2012年9月12日水曜日
“アンソニー” ―全16場―
〈主な登場人物〉
アンソニー ・・・ 吸血鬼ドラキュラ伯爵。本編の主人公。
リーザ ・・・ シャンドール家の前妻の娘。
エドワード ・・・ お供として、アンソニーに付いている。
ルイ ・・・ アンソニー、エドワードと一緒に旅している。
ミシェル ・・・ シャンドール家の後妻と主人の息子。
ジェラール ・・・ 吸血鬼達を、執拗に追う男。老医者。
ミハエル ・・・ ジェラールの助手。
エリザベート ・・・ 後妻の娘。長女。
その他
― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪
――――― 第 1 場 ―――――
音楽で幕が上がる。と、木々が茂り、小鳥達の
囀り、木漏れ日溢れる、見るからに爽やかな
奥深い森の風景。
若い男女が左右より登場、楽し気に手を取り合
いながら、歌い踊る。
男女が左右へ去ると、中央より長髪のアンソニー
ゆっくり登場。森の中を楽しむように踊る。
その面影は、黒い髪に透き通るような白い肌を
持ち、何故か赤い唇だけが一際目を引く。
その容姿は俗世の者と思われないよう。
と、その時、数発の銃声が辺りに響き渡り、一瞬
顔を強張らせたアンソニー、誰のものとも分から
ない“当たったぞー!!”の叫び声を残して、森
の奥へと消える。
紗幕閉まる。
――――― 第 2 場 ―――――
紗幕前。
上手より、慌てた感じのミハエル、ルドルフ走り
登場。続いてジェラール、銃を片手に幾分落ち
着いて登場。
ミハエル「一体何処へ行ったんだ!?」
ルドルフ「確かに、弾が当りましたよね!!」
ミハエル「当たり前だ!!あれだけ血痕が残ってるんだ、可なり
の傷を負ってるに違いない!!」
ジェラール「あいつらを、普通の人間と同じように考えるんじゃな
いぞ。」
ミハエル「先生・・・」
ジェラール「多分、あのくらいの傷、明日になれば跡形もなく、治
っている筈だ。」
ルドルフ「(笑う。)そんな・・・」
ミハエル「じゃあ一体・・・?」
ジェラール「本当にあいつらを殺そうとするなら、銀の杭を、その
胸に深く・・・深く突き刺すしかない。」
ミハエル「・・・銀の杭を・・・?」
ジェラール「そして、その杭を突き刺すのは・・・この私だ!!」
ルドルフ「でも・・・何で先生はそんなに・・・」
ジェラール「あいつとは、100年来の因縁の間柄だ・・・。」
ルドルフ「100年って・・・俺がまだ生まれるずっと前から・・・(
ハッとして。)あれ・・・?先生だって生まれていない・・・
」
ミハエル「そんなに昔から?けど先生、さっき言ってた、普通の
人間と思うだなんて一体・・・」
その時、数羽の鳥の飛び立つ音が
響き渡る。
ルドルフ「(思わず身を屈めて。)わぁっ!!コウモリだ!!」
ジェラール「(顔を強張らせて、空を見上げる。)また捜し直しだ
・・・。今日は・・・満月だな・・・。さぁ、行くぞ!!」
ジェラール、下手へ去る。ミハエル、ルドルフ、
ジェラールに続く。
――――― 第 3 場 ―――――
楽し気な音楽が流れる中、紗幕開く。
舞台は屋敷の中。手に其々洋服を持った
シャンドール家の娘達。長女エリザベート、
次女で双子のステラ、クレナ姉妹、陽気に
歌い踊る。
“見て見て何て素敵な色かしら
見て見て何て可愛い仕上がりかしら
屹度みんなが目を奪われるわ
屹度みんなが私に注目する
誰よりも一番綺麗で
誰よりも一番素晴らしい
見て頂戴
今度のお茶会では私が主役”
ソファーに腰を下ろして、3人の歌を聞いて
いた、3人の兄クリス、立ち上がる。
クリス「(首を傾げて。)そんなに一番がいいのかね。」
エリザベート「お兄様には分からなくってよ!!」
クリス「しかし、こんな小さな村の中じゃ、一番だろうが二番だろ
うが、たいして変わりはないと思うがね。(笑う。)」
クレナ「(溜め息を吐いて。)これだから男って・・・」
エリザベート「(ドレスを胸に抱いて。)何時もみんなの目を惹く
私は、その内国中の知れるところとなって、ある日
その噂を聞いた素敵な王子様が、私を尋ねて来て
くれるのよ!」
クリス「(笑う。)本気にそんなことを考えているのかい?」
エリザベート意地悪ね!」
その時、2階より末弟ミシェル、本を片手に
ゆっくり下りて来る。
ステラ「(ミシェルに気付いて。)あらミシェル、また読書してたの
?」
ミシェル「うん・・・」
クレナ「偶には私達と一緒に、お茶でもどう?」
エリザベート「お兄様は偶には読書でもなさったら?」
クリス「煩いな!(ミシェルに近寄って。)おまえ、この頃はあの
部屋へ行ってないだろうな?」
ステラ「・・・あの部屋って・・・?」
エリザベート「・・・まさか・・・黒い扉の・・・!?ミシェル、あなた
・・・」
ミシェル「行ってないよ・・・」
クリス「ならいいんだ。ちょっと聞いてみただけさ。」
ミシェル、上手へ去る。4人、暫くその方を
見ている。
クレナ「何だって、あの子・・・」
クリス「よく知らないが、以前、偶々あの部屋から出て来たミシェ
ルを見かけてね・・・。どうもみんなに隠れて、ちょくちょく
顔を出してたようなんだ。」
エリザベート「それで!?」
クリス「勿論、それからは決して近寄るなと、念押しはしておい
たんだが・・・」
ステラ「ならいいじゃない。本人も行ってないって言ってたんだし
・・・」
エリザベート「あなたって呑気でいいわね。お母様に知れたら事
よ!」
ステラ「私は来週のお茶会のことで、頭が一杯なの!」
その時、ドアの呼び鈴の音。
執事のヨハン、奥より登場し扉の方へ。
何時の間にか奥よりメイド、クララ登場、
娘達のドレスを仕舞ったり、用事をしている。
ヨハン「はい、どなたで?(扉を開ける。一時置いて。)あの・・・、
しかし・・・」
ルイの声「頼む!!怪我人がいるんだ!!一晩だけ・・・一晩
だけ休ませてくれれば、明日には出て行く!!」
ヨハン「・・・事情は分かりますが・・・何分、ご主人様はご旅行中
でして・・・」
ルイの声「頼む!!」
エリザベート、ヨハンの様子に気付いて
近寄る。
エリザベート「ヨハン、どなた?」
ヨハン「あ・・・お嬢様、それが・・・」
エリザベート「(扉の外を覗いて。)どちら様ですか?」
ルイの声「あ・・・突然すまない。旅行中に友人が怪我をして・・・
一晩だけでいいんだ、宿を!!」
エリザベート「そう言うことならどうぞ。お友達の方も。」
ルイの声「ありがとう!!」
ヨハン「お嬢様!!」
エリザベート「一晩くらい、いいじゃない。」
ルイ登場。続いてエドワードに抱かえられ、
ぐったりとしたアンソニー登場。
アンソニー「・・・すまない・・・」
エリザベート、クレナ、ステラ、思わずぼうっと
アンソニーに見惚れる。
ルイ「あの・・・何処へ・・」
エリザベート「(ハッとして。)あ・・・お2階へどうぞ!!お友達の
方、大分お悪いようですし、一晩だけと言わず、傷
が治るまで養生していらして下さいな。」
ヨハン「お嬢様!!」
エリザベート「お父様がお帰りになったら、私からお話しするわ!
!」
エドワード「いや・・・今晩だけで・・・」
エリザベート「いいえ。お見かけしたところ、一晩やそこらで良く
なるような傷とは思われませんし、そんな怪我人を
放り出すような真似はできませんわ。」
エドワードとルイ、そっと顔を見合わせる。
エドワード「・・・それじゃあ・・・」
エリザベート「(思わず嬉しそうに。)よかった!!ロベール!!」
奥より使用人ロベール登場。
ロベール「(エリザベートに近寄って。)はい!」
エリザベート「大切なお客様よ!2階の一番上等の客間に、ご
案内してさしあげて!!」
ロベール「分かりました。(エドワード達の方へ向いて。)こちらへ
どうぞ。」
エドワード、ルイ、アンソニー、ロベールに
付いて2階の方へ。
エリザベート「(思い出したように。)あ・・・!!先生をお呼びしま
しょうか?」
エドワード「いや!!・・・結構だ・・・」
エリザベート「(頷く。)それと!!2階の一番奥の・・・突き当たり
に見える黒い扉の部屋だけは、決して開けないで
下さい。(微笑んで。)後は、何処の部屋へ入られて
も構いませんわ。」
3人、ロベールに付いて、2階へ上がる。
ステラ「(4人が出て行くのを見計らって、エリザベートに駆け寄
る。)お姉様!!あの黒髪の怪我人、素敵なお方ね!!
(溜め息を吐く。)」
クレナ「本当ね!!この世の者とは思われない・・・。見た!?
