そこへ、ジェシカの妹(リーザ)上手奥より
登場。ジェシカを認め、近寄る。
リーザ「姉さん・・・。」
ジェシカ「リーザ!(立ち上がる。)外へ出たりして大丈夫なの!
?あなたは体が弱いんだから、こんな所まで歩いて来
たりしたら・・・」
リーザ「(微笑んで。)平気よ、姉さん・・・。今日は何時もより、具
合いがいいの。それに家の中にばかり籠もってないで、
偶には外の空気も吸いたいし・・・。」
ジェシカ「・・・本当に?」
リーザ「(頷く。)それよりお花売れた?(ジェシカの持っていた籠
の中を覗くように。)」
ジェシカ「(首を振る。)駄目・・・。こんな不景気じゃ、パンすら満
足に買えないって言うのに、誰が花なんか・・・。お腹
の足しにもなりゃしない・・・。ごめんね・・・。今日こそり
ーザに美味しいものを食べさせてあげたかったのに・・
・。」
リーザ「いいのよ!私、好きよ!ジャガイモのスープ・・・!」
ジェシカ「リーザ・・・」
リーザ「姉さんも好きでしょ?」
ジェシカ「・・・そうね。母さんの自慢料理だったものね・・・。でも
今じゃ、あの頃母さんが作ってくれたように、色々な野
菜は入れられないけど・・・。」
リーザ「私はいいの!姉さんと食事出来るだけで・・・。」
ジェシカ「・・・ありがとう・・・リーザ・・・。」
リーザ「父さんも母さんも亡くなって・・・私には姉さんが、母さん
代わりだもの・・・。(微笑む。)」
その時、馬が駆けて来る音が近付く。
ジェシカ、リーザ、何か話している風に、
一寸脇へ寄る。
一時置いて、上手よりフランチェスコ、ヴィクトール
鞭を片手に登場。
ヴィクトール「(大きく溜め息を吐いて、深呼吸するように。)全く
・・・おまえには敵わないなぁ。如何してあの角で、
手綱を引かずに突っ込んで行けるんだ。下手すりゃ
落馬どころか、馬諸共、地面に叩き付けられるんだ
ぜ?」
フランチェスコ「駄目だな。そんなことを言ってるんじゃ、馬術大
会の優勝は諦めるんだな。おまえは勇気も腕力
も持ち合わせているのに、唯一足りないのは、い
ざと言う時の決断力だ。」
ヴィクトール「おまえに言われなくても知ってるよ、その位・・・。
自分の欠点はね。おまえは勇猛果敢だよ、全く・・・
。怖いもの知らずと言うか何と言うか・・・。」
フランチェスコ「そりゃどうも・・・。」
ヴィクトール「おまえは俺がいなけりゃ、糸の切れた風船のよう
に何処までも飛んで行ってしまうんだぜ。その点は
感謝してもらわないとな。」
フランチェスコ「分かってるさ。(ヴィクトールの肩に手を置く。)」
2人、カフェへ。外に並べてあるテーブル
につく。
ヴィクトール「(横を通り掛かった、店の主人に。)親父!何か冷
たいものをくれ!」
主人「おや、貴族の学生さん、馬術大会の練習ですかい?」
フランチェスコ「ああ・・・。」
主人「(フランチェスコに気付いて。)これはこれは、クリストフ公
爵家のフランチェスコ様じゃあありませんか。あなた様も
大会に?」
フランチェスコ「勿論!」
主人「こりゃあ、他の者に勝ち目はありませんねぇ。可哀相だが
あなた様が出るんじゃあ、あなた様の優勝はもう決まった
も同然ですからねぇ。」
ヴィクトール「そうなんだよな・・・。」
フランチェスコ「そんなこと、分かるものか。一番のライバルであ
るおまえから、そんな気弱な発言が飛び出すと、
こっちの勝気がなくなるだろ。」
主人「それじゃあ勝利の前祝いに、この店自慢のワインをご馳
走するとしましょうかねぇ。」
ヴィクトール「いいねぇ。」
主人「では少々お待ちを・・・。」
主人、店の奥へ去る。
