2012年8月26日日曜日

“フランチェスコ” ―全14場― 3

 フランチェスコ「(振り返ってカロリーネを見る。)如何しました?
            楽しくありませんか?」
  カロリーネ「いいえ!!(大きく首を振る。)」
  フランチェスコ「さっきから、余り話しをされないのですね?」
  カロリーネ「(恥ずかしそうに下を向く。)それは・・・何度、お会
         いしても・・・フランチェスコ様の前に出ると、とても
         緊張してしまって、お顔を見ることすら儘ならないん
         ですもの・・・。ほら・・・、こうしてあなたに見詰められ
         ていると感じるだけで、心臓がもうこんなに・・・。(自
         分の胸を押さえる。)」
  フランチェスコ「(微笑んで。)あなたにそんな風に言ってもらえ
           るとは光栄ですね。」

         2人、中央に置かれているベンチの側へ。
         フランチェスコ、カロリーネに座るよう勧める。
         カロリーネ、軽く頷いて、腰を下ろす。
         カロリーネが座ってから、フランチェスコ、
         カロリーネの横へ腰を下ろす。

  カロリーネ「如何ですか?馬術大会・・・。私、とても楽しみにし
         ていますの。フランチェスコ様の勇姿が見られるから
         と・・・。」
  フランチェスコ「ええ・・・必ず勝ちますよ!!愛馬のシーザーの
           調子もぐんぐん上がってきていますからね。今の
           シーザーに敵う馬は、そうはいないでしょう。大会
           では屹度、素晴らしい走りを見せてくれると、私も
           楽しみにしているのです。」
  カロリーネ「そうですわね。それにシーザーに劣らず、騎手も手
         綱捌きでは右に出る者がいないと、噂されている程
         の、フランチェスコ様ですものね。」
  フランチェスコ「兎角、人の噂と言うものは、あてにはならないも
           のです・・・。だが、今回ばかりはその噂を信じて
           下さっても結構ですよ。」

         その時、下手よりカロリーネの侍女、登場。

  侍女「お嬢様、お屋敷からお迎えの馬車が参りました。」
  カロリーネ「(侍女を認め。)分かりました。(立ち上がる。)フラン
         チェスコ様、今日はとても楽しい時間を、私の為に作
         って下さって、ありがとうございました・・・。それでは
         これで失礼致します。(スカートをつまんで、お辞儀を
         する。)」
  フランチェスコ「(立ち上がって礼をする。)気をつけて・・・。」

         侍女、下手へ去る。カロリーネ、侍女に続いて
         去る。フランチェスコ、カロリーネが去るのを
         見計らって、再びベンチへドッカと腰を下ろす。

  フランチェスコ「(溜め息を吐いて。)必ず・・・勝つ・・・!!」

         そこへ家臣、下手より登場。

  家臣「フランチェスコ様、ただ今、門の所にフランチェスコ様に頼
      まれたからと、花売り娘が来ておりますが・・・。如何致し
      ましょう・・・?(少し困惑したように。)」
  フランチェスコ「(幾分、嬉しそうに。)そうか。私の客だ。ここへ
           通してくれ。」
  家臣「はい・・・。(首を傾げて、下手へ去る。)」

         フランチェスコ、立ち上がり呟くように歌う。

         “たった一輪で咲く野花のごとく
         君は我にほんの少しの安らぎを与える・・・”

         一時置いて、下手よりジェシカ、回りを見回し
         ながら、心細げに花籠を手に登場。
         フランチェスコ、ジェシカのそんな様子を楽し気に
         見詰める。

