?”なんて・・・」
尚斗「何言っていいか、分かんなかったんだ。ただ仲間を見つけ
たようで、嬉しくてさ・・・。如何しても友達にならなきゃって
思ったんだ・・・。」
晃「・・・俺も・・・嬉しかったぜ・・・凄く・・・。」
尚斗、嬉しそうに微笑む。
暗転。
――――― “大和晃”4へつづく ―――――
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