あの透き通るような肌!!」
エリザベート「いいこと!?抜け駆けはなしよ!!」
クリス「(肩を窄めて。)やれやれ・・・」
暗転。
――――― 第 4 場 ―――――
音楽でフェード・インする。と、アンソニー達が
通された客間。
アンソニー、ベットの上に横になっている。
エドワード、窓を開けると、もう暗くなっている
空には、満月が昇っているのが、窓の向こう
に見える。
エドワード「全く、今日のアンソニーは、彼には珍しく不用心だっ
たな・・・。」
ルイ「あんなに沢山、無駄な血を流してしまって勿体ない。(笑う
。)」
エドワード「笑いごとじゃないだろ?」
ルイ「それにしても、本当にしつこい奴らだな。何でジェラール
は、あんなにも俺達のことを?」
エドワード「・・・さぁ・・・」
ルイ「俺が君達の仲間に入った時には、もう何時も後ろにはあ
いつがいた・・・」
アンソニー「どうでもいいんじゃないか、そんなことは・・・」
エドワード「アンソニー!!」
アンソニー、ベットの上へ起き上がる。
ルイ「アンソニー!!」
エドワード、ルイ、アンソニーの側へ近寄る。
アンソニー「奴らが何処の誰で、何故俺達を執拗に追い回すの
か・・・別にどうでもいいことさ・・・。」
エドワード「・・・アンソニー・・・」
ルイ「そうだな。(笑う。)」
エドワード「ところで、もう体はいいのか?」
アンソニー「ああ。(ベットから立ち上がって、両腕を高く上げ、
元気だと言う風に見せる。)この通り!!もう今直ぐ
にでも立てるぞ。」
エドワード「(笑う。)そうか。だが、そう言う訳にもいかなくてな。」
アンソニー「ああ・・・俺の傷が治るまで、客人としてこの屋敷に
留まることにしたんだっけ・・・?」
ルイ「その通り!よく分かったな。」
アンソニー「朦朧としながらも、気は張ってたからね・・・。傷の酷
さも知られてしまったことだし、2週間くらいは大人し
くしてなけりゃいけないかもな?」
エドワード「そうだな・・・。大分逃げて来たから、そのくらいなら
平気だろう。だが、くれぐれも気を付けてくれよ。さっ
きまで死にそうな顔をしてた奴が、もうピンピンしてる
と分かったら、それこそ大騒ぎだ。」
アンソニー「(笑う。)OK。だが、俺にはちょっとばかり辛い忠告
だな。」
――――― “アンソニー”2へつづく ―――――
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(どら余談^^;)
そんなに直ぐに治るんなら、ちょっと木陰でも休んでいれば
いいのに・・・などと、色々と思うところがおありでしょうが・・・
“物語”の不思議・・・と言うことで、あまり深く考えずにお楽し
み頂ければいいかな・・・と思います(^_^;)
「入るべからず・・・」と言ったお話しも、昔から色んなお話し
に登場する、ありがちなキーワードとしてお読み下さい^^;
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2012年9月11日火曜日
“未来への扉” ―全9場― エンディング
ジョーイ「それはないだろう?・・・しかし・・・アレックスと比べた
りしたら申し訳ないよ。私のは飽く迄、一つの息抜き
のようなものだったから・・・。あいつはでっかい奴だっ
たよ・・・最後まで・・・。何ものにも屈せず、あいつは
自分の意志を・・・夢を貫き通したんだ・・・。ただ一つ
・・・私が悔やむのは・・・最後の別れをちゃんとしなか
ったことだ・・・。」
クリスティーン「あなた・・・。」
ジョーイ「(微笑んで。)今更言っても始まらないな・・・。」
クリスティーン「・・・ジョーイ・・・」
ジョーイ「(笑って意外そうにクリスティーンを見る。)おいおい、
名前で呼ぶなんて、何年振りだい?」
クリスティーン「(微笑んで。)ええ・・・、何だかあの頃が・・・3人
でワイワイ楽しんでた頃が、何だかとても・・・懐
かしくなって・・・。」
ジョーイ「・・・そうだな・・・よき青春時代だった・・・。」
2人、微笑み合い、寄り添うように下手へ去る。
音楽で紗幕開く。
――――― 第 9 場 ――――― B
上手より、バスケットボールを片手にアレックス、
息を切らせながら走り登場。
ドリブルしたりしながら、ゆっくり下手方へ。
そこへ上手よりアレックスの友人、アレックスを
追い掛けるように登場。
友人「待ってくれよ、アレックス!!全く、おまえには叶わない
よ・・・。」
アレックス「(笑う。)そんなことないさ。」
友人「おまえは何だって出来るんだから参るよ・・・。」
アレックス「仕方ない。じゃあ今日の昼食は、俺が奢ってやる
よ。」
友人「本当に!?」
アレックス「ああ・・・。毎日おまえに奢ってもらってたんじゃ、悪
いからな。(嬉しそうに。)だけど、言い出したのは、
おまえの方だぜ。フリースローで得点の少ない方が、
昼食を奢ろうって・・・。(笑う。)」
友人「(溜め息を吐いて。)もう、止めようぜ・・・。でないと、俺は
卒業するまで、おまえに昼食を奢り続けなきゃならない
よ・・・。」
アレックス「OK。」
友人「それはそうと、おまえロッククライミング部に入ったんだっ
て?」
アレックス「ああ。」
友人「知ってるのか?あの部は、学校一キツイって言われて
るのを・・・。」
アレックス「(笑って。)知ってるよ。」
友人「じゃあ、何で・・・!」
アレックス「俺は何か、今しか出来ないことで・・・今だから出来
ることで、自分を試してみたいんだ・・・。」
友人「・・・へぇ・・・。俺には到底、真似出来ないな・・・。柄にも
なく、医大なんて入ってしまって、付いて行くのが精一杯
・・・。おまえみたいに、趣味のことにまで頑張ろうなんて
、とてもとても・・・。ま、応援くらいはしてやるよ。」
アレックス「サンキュ!」
2人、笑い合いながら下手方へ、歩いて行き
かけると、下手より2人の娘(一人はエンゼル。)
、楽しそうに話しながら登場。
エンゼル、友人、お互いを認めて。
エンゼル「あら・・・。」
友人「よぉ・・・。」
エンゼル「(アレックスに目を遣って、見詰める。)」
娘「行きましょう、エンゼル。授業が始まるわ。」
エンゼル「ええ・・・。」
友人「じゃあな!」
アレックスとエンゼル、其々擦れ違い様、
振り返ってお互いを見詰める。
が、エンゼル、娘と上手へ去る。
アレックス、その方を暫く呆然と見ている。
友人「(呆っとしているアレックスに気付いて。)如何した?」
アレックス「(ハッとして。)ん・・・?いや・・・、彼女・・・知ってる
のか?」
友人「知ってるも何も、俺の妹さ。(アレックスの肩を叩く。)」
アレックス「え・・・?」
友人「何、驚いたような顔してるんだよ。俺だって兄妹くらい
いるさ。」
アレックス「だけど、おまえに妹がいたとはね・・・。」
友人「(笑って。)別に隠してた訳じゃないよ。生まれてからずっ
と、フランスの祖母の所で暮らしていたんだ。」
アレックス「フランス・・・」
友人「ああ・・・。少し体が弱くてね。向こうは空気がいいだろ?
今度、紹介してやるよ。」
アレックス「ああ・・・。」
友人、下手へ去る。
アレックス、立ち止まったまま、再び振り返る。
アレックスの声「必ず・・・また会おう・・・。」
音楽盛り上がる。
――――― 幕 ―――――
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2012年9月10日月曜日
“未来への扉” ―全9場― 5
――――― 第 6 場 ―――――
俄に嵐がやってくる様子。風雨の吹き荒れる
音が、段々と大きくなり、船が不気味に軋む。
フェード・インする。と、船室。
(中央に一つの小さなタンス。)
中央に、手を組み不安気に佇むエンゼル。
側にヘンリー立つ。
ヘンリー「雨風が酷くなってきましたね・・・。」
エンゼル「・・・ええ・・・」
ヘンリー「(微笑んで。)そんな顔をしなくても大丈夫ですよ。この
船は、そこら辺のボートやヨットなんかとは違いますか
らね。ちょっとやそっとで沈んだりしませんよ。それより
も僕は、明日の豪華な船上結婚式に、響きゃあしない
かと、その方が心配ですよ。我々の門出は、皆に盛大
に祝ってもらいたいですからね。(笑う。)」
エンゼル「・・・折角来て下さった、お客様達は大丈夫かしら・・・。
」
ヘンリー「屹度、心配には及ばないでしょう。今夜は皆、嵐のこと
など気にも止めないで、楽しんでいるでしょうから。この
船には、バーにプールに映画館、ビリヤード・・・ありと
あらゆる娯楽施設が整っていると言うのに、自分の部
屋へ閉じ籠って、嵐に脅えているのは馬鹿馬鹿しいで
しよう?」
エンゼル「・・・どうぞ私のことは構いませんから、皆さんと一緒に
楽しんでいらして下さい・・・。」
ヘンリー「僕が風雨に脅えている、可愛い花嫁を独りぼっちにし
て行くと思いますか?それは僕としては、些か心外だ
な。僕は紳士ですからね。」
エンゼル「・・・あなたは・・・私のことを、如何思っていらっしゃる
のですか・・・?」
ヘンリー「(少し驚いたように、エンゼルを見る。)つまらない・・・
質問ですね・・・。」
エンゼル「・・・愛して下さっているのですか・・・?」
ヘンリー「あなたは如何なのです?」
エンゼル「・・・私は・・・」
ヘンリー「所詮、結婚とはそう言うものです。愛しているとかいな
いとか・・・そう言うのは疲れるだけでしょう?もっと割
り切りましょう。私達のこれからの生活に、何の苦労も
ないのですから・・・。何か楽しみを見つけることです。
趣味とか・・・時には恋をするのも悪くない・・・。」
エンゼル「え・・・?」
ヘンリー「秩序ある大人の行動を守って頂けるのなら、好きな
男性がいたって構いやしません。心は其々自由なの
ですから。」
エンゼル「・・・あなたにも・・・そう言った、お相手がいらっしゃる
のですか・・・?」
ヘンリー「今のところはいません。しかし、僕も一人の健康な男
性ですからね。」
エンゼル「(何か落胆した面持ちで、ヘンリーを見詰める。)」
ヘンリー「(エンゼルを見て。)あの時、僕はハッキリと言った筈
です。結婚イコールビジネスだと。よく、そのことを考
えたうえで、あなたは今ここに、こうして明日に結婚を
控えた幸せな女性として、来ているのだと思っていま
したが・・・。」
その時、室外が俄に騒がしく、人々が何かを
叫んでいるのが聞こえて来る。
ヘンリー「(下手方を見て。)何か騒がしいな・・・。」
外の声「(遠くに。)沈没するぞーっ!!」
ヘンリー「(その声に顔色を変え。)・・・何かただならぬ様子です
ね・・・。少し見て来ます。あなたはここにいて下さい。
いいですね?」
ヘンリー、下手奥へ入る。
エンゼル「(ヘンリーが出て行くのを見ている。出て行くのを見計
らって。)・・・私が考えてるより・・・あの人はもしかした
ら・・・いい人なのかも知れない・・・。でも、私にはそれ
が分からないのです・・・。“恋をしろ”と平気で言って退
ける、あの人の心が分からない・・・。このまま自分を押
さえ込んで、両親の引いてくれたレールの上を、歩き続
けて行くと、私は駄目になってしまう・・・。それは丸で、
生きるしかばね同然の、私にとっては苦痛以外の、何
ものでもないのです・・・。それならばいっそ・・・この手
で、この忌まわしい自分の呪われた運命に、ピリオドを
打つのが、せめて私に残された、唯一の自分の意志に
よる決定・・・。屹度、こんな考えは・・・人から見れば、
ただの私の我が儘・・・。何一つ、自分の意志で決めた
ことのなかった私は・・・自分の人生の・・・最後位・・・
自分で決めたかった・・・。(両手を胸の前で組み、膝を
付き天を仰ぐように。)神様・・・愚かな私をお許し下さい
・・・。神様が、折角お与え下さった命を、自らの手で断
ち切ってしまうことを・・・。けれど、これだけは分かって
欲しいのです。決して神様のお考えに背き、永遠に御
身から遠く離れて行こうとしているのではなく、神様の
足元へ跪く為に・・・お傍へ参り、かしずく為に・・・私は
自分から行くのです・・・。」
エンゼル立ち上がり、台の引き出しから小さな
包みを出し、それに包んであったものを口に含む。
再び引き出しから、短刀を取り出す。
エンゼル「・・・さようなら・・・お父様・・・お母様・・・。さようなら
・・・私が・・・愛したもの達・・・。永遠にもう、私はあな
た達にこの世では会えません・・・。けれど・・・悲しま
ない・・・で・・・。私は・・・今が・・・今・・・この時が・・・
一番・・・幸せなのだから・・・」
エンゼル、短刀を手首に押し当て、切り付けた後
短刀を落とし、ゆっくり倒れる。
エンゼルの声「サヨウナラ・・・」
風雨が、益々激しく吹き荒れるよう。
一時置いて、下手奥よりヘンリー、洋服に
掛った雨雫を払うように登場。
ヘンリー「いやぁ、参りましたよ、外はもの凄い嵐で・・・。何やら
小さなヨットが遭難したようですよ。こちらの船に助け
上げる間もなく、乗員諸共、海の底へ・・・(倒れている
エンゼルを認める。)・・・フランシス、如何しました?
気分でも・・・(言いかけて、ただならぬエンゼルの様子
に、慌てて駆け寄り揺する。)フランシス!?フランシス
!!(抱き起こし、エンゼルの頬を叩く。)フランシス、
一体・・・!?(手首の傷に気付いて、掴み見る。)・・・
これは・・・!!(下に落ちていた短刀を拾い見詰める。
)何故あなたは・・・自分の命を・・・!!」
音楽盛り上がって、紗幕閉まる。
――――― 第 7 場 ―――――
下手より傷心のクリスティーン、その肩を抱く
ようにジョーイ登場。中央へ。
クリスティーン「・・・私のせいだわ・・・。私が彼を行かせたから
・・・。(涙を堪えるように。)」
ジョーイ「馬鹿なことを言うんじゃないよ。」
クリスティーン「でも、ジョーイ!!私がもっと、彼に行かないで
と頼んでたら・・・!!」
ジョーイ「(クリスティーンの肩に手を掛けて。)クリスティーン、
あいつは君にいくら止められたって、行ってたよ。それ
に、それなら俺だって同じじゃないか・・・。あいつの
出発を知ってて、見す見す黙って行かせたんだから
・・・。」
クリスティーン「でも!!」
ジョーイ「いくら言っても・・・もう遅いんだ・・・。」
クリスティーン「じゃあ、ジョーイはこれでよかったと言えるの?
