2013年6月10日月曜日

“風になる・・・” ―全8場― 4

   スティーブ「ああ・・・父さんを壁のように感じ・・・追い越そうとす
         る前から、追い越せないと思い込んでいた・・・。何も
         かも否定していたんだ・・・。一緒に頑張ってみない
         か・・・君とは住む世界は違うが、お互い同じところを
         目指す者同士として・・・。」
  トリーズ「同じところを・・・目指す者同士・・・」

         音楽流れ、スティーブ歌う。

         “先ず前を向いてみよう・・・
         顔を上げて
         すると自然と目に入る
         本当に目指すもの・・・
         先ず可能性に賭けてみよう・・・
         ほんの少しでも
         チャンスがあるなら
         一歩を踏み出してみよう
         諦めるなんて馬鹿げてる
         後ろを向いても仕方ない
         行動すれば
         必ず結果は付いて来る・・・
         勇気だけを持てばいい!!”     ※

         トリーズ歌う。

         “行動すれば・・・
         必ず結果は付いて来る・・・
         勇気だけを持てばいい・・・”

  スティーブ「ああ・・・そうだ。」
  トリーズ「(今までと顔付きが変わり、希望に溢れた瞳でスティ
       ーブを見る。)分かりました・・・僕は壁を乗り越えてみま
       す・・・自分自身の壁を・・・!!」
  スティーブ「よし・・・その意気だ!!頑張れよ、次期王様!!(
        トリーズの肩に手を掛ける。)」
  トリーズ「・・・はい・・・!!」
  スティーブ「・・・じゃあな!」

         スティーブ、手を上げて上手へ走り去る。

  トリーズ「ありがとう・・・ありがとう!!(手を振る。)」

         トリーズ、呟くように歌う。

         “勇気だけを持てばいい・・・”
 
         一時置いてツリー、下手より走りながら登場。

  ツリー「大変だ!!トリーズ!!」
  トリーズ「(振り返ってツリーを認める。)どうしたんだい?」
  ツリー「またリーフ達が・・・どうしよう!!今度こそ、あいつら皆、
      フォーレストのところへ引っ張って・・・」
  トリーズ「(堂々とした口調で。)その必要はない。僕が行こう。」
  ツリー「・・・トリーズ・・・?」
  トリーズ「態々父さんに森林裁判で裁いてもらうこともないだろう
       。僕が行って皆を治める。僕がこの国の次期国王だか
       らね・・・!!」
  ツリー「トリーズ・・・(嬉しそうに大きく頷く。)」

         2人、下手へ去る。
         音楽で暗転。

    ――――― 第 7 場 ―――――

         上手よりスティーブ、ゆっくり登場。
         (静かな音楽流れ、優しい風が戦ぐ。)
         下手より少年登場し、スティーブの様子を
         じっと見詰めている。

  スティーブ「何だろう・・・とても心が落ち着く感じだ・・・。丸で何
         かに守られているような・・・。心が優しい思いで満ち
         溢れていく・・・。訳もなく懐かしいようで・・・ここが・・・
         やすらぎの国・・・?(視線に気付き振り返る。)・・・
         スティーブ・・・君はスティーブだろ?」
  少年「漸く、迷いが吹っ切れたようだね。」
  スティーブ「え・・・?」
  少年「あなたの瞳から陰りが消えたよ。もう大丈夫だね。」
  スティーブ「・・・どう言うことなんだ・・・君は一体・・・」
  少年「もう分かっている筈だよ。」
  スティーブ「分かる・・・って・・・何を・・・」
  少年「あなたは僕だってこと・・・(微笑む。)」
  スティーブ「君が・・・俺・・・?」
  少年「(頷く。)今まで見て来た色々な国は、あなたの心の中の
     世界・・・。ギルバート先生に友達のランディ・・・フォーレスト
     は父さんの影・・・トリーズはあなたの分身・・・それに僕・・・
     」
  スティーブ「アリスは・・・?アリスなんて少女、知らないぞ・・・?」
  少年「さぁ・・・それは僕にも分からない・・・。でもここへ迷い込ん
     だのは、あなたの心が迷っていたから・・・。あなたが自分
     自身の存在の意味を見失って、現実の世界から逃避しよう
     とした時、迷いの国の扉は開かれる・・・。あなた自身を取り
     戻す為に・・・。」

