――――― 第 3 場 ―――――
舞台、明るくなると1場の公園の様子。
(ベンチにジム、寝っ転がっている。)
B・J、ジムを認め、一瞬、躊躇したように
立ち止まる。が、意を決したように近寄る。
B・J「・・・やっぱりここにいた・・・兄ちゃん・・・」
ジム「・・・う・・・ん・・・」
B・J「兄ちゃん・・・!」
ジム「・・・ん・・・」
B・J「兄ちゃん!!」
ジム「・・・煩いな・・・」
B・J「起きろよ!!」
ジム「もう、何だよ!!(目を覚ます。)・・・何だ・・・昨日の餓鬼
じゃないか・・・。何か用か・・・?俺の一番のリラックスタイ
ムに、邪魔すんなよな・・・。また悪いことやったんじゃない
だろうな・・・」
B・J「やってねぇよ!!・・・」
ジム「本当だろうな・・・?」
B・J「何、疑ってんだよ!!俺は嘘は吐かねぇ!!」
ジム「・・・どうしたんだよ・・・」
B・J「うん・・・え・・・っと・・・」
ジム「何だよ。」
B・J「・・・昨日の話し・・・」
ジム「え・・・?」
B・J「独りぼっちの婆さんとこ・・・行くってやつ・・・」
ジム「ああ・・・。そうか、行く気になったのか?」
B・J「あれ・・・男として・・・だよな・・・」
ジム「ばぁか!男としてってどう言う意味だよ。兎に角、婆さん
家に行けば、おまえのその無作法を正してくれるだろう。ナ
イフとフォークの持ち方を習うのに、男女の別があるのか
?挨拶の仕方が違う訳ないだろ?礼儀作法に男も女も関
係ないんだ。変なこと聞く奴だな。(笑う。)」
B・J「う・・・ん・・・。・・・それで・・・そいつは・・・いくらなんだよ・・・
」
ジム「いくら・・・?タダに決まってるだろ!?パンを買う金もない
奴に、金のいる話しをする訳がない。アルバイト・・・って言
ってるだろ?おまえ、アルバイトの意味分かってるか?」
B・J「わ・・・分かってらぁ、そんなこと・・・!」
ジム「ただ、夏休みが終わって、自分の生活に戻っても、週末に
時々元気な顔を婆さんに見せてやればいいんだよ。」
B・J「・・・分かったよ・・・俺・・・行くよ・・・俺、その婆ちゃんのとこ
、行ってやることにする・・・!」
ジム「よし、決まった!それじゃあ、おまえの前途を祝して乾杯
といくか!」
ジム、横に置いてあった鞄の中から、
紙コップを取り出し、1つをB・Jへ差し
出す。
ジム「ほれ、持ってな。」
B・J「・・・う・・・うん・・・」
ジム、鞄の中からペットボトルを取り出し、
B・Jの紙コップへ半分注ぎ、残りを自分の
持っていた紙コップへ注ぐ。
ジム「さ、乾杯だ!!(紙コップをB・Jの方へ差し出し、中身を
一気に飲み干す。)ほれ、おまえも飲め飲め!」
B・J「あ・・・うん・・・(紙コップを見て。)え・・・?こ・・・この紙コッ
プ・・・」
ジム「ん・・・?何か問題あるか?」
B・J「も・・・問題って・・・このメモリ・・・」
ジム「メモリ?メモリがどうしたんだ?量が分かってちょいと便利
だろ?(笑う。)」
B・J「ばっ・・・!この紙コップ、病院なんかで検査の時にトイレ
で使う・・・あれじゃねぇか!!」
ジム「(笑う。)大丈夫、大丈夫!まだ使用前の新しいのだから、
なんてことないただの紙コップと一緒だ。」
B・J「使用前ってったって・・・!!」
ジム「細かいことは気にするな!」
B・J「だって・・・」
音楽流れ、B・Jの背に手をかけ、
ジム歌う。(紗幕閉まる。)
“さぁ始めよう 新しい人生!
昨日までと同じようで全く違う
朝陽が昇るんだ
さぁ希望溢れる待ちに待った人生!
この手で切り開くんだ未来を
明日が来ない日なんてない
そう信じていれば
この世はバラ色
幸せは自分の手で掴むんだ
ちっぽけなチャンスを物にしろ!”
ジム「さぁ、行くぞ!!」
ジム、上手へ走り去る。
B・J「あ・・・待って・・・待てよ!!おい!!」
B・J、上手方へ行きかけて、立ち止まる。
歌う。
“ホントにこの俺が・・・
あの人の言うように・・・
ちゃんとした身形の
言葉遣いも丁寧な・・・
そんな奴に生まれ変われる・・・?
