2012年3月5日月曜日

“ジョニー・クラウン” ―全9場― 2

ジョニー「ばぁか!!泣くな!!それより金はどうなった?」
  ジョン「それが・・・」
  ジョニー「全く・・・。まんまとブライアントにしてやられたな!!
        くっそう!!俺が命懸けで奪った金を、横からかっさらい
        やがって!!こうなりゃ奪い返して、あいつの息の根を
        ギュッと・・・!!(急に手首を押さえて。)いてててて・・・
        !!」
  ジョン「あ・・・兄貴?」
  ジョニー「・・・いってぇなぁ!!・・・わ・・・分かったよ!!いいこと
        だろ!?分かってるさ!!(溜め息を吐いて、手首を
        摩る。)」
  ジョン「どうしたんだよ・・・兄貴?」
  ジョニー「それが、どうもこうも・・・。俺、やらなきゃならない仕事が
        あんだ。悪いな、折角会えたのに・・・。もう行くわ!
        (下手方へ行きかける。)」
  ジョン「ま・・・待ってくれよ、兄貴!!何処行くんだよ!!俺も連れ
       てってくれよ!!」
  ジョニー「おまえ、俺に付いて来ても仕方ないぜ。俺は“いいこと”
        ってやつを探しに行くんだから!!」
  ジョン「・・・いいこと?」
  ジョニー「ああ!いいか、付いてくんなよ!おまえは、そろそろ俺
        から独り立ちしねぇとな!!」
  ジョン「・・・い・・・いやだよ・・・。一緒に行くよ・・・!!」
  ジョニー「じゃあな!!」
      
         ジョニー、手を上げ下手へ去る。

  ジョン「ま・・・待ってくれよ!!兄貴!!兄貴!!いいことしたい
       なら、俺いい場所知ってるよ!!兄貴!!」

         ジョン、慌ててジョニーを追うように、下手へ去る。
         暗転。

  ――――― 第 3 場 ―――――

         音楽流れ、明るくなる。と、舞台中央、1人の少女
         (ミシェル)幸せそうに佇む。
         ミシェル、何かソワソワと回りを見回し、鞄の中から
         鏡を取り出し、覗き込んで髪をセット為直す。

  ミシェル「初めてのデートって・・・こんな感じなのかしら・・・。なん
        だか、ドキドキして落ち着かない・・・。髪は・・・OKね・・・
        。(自分の服を見る。)このワンピース・・・マークは気に
        入ってくれるかしら・・・。いつも病院で会ってる時は、
        パジャマ姿だもの。それに比べれば・・・。(クスッと笑う
        。)先週、マークが退院していっちゃって、とても淋しか
        った・・・。けど、彼は退院してからも、毎日お見舞いに
        来てくれたわ!ここ2、3日は、彼、仕事が忙しくて会え
        なかったけど・・・。いいの!!今日はマークと一日中、
        二人っきりなんだもの・・・!!」

         ミシェル歌う。

         “何て幸せな気分なの?
         世界中が私を祝福してるよう
         何て満ち足りた気分なの?
         まるで地球は私の為に回るよう
         こんなに幸せでいいのかしら?
         この思いがあれば
         何でも乗り越えられる
         未来で手を振る幸せが
         目の前に見えるもの!!”

         その時、上手よりマーク登場。
         マークに続いて一人の女性、登場。

  マーク「ミシェル!」
  ミシェル「(マークを認め。)マーク!!」
  マーク「遅くなって御免。」
  ミシェル「ううん、いいの!」
  マーク「こいつが、中々仕度できなくてさ・・・。(笑う。)」
  ミシェル「・・・こいつ・・・?」
  マーク「ああ!(女性を前へ。)紹介するよ。こいつは僕の奥さん。」
  女性「こんにちは、ミシェル。(微笑む。)あなたのことは、この人
      から色々聞いてるわ。今日はお弁当作ってきたのよ。」
  ミシェル「・・・奥さん・・・ですって・・・?」
  マーク「あれ?言ってなかったっけ?さあ、ミシェル!今日はどこ
       へ行きたいんだい?どこへでも連れて行ってあげるよ!
       君の行きたい所へ・・・。」
  ミシェル「・・・酷い・・・酷いわ・・・」
  マーク「え?」
  ミシェル「私のこと、騙してたのね!!(鞄を振り回すように、
        マークを叩く。)マークの馬鹿!!」

         ミシェル、下手へ走り去る。

  マーク「ミシェル!!待ってくれよ、ミシェル!!(溜め息を吐いて。
       )どうしたんだ・・・。彼女、何か誤解してたのかな・・・?
       騙したって・・・何のことだろう・・・?」
  女性「きっと、あなたに恋してたのよ・・・。初めてのね・・・。」
  マーク「初めての恋って・・・20も年上の僕に?まさか・・・。(笑う。
       )」
  女性「女心が分かってないのね、あなたは・・・。」

