2013年6月1日土曜日

“アトラス” ―全8場― 3

              ――――― 第 5 場 ―――――

         舞台明るくなると、緑溢れる色取り取りの
         花々咲き乱れる、温かな森の風景。(花の国。)
         花の国の少女たち、戯れている。
         一時後、舞台薄暗くなり、俄かに嵐の前触れの
         よう。少女たち、周りを見回す。

  少女1「どうしたのかしら・・・?」
  チェリトリー「急に嵐でもくるみたい・・・」
  少女2「早く帰りましょう!!」
  少女1「そうね!!」
  少女2「(立ち止まって周りを見ているチェリトリーに気付き。)
      チェリトリー!早く、行くわよ!!」
  チェリトリー「あ・・・うん!」

         2人の少女、上手へ去る。
         入れ代わるように下手より、アトラス登場。
         続いてクルーエル登場。
         上手方へ行こうとして2人に気付いたチェリトリー、
         立ち止まる。

  クルーエル「目障りなものが沢山ある国だな・・・(花の側へ行き
         踏み付ける。)」
  チェリトリー「やめて!!(2人の側へ駆け寄る。)」
  クルーエル「なんだ、この餓鬼・・・」
  チェリトリー「どうして折角美しく咲いている花々を、そんな風に
         踏み付けてしまうの!?可哀相でしょ!?」
  クルーエル「・・・可哀相・・・?生憎だな、我々にはそう言った感
         情は持ち合わせてはいない・・・。」
  チェリトリー「・・・あなたたちは誰・・・?」
  アトラス「我々は魔の国の者・・・この国を我々の配下へ置く為  
       にここへ来た・・・。」
  チェリトリー「魔の国・・・?どこの国の人でもいいわ!でも、お願
         いだから、この国に咲く花々をそんな風に荒らしたり
         しないで!!」
  クルーエル「そんな風に言われると余計・・・(再び花を足で踏み
         付ける。)」
  チェリトリー「やめて!!(泣き声で。)」
  アトラス「クルーエル!!」

         その時、上手より一人の老人、杖をつき
         ゆっくり登場。

  老人「・・・そんな小さな子を苛めて、楽しいか?」

         皆、上手方を見る。

  クルーエル「誰だ!?」
  チェリトリー「お爺さん!!(老人の側へ駆け寄る。)お花たちが
         ・・・」
  老人「大丈夫・・・後でわしがちゃんと生き返らせてやるから、心
     配せんでもいい。さぁ、家で母さんが待っとるじゃろ?早く帰
     りなさい。」
  チェリトリー「(頷く。)」

         チェリトリー、後ろを気にしながら上手へ去る。

  老人「ここは見ての通り、美しい花々が咲き乱れる花の国じゃ
     ・・・。ここに住む者たちは皆、花々を心から愛しておる・・・。
     それをそのように、無碍に踏み荒らすような真似をされる
     となぁ・・・」
  クルーエル「されるとどうなんだ。我々に立ち向かおうって言う
         のか!?面白いじゃないか。」
  老人「立ち向かう?滅相もない。我々は争いを好む人種ではな
     いわ・・・。おまえさんたちが何の為にこの国にやって来た
     のか・・・耳にしたとこ自分たちの領土を広げようとしている
     からだとか・・・」
  クルーエル「その通り!!我々は力を持って、この国を我々の
         ものとする!!」
  老人「何もそんな風に息巻かんでも、それ程までにこの国を自
     分たちのものにしたいと言うなら、好きにするがいい・・・。
     我々はいつでも抵抗はしないからの・・・。おまえさんたち
     は、心のない国から来たのじゃろ?昔から魔国の人間は
     冷静沈着、且つ冷淡な者たちの集まりと決まっておる。」
  クルーエル「よく知っているじゃないか。」
  老人「・・・じゃが・・・(チラッとアトラスを見る。)最近は系統が少
     し変わったかの?」
  クルーエル「・・・何!?」
  老人「(クルーエルに。)おまえさんは見るからに・・・正しく魔国
     の者・・・。じゃが、そっちの青年は・・・どうも魔国の者と言
     うより・・・」
  クルーエル「アトラスは魔王デビル様のただ一人の跡取りだぞ
         !!」
  老人「ほう・・・時期魔王にしちゃあ、なんとも弱っちい感じじゃの
     う・・・(笑う。)」
  クルーエル「この爺!!さっきから黙って言わせておけば!!
         (老人の襟首を掴む。)」
  アトラス「クルーエル!!(クルーエルを制止する。)」
  老人「なあに、止めることはない。殺りたければ殺ればいい・・・。
     こんな年寄り、放っといたところで、明日はどうなるやら分
     からん命じゃ。(笑う。)」
  クルーエル「黙れ!!(手を振り上げる。)」
  アトラス「止めろ!!(クルーエルの手を掴む。)」
  老人「・・・なんじゃ・・・殴る勇気もないのか?」
  クルーエル「アトラス!!何故止める!?こんな奴に侮辱され
         て、おまえは構わないって言うのか!!」
  老人「弱っちい感じだけでなく、本当に弱いのか?」
  クルーエル「なんだと!!」
  老人「おまえさんの方は、ちと頭に血が上り過ぎじゃの・・・。そ
     んな風だと、わしのように長生きできんぞ。(笑う。)」
  クルーエル「いちいち頭にくる爺だ!!(再び老人の服を掴む。
         )」
  アトラス「クルーエル!!いい加減にしろ!!おまえは暫く向こ
       うへ行ってろ。」
  クルーエル「アトラス!!」
  アトラス「席を外せ!!俺の言うことが聞けないのか!!」

