――――― 第 7 場 ―――――
フェード・インする。と、アパートの部屋。
カイト、ブルー話しながらテーブルの上を片付けて
いる。
カイト「もうそろそろ働き始めて一週間だろ?兄ちゃん、何も
欲しいものないのかよ。ズボンだって・・・そんなお下がり
・・・。」
ブルー「ローズマリーのお兄さんのを貰ったから、これで十分
・・・。長さも丁度よくなったし・・・。」
カイト「ふうん・・・。まぁ確かに、丈は父ちゃんのに比べれば、
ピッタシだけど・・・。」
ブルー「いたっ・・・!」
カイト「如何したんだい、兄ちゃん?切ったのか?見せてみろ
よ!皿、欠けてたんだな。」
ブルー、指を見ている。カイト覗き込んでブルーの
指を見ると、驚いて後ずさる。
カイト「あおい・・・」
ブルー「え?」
カイト「何で・・・青い血が流れてんだよ・・・」
ブルー「(平然と。)青いと可笑しいのかい?」
カイト「だって・・・俺達人間は・・・赤い血が流れてんだ!!」
ブルー「・・・あかい・・・血?(自分の指を見る。)」
カイト「(呆然と。)兄ちゃん・・・人間じゃないのか・・・?」
上手より、ローラ登場。
ローラ「如何かしたのかい?」
カイト「(驚いて。)母ちゃん!!う・・・ううん・・・なんでもな・・・」
突然、ブルー以外の時間が止まったように、カイト、
ローラ動かなくなる。
ブルー「(驚いて、回りを見回す。)・・・カイト・・・?カイト・・・!!
」
そこへ下手より、エンド登場。
ブルー「(エンドを認め。)誰だ!?」
エンド「ドレイファス王子・・・。」
ブルー「・・・ドレイファス・・・?」
エンド「矢張り、まだ記憶がないようですね・・・。」
ブルー「・・・おまえは・・・?」
エンド「王子の側近、エンドをお忘れえすか?」
ブルー「・・・王子・・・?」
エンド「この地球より、20億光年離れたワードワース星・・・我々
の星です・・・。あなたは、そこの統治者の御子息、ドレイ
ファス王子・・・。次期星王様です。王子がこの地球付近
で消息を絶たれ、我々は直ちに捜索に向かい、そこで
王子の無事は直ぐに確認できたものの、記憶を無くされ
ているとは・・・。ご自分から思い出されるのを待ちました
が、人間に、あなたの正体が暴かれるようなことにでも
なれば面倒です。」
ブルー「待ってくれ・・・!今の話しを聞かされても僕には・・・」
エンド「あなたの青い血を見れば、何の疑う余地もない筈・・・。」
ブルー「だが・・・」
エンド「お父上がお待ちです。」
ブルー「・・・それがたとえ本当でも・・・、今はまだ君と一緒には
行けない・・・。」
エンド「何時まで待てばよいのですか?」
ブルー「もう暫く・・・せめて僕の回りの人々に、お礼がしたい・・・
。」
エンド「分かりました・・・。王子、手を・・・。」
ブルー「え・・・?」
エンド、ブルーの手を取り、怪我した指を包み込む
ように。
ブルー「(指を見て驚く。)傷が・・・治っている・・・。」
エンド「(溜め息を吐いて。)こんなこと位・・・あなたなら、造作
なくやれること・・・。何もかもお忘れとは・・・。前に、王子
が見せた表情にも驚かされましたが・・・。」
ブルー「表情?」
エンド「口元がだらしなく緩み、目の端が下がった・・・」
ブルー「(ハッとして微笑む。)それは笑顔と言うんだ。」
エンド「笑顔・・・?お止め下さい、王子。我々が無闇矢鱈と顔
の変化を、他人に見せるなど、決してしてはならないこと
です。」
ブルー「そうだったな、エンド・・・。(今言った言葉に、自分自身
驚いたように一時、立ち尽くす。)」
エンド「・・・如何かされましたか・・・?」
ブルー「・・・いや・・・なんでもない・・・。」
エンド、ブルーが記憶を取り戻したことを、
悟ったようにブルーを見る。
エンド「・・・3日待ちましょう・・・。では・・・。」
エンド、ゆっくり下手へ去る。と、同時にカイト、
ローラ動き出す。
カイト「・・・いよ、母ちゃん!兄ちゃん、指隠しな!!(小声で
ブルーに言うように。)俺はたとえ兄ちゃんが、人間で
あろうがなかろうが、そんなこと全然関係ないんだ!!