         暗転。

  ――――― 第 4 場 ―――――

         明るくなる。と、舞台は教会。
         上手方、懺悔室。狭苦しそうに、ジョニーと
         ジョン、肩を並べて座っている。

  ジョニー「おい!!狭いんだよ!!なんでテメーまで一緒に入って
        るんだよ!!」
  ジョン「・・・いいじゃないか・・・!俺のアイデアじゃない、ここに
       いれば、自分の行いを懺悔したい人が一杯来るって・・・。」
  ジョニー「だからって、いいことをするのはこの俺で、おまえじゃ
        ないんだよ!!」
  ジョン「一緒にいたいんだよ・・・!」
  ジョニー「煩いよ!!」

         その時、下手よりミシェル登場。
         ゆっくり、懺悔室の方へ。(仕切りを挟む。)

  ジョニー「早く、あっち行けってんだろ!!」
  ジョン「いやだよ!!」
  ミシェル「(不思議そうに、声のする方を見て。)あの・・・」
  ジョニー「押すな、馬鹿!!」
  ミシェル「あの!!」

         懺悔室の中、一瞬静かになる。

  ジョニー「(咳払いをする。)・・・あなたの行いを、懺悔しなさい・・・
        。」
  ミシェル「・・・はい・・・。今日・・・私は、とてもいけない心を持って
        しまいました・・・。私を傷付けたマークを許せなかったん
        です・・・。だって、今日の日を凄く楽しみにしてたのに・・・
        初めてのデートだったのに・・・昨夜から眠れない程、
        ワクワクしてたのに・・・!なのにマークは、待ち合わせ
        場所に奥さんを連れて来るなんて!!(泣く。)彼、結婚
        してたなんて!!」
  ジョニー「ひでえ野郎だな!!」
  ジョン「しっ!!」
  ミシェル「・・・え・・・?」
  ジョニー「それで・・・?」
  ミシェル「マークと一緒に行きたい場所があったのに!!もう私、
        絶対に恋なんてしないわ!!二度とこんな思いしたく
        ないもの!!(再び泣く。)」
  ジョニー「ああ、うるせえ・・・。分かったよ・・・!!分かったから
        泣くな!!どうして女って、そんなつまんねぇことでビー
        ビー泣けるのかね?」
  ミシェル「酷いわ!!つまらないことだなんて!!」
  ジョニー「そのマークとやらと、どこ行きたかったんだ・・・?一緒
        に行ってやるから、もう泣くな!!」
  ミシェル「え・・・?」
      
         ロック調の音楽流れ、証明クラブ風。
         懺悔室から、僧衣を身にまとったジョニー、
         勢いよく飛び出し、ポーズを決める。
         ジョン、続いて出、深呼吸する。  ※ 

  ミシェル「牧師様・・・?」
  ジョニー「イエス!」
  ミシェル「・・・冗談でしょ・・・?」
  ジョニー「(舌を鳴らし、指を立てて振る。)チッチッチッ・・・」
  ミシェル「あなた一体・・・」

         ジョニー歌う。
         途中、僧衣を脱ぎ捨てる。

         “俺はおまえを幸せにする者!
         おまえの望みを叶える者!
         何がやりたい?どこへ行きたい?
         何でもおまえのお望み通り
         俺は誰もを幸せにする者!
         皆が望むことを何でも叶える
         どうしたい?これからどうする?
         何でも言えば 忽ち誰でも幸せ者!”

  ジョニー「カモン!!ベイビー!!」

         3人下手へ走り去る。
         暗転。

  ――――― 第 5 場 ――――― 

         上手より、一人の老婦人ゆっくり登場。
         鞄から紙を取り出し、それに見入る。
         一時置いて、下手よりジョニー登場。下手方を見る。

  ジョニー「おっせえなぁ・・・チンタラ歩いてんじゃねえ!!俺は
        時間がねぇんだ!!あぁあ・・・。(舞台の縁に腰を下ろ
        す。)どっかに、“いいこと”ってやつ、落っこちてねぇか
        なぁ・・・。(下を探すように。)大体だぜ?俺の辞書に
        “いいこと”なんて文字はないんだ!“いけないこと”
        なら、いっくらでもあるけどよ!(笑う。)畜生・・・。」

         その時、上手より一人の不良少年、走りながら
         登場。老婦人にぶつかる。(老婦人、倒れる。)