         クルーエル、怒ったように上手へ去る。

  アトラス「(クルーエルが去るのを見計らって。)・・・何が強いか
       弱いかなど・・・ものに対する捕らえ方の違いだ・・・。た
       だ力が強い・・・それでいいのなら、この世の中、強い奴
       など五万といる・・・。」
  老人「・・・ほう・・・ではおまえさんは一体、何で強いと言うのだ
     ?」
  アトラス「・・・強いものなど・・・」
  老人「何か迷っているのか・・・?」
  アトラス「・・・別に・・・」
  老人「なぁに、心配せんでもわしは誰に何を言ったりもせんよ。
     何を迷っておるのか、話してみんか?」
  アトラス「・・・迷ってなど・・・ただ・・・」
  老人「ただ・・・?」
  アトラス「あなたも言った通り・・・私は魔国の者としては不完全
       なのです・・・」
  老人「不完全・・・?」
  アトラス「我々の国の者が普通、持たないような心を、私はいく
       つも感じる・・・。我々の国の者が考えもしないようなこと
       を、平気で口にしたりする・・・。魔国の王には必要ない
       思いで心が溢れ返りそうで・・・持ってはいけない感情と
       言われると余計に・・・罪悪感に苛まれる・・・」
  老人「持ってはいけない感情など、ないんじゃよ・・・。何故なら
     たとえそれが悪い考えでも、自分でそのことを知り、それを
     認めることが大切なことなんじゃ・・・。持ってはいけない感
     情と、自分の心を否定する前に、持ってはいるが、本当に
     それは悪いことなのか・・・生きていくうえで、本当は必要の
     あるものではないかと・・・善悪の判断をつけ認める心こそ、
     一番大切なことなんじゃ・・・と、わしは思うがの・・・」
  アトラス「・・・判断をつけ・・・認める心・・・」
  老人「おまえさんがどんな心に迷っているのか・・・大体の見当
     はつくが、その心は少なくとも、この地上では誰もが持つ、
     ごく当たり前の感情じゃ・・・。人を傷付けることを考える前
     に、助けることを考える方が当たり前のことなんじゃ・・・。
     おまえさんは何も間違ってはおらんよ・・・。おまえさんは正
     しい心を持ったんじゃ・・・。」
  アトラス「正しい心・・・」
  老人「お陰でわしは、まだ当分あの世に行けそうにないがの。
     (笑う。)昔は喧嘩で慣らしたわしももうこの年じゃ・・・あの
     時は本当に殴られるかと、内心冷や冷やしたぞ・・・。ありが
     とうよ・・・」