         少年、静かに歌う。

         “そして自分を見つけた今・・・
         再び扉は開かれる・・・
         優しい風に見送られ・・・
         もう迷うことはない”

         スティーブ、呼応するように歌う。

         “自分自身を取り戻した今・・・
         再び立ち向かう・・・
         現実の山々を越え・・・
         たとえ躓いても・・・”

         2人、歌う。

         “自分を見失うことはない・・・”

  少年「僕は絵を描くことがとても好きだよ・・・。いつまでも好きな
     絵を描き続けられるといいな・・・。」
  スティーブ「ああ・・・そうだな・・・描き続けられるさ、きっと・・・」
  少年「うん・・・」
  
         その時、下手より一人の女性(ジュディ)登場。
         (その姿は、1場の額の絵の女性。)

  ジュディ「・・・スティーブ・・・何しているの・・・?早く帰っていらっ
       しゃい・・・。」
  少年「(振り返って嬉しそうに。)母さん!!」
  スティーブ「・・・(呆然と。)・・・母さん・・・」
  少年「この間描いた母さんの絵!コンクールで金賞を取ったん
     だ!!」
  ジュディ「まぁ・・・本当に?」
  少年「でも・・・クラスメイトの奴らが言うんだ・・・僕が賞を取れた
     のは、父さんのお陰だって・・・。父さんがいなきゃ、金賞な
     んて取れなかったって・・・」
  ジュディ「そうね・・・でも、それは違うわ・・・。あの絵は紛れもな
       くあなた自身が描いたあなたの絵・・・。母さんはあの絵
       が一番好きよ・・・。とても温かな感じがするもの・・・。お
       父さんの絵とは全然違うわ・・・。あの絵はあなたが、あ
       なたの心で描いた初めての絵・・・。だからとても嬉しい
       わ・・・。そしてこれからも、もっとあなたが描きたいと思
       ったものを、あなたの心で描き続けていって頂戴・・・。も
       しまた迷うようなことがあったら・・・私はいつでもあなた
       の風になってあげるわ・・・。あなたの心の雲を取り除く
       風に・・・(呆然と佇み、2人の様子を見ていたスティーブ
       を見て、優しく微笑む。)」
  少年「うん!!」
  スティーブ「・・・母さん・・・(言葉に詰まる。)」  
  ジュディ「さぁ、帰りましょう・・・」

         少年、ジュディ、寄り添うようにゆっくり
         下手へ去る。

  スティーブ「・・・母さん・・・母さん!!」

         その時、突風が吹き抜ける。

  スティーブ「わあっ!!(風を避けるように身を屈める。)」

         暗転。

  ジュディの声「あなたはあなたよ・・・スティーブ・・・」

         舞台明るくなる。と、中央にベンチの
         置かれてある公園の風景。
         ベンチに倒れていたスティーブ、気付いて
         呆然と周りを見回し、ゆっくり立ち上がる。

  スティーブ「・・・ここは・・・夢を・・・見ていたのかな・・・(フッと微
         笑んで。)・・・いや・・・確かに迷い込んだ不思議な国
         は、本当にあったんだ・・・」

         音楽流れ、スティーブ歌う。

         “そして自分を見つけた今・・・
         再び扉は開かれる
         優しい風に見送られ
         もう迷うことはない・・・
         自分自身を取り戻した今・・・
         再び立ち向かう
         現実の山々を越え・・・
         たとえ躓いても
         自分自身を見失うことはない・・・”