これが私達がすべき、ベストの道だったと言い
切れるの!?」
ジョーイ「クリスティーン・・・いくら君が、ここで悔やんだところで、
あいつが生きて戻って来る訳じゃ・・・(思わず言葉に
詰まる。)俺っだって口惜しい・・・!!あいつを黙って
死なせた自分が許せない・・・!!」
クリスティーン「ジョーイ・・・」
ジョーイ「だけど・・・あの嵐じゃ、どうしょうもなかったんだ・・・。
立ちはだかる自然の猛威の前に・・・あいつはあれ程
憧れ続けた、広大な海に眠ることが出来たんだ・・・。」
クリスティーン「・・・ごめんなさい・・・。あなたを責めたりして・・・。
アレックスが亡くなって辛いのは、あなたも同じな
のに・・・。」
ジョーイ「・・・いいんだ・・・。君に問われたことは、尤もなことな
んだから・・・。」
クリスティーン「・・・何故・・・あの時、別れたりしたのかしら・・・。
アレックスがそう望んだとしても、私は如何して
すんなり受け入れたりしたのかしら・・・。本当は、
彼が待っていてくれと言うなら、何ヶ月だって・・・
何年だって待つつもりだったのに・・・。彼が海へ
出てからも・・・つまらない意地を張って・・・こんな
ことになるなら・・・こんなことに・・・(思わず声を
上げて泣く。)」
ジョーイ、優しくクリスティーンを抱き寄せる。
ジョーイ「・・・俺達は、あいつが残して行った思いを、大切に引
き継いでいかなければならない・・・。あいつの心を
・・・。」
音楽でフェード・アウト。(紗幕開く。)
――――― 第 8 場 ―――――
フェード・インする。と、島。
風が静かに戦ぎ、カモメは遠くに飛び交い、
波が押し寄せる。
中央、ズボンのポケットに両手を突っ込んで、
後ろを向いて佇むアレックス。エンゼル、その
回りをチョロチョロしている。
ふと、アレックスを気に止め近寄る。
エンゼル「如何したの?」
アレックス「(振り返って。)ずっと考えてた・・・。これから俺が
すべきことを・・・。」
エンゼル「・・・すべきこと・・・?」
アレックス「ああ・・・。」
エンゼル「決まってるじゃない!」
アレックス「え?」
エンゼル「歩くことよ!」
アレックス「歩く・・・って・・・」
エンゼル、明るく歌う。
“何かが変わりそうな気がする
自分が目指したことへ
ほんの少しだけども
踏み出した今・・・
過去に過ぎ去ったことは
ただ遠い思い出
振り返ることをしないで
このまま進もう
(アレックスの手を取る。)
共に残した足跡は
良しも悪しも確かな道
目の前に広がる真っ直ぐの道も
確かな自分の道
だけど見ているだけじゃ何も始まらない
偶には振り返るのもいいけれど
今は真っ直ぐ突き進もう”
アレックス「(溜め息を吐いて、微笑む。)そんな風に前向きに
考えられるおまえが、如何して自分で自分の命を
終わらせようとしたんだ?もっと他に、解決する方法
なんていくらでもあっただろう・・・?」
エンゼル「あなたが言うように・・・今なら立ち向かって行けたか
も知れない・・・。」
エンゼル、思いを馳せるように、遠くを見遣る。
エンゼル「あの頃の私は・・・自分一人が悲劇のヒロインだった
のね・・・。今考えると、可笑しくなっちゃう・・・。ヘンリ
ーに結婚してからも“好きな相手を見つけろ”なんて言
われて・・・。小さい頃から思い描いてきた、私の理想
の結婚像が、見事に砕け散ったの・・・。結婚イコール
ビジネスだなんて・・・。」
アレックス「・・・エンゼル・・・そうだったのか・・・。軽々しく死を
選ぼうとしたことは、許されることじゃないが・・・何が
あったかを聞きもしないで・・・傷のことに触れたのは
軽率だったな・・・。ご免・・・。」
エンゼル「(首を振り、微笑む。)もう気にしてないわ。あなたに
聞いてもらったお陰で、私の心もスッキリしたし・・・。
あなたに元気づけられたのは、これで2回目よ・・・。
ありがとう・・・。」
アレックス「・・・2回・・・?」
――――― “未来への扉”6へつづく ―――――
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2012年9月9日日曜日
“未来への扉” ―全9場― 4
トレイシー「(2人に気付いて。)いらっしゃいませ。(ジョーイに
向かって。)飲んで行く?それとも帰る?」
ジョーイ「・・・今日は真っ直ぐ帰ることにするよ・・・。なんだか、
アレックスの顔を、まともに見ることが出来ないような
気がするからね・・・。」
トレイシー「そう・・・。じゃあね。(エンゼル達の方へ行こうとする
。)」
ジョーイ「トレイシー!!」
トレイシー「(振り返る。)」
ジョーイ「あの・・・!!(何か言い掛けて、言葉に詰まるように。
)」
トレイシー「もう・・・何も言わなくていいから・・・。(微笑む。)
さよなら・・・。」
ジョーイ「・・・ありがとう・・・」
ジョーイ、トレイシーから視線を捥ぎ取るように、
だがその顔付きは、何か晴々と下手へ去る。
ヘンリー「(椅子を引いてエンゼルに勧め、自分も座る。近寄っ
て来たトレイシーに。)僕には水割り・・・それから、
この人には何か、口当たりのいい軽いカクテルを・・・。
」
トレイシー「はい。」
トレイシー、下手奥へ去る。
ヘンリー「フランシス、どうです?中々感じのいい店でしょう。僕
も余り、この裏通り界隈には、足を運んだことはなかっ
たのですが、この間、偶々部下に誘われましてね。
余り気乗りはしないなぁ・・・と思いながらも、断る理由
もなく、付き合ったんですよ。ま、お陰でこんな場所の
割には、素敵な店を知ることが出来て、よかったので
しょうけどね。(笑う。)いやぁ、それにしても今日の
映画は、中々ロマンチックでしたね。あんな映画は、
あなたのような美しい女性と、2人で見に行ってこそ
堪能できると言うものです。(下を向いたままのエンゼ
ルに気付いて。)どうしました?気分でも優れません
か?」
エンゼル「(下を向いたまま。)・・・いいえ・・・。」
ヘンリー「そうですか?」
エンゼル「・・・あの・・・(ヘンリーを見て。)私、もうそろそろ帰ら
なければ、父や母が・・・」
ヘンリー「ああ、それなら大丈夫ですよ。今日はお父様、お母
様にはちゃんとお許しを頂いてありますから。映画を
見た後、一流ホテルでディナーを取り、その後は美味
しいお酒を頂いて・・・さぁて、その後は・・・予約して
ある夜景の綺麗なホテルで・・・。」
エンゼル「え・・・?(思わず驚いた表情で、ヘンリーを見詰める
。)」
ヘンリー「(笑って。)冗談ですよ。お許しを頂いているのは、
ここまでです。お酒を1、2杯付き合ってもらった後は、
ちゃんと家まで送りますから、そんな心配そうな顔は
なさらなくていいですよ。僕はね、フランシス、父や母
にとても感謝しているのです。あなたが生まれた時、
直ぐにあなたが僕の者になるように、お膳立てをして
おいてくれたことに・・・。あなたは如何ですか?」
エンゼル「(下を向いて。)・・・私は・・・」
ヘンリー「(笑って。)恥ずかしがらなくてもいいですよ。」
その時トレイシー、盆の上にグラスを2つ乗せて
下手より登場。
トレイシー「お待たせしました。(其々の前へ、グラスを置く。)」
ヘンリー「このカクテルは?」
トレイシー「この店のバーテンダーが考えたもので、先日、賞
を取ったカクテルなんですよ。お酒が余り強くない
お嬢さんにでも、飲みやすい甘口になっています。
名前は“エンゼル”・・・。どうぞ、ごゆっくり・・・。
(一礼して下手へ去る。)」
エンゼル「・・・エンゼル・・・(グラスを手に取る。)・・・キラキラ
光って、綺麗な色・・・。(回りを見回して、下手方を
一時見詰める。)」
ヘンリー「何か?」
エンゼル「・・・え?いいえ・・・。(グラスを目線まで高く掲げて、
向きを変えてみる。)あ・・・色が変わって見えるのね
・・・見る方向によって。ライトの加減があるのかしら
・・・?綺麗ね・・・。(嬉しそうに微笑んで、ヘンリーを
見る。)」
ヘンリー「やっと笑顔を見せてくれましたね。」
エンゼル「え・・・?」
ヘンリー「(片手でグラスを弄ぶように。)今日のあなたは・・・
いや、今日に限った訳じゃない。僕と2人でいる時の
あなたは、丸で笑顔を忘れてしまっているようだ・・・。
あなたの気持ちが分からないでもない・・・。ついこの
間まで、顔も全く知らなかった赤の他人が、数日後に
はもう夫と呼ばれるのですからね。だけど、あなたも
大財閥の御令嬢なら、そろそろ覚悟を決めて下さい。
何も僕を、今直ぐ愛せと脅している訳ではありません。
少しずつ自分の置かれている状況を、受け入れ歩み
寄る努力をしなければ、何も変わらないと思うのです。
僕だって最初は、戸惑いも躊躇いもありましたよ。
だけど、初めてあなたと会った時から、こんな美しい
人と一緒に暮らせるのは、幸せだと思うことに決めた
のです。ようは心の・・・気持ちの持ち方次第で、これ
からのあなたの人生、良くも悪くもなると言うことです。
我が家もあなたの家とは、何れ劣らぬ名門旧家だ。
お金には一生苦労することはないでしょう。ただそれ
だけあれば、他には何もいらないと言うものでもない
が・・・。さ・・・もう今日は帰るとしましょう。そして、今日
僕の言ったことを、一度ゆっくり考えてみて下さい。
これからのあなたの人生にとって、何が一番得策かを
・・・。そして何をすべきかを・・・。(グラスの酒を一気に
飲み干し立ち上がる。)結婚とはビジネスですよ。」
エンゼル「(ゆっくり立ち上がる。)・・・ビジネス・・・」
エンゼル、スポットに浮かび上がり
悲し気に歌う。
“夢に描いた輝く未来は
本当にただの夢なのかも・・・
ただの私の心の空想・・・
御伽の国の世界では
誰もが主役であるように
私の心の世界では
小さい頃から見た夢が
そのまま世界になるように
何時までもこのまま夢の世界のまま・・・
幸せな気持ちに包まれて
ただ眠りたい・・・
たとえ夢が夢で終わっても
夢で終わるものならば・・・
それならこのまま夢の世界のまま・・・
ただ何時までも何時までも
眠りたい・・・”
遠くを見遣るエンゼルで、フェード・アウト。
(音楽残して。)
――――― 第 5 場 ―――――
紗幕前。
アレックス(バックポーズ)から、フェード・イン。
アレックス、両手をズボンのポケットへ突っ込み、
俯き加減にゆっくり振り返り、歌う。
“自分の考えしてきたことが
他人からみれば
たとえば馬鹿げたことかも知れない・・・
だとすれば そこで他人を巻き込むことは
決してしてはならないこと・・・
今まで何の躊躇いも・・・
迷いも持たずにただ真っ直ぐに
自分の進むべき道と
信じて歩いて来たけれど
屹度それは自分だけが
歩くべき道で・・・
誰かがここにいて欲しいと願うことは
決してしてはならないこと・・・
たとえ今そのことが
相手を傷付ける結果となっても
未来で過去を振り返った時に
一番最良の道だったと
納得できるものだから・・・”
そこへ上手より、クリスティーン悲し気に登場。
アレックスを認め、近寄る。
クリスティーン「・・・アレックス・・・」
アレックス「(クリスティーンを認める。)クリスティーン・・・」
クリスティーン「・・・本当に行ってしまうの・・・?」
アレックス「・・・ご免・・・」
クリスティーン「(涙声で。)・・行かないで・・・」
アレックス「ご免、クリスティーン・・・。」
クリスティーン「もう待てない・・・。もう限界なの・・・。何時も何時
も、あなたが海に出て行ってから、戻るまでただ
不安で・・・心配で・・・この気持ちを如何していい
か分からないの・・・。」
アレックス「・・・もう・・・待たなくていいから・・・。」
クリスティーン「・・・え・・・?」
アレックス「もう・・・俺の為に、君を縛り付けておくことは出来な
い・・・。」
クリスティーン「そんな・・・勝手よ・・・。」
アレックス「・・・俺の我が儘だ・・・。何と言われたって仕方ない
・・・。だけど俺は、ここで夢を捨てて生きて行くことは
出来ないんだ・・・。今まで・・・何度も危険な目に遭い
ながら・・・それでも一つずつ達成させて来た・・・。そ
うやって、過ごして来たもの全てを、今ここで全部捨
ててしまうことは出来ないんだ・・・。」
クリスティーン「私が・・・言っても・・・?」
アレックス「(躊躇うように、ゆっくりと。)・・・君でなくても・・・誰に
言われたって俺は・・・」
クリスティーン「もう・・・私のこと愛していないの・・・?」
アレックス「そうじゃないんだ・・・。」
クリスティーン「だったら・・・何故・・・?」
アレックス「たとえ今・・・君の言う通り、止めたとしても、俺は
屹度再び海へ行く・・・。屹度生きている限り、俺の
夢に終わりはないんだ・・・。だったら・・・もう・・・」
クリスティーン「・・・別れるって言うのね・・・(下を向く。)」
アレックス「・・・すまない・・・」
クリスティーン「・・・今までの私は・・・一体何だったの・・・?
