音楽流れ、ジョニー語りかけるように歌う。
“生きると言うことは
誰もが望んで止まないこと・・・
少しでも望みが叶うかも知れないなら
努力してみようと思わないか
生きると言うことは
これから待ち受ける
素晴らしい出来事に会いに行くと言うこと・・・
誰もが望んで止まないけれど
誰もが手に入れられるものでもない・・・”
ジョニー「頑張ってみろよ・・・。手術して・・・元気になって・・・
新しい自分に出会うんだ・・・。遊園地だけじゃない・・・
スポーツだって、山登りだって・・・元気になれば、
やれること、まだまだあるだろ?」
ミシェル「・・・ええ・・・。プールで泳ぎたいわ・・・。マラソン大会に
も出たい・・・何時も見学してたスポーツ大会で、皆の
注目を浴びたいわ!!」
ジョニー「生きたいと思うんだ・・・。(微笑む。)」
ミシェル、スポットに浮かび上がり歌う。
“生きると言うことは
誰もが望んで止まないこと・・・
少しでも望みが叶うかも知れないなら
私 努力してみるわ!
生きると言うことは
誰もが望んで止まないけれど
誰もが手に入れられるものでもない・・・
だから精一杯頑張ってみよう
生きたいから!!”
ミシェル「分かったわ・・・私、帰る・・・。ジョニー・・・?(回りを
見回す。)ジョニー?ジョニー!!(握っていた、
ジョニーに貰った小さなキーホルダーを、見詰める。)
ありがとう・・・私の・・・サンタさん・・・。」
音楽盛り上がり、暗転。
――――― 第 8 場 ―――――
スモーク流れ、舞台明るくなる。
舞台中央に机が一つ。(1場のセット。)
下手より、ジョニー登場。
ジョニー「爺!!爺!!(裁判官を捜すように。)おい!いねぇ
のか!!糞爺!!(突然、手首を押さえ。)いててて
て・・・!!畜生!!分かったよ!!裁判官殿!!
裁判官殿!!裁判官殿は、いらっしゃいますでしょう
かねぇ!!(手首を摩って。)いってぇ・・・。」
その時、上手より裁判官登場。机の後ろへ。
裁判官「なんだ騒々しい・・・。」
ジョニー「おお、来たな!!(手を差し出して。)これ、外せ!!」
裁判官「外せ・・・?」
ジョニー「いや・・・違いました!外して下さい!もう、やめた
やめた!!俺は、いくら時間を貰ったって、“いいこと”
なんてできる人間じゃねぇってことが、よぉく分かった
んだ!!このまま地上で頑張ってても、人を助ける所
か殺しちまうかも知れねぇからよ、さっさと地獄へ送っ
て貰おうと思ってな!!」
裁判官「・・・それはできないな・・・。」
ジョニー「何でだよ!!俺が地獄でいいってんだろ!?早いと
こ・・・!!」
裁判官「間違いだったのだ・・・。」
ジョニー「・・・間違い?何が!?」
裁判官「おまえの名は“ジョニー・クラウン”・・・。」
ジョニー「ああ、俺様は確かにジョニー・クラウン・・・。」
裁判官「本当にここへ来るべき人間は、“ジョン・クラウニー”
だったのだ・・・。」
ジョニー「なんでぇ、名前違いか!(笑う。)そんなこと、どうでも
いいから、早いとこ地獄へやってくれ!」
裁判官「だから天国へも地獄へも、おまえは行けない・・・。
おまえはまだ生きるべき人間なのだ。」
ジョニー「生きる人間・・・?ちょっと・・・待てよ・・・。じゃあ何か?
俺は、その“ジョン・クラウニー”とやらの身代わりで、
ここに連れてこられた揚句、こんな時計まで着けさせ
られて、“いいこと”なんて探しに地上へ送られたって
のか!?」
裁判官「・・・そう言うことだ・・・。」
ジョニー「冗談じゃねぇ!!おい爺!!てめぇ、確りしろよ!!
なんで俺がそんな野郎の代わりに、こんな痛いめまで
しなくちゃならなかったんだよ!!じゃあ早いとこ、
その“ジョン・クラウニー”とやらをここへ呼んで、俺を
さっさと生きかえらせろ!!(何かに気付いたように。)
え・・・?・・・ちょ・・・ちょっと待ってくれよ・・・。ジョン・・・
クラウニー・・・?ジョン・クラウニーって言ったのかよ
・・・?」
裁判官「そうだ・・・。」
ジョニー「ジョン・・・ジョンが死んじまうってことか・・・?」
裁判官「おまえが生きて、その人間が死ぬと言うことだ・・・。」
ジョニー「ま・・・待ってくれ!!あいつは駄目だ!!あいつは
たった一人のばあさんがいて・・・そのばあさんは、
ちょっとばかし体が悪くて、それでもあいつは、その
ばあさんと一緒に住めるようになる為に、一生懸命
頑張ってるんだ・・・。そんな奴を死なせることはでき
ないだろ・・・?あいつが死んじまったら、後に残った
ばあさんはどうなるんだ!!第一、なんであいつが
死ぬんだよ!!」
裁判官「彼が腹部に受けた銃の掠り傷・・・ちゃんと手当せず、
そのままにしておいた為に、それが悪化して亡くなる
のだ・・・。」
ジョニー「ああ、その傷なら俺も見たけど、もうすっかり良くな
ってたぜ!!そんなので、あいつが死ぬなんて・・・
!!そんなこと有り得ねぇ!!(何も言わない裁判
官の顔を見て。)・・・本当なのか・・・?」
裁判官「(頷く。)」
ジョニー「・・・俺・・・俺を殺してくれ・・・。俺、生き返らなくて
いい!!このまま地獄送りにしてくれ!!」
裁判官「何?」
ジョニー「そのかわり・・・そのかわりジョンの奴は、連れて行か
ないでくれ!!頼む!!あいつは本当に俺と違って
いい奴なんだ!!俺が生きるより、何十倍も世間の
役に立つ人間だ!!それに比べて俺は、身寄りも
いねぇ、悪いことばっかやってきた、生きててもしょう
がねぇ人間なんだ!!地獄の閻魔様も大喜びって
やつだ!!(笑う。)だから頼む、爺さん!!あいつ
だけは・・・!!」
裁判官「・・・それはできない相談だ・・・。」
ジョニー「なんでだよ、爺!!てめぇは俺に散々、偉そうなこと
をぶっこいといて、俺にひでぇことをやらかしたんだろ
!?一つ位、俺の言うこと聞いてくれたって、罰は当
たらねぇ!!違うか!?そ・・・それによ・・・ほら!!
