――――― 第 6 場 ―――――
下手より、静登場。
静「(くしゃみする。)いやだ・・・、誰か噂してるのかしら・・・。(遠く
を見上げるように。)あの2人・・・今頃、何してるのかなぁ・・・。
男2人のロマン・・・か・・・。他の女に現を抜かすより、ずっと
マシよね・・・。」
ゆっくり上手方へ行きかけると、上手よりひと組
のカップル、楽しそうに語り合いながら登場。
静の横を通り過ぎ、下手へ去る。2人の様子を
羨まし気に見詰める静。歌う。上手へ。
“折角のサタデーナイト
私にとってのブルーホリデイ・・・
今日は恋人達の夜
なのに私は一人・・・
でも何時か私も恋をするわ
屹度 素敵なあなたを見つけ
もう側にいる
分かってるの私には・・・”
暗転。
――――― 第 7 場 ―――――
カラカラと、小石の落ちる音がする。
その時、“ドーン”と言う轟音が響き渡る。
晃の声「落石だ!!逃げろ!!尚・・・!!」
尚斗の声「わあーっ!!(叫ぶ。)」
晃の声「尚斗ー!!(叫ぶ。)」
一時置いて、落石の轟音が静まり返り、
嵐の後の静けさが、辺りを包む。
八百屋舞台上スポットに、尚斗を抱き抱えた
晃、浮かび上がる。
晃「尚斗!!尚斗!!確りしろ!!尚斗!!」
尚斗「う・・・ん・・・(気付く。)」
晃「尚斗!?」
尚斗「・・・晃・・・」
晃「尚斗・・・(ホッとしたように。)」
尚斗「・・・如何しちまったんだ・・・一体・・・」
晃「(上をチラッと見上げて。)あそこから、岩と一緒に落っこちた
んだ・・・。大丈夫か?」
尚斗「・・・う・・・(苦痛に顔を歪める。)・・・あんまり・・・感覚がない
や・・・」
晃「そりゃそうだ・・・。あれだけ大きな落石にあって、命が助かっ
ただけでも儲け物だぜ・・・。」
尚斗「(フッと笑う。)・・・そうだな・・・。おまえの方は・・・大丈夫な
のか・・・?」
晃「ああ・・・、俺はなんともない・・・。(微笑む。)さぁ・・・これから
如何やって、あそこまでおまえを担いで登るかな・・・。」
尚斗「(笑って。)無理だよ・・・、担いでなんて・・・(咳き込む。)」
晃「大丈夫か!?」
尚斗「・・・一人で行ってくれ・・・」
晃「馬鹿野郎!!俺がおまえを置いて・・・」
尚斗「(晃の言葉を遮るように。)一人で行くんだ・・・!おまえが
助けを呼んで、戻って来るまで・・・俺は何とか頑張る・・・。
だから・・・一人で行くんだ・・・」
晃「尚斗・・・」
尚斗「何て顔してんだよ・・・。ほんの数時間じゃないか・・・」
晃「だけど・・・!!」
尚斗「(微笑む。)・・・おまえと一緒で・・・俺も生命線は長いんだ
・・・死にやしないよ・・・おまえが戻って来るまで・・・」
晃「・・・分かった・・・。必ず助けを連れて、直ぐに戻って来る!!
・・・だからそれまで頑張るんだ!!(木霊する。)」
暗転。
――――― 第 8 場 ―――――
厳かな音楽流れ、鐘の音が響き渡る。
静かにミサ曲が歌われる。
明るくなると中央、車椅子に黒のワンピースに
身を包んだ優美、放心状態で座っている。
横に礼装した春彦、静佇む。
静「(涙を堪えるように。)優美ちゃん・・・元気出してね・・・。何か
あったら、何時でも言って頂戴・・・。何でも力になるから・・・。」
春彦「頑張るんだよ・・・。」
春彦、静ゆっくり下手へ。
春彦「(小声で。)まさか、及川君が亡くなるとはね・・・。(チラッと
優美の方を見て。)これであの子も、天涯孤独の身ってこと
ですね・・・。」
静「そんな風に言うのはよして・・・!!あの子には晃だって・・・
私だっているもの!!そんな独りぼっちみたいに・・・。」
春彦「すみません・・・。それにしても今日、大和君は如何したん
でしょうね・・・?仮にも親友だった及川君の、最後の別れ
に現れないなんて・・・。」
静「・・・晃・・・大丈夫かしら・・・。」
春彦「え・・・?」
静「あの2人・・・ずっと親友だったの・・・。私なんかが割り込む隙
のないくらい・・・。堅い絆で結ばれてるようだった・・・。」
優美「・・・でも・・・お兄ちゃんを見捨てたわ・・・。」
静「・・・優美ちゃん?」
優美「・・・晃さんは大怪我して、動けなくなったお兄ちゃんを見捨
てて、自分だけ助かったのよ・・・。」
静「そんなことないわ。晃が及川君を見捨てたりする訳ないじゃ
ない!」
優美「じゃあ・・・何故お兄ちゃんは死んだの・・・?」
静「・・・それは・・」
優美「・・・答えられる筈ないわ・・・。私が言ったことが正解だもの
・・・。」
その時、上手より晃登場。ゆっくり3人の側へ。
晃「・・・優美ちゃん・・・。」
静「晃・・・」
優美「・・・何しに来たの・・・。私は今・・・晃さんに一番会いたくな
いの・・・。」
晃「ご免・・・」
優美「・・・謝るくらいなら、お兄ちゃんを返して・・・。返してよ!!
如何してお兄ちゃんを一人で放っといて戻って来たの!!
お兄ちゃん、大怪我してたのよ!!それなのに、晃さんが
見捨てたからお兄ちゃんは死んじゃったんだわ!!私に
とって、たった一人のお兄ちゃんだったのよ!!パパの
代わり、ママの代わり・・・掛け替えのない人だったのに!
!(泣き叫ぶ。)」
――――― “大和晃”5へつづく ―――――
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