ホントにたった今まで
着の身着のまま好き放題
自由気儘に生きてきた
俺が生まれ変われるの・・・?”
B・J「あ・・・(上手方を見て。)待ってくれよ、兄ちゃーん!!」
B・J、慌てて紙コップの飲み物を飲み干し、
ジムを追い掛けるように上手へ走り去る。
音楽盛り上がって、暗転。
――――― 第 4 場 ――――― A
後方段上、下手スポットに老婦人
(ミセスアダムス。)、ベッドに横になって
いる。
横に白衣を着た医師、客席に背を向け
座る。
ミセスアダムス「先生・・・私はもう何だか生きる張り合いがなく
て・・・毎日毎日こうしてベッドの中で、早くお迎え
が来ないかと、そればかり考えているんですよ
・・・」
医師「ミセスアダムス、そんな風に落ち込んでばかりいても、仕
方がないですよ。もっとこう前向きに・・・」
ミセスアダムス「でも先生・・・今まで私の回りは、孫達の笑顔が
いつも溢れていて、毎日がとても生き生きとして
いたのですよ・・・。それが今では・・・この広い屋
敷がただ恨めしくて・・・」
医師「何か生きがいを探されたら如何です?」
ミセスアダムス「・・・生きがい・・・?」
医師「ええ。もう一度このお屋敷を、明るく笑いの絶えない場所
にするのです。」
ミセスアダムス「・・・そのような場所になど、出来るのでしょうか
・・・」
医師「そうだ、ミセスアダムス、僕にいい考えがあります。少し時
間を頂けますか?」
ミセスアダムス「・・・先生・・・ええ・・・時間ならいくらでも差し上
げますよ・・・。もし本当にそのような場所が、再
び戻るのであれば・・・」
医師「(立ち上がり振り返ると、ジム。)はい、勿論!」
後方段上、下手スポット、フェード・アウト。
入れ代わり、後方段上、上手スポットに
身奇麗ななりの七三分けしたB・J、幾分
緊張した面持ちで立つ。横にはシスター。
シスター「まぁ、見違えるようですよB・J。本当によかったこと・・・
。たとえ夏のバカンスの間だけでも、あなたを引き取っ
て下さると言う、奇特な方が見つかって・・・。いいです
ね、B・J、ミセスアダムスのお宅では、ホームと同じよ
うに振舞っては駄目ですからね。」
B・J「ホームと同じって・・・何だよ・・・しねぇよ、そんなこと・・・!
」
シスター「しっ!その言葉遣いもね。“しねぇ”ではなく、“しませ
ん”と言うの。」
B・J「・・・し・・・ません・・・先生・・・」
シスター「そう!そうやってきちんとした洋服に身を包んで、丁
寧な言葉遣いで話すあなたは、ネリーや他の子となん
ら変わりなく見えますよ。」
B・J「ネリーや・・・みんなと・・・」
シスター「お行儀良くね・・・。夏休みが終わるまで、ちゃんとお世
話になるのですよ。」
B・J「・・・はい・・・先生・・・」
後方段上、上手スポットフェード・アウト。
――――― 第 4 場 ――――― B
音楽流れ、舞台明るくなる。(紗幕開く。)と、
中央階段のあるミセスアダムス邸。
上手、下手より其々メイド(ルーシー。)、
執事(バート。)が登場。歌う。
なんとなく、舞台イメージが分かって頂ける
でしょうか・・・?(^^;
“ようこそいらっしゃいました
ここは裕福なアダムス邸
ようこそおいで下さいました
誰もが羨むアダムス邸
大きな塀に囲まれた
ここは楽園アダムス邸
煌びやかなシャンデリアに
金の食器
大理石で出来た床はピカピカ
赤い毛氈ひいてお出迎え
ご主人様はミセスアダムス!!”