今日はクリスマスだ!!俺も爺さんの間違いを、何
も咎めたりしねぇ!!そのかわり、ジョンの命は爺さ
んからのクリスマスプレゼント・・・ってことで・・・な?」
裁判官「・・・戻りなさい、ジョニー・クラウン・・・。今直ぐ、地上へ
舞い戻るのだ・・・。」
ジョニー「い・・・いやだ・・・いやだ!!(机にしがみつく。)俺、
かえらねぇ!!俺は地獄へ行くんだ!!絶対にかえ
らねぇ!!やめろ・・・!!やめてくれーっ!!・・・
やめてくれ・・・(段々、意識が遠退くように。)」
ジョニー倒れ、スポットに浮かび上がる。
そのまま、次景へ続く。
――――― 第 9 場 ―――――
静かなクリスマスソング流れ、舞台明るくなる。
上手、下手より、人々登場し、其々何かの用事を
持って、動いている。
舞台中央、倒れているジョニーを、怪訝そうに見、
ヒソヒソ話しをしたりする。
女性「いやぁね、こんな所で・・・。折角のクリスマスだって言うの
に。死んでるのかしら・・・?」
男性「救急車、呼んだ方がいいんじゃないか?こんな寒空に、
凍死してしまうぜ。」
その時、ジョニー目が覚め、覗き込んでいる人々
の、顔をぼうっと見回す。
男性「生きてるぞ!」
女性「なぁんだ・・・つまんない!」
ジョニー「おら!!何見てんだ、馬鹿野郎!!(起き上がる。)」
覗き込んでいた人々、悲鳴を上げて其々走り去る。
ジョニー、ゆっくり立ち上がる。
ジョニー「畜生、何だ!!人を化けもんみてぇに!!(くしゃみ
する。)寒・・・。(身震いする。服を払ったり。何かに
気付いたように、慌てて手首を見る。時計を外して
みると、簡単に外れる。)・・・俺・・・生き返っちまった
のか・・・。なんてクリスマスだ・・・。神様なんて、いや
しねぇ・・・。(時計を見詰める。)何で俺が生き返んだ
よ・・・!!何であいつが行っちまう・・・。何で世の中
こんな不公平なんだ・・・。何でなんだよ!!(思わず
座り込み、涙を堪え、地面を叩くように。)畜生・・・!!
畜生!!(声を上げて泣く。)」
その時、下手より嬉しそうにズボンのポケットに
両手を突っ込み、スキップしながらジョン登場。
ジョン「(ジョニーを認め。)あ・・・兄貴!!こんなとこにいた!!
捜したんだよ・・・!何してるのさ・・・?」
ジョニー「(顔を伏せたまま。)うるせぇ!!俺は今、感傷に浸っ
て・・・!!(驚いたように、顔を上げる。ジョンを認め、
腰を抜かしたように。)ジョ・・・ジョン・・・!?」
ジョン「やだな・・・ど・・・どうしたんだい?そんな幽霊でも見た
みたいに・・・。(笑う。)」
ジョニー「お・・・おまえ・・・い・・・生きてんのか・・・?(ジョンの足
を触ってみる。)あ・・・足がある・・・。」
ジョン「・・・当たり前じゃないか・・・変だよ、兄貴・・・。」
ジョニー「腹の傷・・・腹の傷は!?(立ち上がり、ジョンの服を
捲くって見る。)・・・治ってる・・・。」
ジョン「・・・言ったじゃない!あんな掠り傷、すーぐに治っちゃっ
たよ・・・。」
ジョニー「何で・・・?」
ジョン「何で・・・って言われても・・・。生きてちゃ悪いかなぁ・・・。
(ボソッと呟く。)そ・・・それより兄貴!!ミシェルの手術
が、無事成功したんだ!!」
ジョニー「え・・・?」
ジョン「ミシェルのママの話しだと、後、一週間もすれば起き上
がれるようになるんだってさ!!・・・よかったねぇ・・・。
凄い生命力だ!!って、先生も驚いてたって!」
ジョニー「(微笑んで。)・・・そっか・・・。助かった・・・か・・・。畜生
・・・。(嬉しそうに。)これで、何でも好きなこと・・・やれ
っな・・・。スポーツ大会のスターだ!(笑う。)」
ジョン「ど・・・どう言うこと・・・?(不思議そうに、ジョニーの顔を
覗き込む。)」
ジョニー「何で、すべて上手く納まったのか分かんねぇけど・・・。
(天を見上げ。)爺さん!!あんたのお陰だろ!?
ありがとうよ!!」
――――― “ジョニー・クラウン”完結編へつづく ―――――
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