         老人、下手へ去る。
       
    ――――― 第 6 場 ―――――

         入れ代わるように、上手よりクルーエル登場。

  クルーエル「アトラス!!」
  アトラス「(振り返り、クルーエルを認める。)クルーエル・・・」
  クルーエル「アトラス!!決闘の続きだ!!今日こそ決着をつ
         けるぞ!!」
  アトラス「・・・今・・・こんなところで・・・?」
  クルーエル「ああ!!今、こんなところでだからだ!!」
  アトラス「何をそんなにむきになっているんだ・・・。」
  クルーエル「俺はいい加減、おまえの重臣として、おまえについ
         て行く自信がなくなった。それならばいっそ、どちらか
         がいなくなればスッキリする。さぁ、早く剣を抜け!!
         今日こそどちらが魔国の王に相応しい者か、分から
         せてやる。愚図愚図していると、こっちから行くぞ!!
         」

         剣を振り上げ、アトラスにかかる。アトラス、
         思わず剣を抜き、クルーエルの剣を受ける。
         2人、一時、真剣に剣を交える。

  アトラス「(剣を交えたまま。)何故・・・おまえはそんなにも魔国
       の王に拘る・・・」
  クルーエル「では何故・・・おまえは魔国の王にもっと執着しない
         ・・・!!何故、デビル様のただ一人の血を引く者と
         して・・・もっと王たるに相応しい度量を身につけよう
         としないのだ・・・!!」
  アトラス「・・・クルーエル・・・」
  クルーエル「俺はおまえが歯痒い・・・!!そんなおまえを見て
         ると・・・とてつもなく・・・自分の生まれが口惜しい!!
         (剣を弾いて、アトラスを突き放す。)」

         クルーエル、遣り切れない思いを
         振り絞るように歌う。

         “何故おまえはそんな風なんだ・・・
         何故こんなにも長い時を
         共に過ごした・・・この俺を・・・
         おまえは何故にガッカリさせる・・・
         魔国の王になる為に・・・
         この世に生を受けておきながら・・・
         何故そんなに・・・
         いともあっさり否定する・・・”        ※
         
         その時、クルーエルの振り下ろした剣を
         避けようとして、振り上げたアトラスの剣
         が、クルーエルの腕を掠める。
         クルーエル、剣を落とす。

  クルーエル「うっ・・・!!(腕を押さえる。)」
  アトラス「クルーエル!!大丈夫か!!(クルーエルに駆け寄
       る。)」
  クルーエル「ばっ・・・馬鹿野郎・・・もうこれでは剣は持てない・・・
         。俺の・・・負けだ・・・。さぁ、殺せ・・・!!こんな不名
         誉な傷をつけられたまま・・・おめおめと生き長らえる
         など、魔国の者として・・・生き恥をさらしているも同じ
         こと!!」
  アトラス「腕を貸せ・・・(クルーエルの腕を掴む。)」
  クルーエル「何をする!!」
  アトラス「(クルーエルの腕の傷を見、ハンカチを取り出し、その
       腕に巻く。)・・・これで大丈夫だ。」
  クルーエル「アトラス・・・何故俺を殺さない!!俺がおまえに命
         を助けられて、喜ぶとでも思っているのか!!剣を
         交えた相手に、情けをかける・・・これでハッキリ分か
         った。おまえは魔国の王として落第者だ!!デビル
         様が認めても、この俺はおまえを王とは認めない!
         !」
  アトラス「・・・分かっている・・・」

         アトラス、黙って下手へ去る。

  クルーエル「何故、おまえは俺を助けるんだ・・・!!何故、そん
         な心を持つんだ・・・!!何故・・・俺はあいつに命を
         助けられなきゃならないんだ・・・!!何故俺は・・・負
         けてまで生き長らえる・・・!!何故・・・!!」

         暗転。
      
         
      







        ――――― “アトラス”4へつづく ―――――




 







    ※ この6場辺りから以降・・・昨日探してみたのですが、
      実は続きのつながりがよく分からないのです・・・^^;
      なので、書き綴っている部分の台本から、繋がるように
      台詞を増やしてみました^_^;
      この先も追加しなければいけないようなので、時々
      立ち止まるかもしれませんが、お許し下さい

      どの辺りが追加した部分か・・・お分かりですか?^^;
      多分、昔作品と今作品の違いをご理解頂いていれば、
      なんとな~く・・・追加した部分の言い回しなどに・・・
      とって付けた感が見え隠れしているのではないかと・・・
      (>_<)
      読み難くなっていたら、すみませ~ん




























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