2012年3月14日水曜日

“ブルー” ―全9場― 3

ジミー、トーマ、ブルーを見る。
         その時、下手よりエンド登場。ブルーを見ている。

   ジミー「こいつ、昨日の・・・」
   マーク「何、ニヤニヤしてんだよ!!(思わずブルーの胸元を
        掴む。)」
   ブルー「(笑顔のまま。)いらっしゃいませ。」
   マーク「煩い!!」
   トーマ「やっちまえ!!」

         マーク、ブルーに殴りかかる。その時、エンド、
         マークを睨み付けると、ブルーに殴りかかった
         マークの手が、ブルーの横を通り過ぎるように
         逸れ、ヨロける。
         (ブルー、相変わらずニコニコしている。)

   ジミー「何やってんだよ!!」
   マーク「畜生!!(再び殴りかかるが、また逸れる。)」

         そこへ、上手よりカイト登場。驚いて駆け寄る。

   カイト「兄ちゃん!!おまえら、何やってんだ!!(ブルーの腕
       を掴んで、自分の方へ引き寄せる。)」

         マーク、呆然と自分の手を見詰める。

   トーマ「如何したんだよ、マーク?」
   マーク「手が・・・」
   カイト「帰れよ!!」
   ジミー「言われなくたって、帰ってやるよ!!」
   トーマ「おい、マーク!行こうぜ!(呆然としているマークを、
       引っ張るように。)」

         マーク、トーマ、ジミー下手へ去る。

   カイト「(3人が出て行くのを見計らって。)大丈夫か、兄ちゃん
       !?」
   ブルー「(微笑んで、カイトを見る。)」
   カイト「・・・兄ちゃん!怒る時は怒らなきゃ!!・・・(溜め息を
       吐いて。)まぁ、いっか・・・怒ったって解決する訳じゃない
       んだし・・・。兄ちゃん、皿洗いの方、手伝ってくれよ。」

         カイト、ブルー上手方へ行きかける。

   エンド「・・・ドレイファス!」

         2人、その声に振り返ってエンドの方を見る。
         が、知らん顔で上手へ去る。
         ブルーの笑顔に困惑そうな表情をするエンドで、
         フェード・アウト。

         ――――― 第 4 場 ――――― 

         客席下手方より、マーク、ジミー、トーマ登場。
         話しながら、上手方へ。

   ジミー「さっきは如何したんだよ、マーク。」
   マーク「知るかよ!」
   トーマ「・・・知るかって・・・。」
   マーク「あいつを殴ろうと思ったら、手が勝手に空を切るんだ!」
   ジミー「そんなこと!(笑う。)」
   マーク「本当なんだぜ!!」
   トーマ「何時ものマークなら、あんな奴、一発でノックアウトなの
        に!」
   マーク「だから言ってるだろ!手が勝手に・・・!!」
   トーマ「ところで昨日、あいつから奪ったあの石・・・如何した?」
   マーク「ああ、あの石・・・、帰って父さんに見せたら、目の色変え
        て取り上げられちまったよ。大学の研究室に持ってって、
        もっとよく調べてみたいんだってさ。」
   ジミー「あの石、普通のよりは綺麗だったけど・・・そんな調べて
        みたくなるような、凄い石なのかい?」
   マーク「知らないさ。父さん、何も教えてくれないし。石、取り上げ
        て直ぐにまた、大学行っちゃったから・・・。一週間振りに
        帰って来たところなのにだぜ!?」
   トーマ「ふうん・・・。」
   マーク「(独り言のように。)畜生・・・あんな石のせいで・・・。」
   ジミー「父さんがいないと淋しい?」
   マーク「馬鹿野郎!!俺は煩いのがいなくて清々するさ!!
        けど、母さんは・・・。」

         マーク、怒ったように舞台上手へ去る。

   トーマ「あ、マーク!!待ってくれよ!!」
   ジミー「マーク!!」

         トーマ、ジミー慌ててマークの後を追うように、
         舞台上手へ去る。
         入れ代るように、白衣を着たマークの父(ジャック)、
         下手方スポットに浮かび上がる。

