2012年3月23日金曜日

“ライアン” ―全8場― 2

その時、マイクの声がどこからか聞こえる。

  マイクの声「ジェシカーッ!!」

          そこへ、上手よりマイク走り登場。

  マイク「ジェシカ!!」
  ジェシカ「マイク・・・どこへ行ってたの、今まで・・・。昨日も帰って来
       なかったし・・・。」
  マイク「ほら、ジェシカ!君にプレゼントだ!(ポケットから取り出し
      たブローチを差し出す。)」
  ジェシカ「(ブローチを受け取って。)まあ・・・綺麗。」
  マイク「貸して!(ジェシカからブローチを取り、ジェシカの胸に付け
      る。)君に絶対似合うと思ってたんだ!」
  ジェシカ「ありがとう・・・。でも、どうしたの?こんな高そうなブローチ
       。」
  マイク「君はそんなことを気にしなくていいんだ!」
  ジェシカ「だって・・・」

          何時の間にか、上手より数人の男達登場。

  男1「マイクー!そろそろ行くぞ!」
  マイク「あ・・・ああ!」

          マイク、男達について、下手方へ行こうと
          する。

  ジェシカ「マイク!!」
  
          マイク、立ち止まり、チラッと振り返りジェシカ
          を見るが、男達について下手へ去る。

  ジェシカ「マイクー!!」

     ――――― 第 3 場 ――――― B

          下手方を見詰め、佇むジェシカ。紗幕開く。
          と、町外れのマイクとジェシカの家の前。
          (ジェシカ、溜め息を吐き、家の中へ入る。)
          そこへ下手より、回りを見回しながらライアン
          登場。音楽流れ、ライアン歌う。

          “とても遠くてとても近い
          なんだか不思議な感覚だ・・・
          見たことがある見たことがない・・・
          そんな奇妙なデジャヴが
          僕を包み込む・・・
          だけど怖くはない
          だって妙に懐かしく
          温かい温もりを
          感じるから・・・”

  ライアン「確か未来の僕ン家は、ここら辺だと・・・(家を認め。)あ・・・
       あった!!あれだ!!(家に駆け寄り、珍しそうに見る。)
       へえ・・・僕ン家って、昔はこんな古めかしい家だったんだ・・・
       って、当たり前か・・・。(笑う。)誰かいるのかなぁ・・・」

          ライアン、窓から家の中を覗いていると、
          扉が開いてジェシカ、赤ん坊を抱いて登場。
          ライアン、慌てて家の陰に身を隠す。

  ジェシカ「ジャック・・・、パパは一体何処へ行ったのかしらね・・・。さっ
       きラジオのニュースで言ってたわ、とても大きなハリケーン
       が、本土の町の中心部へ向かってやってくるんですって・・・。
       そんな危険な時にあの人は何処へ行ったのかしら・・・。毎日
       毎日・・・フラッと出て行ったかと思えば、突然帰って来て・・・
       あなたの顔も見ずに、また今日も行ってしまったわね・・・。(
       人の気配を感じて。)誰!?」

          ライアン、ゆっくり登場。

  ライアン「・・・こんにちは・・・」
  ジェシカ「・・・あなた・・・誰・・・?私の家で、何をしているの?」
  ライアン「僕・・・ライアン・・・。あの・・・別に怪しい者じゃないんだ!!
       ちょっと、おば・・・さんに用があって・・・」
  ジェシカ「私に用事・・・?何かしら・・・」
  ライアン「えっと・・・あの・・・(口籠る。)」
  ジェシカ「(笑う。)可笑しな子ね・・・。でも、何故だかあなたのことを、
       怪しい子だなんてちっとも思わないわ・・・。変ね・・・。」
  ライアン「ごめんなさい・・・。」
  ジェシカ「その目の色かしら・・・。私と同じ青い色が・・・怪しい所か、
       懐かしい感じさえする・・・。」
  ライアン「(呟くように。)おばあさん・・・」
  ジェシカ「あなた、何処から来たの・・・?」
  ライアン「え・・・えっと・・・すごく遠い所から・・・」
  ジェシカ「そう。そんな遠くから一人でここへ?お父さんやお母さんが
       心配するわよ。」
  ライアン「(笑う。)心配なんてしないよ!ママなんて、いっつもこんな
       風に怖い顔して、僕のことを怒ってばかりいるんだから。」
  ジェシカ「そんなことないわ。大切な人がいなくなれば、心配しない人
       なんていないわよ。私もマイクのことがとても心配・・・。」
  ライアン「おば・・・さん・・・(ジェシカが抱いている赤ん坊を見て。)
       その子・・・」
  ジェシカ「ジャックと言うのよ。」
  ライアン「可愛い・・・?」
  ジェシカ「当たり前じゃない、変なこと聞くのね。自分の子どもが可愛
       くない親なんていないわよ。だからあなたも早く帰って、お母
       さん達を安心させてあげなくちゃ。」
  ライアン「その子・・・僕に少し抱かせてもらってもいい・・・?」
  ジェシカ「ええ、勿論よ。(ジャックをライアンの胸へ抱かせる。)」
  ライアン「・・・へえ・・・案外重いね・・・。(独り言のように。)これが、
       いつもおっかない顔して怒ってばかりいる、ひいじいちゃん
       か・・・」
  ジェシカ「いいわねぇ、ジャック。お兄ちゃんに抱っこしてもらって・・・。」

          ジャック、嬉しそうに笑う。

  ジェシカ「あらあら・・・珍しいわ、この子が知らない人に抱かれて、笑う
       なんて。」
  ライアン「・・・そうなんだ・・・」
  ジェシカ「屹度その瞳の色ね。私と同じ・・・。」

          下手より、いつの間にか2人組の警官登場。
          ジェシカの側へ。

  警官1「奥さん・・・」
  ジェシカ「え?(振り返って警官を認める。)まぁ、お巡りさん・・・。」
  警官1「ご主人はご在宅でしょうか・・・?」
  ジェシカ「いいえ・・・。」
  警官1「そうですか・・・。では昨夜は・・・?」
  ジェシカ「いいえ、いませんでした・・・。主人は先程、ブラッと戻って
       また直ぐに出て行ってしまいました・・・。あの・・・主人が何
       か・・・?」
  警官2「昨夜、町の宝石店から、全ての宝石が何者かによって、
      盗み出されたのです・・・。」
  ジェシカ「・・・宝石が・・・。それが何か・・・?主人と関係があるので
       しょうか・・・。」
  警官1「奥さんの胸元で輝いているブローチ・・・素敵ですね。」
  ジェシカ「(胸元を見る。)・・・ええ・・・主人が先程プレゼントだと言っ
       て私に・・・」
  警官1「ほう・・・。大切なものだと承知でお願いするのですが、その
      ブローチ・・・少しお借りしてもよろしいかな・・・?」
  ジェシカ「え・・・?ええ・・・(ブローチを外して、警官に手渡す。)」












        ――――― “ライアン”3へつづく ―――――

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