  不良少年「何、ボケッと突っ立ってんだよ、糞ばばぁ!!」

         ジョニー、その声に気付き、2人を認める。 ※2

  老婦人「・・・悪かったの・・・僕・・・。」
  不良少年「・・・僕?僕だと?誰が僕なんだよぉ!(老婦人に
         突っかかるように。)」
  ジョニー「(2人の側へ。)おい、餓鬼!!」
  不良少年「あ!?(振り返り、ジョニーを認める。)何だ、
         おっさん!!」
  ジョニー「・・・おっさん?おっさんって言うのは誰のことかなぁ・・・
        ?」
  不良少年「えめぇだよ!!てめぇ!!」
  ジョニー「そんな悪い口をきくのは、どの口かな!?(少年の頬
        を抓る。)」
  不良少年「いてててて・・・!!何すんだ、離せ・・・離せよ!!」
  ジョニー「二度と俺に“おっさん”なんて口きいたら、てめぇの命
        はないと思え!!(手を離す。)」
  不良少年「くっそう!!覚えてろ!!糞親父!!」

         暴言を吐いて、少年下手へ走り去る。

  ジョニー「(下に落ちている石を拾って、少年の方へ投げる仕草
        をする。)誰が親父だ、糞餓鬼!!全く・・・最近の
        悪餓鬼は・・・。ばあさん、大丈夫か?」
  老婦人「すまんの、僕・・・。」
  ジョニー「あ!?僕?僕って誰のことだよ、ばあさん!(溜め息
        を吐いて。)まぁいいっか・・・。(老婦人が紙を見て、
        何か探している風なのに気付いて。)ばあさん、何処
        か探してんのか?何処行こうとしてんだよ。その地図
        貸してみな!俺は今、丁度“いいこと”ってやつを、
        やらなきゃならねぇとこだったんだ!探してやるよ!!
        (紙を取ろうとする。)」
  老婦人「・・・いや・・・これは・・・。(紙を離そうとせずに。)」
  ジョニー「離せよ!!馬鹿、離さねぇと、見れねえだろ!?何処
        かへ行こうとしてんじゃないのかよ、ばあさん!!」

         その時、紙が真っ二つに破け、ジョニー尻餅をつく。

  老婦人「あ・・・」
  ジョニー「・・・やっべ・・・。」

         老婦人、放心したように悲しそうな顔をして、
         紙を見詰める。

  ジョニー「ハハハ・・・(作り笑いをする。その時、手首が締まる
        ように、手首を押さえて。)いてててて・・・!!何しやが
        んだ・・・!!やめろ!!やめろってんだよ!!俺は
        いいことをしようとして・・・!!分かった・・・分かったよ
        !!ばあさん、俺が悪かったよ!!だから許してくれ
        !!(手首を押さえたまま、頭を下げて土下座する。)
        ・・・ふう・・・。危ねぇ時計だな・・・。手首がちょん切れる
        かと思ったぜ、全く・・・。(老婦人の紙をサッと取り上げ
        て。)貸してみなよ!(下で2枚の紙を、上手く重ね合
        わせ見る。)ほら・・・これで地図は元通り・・・。どれどれ
        ・・・何処に行くんだ・・・?ここが今いる場所で・・・(地図
        に見入る。)

         老婦人、ジョニーの様子を、黙って見ている。
         その時、下手よりジョンとミシェル、楽しそうに
         話しながら登場。

  ジョン「(ジョニーを認め。)あ!!いたいた・・・。兄貴、歩くの早い
      よ・・・。(老婦人を認め。)あれ・・・?ば・・・ばあちゃん・・・?
      ばあちゃんじゃないか・・・?」











          分からないまま“いいこと”を探すジョニー・・・
          本当に“いいこと”なんて、出来るのでしょうか・・・?
          それでは“3”へと続きます・・・。
          












  ※ こんな“ト書き”は、人形劇では有り得ないので、なんだか
    とても新鮮な感じがします(^^)
    もうすでに、いつもの人形劇脚本のセリフ回しとは異なった、
    珍しい感じは受けられているかも知れませんが、ここから
    ちょっと読み直してみて・・・「恥ずかしいかも・・・」的な、
    台詞が数行・・・続きます・・・が気にせずお読みください^^;
    
    (書きながら、これは・・・と思う台詞は、書き直している・・・
    と、先にお伝えしましたが、この場面は敢えて、書いた当初
    のままで読んで頂こうと思います。) 
    
  ※2、ここだけに限ったことではないのですが、数字の表記が、
    “1”になったり“一”になったりすることが・・・多々あります。
    あまり拘って書いている訳でない為ですが、読み難くなる
    としたら、お許し下さい
        



 ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ 


   (どら余談^^;)
 
   ある劇団のお稽古場にお邪魔して、初めて自分の作品の
   読み合わせに参加させてもらった時の感動は・・・一生・・・
   忘れないでしょう・・・♥

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