2012年8月18日土曜日

“ブラック” ―全9場―

   

   ご覧の通り、“スティーブ”の名前が一番上にきています。
   が、今回のタイトルを“ブラック”にしたのは、読み直してみて、
   今は“ブラック”くんが主人公に感じるからです(^^)v
   当時は、違ったんでしょうね~^^;
   “恋人”や“婚約者”などの言葉から、少し大人な香りがします
   ・・・(^.^)



                                 どら。



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    〈主な登場人物〉

   ブラック  ・・・  死神。

   スティーブ  ・・・  人間の青年。

   サリー  ・・・  元、スティーブの恋人。

   バス  ・・・  死神。ブラックの兄妹。

   デイ  ・・・        〃  

   エル  ・・・        〃

   ダニエル  ・・・  サリーの婚約者。

   アンナ  ・・・  サリーの友人。


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             開演アナウンス。

      ――――― 第 1 場 ―――――

         明りが落ちると、鐘の音。
         (アカペラによるコーラス。)

         “地上の上に使わされた神々の
         使命の源 其々の
         我々の無償の愛を受け取らん・・・”

         音楽流れ、明るくなると舞台中央、黒の衣装に
         身を包んだ3人の死神(バス、デイ、エル。)ポーズ
         を取り、立っている。(3人の歌と踊り。)

         “雲の上の誰も知らない世界へ
         人の命を導くことが我々の仕事
         時には優しく 時には強引に
         空の彼方の見たこともない国へ
         奪った魂 連れ帰ることが
         我々の使命
         時には親切に 時には無理矢理に”

         3人、顔を見合わせ声を上げ笑う。

   バス「今日はいくつ集めた?」
   デイ「3つ。」
   バス「僕は4つだ!」
   エル「凄いわね、兄様達は・・・。私は1つよ。」
   デイ「エルはまだ小さいんだから、1つでも上等さ。」
   バス「そうだよ!」

         そこへ下手より、袋を引き摺るように持ち、
         グレーの衣装に身を包んだブラック、俯き加減に
         ゆっくり登場。
   
   バス「(ブラックに気付いて。)ブラック兄さん!今日こそは
          持って帰ったかい?(意地悪そうに上目使いで、ブラック
      を見る。)」
   エル「(ブラックに駆け寄り。)おかえりなさい、兄様!」
   ブラック「ただいま・・・。」

         エル、ブラックの袋を取り上げて、中を覗き込み
         袋を逆さにして振る。

   ブラック「ないよ・・・。」
   バス「またブラック兄さんはゼロか。(笑う。)」
   デイ「エルだって今日は1つ、持って帰ったんだよ。駄目だな、
      兄さんは。(笑う。)」
   エル「そんなことないわ!兄様も明日は屹度、捕ってくるわよ
      ね!」
   バス「さぁ、どうかなぁ・・・。」

         その時、木霊するように死神の声が響き渡る。

   死神の声「ブラック・・・」
 
   ブラック「父さん・・・」

   死神の声「また今日も集められなかったようだな。」
 
   ブラック「・・・ごめんなさい・・・」

   死神の声「おまえは死神としての自覚が足りないようだな・・・。
          自分の役割を、本当に知っているのか・・・。」

   ブラック「はい・・・。」

   死神の声「私としても、このまま役に立たないおまえを・・・そろ
          そろ独り立ちをする頃になっていると言うのに、何時
          までも好きにさせておく訳にはいかないのだ・・・。
          そこでだ・・・3日間だけおまえにやろう・・・。」

   ブラック「3日間・・・?」

   死神の声「3日間、一人の魂も持って帰ってこれなかった時に
          は、おまえは消滅する。死の神の掟に沿って・・・。」
  
   ブラック「消滅・・・。」

         エル、心配そうに。バス、デイ意地悪そうに顔を
         見合わせる。ブラック、スポットに浮かび上がる。

   ブラック「消滅か・・・。つまらない仕事だな・・・人の魂を集める
        なんて・・・。」

         ブラック歌う。

         “何故 僕は死神なんだろう・・・
         何故 黒い布しか纏えないんだろう・・・
         しかも黒にもなりきれない
         こんな中途半端なグレーの布・・・
         いっそ真っ黒なら・・・
         黒になりきれるのに
         たとえば真っ白なら・・・
         悩まなくてすむのに
         何故 死の神なんだろう・・・”

         ブラック、切なそうに遠くを見遣る。
         暗転。
      
      ――――― 第 2 場 ―――――

         ポツポツと雨音が聞こえる中、明るくなると、中央
         にベンチのある公園の風景。
         上手より一つの傘に肩を寄り添い合って入る男女
         (サリー、ダニエル)話しながら登場。

   ダニエル「いやぁ、突然雨が降ってくるなんて、傘を持ってて
         よかったですよ。大切な結婚式を明後日に控えて、
         私の大事な花嫁が、風邪でもひいたら大変ですから
         ね。(笑う。)それにしても、今日のディナーは最高で
         したねぇ。今思い出しても・・・(唾を飲み込む。)
         特にあの、何て言いましたっけ・・・」

         そこへ下手より、雨を避けるように持っている封筒
         を翳し、走りながらトレンチコート姿のスティーブ登場。
         サリーを認めると、思わず立ち止まる。