         暗転。

    ――――― 第 8 場 ―――――

         舞台明るくなる。と、1場の個展会場風景。
         数人の客が熱心に絵に見入っている。
         上手よりスティーブ登場。客に声をかけて
         いる。
         一時置いて、下手よりスティーブの父
         (アイザック)登場。スティーブを認め、ゆっくり
         近寄る。

  アイザック「スティーブ・・・」
  スティーブ「(アイザックを認め。)・・・父さん・・・」
  アイザック「久しぶりだな・・・。どうだ?初日は盛況だったそうじ
         ゃないか・・・。」
  スティーブ「・・・ええ・・・」
  アイザック「どうしたんだ、そんな気の抜けたような顔をして・・・」
  スティーブ「・・・父さんこそ・・・。どうして態々こんなところへ・・・
         ?今までただの一度だって、僕の個展会場へ足を運
         んでくれたことなどなかったのに・・・」
  アイザック「・・・近くまで来たついでだ・・・。忙しくしているようじ
         ゃないか・・・。」
  スティーブ「ええ・・・お陰様で・・・」
  アイザック「(絵を見ながら。)・・・何か迷いでもあるのか・・・?」
  スティーブ「・・・え?」
  アイザック「作品は嘘を吐かないぞ・・・。話してみないか・・・?」
  スティーブ「・・・一体何を話すんですか・・・今まで散々放って置
         いたくせに・・・今更・・・」
  アイザック「何だ、何か拗ねているのか?」
  スティーブ「ばっ・・・!!馬鹿言わないで下さい!!」
  アイザック「私がおまえを一人にしたのは、おまえの為になるこ
         とだと、確信していたからだ・・・。」
  スティーブ「・・・僕の為・・・?」
  アイザック「もしおまえがいつまでも私の影に隠れ、守られたま
         まこの道に進んだとしても、今程の作品を本当にお
         まえが描けるようになったと思うか・・・?」
  スティーブ「・・・ええ・・・」
  アイザック「違うな・・・。仕上がりは同じように描けても、おまえ
         はもっと小さな芸術家にしかなれなかっただろう。今
         のおまえは、なんと言われようと私がいたから有名
         になったのでもなんでもない・・・。この作品達は、迷
         いを持ちながらも嘘偽りない、おまえの分身達だ・・・。
         その証拠に・・・そこに飾ってある絵・・・」
  スティーブ「それは・・・!」
  アイザック「母さんだ・・・。おまえがまだ小さい頃に書いた・・・。
         何故おまえが今も、その絵を飾り続けているのか分
         からないが・・・その絵の中の母さんは、生きている
         とは言えないな・・・。自分でもよく分かっているだろ
         う・・・?確かに書いた頃は、コンクールで賞をもらっ
         た絵だ・・・。悪くはない・・・。だが、今のおまえなら、
         そんな風な絵は描かない筈だ・・・。私の元を離れ・・・
         おまえは成長したんだよ、確実に・・・。人気があるの
         は今のおまえの絵で、その昔の母さんの絵じゃない
         ・・・。」
  スティーブ「父さん・・・」
  アイザック「・・・昨夜・・・奇妙な体験をしたんだ・・・」
  スティーブ「奇妙な体験・・・?」











    ――――― “風になる・・・”5へつづく ――――――












     

     すみませ~ん(>_<)
     スティーブのお母さんの名前が、コロコロ変わっていた
     ことに、今、気付きました~(-_-;)
     正解は“ジュディ”さんです^^;
     一応、書き直したのですが・・・もしまだ直ってない箇所
     があれば、お許し下さい
     ・・・にしても・・・
     シンディさんとは・・・どこから出てきたのでしょう・・・^_^;











   ※ この“歌詞”・・・今の私自身に贈りたいです・・・(>_<)
     訳は・・・ここでは言えないですけど・・・^^;
     “ヤフー版”には少し・・・イロイロと書いていますので、
     興味がおありでしたら、またそちらもどうぞ・・・(^_^;)
     



























0 件のコメント:

コメントを投稿