兄ちゃんは兄ちゃんなんだし!!けど他の人は・・・!!」
ブルー「(微笑んで。)何言ってるんだい、カイト・・・。」
カイト「青い血のことだろ!?」
ブルー「青い血?」
カイト「指!!(ブルーの手を取って、指を見る。)指・・・治ってる
・・・。(呆然と。)」
ブルー「治るも何も・・・。」
カイト「だって、たった今、皿で・・・!!変だな・・・俺、目開けた
まま夢でも見てたかな・・・。そうだよな・・・!青い血の人
間なんて、いる訳ねぇよな!!・・・よかった・・・。」
ローラ「如何したの2人共、コソコソと・・・。」
カイト「うん、何でもないんだ!!」
ローラ「・・・じゃあ私は先に休むからね・・・。片付け、すまないね
・・・。」
カイト「何言ってんだよ!おやすみ、母ちゃん!ちゃんと薬飲め
よ!!」
ローラ、ソファーの上から取った服を羽織りながら、
しんどそうにゆっくりと、上手へ去る。
カイト「・・・兄ちゃん・・・」
ブルー「ん?」
カイト「・・・兄ちゃん、何処へも行かないでくれよ!!兄ちゃんの
記憶が戻って、突然いなくなったらって思うと俺・・・。母
ちゃんの具合、段々悪くなる一方だし・・・。俺、兄ちゃん
が妖怪でもドラキュラでも宇宙人でも構わない!!兄ちゃ
んさえいてくれたら・・・。」
ブルー「カイト・・・」
カイト「俺・・・兄ちゃんが家に来てくれて、本当によかったと思っ
てる・・・。凄い嬉しいんだ!!だから・・・」
ブルー「もう、お休み・・・。僕は病気のお母さんと君を、ほって
行ったりはしないよ・・・。」
カイト「本当に・・・?」
ブルー「ああ・・・」
カイト「約束だよ・・・!?」
ブルー「(微笑んで。)ああ、約束だ・・・。」
カイト「(安心したように。)よかった・・・。じゃあ・・・おやすみ、
兄ちゃん!」
ブルー「おやすみ・・・」
カイト、上手へ去る。
ブルー「(カイトが出て行くのを見計らって。)病気のお母さん
と2人にはしない・・・。(自分の指を見る。)そうだ・・・
私はワードワース星のドレイファス・・・。さっき、エンド
のエネルギーが指から流れ込み・・・全てを思い出し
た・・・。帰らなければならない場所のあることを・・・。」
音楽でフェード・アウト。
――――― 第 8 場 ―――――
フェード・インする。
下手より楽しそうに話しながら、マーク、トーマ、
ジミー登場。
トーマ「知ってるか?クリストの奴、停学だってさ。(笑う。)」
ジミー「へぇ・・・何やらかしたんだ?」
トーマ「休みの日に、学校に忍び込んで、試験問題盗もうと
したらしいぜ。」
マーク「ドジな奴。(笑う。)」
そこへ、上手よりカイト登場。
ジミー「カイト・・・。」
他の2人も、カイトを認める。
カイト、知らん顔で通り過ぎようとする。が、
3人の少年、カイトの前に立ち塞がり歌う。
“誰が気にくわない
何が気にくわない
その目が生意気だ
口のきき方に問題がる
もっと謙虚に
もっと控え目に
後から来た余所者のくせに!!”
カイト「おまえらとは一度、遣り合わなきゃならないようだな!!