今度こそは・・・もうずっと一緒にいれる・・・そう
信じながら、何時も何時も待ってた私って一体
・・・何だったの・・・?」
アレックス「・・・今までありがとう・・・。」
クリスティーン「・・・そんな言葉をあなたから聞きたかったんじゃ
ないわ!!さよなら!!」
クリスティーン、下手へ走り去る。と、同時に
上手よりジョーイ登場。
アレックス「・・・クリスティーン・・・!!待って・・・!」
ジョーイ「・・・今更呼び止めて、如何しようって言うんだ・・・。今
更彼女に、何を言うつもりなんだ・・・。」
アレックス「(振り返ってジョーイを認める。)・・・ジョーイ・・・」
ジョーイ「(アレックスに近寄り見据える。)・・・今更ながら俺は、
自分の浅はかな行いを悔いるよ・・・。何でおまえと、
クリスティーンを引き合わせたりしたのか・・・ってな・・・
!!(アレックスの頬を、思い切り殴る。)」
アレックス、よろめいて膝を着く。
アレックス「(フッと笑って立ち上がる。)・・・おまえに殴られて
スッとしたよ・・・。サンキュ・・・。じゃ・・・元気でな
・・・。」
アレックス、片手を上げて、上手方へ歩いて行く。
ジョーイ「馬鹿野郎!!」
アレックス「ああ・・・。(歩きながら。)」
ジョーイ「死んじまえ!!」
アレックス「ああ・・・。」
ジョーイ「畜生!!何時立つんだ!!」
アレックス「・・・今夜さ・・・」
ジョーイ「アレックス!!」
アレックス「(振り返らずに立ち止まる。)」
ジョーイ「・・・殴って・・・悪かった・・・。」
アレックス「(背を向けたまま笑って。)何、謝ってるんだよ、
ばーか・・・。クリスティーンのこと、幸せにしてやっ
てくれよ・・・。」
アレックス、上手へ去る。
ジョーイ「・・・アレックス・・・馬鹿野郎・・・馬鹿野郎!!(叫ぶ。
)」
音楽でフェード・アウト。(紗幕開く。)
――――― “未来への扉”5へつづく・・・―――――
― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪
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http://blog.goo.ne.jp/ritorupain2005
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向かって。)飲んで行く?それとも帰る?」
ジョーイ「・・・今日は真っ直ぐ帰ることにするよ・・・。なんだか、
アレックスの顔を、まともに見ることが出来ないような
気がするからね・・・。」
トレイシー「そう・・・。じゃあね。(エンゼル達の方へ行こうとする
。)」
ジョーイ「トレイシー!!」
トレイシー「(振り返る。)」
ジョーイ「あの・・・!!(何か言い掛けて、言葉に詰まるように。
)」
トレイシー「もう・・・何も言わなくていいから・・・。(微笑む。)
さよなら・・・。」
ジョーイ「・・・ありがとう・・・」
ジョーイ、トレイシーから視線を捥ぎ取るように、
だがその顔付きは、何か晴々と下手へ去る。
ヘンリー「(椅子を引いてエンゼルに勧め、自分も座る。近寄っ
て来たトレイシーに。)僕には水割り・・・それから、
この人には何か、口当たりのいい軽いカクテルを・・・。
」
トレイシー「はい。」
トレイシー、下手奥へ去る。
ヘンリー「フランシス、どうです?中々感じのいい店でしょう。僕
も余り、この裏通り界隈には、足を運んだことはなかっ
たのですが、この間、偶々部下に誘われましてね。
余り気乗りはしないなぁ・・・と思いながらも、断る理由
もなく、付き合ったんですよ。ま、お陰でこんな場所の
割には、素敵な店を知ることが出来て、よかったので
しょうけどね。(笑う。)いやぁ、それにしても今日の
映画は、中々ロマンチックでしたね。あんな映画は、
あなたのような美しい女性と、2人で見に行ってこそ
堪能できると言うものです。(下を向いたままのエンゼ
ルに気付いて。)どうしました?気分でも優れません
か?」
エンゼル「(下を向いたまま。)・・・いいえ・・・。」
ヘンリー「そうですか?」
エンゼル「・・・あの・・・(ヘンリーを見て。)私、もうそろそろ帰ら
なければ、父や母が・・・」
ヘンリー「ああ、それなら大丈夫ですよ。今日はお父様、お母
様にはちゃんとお許しを頂いてありますから。映画を
見た後、一流ホテルでディナーを取り、その後は美味
しいお酒を頂いて・・・さぁて、その後は・・・予約して
ある夜景の綺麗なホテルで・・・。」
エンゼル「え・・・?(思わず驚いた表情で、ヘンリーを見詰める
。)」
ヘンリー「(笑って。)冗談ですよ。お許しを頂いているのは、
ここまでです。お酒を1、2杯付き合ってもらった後は、
ちゃんと家まで送りますから、そんな心配そうな顔は
なさらなくていいですよ。僕はね、フランシス、父や母
にとても感謝しているのです。あなたが生まれた時、
直ぐにあなたが僕の者になるように、お膳立てをして
おいてくれたことに・・・。あなたは如何ですか?」
エンゼル「(下を向いて。)・・・私は・・・」
ヘンリー「(笑って。)恥ずかしがらなくてもいいですよ。」
その時トレイシー、盆の上にグラスを2つ乗せて
下手より登場。
トレイシー「お待たせしました。(其々の前へ、グラスを置く。)」
ヘンリー「このカクテルは?」
トレイシー「この店のバーテンダーが考えたもので、先日、賞
を取ったカクテルなんですよ。お酒が余り強くない
お嬢さんにでも、飲みやすい甘口になっています。
名前は“エンゼル”・・・。どうぞ、ごゆっくり・・・。
(一礼して下手へ去る。)」
エンゼル「・・・エンゼル・・・(グラスを手に取る。)・・・キラキラ
光って、綺麗な色・・・。(回りを見回して、下手方を
一時見詰める。)」
ヘンリー「何か?」
エンゼル「・・・え?いいえ・・・。(グラスを目線まで高く掲げて、
向きを変えてみる。)あ・・・色が変わって見えるのね
・・・見る方向によって。ライトの加減があるのかしら
・・・?綺麗ね・・・。(嬉しそうに微笑んで、ヘンリーを
見る。)」
ヘンリー「やっと笑顔を見せてくれましたね。」
エンゼル「え・・・?」
ヘンリー「(片手でグラスを弄ぶように。)今日のあなたは・・・
いや、今日に限った訳じゃない。僕と2人でいる時の
あなたは、丸で笑顔を忘れてしまっているようだ・・・。
あなたの気持ちが分からないでもない・・・。ついこの
間まで、顔も全く知らなかった赤の他人が、数日後に
はもう夫と呼ばれるのですからね。だけど、あなたも
大財閥の御令嬢なら、そろそろ覚悟を決めて下さい。
何も僕を、今直ぐ愛せと脅している訳ではありません。
少しずつ自分の置かれている状況を、受け入れ歩み
寄る努力をしなければ、何も変わらないと思うのです。
僕だって最初は、戸惑いも躊躇いもありましたよ。
だけど、初めてあなたと会った時から、こんな美しい
人と一緒に暮らせるのは、幸せだと思うことに決めた
のです。ようは心の・・・気持ちの持ち方次第で、これ
からのあなたの人生、良くも悪くもなると言うことです。
我が家もあなたの家とは、何れ劣らぬ名門旧家だ。
お金には一生苦労することはないでしょう。ただそれ
だけあれば、他には何もいらないと言うものでもない
が・・・。さ・・・もう今日は帰るとしましょう。そして、今日
僕の言ったことを、一度ゆっくり考えてみて下さい。
これからのあなたの人生にとって、何が一番得策かを
・・・。そして何をすべきかを・・・。(グラスの酒を一気に
飲み干し立ち上がる。)結婚とはビジネスですよ。」
エンゼル「(ゆっくり立ち上がる。)・・・ビジネス・・・」
エンゼル、スポットに浮かび上がり
悲し気に歌う。
“夢に描いた輝く未来は
本当にただの夢なのかも・・・
ただの私の心の空想・・・
御伽の国の世界では
誰もが主役であるように
私の心の世界では
小さい頃から見た夢が
そのまま世界になるように
何時までもこのまま夢の世界のまま・・・
幸せな気持ちに包まれて
ただ眠りたい・・・
たとえ夢が夢で終わっても
夢で終わるものならば・・・
それならこのまま夢の世界のまま・・・
ただ何時までも何時までも
眠りたい・・・”
遠くを見遣るエンゼルで、フェード・アウト。
(音楽残して。)
――――― 第 5 場 ―――――
紗幕前。
アレックス(バックポーズ)から、フェード・イン。
アレックス、両手をズボンのポケットへ突っ込み、
俯き加減にゆっくり振り返り、歌う。
“自分の考えしてきたことが
他人からみれば
たとえば馬鹿げたことかも知れない・・・
だとすれば そこで他人を巻き込むことは
決してしてはならないこと・・・
今まで何の躊躇いも・・・
迷いも持たずにただ真っ直ぐに
自分の進むべき道と
信じて歩いて来たけれど
屹度それは自分だけが
歩くべき道で・・・
誰かがここにいて欲しいと願うことは
決してしてはならないこと・・・
たとえ今そのことが
相手を傷付ける結果となっても
未来で過去を振り返った時に
一番最良の道だったと
納得できるものだから・・・”
そこへ上手より、クリスティーン悲し気に登場。
アレックスを認め、近寄る。
クリスティーン「・・・アレックス・・・」
アレックス「(クリスティーンを認める。)クリスティーン・・・」
クリスティーン「・・・本当に行ってしまうの・・・?」
アレックス「・・・ご免・・・」
クリスティーン「(涙声で。)・・行かないで・・・」
アレックス「ご免、クリスティーン・・・。」
クリスティーン「もう待てない・・・。もう限界なの・・・。何時も何時
も、あなたが海に出て行ってから、戻るまでただ
不安で・・・心配で・・・この気持ちを如何していい
か分からないの・・・。」
アレックス「・・・もう・・・待たなくていいから・・・。」
クリスティーン「・・・え・・・?」
アレックス「もう・・・俺の為に、君を縛り付けておくことは出来な
い・・・。」
クリスティーン「そんな・・・勝手よ・・・。」
アレックス「・・・俺の我が儘だ・・・。何と言われたって仕方ない
・・・。だけど俺は、ここで夢を捨てて生きて行くことは
出来ないんだ・・・。今まで・・・何度も危険な目に遭い
ながら・・・それでも一つずつ達成させて来た・・・。そ
うやって、過ごして来たもの全てを、今ここで全部捨
ててしまうことは出来ないんだ・・・。」
クリスティーン「私が・・・言っても・・・?」
アレックス「(躊躇うように、ゆっくりと。)・・・君でなくても・・・誰に
言われたって俺は・・・」
クリスティーン「もう・・・私のこと愛していないの・・・?」
アレックス「そうじゃないんだ・・・。」
クリスティーン「だったら・・・何故・・・?」
アレックス「たとえ今・・・君の言う通り、止めたとしても、俺は
屹度再び海へ行く・・・。屹度生きている限り、俺の
夢に終わりはないんだ・・・。だったら・・・もう・・・」
クリスティーン「・・・別れるって言うのね・・・(下を向く。)」
アレックス「・・・すまない・・・」
クリスティーン「・・・今までの私は・・・一体何だったの・・・?