途中で、上手奥よりルネを従えて、ルグラン伯
登場。ジェシカ達と話していたが、急に何か
揉めているように。
ルグラン「失礼だぞ!!貴様、私を泥棒呼ばわりする気か!!」
ジェシカ「だってそうでしょ!!この花は売り物なのよ!!お金
も払わずに持ってかれちゃ堪らないわ!!」
ルグラン「こんなそこら辺の野原に咲いているような、小汚い花
に金を払えるか!!貰い手がなくて可哀相だから、引
き取ってやろうとしたものを!!こんな花・・・!!(花
を投げ捨て踏み付ける。)」
ジェシカ「何するの!?(思わず、ルグラン伯の腕に噛み付く。)」
ルグラン「いてててて・・・。(ジェシカを払い除ける。)」
ルネ「ルグラン伯!!」
ジェシカ、尻餅をつく。
ルグラン伯の声に気付いたフランチェスコ、
ただならぬ雰囲気に近寄る。
ヴィクトール、慌ててフランチェスコを追うように。
ルグラン伯、剣を抜いてジェシカに向かって
振り上げる。
ジェシカ、ルグラン伯を見据える。ルネ、オロオロと。
ルグラン「この娘!!今ここで叩き切ってやる!!」
リーザ「姉さん!!」
フランチェスコ駆け寄り、後ろよりルグラン伯の
振り上げている腕を掴む。
フランチェスコ「やめろ!!」
ルグラン「誰だ!!離せ!!」
ルネ「フランチェスコ殿・・・。」
フランチェスコ「(腕を離す。)」
ルグラン「フラン・・・?(振り返り、フランチェスコを認める。)おま
えは!!何故、私の邪魔をする!!それともおまえが
やられたいのか!?(フランチェスコに剣を突き付ける
。)」
フランチェスコ「女相手に、格好悪いと思わないのか?」
ルグラン「何だと・・・!?」
フランチェスコ「(ニヤリと笑って、ゆっくり剣を抜く。)だが、そん
なに一戦を交えたいのなら、相手をしてやって
もいいぞ・・・。」
ルネ「ルグラン様!!(心配そうに。)」
ルグラン「おまえは黙ってろ!!」
ヴィクトール「(ボソッと、大き目の独り言のように。)フランチェス
コの剣の腕前は、誰もが知っているだろうに・・・。」
ルグラン「(ヴィクトールの言葉を聞いて、フランチェスコを見据
えたまま、暫く考えるように。)・・・畜生・・・!!覚えて
おきやがれ若造!!ルネ!!」
ルグラン伯、憤慨した様子で、剣を握り締めた
まま、ズンズンと下手へ去る。ルネ、オロオロと
しながら、ルグラン伯に続いて去る。
ヴィクトール「やれやれ・・・、あれが貴族の言う言葉かね・・・。」
フランチェスコ「全くだ・・・。(剣を鞘に収めながら笑う。ジェシカ
の方を向いて笑いながら。)あの業突く張りに噛
み付くとは、中々勇ましいな。大丈夫か?」
ジェシカ「(素っ気なく。)ありがとう・・・。」
フランチェスコ「如何した?助けを出して迷惑だったような顔だ
な?」
ジェシカ「私は、あなた達のような貴族が、大っ嫌いなだけよ!
!」
フランチェスコ「・・・ほう・・・。」
ジェシカ「あなた達は、何でも暴力で解決しようとする!!直ぐ
に刀を出せば、相手を押さえられると考えている!!
あなた達は人を殺すことなんて、平気でやって退ける
んだものね!!」
ヴィクトール「おい娘!!言葉が過ぎるぞ!!」
フランチェスコ「(ヴィクトールの言葉を遮るように。)いいんだ!
!そうか・・・。他に言いたいことは・・・?」
ジェシカ「あるわ!!こんな不景気な世の中で、私達はパンす
ら満足に買えないって言うのに、何?あなた達貴族は
、馬術大会のお馬の稽古?全く、いいご身分ね!!」
リーザ「姉さん・・・(胸を押さえて座り込む。)」
ジェシカ「リーザ!?如何したの!?苦しいの!?大丈夫・・・?