  フランチェスコ「やぁ・・・。」
  ジェシカ「(フランチェスコを認め。)こんにちは・・・。」
  フランチェスコ「約束、忘れなかったようだな。(微笑む。)」
  ジェシカ「だって、あんな大金・・・ただで貰えないから・・・。(少
        し興奮ぎみに。)それよりでっかい家ね!!こんなお
        屋敷に入ったの、生まれて初めて・・・。この庭に出る
        までに、一体幾つの部屋を通ったかしら?一体何回
        長い廊下の曲がり角を曲がって来たのかしら?屹度
        同じ来た道を通って、一人で帰れと言われても、私、
        迷って一生このお屋敷から出られないかも知れない
        !!」
  フランチェスコ「面白いことを言うんだな。(笑う。)誰も一人で帰
           れとは言わないよ。」
  ジェシカ「(フランチェスコに近寄り、花を差し出す。)はい、約束
        の花・・・。何も態々、私なんかの野花を買わなくても、
        あなたならどんな花でもより取り見取りでしょうに・・・。
        現にほら、あそこに花壇だって・・・。(上手方にあった
        花壇を指差す。)」
  フランチェスコ「あれは母が趣味で育てているもので、私の花
           ではない・・・。(ジェシカから籠を受け取る。)この
           花は私の部屋に飾る為に買うんだ。」
  ジェシカ「へ・・・ぇ・・・。私、貴族の奴らって、争いごとが好きで
        ・・・野蛮で・・・血を見るのを何とも思わない冷血人間
        ・・・そんな風に考えてたから、少し意外ね・・・。況して
        男の人なのに・・・。(何か思い出したように、クスクス
        笑う。)昨日は・・・ごめんなさい・・・。助けてもらったの
        に、酷いこと言っちゃって・・・。」
  フランチェスコ「いや・・・いいんだ。君の言ったことは、本当のこ
           となんだから・・・。」
  ジェシカ「(意外な面持ちで、フランチェスコを見詰め、微笑む。)
        私達ね・・・とても期待していたの。新しい国王になって
        、これで住み易い世の中にんるんじゃないかって・・・。
        なのに景気は一向に回復しないし、それどころか益々
        物価は高くなって、段々生活が苦しくなる・・・。仕事は
        ないし・・・。そこへきて馬術大会でしょ?ついカッとなっ
        ちゃって・・・。」
  フランチェスコ「昨日、一緒にいた娘は妹かい?」
  ジェシカ「ええ。私のたった一人の肉親・・・。」
  フランチェスコ「具合が悪そうだったけど・・・。」
  ジェシカ「あの子・・・生まれつき体が弱くて・・・。ここ暫く、じゃが
        いものスープ以外、食事らしい食事もしてなかったし
        ・・・。」
  フランチェスコ「(驚いたように。)じゃがいも・・・の・・・?」
  ジェシカ「けど、昨日あなたのお陰で、久しぶりにパンを食べさ
        せてあげることができたの!!ありがとう・・・。」
  フランチェスコ「(微笑んで。)それはよかった・・・。」
  ジェシカ「あの子が美味しそうにパンを食べるのを見て、とても
        嬉しかったの!!嬉しかったの・・・美しい花々は心を
        満たしてくれるけど、お腹は一杯にならないもの・・・。
        私は元気だから、少しくらい食べなくても全然平気だ
        けど、リーザはね・・・。あの子には、うんと栄養のある
        ものを食べさせてやりたかったから・・・。」
  フランチェスコ「(微笑ましくジェシカを見詰めたまま。)おまえの
           名前は・・・?」
  ジェシカ「ジェシカ・・・」
  フランチェスコ「ジェシカ・・・いい名前だ・・・。」
  
         ジェシカ、恥ずかしそうに下を向く。
         その時、美しいバイオリンの音が流れてくる。

  ジェシカ「(その音に気付いて。)この音楽は・・・?」
  フランチェスコ「ヴィクトールだ・・・。昨日、私と一緒にいた男、覚
           えているか?」
  ジェシカ「(頷く。)」
  フランチェスコ「あいつは毎晩、こうしてバイオリンを楽しむのが
           趣味なんだ。」
  ジェシカ「へぇ・・・。」
  フランチェスコ「(微笑んで、手を差し出す。)一曲・・・お相手願え
           ますか・・・?」
  ジェシカ「(驚いた面持ちで。)私・・・そんな・・・ダンスなんて・・・
        (恥ずかしそうに下を向く。)」」
  フランチェスコ「(ジェシカの手を取る。)大丈夫・・・」

         バイオリンだけだった音楽、豪華に盛り上がる。
         フランチェスコ、優しく微笑む。
         戸惑い気味のジェシカ、フランチェスコのリードに
         身を任せ、その音楽に乗って、嬉しそうにデュエット
         ダンスを踊る。
         一踊りし終えた時、中央2人、手を取り合ったまま
         見詰め合う。(音楽流れたまま。)
         ジェシカ、フランチェスコの瞳に堪えられないように
         視線を捥ぎ取り、下手へ走り去る。
         フランチェスコ、呆然とその方を見詰めたまま、
         立ち尽くす。
         フェード・アウト。(紗幕閉まる。)       ※

    ――――― 第 6 場 ―――――

         紗幕前。
         音楽で、上手スポットにヴィクトール浮かび上がる。
         (フェード・インする。)
         ゆっくり歌いながら中央へ。