今度こそは・・・もうずっと一緒にいれる・・・そう
信じながら、何時も何時も待ってた私って一体
・・・何だったの・・・?」
アレックス「・・・今までありがとう・・・。」
クリスティーン「・・・そんな言葉をあなたから聞きたかったんじゃ
ないわ!!さよなら!!」
クリスティーン、下手へ走り去る。と、同時に
上手よりジョーイ登場。
アレックス「・・・クリスティーン・・・!!待って・・・!」
ジョーイ「・・・今更呼び止めて、如何しようって言うんだ・・・。今
更彼女に、何を言うつもりなんだ・・・。」
アレックス「(振り返ってジョーイを認める。)・・・ジョーイ・・・」
ジョーイ「(アレックスに近寄り見据える。)・・・今更ながら俺は、
自分の浅はかな行いを悔いるよ・・・。何でおまえと、
クリスティーンを引き合わせたりしたのか・・・ってな・・・
!!(アレックスの頬を、思い切り殴る。)」
アレックス、よろめいて膝を着く。
アレックス「(フッと笑って立ち上がる。)・・・おまえに殴られて
スッとしたよ・・・。サンキュ・・・。じゃ・・・元気でな
・・・。」
アレックス、片手を上げて、上手方へ歩いて行く。
ジョーイ「馬鹿野郎!!」
アレックス「ああ・・・。(歩きながら。)」
ジョーイ「死んじまえ!!」
アレックス「ああ・・・。」
ジョーイ「畜生!!何時立つんだ!!」
アレックス「・・・今夜さ・・・」
ジョーイ「アレックス!!」
アレックス「(振り返らずに立ち止まる。)」
ジョーイ「・・・殴って・・・悪かった・・・。」
アレックス「(背を向けたまま笑って。)何、謝ってるんだよ、
ばーか・・・。クリスティーンのこと、幸せにしてやっ
てくれよ・・・。」
アレックス、上手へ去る。
ジョーイ「・・・アレックス・・・馬鹿野郎・・・馬鹿野郎!!(叫ぶ。
)」
音楽でフェード・アウト。(紗幕開く。)
――――― “未来への扉”5へつづく・・・―――――
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2012年9月8日土曜日
“未来への扉” ―全9場― 3
アレックス「おまえが言っても、聞くような親じゃないとすると、
赤の他人の俺なんかが言ったところで、聞く耳は
持たないだろう・・・。けど・・・そんな力でよければ、
幾等でも貸してやるぜ・・・。」
エンゼル「アレックス・・・」
アレックス「一緒に行ってやるよ。それで駄目なら、また考えれ
ばいい・・・。そうだろ?」
エンゼル「・・・本当に・・・一緒に・・・もし今・・・そこにいたら・・・
その時に私のことを知ってたら・・・本当に一緒に行っ
てくれた・・・?」
アレックス「ああ・・・。(微笑む。)」
エンゼル「・・・本当に・・・」
アレックス「帰ったら、一緒に行こう・・・!」
エンゼル「・・・ありがとう・・・」
アレックス「別に礼なんていらないよ・・・。俺自身・・・もう少し早
く・・・人の為を考えられる余裕が持てる人間になれ
てたら・・・あいつに悲しい思いをさせることもなかっ
たんだ・・・。それこそ俺の単なる我が儘だったんだ
・・・。」
エンゼル「・・・あいつ・・・?」
アレックス「・・・ああ・・・さっきも考えていた・・・。あいつが何時も
どんな気持ちで、俺の帰りを待っていたか・・・。何故、
もう少しあいつの心の内を、察してやれなかったんだ
ろう・・・って、後悔ばかりだ・・・。まだ未練があるとか
・・・そんなことじゃないんだ・・・。俺はあいつを幸せに
してやることができななったけど、あいつには心から
幸せになって欲しい・・・。本当に俺とは正反対の・・・
あいつは人のことを考え過ぎる奴だったよ・・・。次の
航海が決まったと言った時・・・あいつはもう待てない
と言ったんだ・・・。目に涙を一杯溜めて、俺の方を
一度も見ないまま・・・ただ、もう限界だと・・・だから
行かないでくれと言ったのに俺は・・・あいつより夢を
取ったんだ・・・。」
エンゼル「・・・愛していたから・・・突き放したんでしょう・・・?
彼女の幸せの為に・・・。」
アレックス「・・・そんな格好良いものじゃないさ・・・・」
エンゼル「いい人ね・・・。」
アレックス「(フッと笑って。)冗談だろ?(両手をポケットへ突っ
込み、ゆっくり後方へ。彼方を見詰める。)」
エンゼル振り返り、アレックスを暫く見詰める。
ゆっくり俯き加減で正面へ。瞳を閉じて両手を
胸で組む。
エンゼルの声「・・・私には分かる・・・。あなたの声が聞こえる
・・・。でも・・・ここへ来た直ぐに比べると・・・何か
・・・吹っ切れた・・・?(目を開けて、再び振り返る
。)」
アレックス「(振り返って。)ここは本当に、南の孤島なんだな・・・
。船一艘通らない・・・。(再び後方、海を見て。)この
広く青い海を見ていると・・・人が生き続けている意味
は、誰の道であろうと・・・何の嘘偽りのない、確かな
一つの真実の道なのだと、心から感じるよ・・・。たと
え・・・助けが来なくて、一生このままであっても・・・
これはまた一つの真実の道なのだと・・・。」
エンゼル「そうね・・・。私が選んで歩んで来た道も、決して否定
されるものではなかったかもね・・・。あの日々は・・・
戻らないのだけれど・・・。」
フェード・アウト。
エンゼルの声「過ぎ去ったあの日々は、決して・・・戻らない・・・」
――――― 第 4 場 ―――――
紗幕前。
音楽で、下手スポットにクリスティーン、
浮かび上がる。
歌いながら、ゆっくり中央へ。
“何故かしら 少しの不安が心を過ぎる
真冬の隙間風のように
あなたの思いが
冷たく頬を撫で
遥か彼方へ通り過ぎていく
あれは夢だったのかしら
それとも私の愚かな幻想・・・
あなたの心は丸で空に浮かぶ
あの白い雲のように
決して掴むことが出来ずに
少しずつ私から遠ざかっていく・・・
ほんの一瞬の瞬きで
あなたの心はもう形を変え
私に背を向け走り出す
何故かしら そんな不安が胸を掠める・・・”
クリスティーン瞳を伏せ、上手へ去る。
紗幕開く。
と、開店前のアレックスの働く店。
下手よりアレックス、ジョーイと話しながら登場。
ジョーイ「一体、何考えてるんだよ!一体、この間の航海から
どれだけここに留まってたって言うんだよ!!なのに
また行くなんて!!3ヵ月だぞ!?たった3ヶ月・・・。
なのに、もうクリスティーンをほったらかしにするなん
て・・・!!おまえにとって一体彼女は何なんだよ!!
おまえにとって、ヨットは彼女よりも大切だって言うの
かよ!!」
アレックス「俺は自分一人の手で、全世界の海を渡り歩くのが
夢なんだ・・・。」
ジョーイ「それにしたって・・・!!」
アレックス「そりゃ、彼女を何時も一人にして悪いと思ってる・・・
。何時も無線だけの会話は、俺だって正直辛いさ・・・
。だけど、俺は俺の夢を達成するまでは、屹度、誰
に何と言われたって、海へ出て行く・・・。そこが、今
の俺が生活するべき場所だからだ・・・。海が俺を受
け入れてくれる限り・・・。」
ジョーイ「馬鹿馬鹿しい・・・!じゃあ一生、結婚なんて望めない
じゃないか!?彼女が何時も、どんな気持ちでおまえ
を見送っているのか知っているのか!?何時もここに
取り残されて、再びおまえが戻ってくるその日まで、
彼女が何を拠り所として生活しているか、おまえは分
かってやれるのか!?何時も彼女が考え願い信じる
ことは、今度こそは最後の航海なんだと言うことだ!!
そんなおまえの戯れ言を、彼女は彼女なりの精一杯
の気持ちで受け止め、笑って見送っているんだ!!
なのに・・・!!」
アレックス「ジョーイ・・・確かに・・・戯れ言だと言われても仕方
ないだろう・・・。何年も親友をやってきたからって、
俺の夢に同調してくれとは言わない・・・。多分、おま
えと俺とは、求めるものが丸で違うものなんだ・・・。
おまえが暖かな包まれたものの中に、心安らぐ何か
を探し求めるのに対して、俺はその包まれたものの
外に、限りなく広がる未知の世界に、自分の可能性
を探し求めるんだ・・・。」
ジョーイ「分からないよ!!おまえの言いたいことが!!」 ※
アレックス「もし、俺の夢の為に、彼女が犠牲になるようなこと
があるとすれば・・・彼女と俺が、共に歩いていくと
言うことは、その時点でもう意味を持たなくなってし
まうんだ・・・。何故なら、俺が彼女の人生を、束縛す
ることなど、出来る筈もないのだから・・・。」
ジョーイ「じゃあ、おまえは彼女よりも夢を取るって言うのか・・・
?・・・何時も・・・おまえはそうだ・・・。何時も自分の
ことしか考えられないんだ・・・。おまえのことを思って
る人間のことなんてどうでもいいんだ・・・。そうなんだ
ろ!!」
アレックス「・・・そうかも知れない・・・。もう開店の時間だ・・・。
奥を手伝わなけりゃ・・・。じゃあ・・・。(下手へ去る。)
」
ジョーイ「アレックス!!(呆然と、アレックスの背中を見詰めて
いる。アレックスが去るのを見計らって。)・・・何でなん
だよ・・・何で・・・!?俺じゃ駄目なんだ・・・。おまえで
なけりゃ駄目なんだ・・・なのに・・・。(握り拳を握り、
下を向く。)」
そこへトレイシー、話しを聞いていたように、
上手よりゆっくり登場。
トレイシー「・・・矢っ張りね・・・」
ジョーイ「(トレイシーを認めて。)トレイシー・・・」
トレイシー「私があなたに“愛してる”と告白した時・・・あなたは
“ありがとう”と答えた・・・。その次に私が“付き合っ
てくれる?”と聞いた時、あなたはOKしてくれたけど、
暫く付き合っていることは内緒にしてくれるかな?
