――――― 第 4 場 ―――――
音楽流れ、舞台明るくなると、屋上の様子。
上手よりスティーブ、歌いながら登場。
途中ブラック、下手より登場し、スティーブの
歌に呼応するように歌う。
(スティーブはブラックに気付かず歌う。)
スティーブ“人生の曲がり角には
常に心の葛藤と
思い切れない自分がいる・・・”
ブラック“生きることに疲れてるのさ・・・”
スティーブ“迷いながら一歩ずつ
後ろを振り返り
今来た足跡に納得できずに・・・”
ブラック“じゃあ終わりにすればいい・・・”
スティーブ“何がしたいのかも分からず
何をどうすればいいのかも考えられない・・・”
ブラック“だから一緒に行こう・・・”
スティーブ“この果てしなく広がる大空に
終わりが決してないように・・・”
ブラック“死の世界へ・・・”
舞台後方、柵に凭れかかるように向こうを
見遣るスティーブ。
ブラック、ゆっくりスティーブの側へ。
ブラック「こんにちは。」
スティーブ「(振り返り、ブラックを認める。)おまえ・・・。また何か
用か・・・。別に俺は今、死にたいと思ってないぜ。」
ブラック「僕、何も言ってないよ。(笑う。)」
スティーブ「(溜め息を吐いて。)死にたくはないが、一人には
なりたいんだ。悪いがあっちへ行ってくれ。」
ブラック「何を見てたの?こんなビルの上から、一体何が見える
の?米粒ほどの人間?玩具みたいな車?目の前に広
がるビルの森・・・?」
スティーブ「煩いな。何見てたっていいだろ!俺はこの場所が好
きなんだから・・・。」
ブラック「言いたくないんだ。」
スティーブ「・・・手が届きそうな雲さ・・・。」
ブラック「くも・・・?」
スティーブ「ああ!分かったら、もう放っといて・・・」
ブラック「雲の上に、何があるのか教えてあげようか・・・。」
スティーブ「え・・・?」
ブラック「死神が住んでるのさ。」
スティーブ「おまえの冗談に付き合ってる暇はないんだ!さっさ
と家へ・・・何でおまえみたいな餓鬼が、うちの会社
のビルの上にいるんだ・・・。どうやって入って・・・」
ブラック「(笑って。)空から飛んで来たんだ。」
スティーブ「馬鹿なこと・・・」
ブラック「僕は死神・・・何処からだって、やってこれるからね。」
スティーブ「・・・死神・・・?」
ブラック「悪いけど、僕あなたのこと気に入っちゃったみたい。
僕も切羽詰まっててさ。後2日のうちに、誰か人間を連
れて帰らなきゃ消えちゃうんだ。」
スティーブ「だからって、俺に付いててもおまえの役には立たな
いぜ。尤も、俺はおまえの言うことなんて、これっぽ
っちも信用していないがね。」
ブラック「いいよ、別に信用しようがしまいが・・・。僕は油断して
る人間の、心の隙間に入り込むから。」
スティーブ「だから俺はそんな心の隙間も何も・・・」
ブラック「分からないよ。明日、サリーのウエディング姿を見たら
・・・。」
スティーブ「何でおまえがそんなことまで知ってんだよ!!」
その時、スティーブ、ブラック上手方に人の気配を
感じて、同時にその方を見る。
スティーブ、慌てて下手客席へ下りて、身を隠す
ように。ブラック、スティーブに続いて下手方へ。
舞台の縁に腰を下ろして、上手方を見る。
そこへ上手より、サリー、アンナ登場。話しながら、
下手ほうへ。
アンナ「どうしたの、サリー!元気ないぞ!明日はいよいよ結婚
式でしょ?」
サリー「あの・・・私・・・私ね!」
アンナ「・・・何?」
サリー「・・・うん・・・」
アンナ「それにしても、あなたとダニエルが結婚するなんてねぇ
・・・。私はてっきりスティーブと・・・。まぁ、ダニエルと
結婚して、彼の性格はよく分からないけど、お金には
苦労しないと保証するわ!なんたって、ここの御曹司
・・・。羨ましいなぁ・・・。それで?何か私に話したいこと
あるんでしょ?」
サリー「・・・え?」
アンナ「結婚を控えてナーバスになってるのよね。大丈夫、大
丈夫!結婚なんて、たいしたことないんだから!・・・っ
て、まだ独り身の私が言ったってねぇ。(笑う。)あああ、
私も早く、いい人見つけよ!!・・・スティーブどうかしら
!?」
サリー「え・・・?」
アンナ「彼、今フリーよね!?」
サリー「・・・え・・・ええ・・・」
アンナ「見た目は悪くないわよねぇ・・・。背は高いし、ハンサム
だし・・・。女子社員の中でも、彼に熱を上げてるのが、
少なくても3人はいるわ!」
サリー「アンナ・・・」
アンナ「彼にしよう!!ね!いい考えでしょ!?(下手へ行き
かける。)」
サリー「でも!!でもね、アンナ!!」
アンナ「(振り返って。)何?」
サリー「・・・あ・・・(首を振る。)」
アンナ「応援してね!!今夜の謝恩パーティで、彼をものにす
るわ!!」
アンナ、下手へ去る。続いてサリー去る。
2人が去るのを見計らって、ブラック舞台へ。
下手方を覗き込むように。スティーブ続く。
ブラック「彼女、幸せに見える?」
スティーブ「(ブラックを見る。)」
ブラック「彼女、どう見ても明日に結婚式を控えた幸せな女性
・・・には見えないと思うけど・・・。彼女、後悔してるよ。
まだ、あなたのこと愛してる・・・。あなただって、まだ
彼女のこと・・・」
スティーブ「(焦って。)な・・・何言って・・・俺がどうして・・・」