バート、ルーシー、中央階段上を指し示し、
ポーズを決める。
ルーシー「はぁあ・・・ご主人様は今日もベッドでお休み・・・毎日
毎日寝たきりで、本当、大丈夫なのかしら・・・」
バート「仕方あるまい・・・。ついこの間まで賑やかで、明るかった
お屋敷が今はこの通り・・・ネズミの足音すら聞こえはしな
いのだから・・・」
ルーシー「あら、バートさん、このお屋敷の中に、ネズミなんてい
やしませんわよ。」
バート「まぁ、まぁルーシー、例えだよ例え・・・」
ルーシー「そうですわね・・・今はシーンとして・・・お子様達の笑
い声に包まれてたこの間までが、丸で嘘のよう・・・」
バート「本当だな・・・」
ルーシー「それよりバートさん、お客様がお見えになられますの
?お部屋の用意をしろだなどと・・・」
バート「ああ、そうだよ。何でもグレイ先生の紹介で、夏のバカン
スの間、この屋敷で預かることになった子どもが来るらし
いのだ。」
ルーシー「子ども・・・ですか?」
バート「うむ・・・。具合の良くない奥様がいるこの屋敷で、何の
もてなしも出来ぬからと、お断り申したのだが、先生がど
うしてもと仰ってな・・・。ただ預かって、一緒に生活をさせ
てくれればそれでいいからと・・・」
ルーシー「どういったお子様なのかしら・・・」
バート「さぁ・・・それは私にも分からないが・・・グレイ先生の知り
合いなら、何の問題もないだろう。おまえ、その子の世話
を頼むよ。」
ルーシー「はい、バートさん。」
2人、話しながら下手へ去る。
一時置いて中央階段上、メイド登場。
つづいてB・J、回りを見回しながら
ゆっくり登場。
メイド「さぁ、こっちよ。ご主人様をお呼びしてくるから、あなたは
少しここで待ってて頂戴ね。」
B・J「うん・・・」
メイド、段上下手へ去る。
B・J、回りをキョロキョロ見回しながら、
階段を下りて来る。
B・J「わぁーっ・・・おっきな屋敷だなぁ・・・あのでっかいシャンデ
リア!もの凄く綺麗だ・・・!!へぇーっ・・・!!この花瓶!
!なんて重そうなんだ!!割ったら院長先生に大目玉を
食うぞ!!(笑う。横に置いてあるソファーの側へ。触って
みる。)うわっ・・・なんてフカフカなんだ!!こんなソファー
に生まれてから一度だって座ったことねぇや・・・!!すげ
ぇなぁ・・・」
音楽流れ、B・J、歌う。
“なんて豪華なお屋敷だ
キラキラ輝く装飾品
床はピカピカツルツルだ
ソファーはフカフカ体が沈む
こんな贅沢見たことねぇ!!”
B・J、思わずソファーの上へ上がり、
ジャンプして遊ぶ。
その時、下手より車椅子に乗った、
ミセスアダムス登場。
ミセスアダムス「(B・Jの様子に唖然と。咳払いする。)」
B・J「あ・・・(ミセスアダムスに気付き、気不味い面持ちでソファ
ーから下りる。小声で。)やっべ・・・」
ミセスアダムス「あなたがB・Jね。」
B・J「う・・・うん・・・」
ミセスアダムス「お返事は“はい”ですよ、B・J。」
B・J「はぁい・・・」
ミセスアダムス「“はぁい”と伸ばすのではありません、“はい”で
す!」
B・J「イエス サー!!」
ミセスアダムス「(溜め息を吐いて。)やれやれ・・・あなたは今ま
でどんな教育を受けてきたのかしら・・・」
下手よりルーシー、盆の上にティーカップと
お菓子を乗せて運んで来る。
B・J「わぁーっ!!(ルーシーに駆け寄る。)姉ちゃん!これ食っ
ていいか?」
ルーシー「(驚いて。)ね・・・姉ちゃんではありません!ルーシー
と申します!」
B・J「ルーシー・・・姉ちゃん?」
ルーシー「姉ちゃんはいりません!」
B・J「ふぅん・・・。まぁどっちでもいいや!これ食ってもいいよな
!(ルーシーの持っていた盆の上から、お菓子を2つ両手
の取り食べる。)わぁーっ・・・うめぇ!!こんな美味いクッキ
ー食べたことねぇや!!いいなぁ・・・金持ちって!!」
ミセスアダムス「グレイ先生の勧めで、安易に引き受けてしまっ
たけれど・・・大丈夫なのかしら・・・本当に・・・」
B・J「婆ちゃん!婆ちゃんも食べなよ!(1つのクッキーをミセス
アダムスに差し出す。)」
ミセスアダムス「・・・(B・Jが素手で持つクッキーを見て。)私は
結構ですよ・・・。それと・・・私のことは婆ちゃん
ではなく、ミセスアダムスと・・・」
B・J「婆ちゃん!婆ちゃんはこんな広い屋敷に今まで独りぼっち
・・・じゃあないか、ルーシー達がいるもんな!けど、それに
しても広い屋敷で、一体毎日何して遊んでんだい?」
ミセスアダムス「遊んでなどおりません!あなたは今日から2ヶ
月間、みっちりと礼儀作法を学ばなければなり
ませんよ、B・J!」
B・J「礼儀・・・あ・・・うん・・・」
ミセスアダムス「“うん”ではありません、お返事は・・・」
B・J「はいっ!!」
ミセスアダムス「・・・よろしい・・・」
――――― “Thank you!B・J”3へつづく ―――――
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