と言った・・・。別に深い意味はないんだけれど・・・っ
て、笑ってたわね・・・。矢っ張りクリスティーンのこと
・・・愛してたのね・・・。」
ジョーイ「トレイシー!!違う・・・」
トレイシー「(少し辛そうに。)・・・私はいいの・・・。少しの間だけ
でも、大好きなあなたとデートが出来たり・・・。アレ
ックスがこのお店で働くことになった時、私は“やった
!”と思ったのよ・・・。親友のアレックスが、この店に
いるんだもの、あなただってこれからは、ちょくちょく
顔を見せてくれるかも・・・って・・・。」
ジョーイ「トレイシー、違うんだ・・・!」
トレイシー「・・・もう否定しないで・・・。私が惨めになるだけじゃ
ない・・・。(無理に微笑む。)」
ジョーイ「ご免・・・。君に辛い思いをさせるつもりなんて、これっ
ぽっちもなかったんだ!!信じてくれ!!・・・君を本
当に・・・愛せると思ったんだ・・・。だから・・・自身を
持って、皆に君を愛しているから付き合うことにしたと
言えるようになるまで、時間が欲しかった・・・。その
ことで、君に余計な心配を掛けることになるなんて・・・
考えもしなかったんだ・・・。」
トレイシー「ううん・・・。(首を振る。)もう、いいの・・・。どちらに
しても・・・あなたの気持ちが、私に向くことはないっ
て、分かったから・・・。」
ジョーイ「・・・アレックスに、クリスティーンの気持ちを考えてや
れなんて・・・偉そうなことを言っておきながら・・・俺が
一番君の気持ちを分かっていなかったんだな・・・。
情けないよ・・・。」
トレイシー「人間って・・・誰だって自分が気に掛けていることに
、心がいくものよ・・・。それに、目の前に見えるもの
に、つい一生懸命になるの・・・。だから私は、あなた
の後ろにいたってこと・・・。けどアレックスは少し違
うと思うわ・・・。アレックス、あなたにあんな風に言わ
れて可哀相だった・・・。彼はあなたやクリスティーン
のことを、とてもよく考えているもの・・・。何故、彼が
住み込みなんてやって、この店に来たと思う?今ま
で住んでたアパートは、あなたとクリスティーンの
勤める会社から遠過ぎるって・・・。本当言ったら、
もっと割のいい仕事もあったみたいだけど・・・。この
店に決めたのは何故かしら・・・。」
ジョーイ「・・・俺と君のことを・・・?」
トレイシー「多分・・・ね・・・。それにひょっとしたら、アレックスの
ことだもの・・・あなたの本当の気持ち・・・知ってるか
もね・・・。」
ジョーイ「・・・まさか・・・」
トレイシー「この間の航海で、今また出発出来る程、お金なんて
あるのかしら・・・。私には“そろそろ海が恋しくなった
から・・・”なんて言ってたけど・・・。」
ジョーイ「だけど・・・!」
その時、上手よりエンゼル(フランシス)、婚約者
のヘンリーにエスコートされるように登場。
中央、テーブルの方へ。
――――― “未来への扉”4へつづく ―――――
※ ジョーイさんに同感・・・^^;
もう、随分前に書いた作品の為、何か違うことを
しながら(例えば音楽を聴きながら・・・とか(^^♪)
、こうやって載せる為に“文字”を追っていると、
長い文章などは特に、一体何を書いているのか、
自分でも訳が分からなくなってくるのです~(^_^;)
― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪
http://milky.geocities.jp/little_pine2012/index.html
http://blog.goo.ne.jp/ritorupain2005
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赤の他人の俺なんかが言ったところで、聞く耳は
持たないだろう・・・。けど・・・そんな力でよければ、
幾等でも貸してやるぜ・・・。」
エンゼル「アレックス・・・」
アレックス「一緒に行ってやるよ。それで駄目なら、また考えれ
ばいい・・・。そうだろ?」
エンゼル「・・・本当に・・・一緒に・・・もし今・・・そこにいたら・・・
その時に私のことを知ってたら・・・本当に一緒に行っ
てくれた・・・?」
アレックス「ああ・・・。(微笑む。)」
エンゼル「・・・本当に・・・」
アレックス「帰ったら、一緒に行こう・・・!」
エンゼル「・・・ありがとう・・・」
アレックス「別に礼なんていらないよ・・・。俺自身・・・もう少し早
く・・・人の為を考えられる余裕が持てる人間になれ
てたら・・・あいつに悲しい思いをさせることもなかっ
たんだ・・・。それこそ俺の単なる我が儘だったんだ
・・・。」
エンゼル「・・・あいつ・・・?」
アレックス「・・・ああ・・・さっきも考えていた・・・。あいつが何時も
どんな気持ちで、俺の帰りを待っていたか・・・。何故、
もう少しあいつの心の内を、察してやれなかったんだ
ろう・・・って、後悔ばかりだ・・・。まだ未練があるとか
・・・そんなことじゃないんだ・・・。俺はあいつを幸せに
してやることができななったけど、あいつには心から
幸せになって欲しい・・・。本当に俺とは正反対の・・・
あいつは人のことを考え過ぎる奴だったよ・・・。次の
航海が決まったと言った時・・・あいつはもう待てない
と言ったんだ・・・。目に涙を一杯溜めて、俺の方を
一度も見ないまま・・・ただ、もう限界だと・・・だから
行かないでくれと言ったのに俺は・・・あいつより夢を
取ったんだ・・・。」
エンゼル「・・・愛していたから・・・突き放したんでしょう・・・?
彼女の幸せの為に・・・。」
アレックス「・・・そんな格好良いものじゃないさ・・・・」
エンゼル「いい人ね・・・。」
アレックス「(フッと笑って。)冗談だろ?(両手をポケットへ突っ
込み、ゆっくり後方へ。彼方を見詰める。)」
エンゼル振り返り、アレックスを暫く見詰める。
ゆっくり俯き加減で正面へ。瞳を閉じて両手を
胸で組む。
エンゼルの声「・・・私には分かる・・・。あなたの声が聞こえる
・・・。でも・・・ここへ来た直ぐに比べると・・・何か
・・・吹っ切れた・・・?(目を開けて、再び振り返る
。)」
アレックス「(振り返って。)ここは本当に、南の孤島なんだな・・・
。船一艘通らない・・・。(再び後方、海を見て。)この
広く青い海を見ていると・・・人が生き続けている意味
は、誰の道であろうと・・・何の嘘偽りのない、確かな
一つの真実の道なのだと、心から感じるよ・・・。たと
え・・・助けが来なくて、一生このままであっても・・・
これはまた一つの真実の道なのだと・・・。」
エンゼル「そうね・・・。私が選んで歩んで来た道も、決して否定
されるものではなかったかもね・・・。あの日々は・・・
戻らないのだけれど・・・。」
フェード・アウト。
エンゼルの声「過ぎ去ったあの日々は、決して・・・戻らない・・・」
――――― 第 4 場 ―――――
紗幕前。
音楽で、下手スポットにクリスティーン、
浮かび上がる。
歌いながら、ゆっくり中央へ。
“何故かしら 少しの不安が心を過ぎる
真冬の隙間風のように
あなたの思いが
冷たく頬を撫で
遥か彼方へ通り過ぎていく
あれは夢だったのかしら
それとも私の愚かな幻想・・・
あなたの心は丸で空に浮かぶ
あの白い雲のように
決して掴むことが出来ずに
少しずつ私から遠ざかっていく・・・
ほんの一瞬の瞬きで
あなたの心はもう形を変え
私に背を向け走り出す
何故かしら そんな不安が胸を掠める・・・”
クリスティーン瞳を伏せ、上手へ去る。
紗幕開く。
と、開店前のアレックスの働く店。
下手よりアレックス、ジョーイと話しながら登場。
ジョーイ「一体、何考えてるんだよ!一体、この間の航海から
どれだけここに留まってたって言うんだよ!!なのに
また行くなんて!!3ヵ月だぞ!?たった3ヶ月・・・。
なのに、もうクリスティーンをほったらかしにするなん
て・・・!!おまえにとって一体彼女は何なんだよ!!
おまえにとって、ヨットは彼女よりも大切だって言うの
かよ!!」
アレックス「俺は自分一人の手で、全世界の海を渡り歩くのが
夢なんだ・・・。」
ジョーイ「それにしたって・・・!!」
アレックス「そりゃ、彼女を何時も一人にして悪いと思ってる・・・
。何時も無線だけの会話は、俺だって正直辛いさ・・・
。だけど、俺は俺の夢を達成するまでは、屹度、誰
に何と言われたって、海へ出て行く・・・。そこが、今
の俺が生活するべき場所だからだ・・・。海が俺を受
け入れてくれる限り・・・。」
ジョーイ「馬鹿馬鹿しい・・・!じゃあ一生、結婚なんて望めない
じゃないか!?彼女が何時も、どんな気持ちでおまえ
を見送っているのか知っているのか!?何時もここに
取り残されて、再びおまえが戻ってくるその日まで、
彼女が何を拠り所として生活しているか、おまえは分
かってやれるのか!?何時も彼女が考え願い信じる
ことは、今度こそは最後の航海なんだと言うことだ!!
そんなおまえの戯れ言を、彼女は彼女なりの精一杯
の気持ちで受け止め、笑って見送っているんだ!!
なのに・・・!!」
アレックス「ジョーイ・・・確かに・・・戯れ言だと言われても仕方
ないだろう・・・。何年も親友をやってきたからって、
俺の夢に同調してくれとは言わない・・・。多分、おま
えと俺とは、求めるものが丸で違うものなんだ・・・。
おまえが暖かな包まれたものの中に、心安らぐ何か
を探し求めるのに対して、俺はその包まれたものの
外に、限りなく広がる未知の世界に、自分の可能性
を探し求めるんだ・・・。」
ジョーイ「分からないよ!!おまえの言いたいことが!!」 ※
アレックス「もし、俺の夢の為に、彼女が犠牲になるようなこと
があるとすれば・・・彼女と俺が、共に歩いていくと
言うことは、その時点でもう意味を持たなくなってし
まうんだ・・・。何故なら、俺が彼女の人生を、束縛す
ることなど、出来る筈もないのだから・・・。」
ジョーイ「じゃあ、おまえは彼女よりも夢を取るって言うのか・・・
?・・・何時も・・・おまえはそうだ・・・。何時も自分の
ことしか考えられないんだ・・・。おまえのことを思って
る人間のことなんてどうでもいいんだ・・・。そうなんだ
ろ!!」
アレックス「・・・そうかも知れない・・・。もう開店の時間だ・・・。
奥を手伝わなけりゃ・・・。じゃあ・・・。(下手へ去る。)
」
ジョーイ「アレックス!!(呆然と、アレックスの背中を見詰めて
いる。アレックスが去るのを見計らって。)・・・何でなん
だよ・・・何で・・・!?俺じゃ駄目なんだ・・・。おまえで
なけりゃ駄目なんだ・・・なのに・・・。(握り拳を握り、
下を向く。)」
そこへトレイシー、話しを聞いていたように、
上手よりゆっくり登場。
トレイシー「・・・矢っ張りね・・・」
ジョーイ「(トレイシーを認めて。)トレイシー・・・」
トレイシー「私があなたに“愛してる”と告白した時・・・あなたは
“ありがとう”と答えた・・・。その次に私が“付き合っ
てくれる?”と聞いた時、あなたはOKしてくれたけど、
暫く付き合っていることは内緒にしてくれるかな?