   ジャック「これは・・・いくら調べても地球外物質であることは確か
         だ・・・。でも一体何処からこんな・・・。確か、知らない
         男に貰ったと言っていたが・・・。マークに如何して手に
         入れたのか、よく利き出さなくては・・・。持っていたの
         が人間ではないとすると・・・。(ニヤリと笑う。)ひょっと
         すると、世紀の大発見になるかも知れないぞ・・・。」

         フェード・アウト。

         ――――― 第 5 場 ―――――

         フェード・インする。と、舞台上手方にローズマリー、
         カイト、ブルー立っている。

   ローズマリー「今日はお疲れ様!はい、今日の分のお給料!」
   カイト「(袋を受け取って。)ありがとう!」
   ブルー「・・・これは・・・?」
   カイト「給料だろ?これは兄ちゃんのものなんだから、好きに使
       っていいんだ!但し、食費は置いとくんだぜ。(笑う。)」
   ローズマリー「無駄使いしちゃ駄目よ、2人共!カイトは大分、
            貯金溜まった?」
   カイト「冬が来る前には、母ちゃんに暖かいショール買ってやれ
       そうだよ!」
   ローズマリー「そう、よかったわね。」
   カイト「うん!」
   ローズマリー「それから、これ・・・(袋を2人の方へ差し出す。)
            今日の夕飯ね。店の余りものだけど・・・。」
   カイト「わあ・・・サンキュー、姉ちゃん!!(袋を受け取る。)」

         ブルー、黙って袋を受け取る。

   カイト「兄ちゃん!こう言う時は“ありがとう”って言うんだぜ!」
   ブルー「ありがとう・・・?」
   カイト「そう!ありがとうだ。ちゃんともの貰ったら、礼言わな
       きゃ!それから・・・」

         カイト、ブルーに教えるように歌う。
         2人、舞台中央へ。

         “朝起きたら おはよう
         夜寝る時は おやすみ
         昼は こんにちは
         夜は こんばんは
         食事の前は いただきます
         食事が済めば ごちそうさま
         人には色々挨拶がある
         気持ちを相手に伝える為
         黙ってたって分からない
         その日を楽しく過ごすには
         自分の思いを伝えなきゃ
         よそのお宅におじゃまします
         ドアを開けておじゃましました
         謝る時には ごめんなさい
         別れの時は さようなら
         感謝の気持ちはありがとう!”

   カイト「分かったかい?」
   ブルー「分かった・・・。(微笑んで。)ありがとう・・・色々なことを
        教えてくれて・・・。」
   カイト「なぁに、お安いご用さ!」
   ブルー「・・・僕は、自分が誰なのか・・・何故ここにいるのか・・・
        今まで何処で生活していたのか・・・何一つ思い出せな
        い・・・。ここに、こうして暮らしていても・・・丸で、全てが
        ・・・今、初めて経験したことのようで・・・。」
   カイト「・・・兄ちゃん・・・記憶がないんだから仕方ないよ!焦る
       なって!そのうち、何もかも思い出すからさ!!」
   
         2人、ゆっくり下手方へ行きかけて、カイト、何かに
         突っ掛かったように。

   カイト「おっと・・・!(靴を見て。)ちぇっ!!とうとう底が抜けち
       まった!(足を上げる。)また、母ちゃんの縫物が増えちゃ
       ったな・・・。あ・・・見てくれよ、兄ちゃん・・・。」

         カイト立ち止まり、憧れの眼差しで、ガラス越しに
         何かを見詰めるように、手を当てる。
         上手方スポット、台の上に置いてある、まっさらの
         スニーカーが浮かび上がる。