ブラック歌う。
“幸せの時には幸せの微笑みを
誰が見ても心穏やかに
回りも全て幸せ色・・・
悲しみの時には悲しい笑顔
誰が見ても屹度分かる
今がどんな心の色か・・・”
スティーブ「(フッと笑って。)・・・何でもお見通し・・・って訳だ・・・。
生意気な餓鬼だな・・・。」
ブラック「僕は“餓鬼”じゃないよ。言ったでしょ、僕は死神だって
・・・。見た目で判断しちゃ駄目だよ。僕はあなたより、
ずっと人生経験豊富なんだから。」
スティーブ「もし仮に・・・本当におまえが死神だとするなら、さっ
きのおまえの言葉・・・とても死神様の仰ることじゃあ
ないと思いますけどね。」
ブラック「・・・僕は落ちこぼれだから・・・」
スティーブ「落ちこぼれ・・・?」
ブラック「“ブラック”なんて名前だけで・・・死神らしくないってこ
とさ・・・。」
スティーブ「へぇ・・・」
いつの間にか、上手よりバス登場。2人の
様子を見ている。
バス「中途半端なんだよ。」
ブラック「(振り返って、バスを認める。)バス・・・」
スティーブ、チラッとその方へ目を遣るが、
気にも止めない風に。
バス「(ブラックの側へ。チラッとスティーブを見て、耳打ちする。)
一気にやっちゃえよ、兄さん。」
ブラック「・・・な・・・」
バス「愚図愚図やってる暇は、兄さんにはないんだぜ。自分の
手でやったって、父さんには分かりっこないさ!丁度いい
場所だし、ちょっと背中を押せば・・・」
ブラック「冗談言うなよ!!」
スティーブ「(不思議そうに。)何一人でブツブツ言ってんだよ・・・
。」
バス「(驚いたように。)へぇ・・・、その人、僕のことが見えないん
だ・・・。兄さんのことは見えるのに、可笑しいなぁ・・・。
まだ、あんまりこっちの世界に、来たいとは思ってないの
かなぁ・・・。(笑う。)」
ブラック「なら尚更だ!!僕はその時まで待つ!!自分の手で
なんて真っ平ご免だ!!さっさと帰れよ!!」
バス「折角助言してあげてるのに酷いな。その時まで待つ・・・
なんて言ってたら、兄さんは消滅だ。(笑う。)」
ブラック「たとえ・・・消滅しても構わない!!」
スティーブ「・・・おまえ・・・」
音楽で暗転。
ブラックの声が響く。
ブラックの声「たとえ消滅しても・・・」
――――― 第 5 場 ―――――
下手客席より、正装したダニエル登場。
ダニエル「それにしても年に一度の謝恩パーティが、僕達の
結婚式の前日だなんて、丸で前夜祭のようですね
ぇ。(自分の服を払ったり、直したりする。後ろを振り
返り、サリーがいないことに気付いて、慌てて下手
方を覗くように。)あ・・・あれ?サリー?サリー!!
(手を振る。)こっちですよ!!サリー!!」
一時置いて、下手よりサリー登場。
ダニエル「年に一度の謝恩パーティが、僕達の結婚式の前日
だなんて、丸で前夜祭のようですねぇ。(笑う。)」
サリー「・・・けど、出席して下さる方達は、連日じゃあ・・・」
ダニエル「なぁに、あなたはそんなことを心配しなくてもいいんで
すよ。」
ダニエル、サリーの肩を抱いて、晴々とした顔で
歌う。
“明日は僕らの為にある
今日と言う日に見送られ
明日になれば陽が昇る
これから始まる素晴らしい
時は僕らに拍手する
今日は明日の前夜祭
明日は僕らの為にくる!!”
ダニエル「さぁ、早く会場へ行きましょう!皆が主役が来るのを
待ち侘びてますよ、屹度!(笑う。)」
ダニエル、サリーをエスコートするように、上手より
舞台へ。(舞台は2場の公演。)
その時、下手よりスティーブ、ブラック登場。
スティーブ「好い加減、付いて来るなよ!俺は忙しいんだ!」
ブラック「いやだね。言ったでしょ、僕はあなたが気に入ったって
!」
スティーブ「いくら気に入られても、俺はおまえに付いて行く気
なんて、これっぽっちもないぜ!さっさと他の奴を・・・」
ブラック「・・・分からないよ!ほら、そこにあなたの見たくないもの
が・・・」
スティーブ「(ブラックの指差した方を見る。)サリー・・・ダニエル
・・・」
ダニエル「(怪訝そうに何かを探すように、スティーブの後方を
見る。)スティーブ・・・一体誰と話しているんですか・・・
?」
スティーブ「え?(振り返ってブラックを見る。)誰って・・・」
ブラック「(ニコニコしながら。)僕は本当に心から死にたいと思っ
てる人間にしか見えないんだ。」
スティーブ「冗談だろ!?」
ダニエル「(首を傾げて。)冗談なんて、言ってやしませんよ・・・。」
ブラック「(声を上げて笑う。)あの人、可笑しいや・・・。」
スティーブ「煩いな!!」
ダニエル「失礼な人ですね!!全く・・・。煩いのはあなたの方
ですよ、一人でブツブツと・・・。」
サリー「・・・その子・・・誰?」
スティーブ「サリー・・・」
ブラック「(笑うのを止めて。)あなた・・・僕が見えるの・・・?」
ダニエル「サリー、行きましょう!スティーブは仕事のし過ぎで、
頭がどうかしちゃったんじゃないですか?折角の
前夜祭の楽しい気分が台無しだ・・・。」
ダニエル、ブラックを気にするように見ている
サリーの背中を軽く押して、下手へ去る。
――――― “ブラック”3へつづく ―――――
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