と言った・・・。別に深い意味はないんだけれど・・・っ
て、笑ってたわね・・・。矢っ張りクリスティーンのこと
・・・愛してたのね・・・。」
ジョーイ「トレイシー!!違う・・・」
トレイシー「(少し辛そうに。)・・・私はいいの・・・。少しの間だけ
でも、大好きなあなたとデートが出来たり・・・。アレ
ックスがこのお店で働くことになった時、私は“やった
!”と思ったのよ・・・。親友のアレックスが、この店に
いるんだもの、あなただってこれからは、ちょくちょく
顔を見せてくれるかも・・・って・・・。」
ジョーイ「トレイシー、違うんだ・・・!」
トレイシー「・・・もう否定しないで・・・。私が惨めになるだけじゃ
ない・・・。(無理に微笑む。)」
ジョーイ「ご免・・・。君に辛い思いをさせるつもりなんて、これっ
ぽっちもなかったんだ!!信じてくれ!!・・・君を本
当に・・・愛せると思ったんだ・・・。だから・・・自身を
持って、皆に君を愛しているから付き合うことにしたと
言えるようになるまで、時間が欲しかった・・・。その
ことで、君に余計な心配を掛けることになるなんて・・・
考えもしなかったんだ・・・。」
トレイシー「ううん・・・。(首を振る。)もう、いいの・・・。どちらに
しても・・・あなたの気持ちが、私に向くことはないっ
て、分かったから・・・。」
ジョーイ「・・・アレックスに、クリスティーンの気持ちを考えてや
れなんて・・・偉そうなことを言っておきながら・・・俺が
一番君の気持ちを分かっていなかったんだな・・・。
情けないよ・・・。」
トレイシー「人間って・・・誰だって自分が気に掛けていることに
、心がいくものよ・・・。それに、目の前に見えるもの
に、つい一生懸命になるの・・・。だから私は、あなた
の後ろにいたってこと・・・。けどアレックスは少し違
うと思うわ・・・。アレックス、あなたにあんな風に言わ
れて可哀相だった・・・。彼はあなたやクリスティーン
のことを、とてもよく考えているもの・・・。何故、彼が
住み込みなんてやって、この店に来たと思う?今ま
で住んでたアパートは、あなたとクリスティーンの
勤める会社から遠過ぎるって・・・。本当言ったら、
もっと割のいい仕事もあったみたいだけど・・・。この
店に決めたのは何故かしら・・・。」
ジョーイ「・・・俺と君のことを・・・?」
トレイシー「多分・・・ね・・・。それにひょっとしたら、アレックスの
ことだもの・・・あなたの本当の気持ち・・・知ってるか
もね・・・。」
ジョーイ「・・・まさか・・・」
トレイシー「この間の航海で、今また出発出来る程、お金なんて
あるのかしら・・・。私には“そろそろ海が恋しくなった
から・・・”なんて言ってたけど・・・。」
ジョーイ「だけど・・・!」
その時、上手よりエンゼル(フランシス)、婚約者
のヘンリーにエスコートされるように登場。
中央、テーブルの方へ。
――――― “未来への扉”4へつづく ―――――
※ ジョーイさんに同感・・・^^;
もう、随分前に書いた作品の為、何か違うことを
しながら(例えば音楽を聴きながら・・・とか(^^♪)
、こうやって載せる為に“文字”を追っていると、
長い文章などは特に、一体何を書いているのか、
自分でも訳が分からなくなってくるのです~(^_^;)
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2012年9月7日金曜日
“バーナード” ―全16場― 3
一時置いてジェラルド、ダイアナ、スティーヴ
入って来る。
ジェラルド「おい、シェイラ!何、呆っと突っ立ってるんだ!」
シェイラ「あ・・・すみません・・・」
ジェラルド「片付けだ!片付け!」
シェイラ「・・・片付け?」
ジェラルド「全く、上の奴らのやることはよく分からん!今日の
会議は中止だとさ!一体、庶務課を何だと思ってや
がるんだ。」
スティーヴ「本当ですね、課長!」
4人、机の上の書類を掻き集める。
ダイアナ、そっとシェイラに近寄って。
ダイアナ「さっきまで、ここにバーナードがいたでしょう?」
シェイラ「え・・・?ええ・・・」
ダイアナ「何してたの?(意地悪気に。)」
シェイラ「・・・別に・・・」
ダイアナ「私には教えられないって言う訳・・・?」
シェイラ「・・・そんな・・・」
ジェラルド「どうした?」
ダイアナ「課長!シェイラったら今までここで、営業課のバーナ
ードさんと2人っきりだったんですよ!怪しいと思いま
せん?」
ジェラルド「冗談だろ?(笑う。)あの営業課のエリートハンサム
ボーイが、このシェイラと怪しい関係な訳あるかよ!」
スティーヴ「(笑いながら。)当たり前だろ!(急に真面目な顔付
きになって。)あ・・・まさか、おまえ・・・あのエリートボ
ーイのこと・・・そうなのか!?ダイアナ!!」
ダイアナ「煩いなぁ・・・そんなこと、どうでもいいじゃない!」
スティーヴ「どうでもいいはないだろ!!俺はおまえに惚れてる
んだから!!」
ダイアナ「あああ、鬱陶しいなぁ・・・」
スティーヴ「それはないぜ!!」
ジェラルド「(笑いながら。)冗談はそのくらいにしろ!さぁ、行く
ぞ!!」
ジェラルド、ダイアナ、スティーヴ出て行く。
シェイラ、うつむき加減に3人に続いて去る。
暗転。カーテン閉まる。
――――― 第 6 場 ―――――
カーテン前。
ジャック、ポケットに手を突っ込み、ブラブラ
歩いている。
後ろからウォルター、追い掛けるように
付いて出る。
ジャック「(歩を止めて、前を向いたまま。)俺に何か用か・・・」
ウォルター「あ・・・いや・・・」
ジャック「何故、俺に付きまとう・・・」
ウォルター「(ジャックに近寄りながら。)あの・・・ボールデン常
務とは・・・その・・・いつから・・・」
ジャック「(しらばっくれた風に。)・・・さぁ・・・(振り返って、ニヤリ
と笑う。)何故そんなことを聞く・・・」
ウォルター「・・・常務の命令で・・・今まで何人・・・手に・・・」
ジャック「命令じゃない。これはビジネスの上での取引だ。俺は
獲物が欲しかった・・・あいつは消して欲しい奴がいた
・・・」
ウォルター「その・・・取引で・・・何人も・・・」
ジャック「・・・さぁ・・・あいつとの付き合いは長いんでね・・・。何
人か・・・なんてのは忘れちまったなぁ・・・。おまえもあ
まり首を突っ込まない方が賢明だと思うがね・・・。俺の
獲物にはなりたくはないだろう・・・?(笑う。)」
ウォルター「(一瞬、体が強張る。)・・・それは・・・」
ジャック、大声で笑いながら下手へ去る。
入れ代わるように上手より、シンディ登場。
シンディ「(呆っとしているウォルターに近寄り。)ウォルターさん
?どうされたんですか?」
ウォルター「(振り返り。)あ・・・?シンディか・・・」
シンディ「顔色があまり良くありませんわ。」
ウォルター「・・・いや、何・・・たいしたことはないよ。シンディ、
君は常務の秘書として勤務して、長いのかい?」
シンディ「そうですわね・・・もうかなり長く経ちますわ。それが何
か・・・?」
ウォルター「その・・・君は、常務がどう言う人物であるかは、よく
知っているようだね・・・。」
シンディ「・・・ジャックさんのことですか・・・?」
ウォルター「・・・まぁ・・・そう言うことだ・・・」
シンディ「私は最初から、必要以上に常務のことを知ろうとは
しませんでしたから・・・。」
ウォルター「見て見ぬ振りをしてきたと言う訳か・・・」
シンディ「あまり知ろうとなさらない方が、ウォルターさんの為だ
と思いますけど・・・」
ウォルター「今・・・ジャックにも同じことを言われたよ。そうする
のがよさそうだな・・・」
暗転。
――――― 第 7 場 ――――― A
カーテン開く。
フェード・インする。と、夕暮れ時の公園。
木々がネオンに彩られ、仕事を終えた人々は、
ゆっくりと家路につく。
バーナード、下手よりゆっくり登場。続いて
シェイラ、うつ向き加減に登場。
擦れ違う女性達、バーナードに憧れの眼差し
を向けるが、後ろのシェイラに気付くと、
クスクス笑う。
バーナード、そんな彼女達の反応に、溜め息
を吐く。
そんな2人の後を、隠れるようにしてジャック
が付いている。
バーナード「・・・あの・・・さ・・・シェイラ、どうしてコンタクトレンズ
にしないの?」
シェイラ「・・・眼鏡・・・変?」
バーナード「あ・・・いや、似合ってるよ、すごく。だけど、コンタ
クトもいいんじゃないかなって・・・」
シェイラ「・・・でも・・・ずっと眼鏡しか・・・それに高いし・・・」
バーナード「あれ・・・?この間してなかったかい?」
シェイラ「いいえ・・・コンタクトは持ってないもの。」
バーナード「だけど、あの日・・・確かに君は眼鏡はかけていな
かった・・・」
シェイラ「(微笑んで。)ひょっとして・・・先週の金曜日のこと?」
バーナード「あ・・・ああ、そう金曜日!」
シェイラ「あの日は偶々、社内で転んだ時、眼鏡をなくしちゃっ
て・・・。あの後、何も見えなくてとても困ったのよ。(笑
う。)」
バーナード「それじゃあ・・・(少し考えるように。)」
シェイラ「え?」
バーナード「いや・・・(嬉しそうに。)俺がコンタクトをプレゼント
するよ!!」
シェイラ「・・・でも・・・」
バーナード「さぁ、買いに行こう!!(シェイラの手を取る。)」
シェイラ「あの・・・」
バーナード「眼鏡なしの君が見てみたいんだ!!」
シェイラ「・・・じゃあ・・・(眼鏡を外して、バックに仕舞う。)」
バーナード「・・・シェイラ・・・(思わず呆っとシェイラを見詰める。
)」
シェイラ「バーナード?」
バーナード「あ・・・矢っ張りそっちの方がいいよ!!・・・そうだ
・・・いいことを思いついた!!俺に任せてくれ!!
」
シェイラ「いいこと・・・?」
バーナード「服を買って美容院に行って・・・」
シェイラ「・・・え・・・?」
バーナード「お金のことなら心配は無用さ!!(独り言のように)
連れて歩くのに、恥ずかしい思いをしなくて済むん
なら、安いものさ・・・」
バーナード、先々進む。
シェイラ、ウロウロとしながら木にぶつかり
謝ったり、他の人の服を掴んで付いて行き
そうになったりする。
バーナード、呆れたようにシェイラを見て
近寄る。
バーナード「(ボソッと)先ず、コンタクトを買おう・・・(シェイラの
手を取って歩き出す。)」
バーナード、その時ジャックの存在に気付き
立ち止まる。
シェイラ「バーナード・・・?」
バーナード「シェイラ・・・眼鏡をかけていいから、先に行って駅
で待っててくれないか・・・?会社に大事な書類を
忘れてきたようだ・・・」
シェイラ「一緒に行きましょうか?」
バーナード「いや・・・走って行ってくるから、君は先に行ってて
くれ。」
シェイラ「分かったわ。(バックから眼鏡を出しかける。)」
バーナード「じゃあ、直ぐに追い付くから!(走って行きかける。
)」
シェイラ、下手へ去る。
シェイラの後を付いて行こうと進み出た
ジャックの前に、バーナード立ち塞がる。
2人残してカーテン閉まる。
――――― 第 7 場 ――――― B
カーテン前。
バーナード「おまえは誰だ・・・。何故、俺達に付きまとう・・・?」
ジャック「別にあなたに付きまとっている訳じゃあ、ありません
よ・・・バーナードさん・・・。(ニヤリと笑う。)」
バーナード「・・・どうして俺の名を・・・!?」
ジャック「私はシェイラ・ハミルトンを殺る為に、あなたの上司に
雇われた殺し屋です・・・。」
バーナード「・・・殺し屋!?」
ジャック「ただ今直ぐ殺す訳ではない・・・まだOKはもらってませ
んからね・・・。楽しみですよ・・・。あんなに美しい女性
を殺るのは、少々勿体無い気もしますが・・・」
バーナード「・・・美しいだと・・・?」
ジャック「隠さなくてもいいですよ。あなたも気付いた筈だ・・・。
彼女はあんな格好をしてはいるが・・・しかし彼女は自
分自身も気付いていない程の美人だと言うことを・・・
(笑う。)」
バーナード「それは・・・」
ジャック「精々、生きている間に自分好みの女性に作り替え、
楽しむんですね。それこそ男の究極の喜びと言うもの
です。私自身もその方がもっともっと楽しめる。今でも
腕がうずうずして困っているのですから・・・」
バーナード「・・・今直ぐ殺さないと言った・・・何故だ・・・」
ジャック「さぁ・・・私は言われた通りにやるだけですから・・・。
あなたの上司は私を丸で犬か何かと勘違いなさって
るんじゃないでしょうか・・・。今の私はご馳走を前に、
お預け状態ですから・・・。(大笑いする。)」
暗転。
――――― 第 8 場 ――――― A
カーテン開く。絵紗前。(庶務課のオフィス。)
其々始業前の時間を過ごしている。
そこへジュディ、走り登場。
ジュディ「ねぇ!!ねぇ!!見た!?見た!?(息を切らせて。
)」
フィービー「見たって何を?」
ジョー「(楽しそうに。)どうしたんだよ、一体。そんなに慌てて
・・・」
ハッティ「ジュディはいつもこうよ!」
ジュディ「それがさっき、更衣室で見たことのない美人がいたか
ら、“新入社員の方ですか?”って聞いたら、なんと!!