   サリー「スティーブ・・・(呟く。)」
   ダニエル「そう、スティーブ・・・スティーブ!?」

         スティーブ、知らん顔するように、走り去ろうとする。

   ダニエル「スティーブ!!」

         スティーブ、振り向かず、そのまま立ち止まる。

   ダニエル「明後日の僕達の結婚式には、勿論出席してくれ
         ますよね?あなたには是非、サリーのウエディング
         ドレス姿を見てもらいたいんですよ。」
   スティーブ「・・・明後日は急な仕事が入って・・・悪いけど・・・」
   ダニエル「そうですか・・・。それは残念だなぁ・・・。(独り言の
         ように。)まぁ、来たくないのは分かるけど・・・。」
   サリー「・・・行きましょう、ダニエル・・・」
   ダニエル「ええ。じゃあスティーブ、あなたにも祝福を!」

         サリー、ダニエル下手へ去る。
         スティーブ、雨を避けるのを止め、物憂いそうに
         佇む。その時、下手奥よりブラック登場。
         瞳を輝かせて、ゆっくり前方へ。ベンチへ上がり、
         背に座る。

   スティーブ「・・・何が祝福をだ・・・。畜生・・・誰がおまえの祝福
          なんかいるもんか・・・。」

         スティーブ、切な気に歌う。

         “祝福なんて・・・祝福なんて・・・
         するのもされるのもごめんだ・・・
         世の中なんて・・・世の中なんて・・・
         なんて切なくて苦い・・・
         そしてこの雨のようにとても冷たい・・・
         昨日までの自分・・・今日の自分・・・
         一体何が違うってんだ
         心の持ち方か生き方か・・・
         今は何もかも捨てて
         そしてこの雨のように土にかえりたい・・・”

   ブラック「あなた、今死にたいと思ってる・・・。」
   スティーブ「(驚いて、その方を見る。)誰だ!?」
   ブラック「違う?手伝ってあげようか・・・?」
   スティーブ「馬鹿!なんで俺が、サリーが結婚するってこと位で
          、死にたい程、落ち込まなきゃいけないんだよ!!」
   ブラック「顔に書いてる。」
   スティーブ「・・・書いてるもんか・・・ああ!確かに彼女は、つい
          この間まで俺の恋人だったさ!だから何だってんだ
          。今は全く関係ないんだ。彼女が結婚しようが、どう
          しようが俺の知ったこっちゃないんだよ!!」

         スティーブ、上手へ走り去る。
         ブラック前方へ。

   ブラック「(溜め息を吐いて。)・・・またアウトか・・・。あの人、死
        にたそうにしてると思ったのに・・・。」

         その時、バスの笑い声が聞こえる。

   バスの声「(笑いながら。)駄目だな、兄さんは。」

         下手よりバス、袋を担いで登場。

   ブラック「・・・バス・・・。」
   バス「あんな言い方したら、人間がしり込みするの、当たり前
       じゃないか。僕なんか今日3つ目・・・。(担いでいた袋を
       見せるように。)父さんに貰った期限は後2日だよ。後
       2日のうちに、1つも手に入れることができなきゃ、兄さん
       はこの世から消えてなくなるんだ。」
   ブラック「言われなくても・・・分かってるよ!」

         ブラック、下手へ走り去る。
         バス、ニヤリとして肩を窄める。

   バス「人間の魂を集めるなんて、こんなに簡単で面白いことは
       ないのに・・・。世の中、生きることに疲れた人間だらけだ
       。そんな人間の背中をポンと押せば直ぐ・・・(楽しそうに
       笑う。)」

         バスの笑い声、音楽で暗転。

      ――――― 第 3 場 ―――――

         エルとデイ、上手客席より話しながら登場。

   エル「ね?デイ兄様だって、ブラック兄様が消滅したら嫌でしょ
       ?」
   デイ「別に・・・」
   エル「嫌でしょ!?」
   デイ「エル・・・僕らは死神だぜ?誰が消滅しようが生きようが、
      そんなことにいちいち感情を動かされてちゃ、これから先
      やっていけないよ。」
   エル「私も、他の誰かなら構わないわ!!でもブラック兄様だけ
       は嫌なの!!だから・・・」
   デイ「・・・だから?」
   エル「だから私達で、兄様に手を貸してあげましょうよ!!」
   デイ「手を貸すだって?」
   エル「ええ!!」
   デイ「嫌だよ、そんなこと・・・。」
   エル「デイ兄様が嫌でも、手助けするの!!」
   デイ「父さんに見つかったらどうするんだよ・・・。」
   エル「大丈夫よ!見つかりっこないわ!ね!?」
   デイ「(溜め息を吐いて。)・・・仕方ないな・・・。僕はエルには弱
      いんだ・・・。だけど、何だってエルは、ブラック兄さんのこと
      になると、そんなにむきになるんだよ・・・。分からないな・・・
      。」
   エル「(フフッと笑う。)」
   デイ「それで、どうするんだよ・・・。」
   エル「あのね!(デイに近寄って、嬉しそうに耳打ちする。)」
   デイ「・・・OK・・・。」

         2人、急ぎ足で下手へ去る。

      





        ――――― “ブラック”2へつづく ―――――








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