         “生まれた時から今日まで
         何の疑いもなく
         何時も共にいた・・・
         主従の関係を越え
         心から分かり合える
         唯一の友のように
         俺はおまえのことなら何でも分かる
         そう信じていたのは
         ついこの間までのこと・・・
         なのに今は
         おまえの心が余所にあるようで
         理解しようとすれば尚のこと
         俺の心は迷路を迷い
         抜け出すことは不可能に思える程・・・
         その迷いに自分自身も分からなくなる・・・”

         そこへ、上手よりフランチェスコ登場。    
         ヴィクトールを認め、幾分早足に近寄る。

  フランチェスコ「おい、ヴィクトール!!出掛けるぞ!!」
  ヴィクトール「(フランチェスコを認める。)フランチェスコ・・・。出
          掛けるって、こんな時間から何処へ・・・?」
  フランチェスコ「ジェシカの家を捜しに行く!!」
  ヴィクトール「(驚いたように。)ジェシカの・・・家・・・?」
  フランチェスコ「彼女に花を届けるように頼んで一週間、今日ま
           で一度だって約束の時間を違えたことはないん
           だ!!その彼女が、今日に限って来ないなんて
           可笑しいと思わないか!?」
  ヴィクトール「そりゃあ・・・そうだが・・・。だけど何故態々・・・」
  フランチェスコ「何故・・・?愚問だな。」
  ヴィクトール「フランチェスコ・・・」
  フランチェスコ「行くぞ!!(下手へ去る。)」

         ヴィクトール、困惑気味な面持ちでフランチェスコ
         に続いて下手へ去る。
         静かな音楽で紗幕開く。
         と、ジェシカの家。
         中央に設えられたベットの上に、リーザ横になって
         いる。その横のテーブルの上に、フランチェスコに
         持って行く筈の花籠が置いてある。
         一時置いて、奥の扉よりパンを持ったジェシカ登場。

  ジェシカ「(リーザの枕元に跪いて。)リーザ・・・、パンを買って来
        たわ・・・。食べる?」
  リーザ「(首を振る。)」
  ジェシカ「駄目よ。少しは食べないと・・・。(リーザを起こしてやり、
        パンを千切ってリーザに手渡す。明るく。)もう、一個の
        パンを買うにも、パン屋の前は長い行列で大変!」
  リーザ「・・・姉さん・・・ごめんなさい・・・。」
  ジェシカ「何謝ってるの!さ、沢山食べて元気つけなくちゃ!!」
  リーザ「私がもっと健康なら、姉さんに苦労かけることないのに
      ・・・。」
  ジェシカ「そんなこと気にしないの!さぁ・・・。(リーザのパンを
        持っていた手を、口元へ近付ける。)」

         リーザ、頷いて少しパンを口に入れる。
         ジェシカ、その様子を優しく見詰めている。
 
  ジェシカ「何か飲み物を持って来るわね・・・。」
  リーザ「ありがとう・・・」

         ジェシカ、微笑んで奥へ去る。
         一時置いて、扉をノックする音。

  リーザ「(奥を見ながら。)姉さん・・・?」

         再びノックの音。
         リーザ、ジェシカが気付かないのを確認し、
         ゆっくりベットから起き上がり、扉の方へ。  

  リーザ「はい・・・。(扉を開ける。)」
  
  フランチェスコの声「ジェシカは・・・?」
  
  リーザ「はい・・・。どうぞお入り下さい・・・。」

         フランチェスコ扉から登場。続いてヴィクトール
         回りを見回しながら登場。

  フランチェスコ「(入りながら。)中々見つからなくてね。随分捜し
           たんだ。大体この辺りだと聞いていたんだが・・・。
           で・・・?ジェシカは・・・」
  リーザ「今・・・呼んで・・・(突然、胸を押さえて苦しそうに座り込
      む。)」
  フランチェスコ「(リーザに気付いて駆け寄る。)君!?」

         その時、奥よりジェシカ登場。フランチェスコ達を
         認め、驚いたように。

  ジェシカ「フランチェスコ・・・(リーザに気付き。)リーザ!!」










     ――――― “フランチェスコ”4へつづく ―――――









    ※ 子ども向き人形劇では考えられないシチュエーション
      です^^;久しぶりにこんな感じの場面・・・何だか少し
      ・・・ジェシカちゃんではありませんが、恥ずかしいです
      ~・・・(^_^;)




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