」
ビリー「なんと!?」
ジュディ「シェイラだったのよ!!」
一時置いて、一斉に大笑いになる。
ジュディ「本当なんだってば!!冗談なんかじゃないのよ!!」
ジョー「こりゃいいぜ、全く・・・。」
ビル「一体、何を見たのかと思えば・・・」
フィービー「そんな筈ないでしょ!!」
ハッティ「あのシェイラが、美人な訳ないじゃない!!」
ジュディ「でも、本当なんだから!!」
ビリー「誰かと見間違えたんじゃないのか?ダイアナさんとか
・・・」
ダイアナ、スティーヴ、近寄る。
ダイアナ「私ならさっきからここにいるわよ。今の話し、本当?」
――――― “バーナード”4へつづく ―――――
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“未来への扉” ―全9場― 2
ジョーイ「あ・・・ご免・・・。何も深い意味があって言ったんじゃ
ないんだ・・・。」
クリスティーン「・・・分かってる・・・。でも、誰に反対されたって、
私は彼を愛しているから・・・。」
ジョーイ「・・・クリスティーン・・・。そうだな・・・。あいつも、その内
気付くさ。一生のうちで、夢よりも大切な者が、必ず必
要になる時がくることが・・・。」
クリスティーン「ええ・・・。あ・・・ここよ!!(手で舞台奥を、差し
示す。)」
ジョーイ「(少し驚いた面持ちで。)ここは・・・」
音楽で紗幕開く。
と、中央に一組のテーブルと椅子。(紗幕で
店幅調整。)一人のウエイトレス(トレイシー)、
テーブルの上を拭きながら、近寄って来た
ジョーイとクリスティーンを認める。
トレイシー「いらっしゃい、ジョーイ。」
ジョーイ「やぁ、トレイシー。」
クリスティーン「こんにちは。」
トレイシー「いらっしゃいませ。」
ジョーイ、クリスティーン其々椅子へ腰を下ろす。
ジョーイ「ビール2つ。」
トレイシー「はい、畏まりました。」
ジョーイ「それとアレックス、ここで働いてるんだって?来てる
かな?」
トレイシー「ええ。呼びましょうか?」
ジョーイ「(クリスティーンをチラッと見て。)ああ、頼むよ。」
トレイシー「はい。(下手へ去る。)」
クリスティーン「ジョーイ!今、彼仕事中よ・・・。」
ジョーイ「(回りを見回す。)今、暇そうだし、構やしないさ。折角
会いに来たんだろう?」
クリスティーン「そうだけど・・・。なるべく邪魔になるようなことは、
したくないの・・・。」
ジョーイ「君はどうもアレックスに気を遣いすぎな所があるようだ
ね。もっと、自分を主張しなければ、何時までも奴は、
君に甘え続けるよ。たとえば危ないことは止めてくれ
と、ハッキリ言うとかね。」
クリスティーン「私には・・・そんなこと言えないわ・・・。」
ジョーイ「違うな。言えないんじゃなくて、君だから言えるんだよ、
クリスティーン。」
ジョーイ、クリスティーンを励ますように歌う。
“愛しているなら
たとえば相手が我が儘言っても
愛しているから
その相手にとって本当に大切なことを
言えるのは愛する者だけ
心の奥で感付いて
自分で分かっていることも
ただ何時もそこにいるのは当たり前だと
思い違えてしまう程
愛し合う2人なら
屹度分かり合える筈・・・”
ジョーイ「・・・そうだろ?」
クリスティーン「ええ、そうね・・・。ありがとう・・・。何時もジョーイ
には、どれだけ励まされるかしら・・・。」
ジョーイ「そんなことないさ。君達2人が上手くいけば、俺だって
嬉しいんだ。」
そこへ、下手よりアレックス、ビールを2本と
グラスを2つ両手に持って登場。
2人のテーブルへ近付く。
アレックス「よぉ、2人揃って御出座しか。(ビールとグラスを
テーブルの上へ置いて、空いている椅子に腰を下ろ
す。)」
クリスティーン「(アレックスを認め、嬉しそうに。)アレックス・・・!
ご免なさい、お仕事中に。」
アレックス「(微笑む。)」
ジョーイ「アレックス・・・。クリスティーンが心配してたぞ。急に今
まで住んでたアパートを引き払って、住み込みで仕事
を始めたって。」
アレックス「別に心配するようなことじゃないさ。(笑う。)ただ、住
み込みの方が家賃だって助かるし、食事だって・・・。」
ジョーイ「けど、クリスティーンにしたら、おまえを訪ねにくくなるだ
ろ?」
クリスティーン「いいのよ、ジョーイ。」
ジョーイ「よくないだろ!?」
アレックス「何、向きになってるんだよ、おまえ。(笑う。)」
ジョーイ「(焦ったように。)・・・べ・・・別に、向きになんて、なって
やしないさ。俺はおまえ達のキューピットのようなもの
だから・・・。」
アレックス「(笑って。)まぁ、彼女と知り合えたのは、おまえのお
陰なのは分かってるが、キューピットはよしてくれよ。
(真面目な顔付になって。)俺は、クリスティーンのこと
は大切に思ってる。それじゃあ駄目なのか・・・?」
クリスティーン「アレックス・・・」
ジョーイ「(溜め息を吐いて。)・・・そうだったな・・・。俺にとって、
クリスティーンは今までずっと側にいて、妹みたいなも
のだったから・・・。その彼女の不安な顔を見ると、つい
心配になって・・・。」
アレックス「(ジョーイを見詰める。)そうか・・・。また3人で、クル
ージングにでも行こうぜ。」
ジョーイ「なんで俺まで・・・。俺はいいよ。クリスティーンを連れて
行ってやってくれよ。」
アレックス「(ジョーイの肩に手を掛けて微笑む。)何言ってんだ。
俺達のキューピットなんだろ?それに、俺とおまえだっ
て、もう何年来の親友だったんじゃなかったか?今
じゃ、おまえの考えていることは何だって・・・」
ジョーイ「え・・・?」
アレックス「いや・・・。さぁて、仕事に戻らないと、マネージャーに
どやされるから。(笑う。)ま、ゆっくりしていけよ。(立ち
上がる。)クリスティーン、今晩電話するよ。」
クリスティーン「ええ、待ってる・・・。」
アレックス「(ジョーイに向かって。)送り狼になるなよ!(笑う。)」
ジョーイ「送り・・・!?アレックス!!(思わず立ち上がる。)」
アレックス、笑いながら下手へ去る。
ジョーイ「あいつ!!(溜め息を吐いて。)・・・全く、何時もふざけ
た野郎だな・・・!クリスティーンに奴を会わせたことを、
後悔するよ・・・。(紗幕前へ。)」
クリスティーン「(微笑んで、ジョーイに続く。)心からそんなこと、
思ってないくせに・・・。アレックスの優しさは、あ
なただって知ってる筈だもの・・・ね?」
紗幕閉まる。
ジョーイ「・・・ま・・・ね・・・。だから、あいつを君に紹介したんだ
から・・・。(独り言のように。)その後に、まさか自分の
気持ちに気付くとはね・・・。」
クリスティーン「何?」
ジョーイ「いや・・・何でもないよ。今・・・幸せかい?」
クリスティーン「決まってるじゃない・・・。ジョーイには感謝してる
のよ、とっても・・・。だって、アレックスと知り合え
たのは、ジョーイのお陰なんだもの・・・。」
ジョーイ「・・・俺の・・・お陰・・・ね・・・。さぁ、遅くならないうちに帰
らないと・・・。アレックスの大切な預かり者だ・・・。」
クリスティーン「まぁ、預かり者だなんて!」
ジョーイ「冗談さ。(笑う。)」
ジョーイ、クリスティーンの背中を軽く押し、
エスコートするように、2人上手へ去る。
暗転。
――――― 第 3 場 ―――――
下手スポットに、エンゼル浮かび上がり、
幸せそうに歌う。ゆっくり中央へ。
“夢を見たの
暖かな大きな心に包まれて
安らかに眠る
夢を見たの
そこはとても心地好くて
ずっと離れたくないような
何時までもそうしていたいと思う程・・・
夢の中でも夢見てた
現実とは丸で違う安らぎを・・・”
波の音が静かに、カモメの鳴き声が遠くに
聞こえる。紗幕開き、フェード・インする。
と、1場の島。中央、座り込んだアレックス、
砂を弄ぶように。
アレックスを認めたエンゼル、嬉しそうに
アレックスの横に腰を下ろし、膝を抱え、
アレックスの顔を見詰める。
アレックス「(砂を見詰めたまま。)俺の顔に何か付いてるか・・・
?」
エンゼル「何を考えているの?」
アレックス「・・・別に・・・」
エンゼル「(微笑んで。)当ててみましょうか・・・?」
アレックス「何も考えてないさ・・・」
エンゼル「・・・別れた恋人のこと!」
アレックス「(少し驚いたように、エンゼルを見る。)」
エンゼル「当たり?」
アレックス、溜め息を吐いて立ち上がり、
手の平を払う。エンゼル、つられるように
立ち上がる。
エンゼル「ね、当たり?」
アレックス「(少しぶっきら棒に。)ああ!」
エンゼル「如何して別れたの?」
アレックス「煩いな。もう済んだことだ、如何でもいいだろ!?」
エンゼル「まだ好きなのね?」
アレックス「いいや!!・・・もう・・・忘れた!」
エンゼル「(クスクス笑って。)強がりばかり・・・。」
アレックス「(エンゼルを見て。)おまえの方は如何なんだ・・・。
その左手首の傷・・・如何したんだ・・・」
エンゼル「(驚いて左手首を隠すように。)」
アレックス「(エンゼルの左手首を掴んで、傷を見る。)」
エンゼル「離してよ!!離してったら!!」
アレックス「(手を離す。)これは如何見たって、無理に傷付けて
できたものだ・・・そうだろ?」
エンゼル「・・・話したくない・・・」
アレックス「ほらみろ・・・。おまえにだって、触れられたくないもの
があるじゃないか・・・。俺は彼女のことを話すのは
ご免だ・・・。分かったか・・・?」
エンゼル「(少し考えるように下を向く。)・・・ご免なさい・・・。私
・・・話し相手ができて・・・嬉しくて・・・(手首の傷を、
もう一方の手で隠すように握って、ゆっくり上手方へ
歩いて行く。)」
アレックス「(エンゼルを見て。)・・・おい・・・待てよ!」
エンゼル、振り返る。
アレックス「・・・悪かった・・・」
エンゼル「(アレックスを見詰める。)」
アレックス「ついカッときて・・・。俺もおまえに酷いことえを言って
しまったな・・・。」
エンゼル「・・・(下を向いて、首を振る。)」
アレックス「・・・おまえの方が、触れられたくなかったかも知れな
いのに・・・。ご免・・・。」
エンゼル「・・・私・・・両親が決めた、結婚相手がいたの・・・」
アレックス「何も、無理に話すことはない・・・。俺が悪かったんだ
・・・。」
エンゼル「(少し淋しそうに微笑む。)聞いてもらいたくなったの
・・・。父の会社の取引先の一人息子で、名前はヘ
ンリー・・・。私が生まれた時から決められていた、私
の旦那様・・・。信じられる?今の世の中でそんな・・・
許嫁だなんて・・・。私は絶対にいやよ・・・!!自分が
結婚する相手くらい、自分で見つけるわ!!私は地位
や身分や家柄や・・・そんなものを結婚する相手に求
めてたんじゃないわ・・・。私が欲しかったもの・・・それ
はただ一つ、愛する自分の心よ・・・。愛される喜びよ
・・・。」
アレックス「はっきり両親に嫌だと訴えれば・・・。」
エンゼル「訴えたからって、私の意見を聞いてもらえるような、
そんな簡単なことじゃないわ・・・。家出だってした・・・。
けど、父が雇った私立探偵に見つかって、無理矢理
連れ帰らされてからは、ボディーガードまで付けられて、
丸で監禁状態・・・。それでいよいよ明日は式だって言
う前の晩・・・手首を切ったの・・・。これが、その時の傷
・・・。(手首を見せる。)」
アレックス「そんな簡単に死を選ぶんじゃない・・・。」
エンゼル「私を救い出してくれるスーパーマンでもいない限り、
私には他に方法がなかったのよ・・・。」
アレックス「命が助かったから、良かったようなものの・・・今度
からは、そんな馬鹿な真似はするんじゃないぞ・・・。」
エンゼル「じゃあ・・・あなたが私を助けてくれるの・・・?あなた
が私を助け出してくれるって言うの!?」
アレックス「・・・エンゼル・・・」
エンゼル「・・・ご免なさい・・・。我が儘だって分かってる・・・。
結婚が嫌なのも・・・単なる私の我が儘だって・・・。けど
・・・生まれてから何一つだって、私が自分の意思でやり
たいと思ったことを、出来たことはなかった・・・。だから
せめて好きな人くらい・・・自分で見つけたかったの・・・。
」
――――― “未来への扉” 3へつづく ―――――
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