(リーザを立たせてやりながら。)さぁ、もう今日は帰り
ましょう・・・。」
フランチェスコ「娘!!(ジェシカの手を取って、ポケットから取り
出した金貨を握らす。)今は、馬術大会の練習中
で、いくらも持ち合わせはないが・・。」
ジェシカ「施しなんかいらないわ!!(金を投げようとする。)」
フランチェスコ「施しじゃない!(微笑んで。)その籠に入ってい
る花を全部貰おう・・・。」
ジェシカ「(握っていた金貨を見て、驚いたように。)でも、こんな
大金で、私、お釣りなんてないから!!(金貨を差し出
す。)」
フランチェスコ「今日から一ヶ月間!!私の屋敷まで花を届けて
おくれ・・・。それで文句はないだろう・・・?ちょっと
待ってくれ・・・。」
フランチェスコ、カフェまで走って行き、主人の
持っていたメモ用紙とペンを借り、何かを書いて
一枚千切り、持って来る。
フランチェスコ「(その紙をジェシカに差し出し、手渡す。)場所は
ここだ・・・。時刻は夕暮れ時・・・。頼んだぞ。(微
笑んでジェシカの持っていた花籠を取り、籠から
一束花を取り、ジェシカの方へ差し出す。)私から
君へ・・・出会った記念に・・・。ヴィクトール!!」
ジェシカ「あの・・・!(受け取った花を見詰める。)」
フランチェスコ、ヴィクトール上手へ去る。
戸惑いの表情のジェシカ。
音楽で紗幕閉まる。
――――― 第 4 場 ―――――
紗幕前。
下手より、ルグラン伯登場。
続いて、ルネ登場。
ルグラン「全く・・・!!何時も何時も、何て忌々しい奴なんだ!
!何か問題が起こると、決まってあいつが絡んでくる
!!そもそも長年、私が思いを寄せていたカロリーネ
嬢と奴が、婚約したことから我々の因縁の間柄は、よ
り一層深まったと言ってもよいのだ!!」
ルネ「はぁ・・・。」
ルグラン「(振り返ってルネを見る。)おまえもそう思うだろう!?
ルネ!!思い起こせば、奴がまだ大学へ入る前・・・、
初めてカロリーネ嬢と舞踏会で出会い、あの白百合の
ような清純な美しさに、一目で心奪われ、私がダンス
の相手を願い出た時に、同じように彼女に手を出した
若造・・・それが奴だ!!2人同時にダンスに誘われ、
頬を赤らめ戸惑いながら、彼女が受けたのは、よりに
よって奴の方の願いだったとは!!本当に今思い出し
ても腹の立つ・・・!!」
ルネ「私もあの時のことは、よく覚えております、はい・・・。」
ルグラン「何故、奴なんだ!!何故、奴が手を握り返される!?
私の何処が、奴に劣ると言うのだ!!そう思うだろう
ルネ!!教養もある!!馬術も狩りも踊りも、私は奴
より完璧にこなす自信がある!!」
ルネ「(ボソッと。)剣は・・・」
ルグラン「・・・(チラッとルネの顔を見て、言葉に詰まったように。
)剣は・・・ハッキリ言って奴には敵わないかも知れない
・・・。だが!!他のことなら・・・!!男っ振りも私の方
が・・・!!」
ルネ「(思わず。)えーっ!?」
ルグラン「何だルネ!!おまえは奴の方が、見栄えすると言う
のか!?(ルネに詰め寄る。)」
ルネ「い・・・いえ・・・(独り言のように。)誰が見ても、一目瞭然
・・・。」
ルグラン「だが見てろ!!剣では奴に敵わなくとも、他のことで
なら・・・!!カロリーネ嬢の見てる目の前で、思う存
分、苦行を味あわせてやる!!」
ルグラン伯、スポットに浮かび上がり、
力強く遠くを見遣り、歌う。
“何時も私の目の前に
立ちはだかる奴の影
愛しい者を奪い
その愛を一身に受ける
奴の影が横切る度
私の心はただ怒りに
打ちひしがれ燃え滾る
この思いに胸の中は
熱い炎で焼き尽くされる
憎い・・・奴が憎い
何もかも私から奪い去る
奴が目の前を歩く限り
私の心が安らぐことは
ある筈がない・・・
だが何時か屹度・・・!!”
フェード・アウト。
――――― 第 5 場 ―――――
静かな音楽流れ、紗幕開く。
と、舞台はフランチェスコの屋敷の庭。
下手よりゆっくりと、フランチェスコ登場。
続いてカロリーネ登場。
フランチェスコ「夕方になると、随分と過ごしやすくなるものです
ね・・・。」
カロリーネ「ええ・・・。」
フランチェスコ「昼間は馬を駆り、走り回っているせいか、余計
夕暮れ時の爽やかさが、肌に心地好い感じを与
えるのでしょうね。」
カロリーネ「ええ・・・。」
――――― “フランチェスコ”3へつづく ―――――
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