   カイト「綺麗な靴だなぁ・・・。俺、何時か絶対、金、貯めて自分
       の靴買うんだ!!」
   ブルー「・・・カイト・・・。」

         カイト、振り向く。

   ブルー「これを・・・。(さっき貰った給料袋を、カイトの方へ差し
        出す。)これで、靴が買える・・・?」
   カイト「(驚いてブルーを見る。)ばっ・・・ばっかだなぁ、兄ちゃん
       !これは兄ちゃんの食費だって言ってるだろ?それに、
       この靴を買う為には、もっと沢山の金がいるんだ・・・。
       ありがとう・・・。(照れたように。)」
   ブルー「・・・ありがとう・・・?何故・・・?靴が買えないのに、感謝
        するのは変だ・・・。」
   カイト「嬉しかったんだよ!!」
   ブルー「うれしい・・・?」
   カイト「兄ちゃんの思い遣りに感謝したんだって!!」
   ブルー「思い遣り・・・。まだまだ僕には、分からない感情や・・・
        言葉が沢山ありそうだ・・・。」
   カイト「そうだよ!!(笑う。)」

         フェード・インする。と、アパートの部屋。

   カイト「ただいま、母ちゃん!(手に持っていた袋をテーブルの
       上へ置く。)」

         上手より、ゆっくりローラ登場。

   ローラ「おかえり・・・2人共・・・。」
   カイト「(ローラの様子に心配そうに。)母ちゃん、具合悪いのか
       い?」
   ローラ「少しね・・・。今日は、夕食の支度ができなくて・・・何か
       外で・・・。」
   カイト「平気さ!!今日は姉ちゃんにハンバーガー貰って来た
       から!!母ちゃんの分も・・・!!」
   ローラ「私はいいから、2人でおあがり・・・。先に休ませておくれ
       ね・・・。」
   カイト「うん・・・おやすみ・・・。」

         ローラ、上手へ去る。

   カイト「母ちゃん・・・」
   ブルー「お母さん、大分悪そうだね・・・。」
   カイト「・・・大丈夫・・・大丈夫さ!俺、ミルク取って来るよ!
       ちょっと待ってて!」

         カイト、走って上手奥に去る。
         ブルー、ソファーに腰を下ろす。と、欠伸が出る。
         ブルー、欠伸に不思議そうな顔をし、首を傾げるが、
         思わずソファーに横になると、直ぐに寝息をたてて
         眠り込む。
         一時置いて、2つのコップを手に、カイト、上手奥
         より登場。

   カイト「お待たせ!・・・あれ・・・?兄ちゃん?(コップをテーブル
       の上に置いて、ブルーの側へ。覗き込むように。)寝ちゃ
       ったのかよ・・・。疲れたんだな、屹度・・・。(ソファーの背
       にかかっていた毛布を広げ、ブルーに掛ける。)おやすみ
       、兄ちゃん・・・。」

         フェード・アウト。

         ――――― 第 6 場 ―――――

         音楽流れ、歌声聞こえる。

         “初めて見た夢・・・
         初めて得た安らぎ・・・
         心地好い体の落ち着き・・・
         そこでは誰でもヒーローで・・・
         そこでは誰もが主人公・・・”

         フェード・インする。(紗幕前。)
         下手よりローズマリー、後ろを気にしながら登場。
         上手方へ。上手より、ハンバーガー店の店員登場。
         ローズマリーを認め、近寄る。

   店員「おはよう、ローズ!」
   ローズマリー「あ・・・おはよう!」
   店員「(ローズマリーが気にしている下手方を見て。)何かあるの
       かい?」
   ローズマリー「うん。ここ何日間か、ずっとあの男の人がうちの店
            の中を窺ってるのよ!」
   店員「どれ?ああ、あのグラサン野郎・・・、あいつなら俺も知って
       る・・・。丁度、ブルーがうちで働き始めた頃からよく見かけ
       るなぁって・・・。また来てんだな。何か用か聞いてやろうか
       ?」
   ローズマリー「いいわよ!まだ何かされた訳じゃないし・・・。けど
            、気をつけるように皆にも言っておいてね。」

         2人、話しながら上手へ去る。
         入れ代るように、下手よりエンド登場。サングラスを
         取って上手方を見詰める。
         フェード・アウト。





          ――――― “ブルー”4へつづく ―――――














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