」
マーク「それはこっちの台詞だ!!」
ジミー「やっちまえ!!」
トーマ「やれ、マーク!!」
カイト、マーク殴り合いの喧嘩になる。
ジミー、トーマはやす。
一時置いて、上手よりブルーとローズマリー、
楽しそうに話しながら登場。
カイト、マークの喧嘩を認め、驚いて駆け寄る。
ローズマリー「カイト!!」
ブルー「カイト!!(2人の間に割って入る。)こら、止めろ!!
2人共!!止めるんだ!!」
マーク「何で止めんだよ!!」
カイト「兄ちゃん、やらせてくれよ!!」
ブルー「喧嘩して殴り合って解決するのか!?それで本当に
仲良くなれるのか!?」
カイト「ごめんだ、こんな奴ら!!」
マーク「こっちもだ!!」
ブルー「待つんだ、2人共!!(マークに。)君は何故、何時も
カイトを目の敵にする・・・?(トーマ、ジミーに向かって
。)君達もだ・・・。」
マーク「こいつが生意気なんだ!!」
ジミー「そうさ!!」
トーマ「いっつも澄ましているからな!!」
マーク「いくら苛めても泣かない・・・だから余計に腹が立つんだ
!!学校にもろくに行けない貧乏なくせして!!」
ブルー「そうか・・・確かに貧乏は当たってるな・・・。けど、それは
カイトにはお父さんがいなくて、病気のお母さんと2人
暮らしだからだ・・・。」
カイト「兄ちゃん!!」
マーク「何だよ!!俺達に同情しろって言うのかよ!!」
ブルー「(首を振る。)違うよ。カイトに同情はいらない・・・。何故
なら、彼は貧乏かも知れないが、心はとても満たされて
いるからね・・・。一生懸命、生きようと努力している。
だからカイトに必要なのは、同情じゃなく友情だ・・・。
何時も一緒に側にいてくれる仲間が必要なんだ・・・。
君達はカイトが泣かないから生意気だと言った・・・。
それは君達が、彼の上辺だけを見て、心の中を探ろう
としなかったからだよ・・・。もし、君達に悩みがあったと
して・・・その悩みは他人から見れば、些細なことでも、
悩んでいる者にとっては、屹度、どんな悩みでも・・・同
じ重さなんだと思うよ・・・。」
マーク「だから俺達に、友達になってやれって言うのかよ・・・!
!」
ブルー「君達、カイトのことが好きだろ?」
マーク「何で俺達が・・・!!」
ジミー「そうだよ・・・!!」
トーマ「・・・なぁ・・・!!」
ブルー「本当にカイトのことが嫌いなら、無視してる筈だからね
・・・。何も態々、自分達が不愉快になる為に、カイトに
ちょっかい出したりしないだろう?」
カイト「・・・兄ちゃん・・・。」
ブルー「それにカイト・・・君も、もっと素直にならなけりゃ・・・。僕
には、あんなに正直になれるんだから・・・。」
カイト「・・・分かったよ・・・。」
4人の少年達、少し気まずそうに、けれど何故か
安堵した面持ちで、其々立っている。
その時、下手よりジャック登場。
ジャック「マーク!こんな所にいたのか。」
マーク「(振り返ってジャックを認める。)父さん・・・如何したの?
こんな時間に・・・。」
ジャック「(ブルーを見て。)丁度よかった。捜す手間が省けそう
だ・・・。この間の石を貰ったのは、その青年かね・・・
?」
マーク「・・・うん・・・。(ブルーをチラッと見る。)貰ったと言うか・・・
。(口籠もる。)」
ジャック「(ブルーの前へ、ゆっくりと進み出る。)私はマークの父
親です。この間、息子があなたに頂いた石のことで、
詳しくお話しを伺いたいのですが・・・一緒に私の研究
室まで来てもらえませんか?」
マーク「・・・如何したんだよ・・・父さん・・・。」
ブルー「・・・マークに差し上げた・・・あの石が何か・・・?」
マーク、ブルーの言葉に嬉しそうな面持ちをする。
ジャック「いや何・・・、詳しく調べてみると、面白い研究結果が
出ましてね・・・。如何もあの石は、この地球外の・・・」
――――― “ブルー”完結編へつづく ―――――
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